ディスカウントストアのドン・キホーテで売られている驚異の格安食パン「薫麦」。場所によっては6~8枚切の普通の食パンが、たったの59円(税抜)で手に入る。
販売店による値段の違いと気になる味についてレビューしてみたい。amadanaの高級トースターを使って、枝豆ペーストを塗った「ずんだトースト」や「ランチパックもどき」も作ってみた。
(2020年1月29日更新)
ドンキオリジナル食パン、薫麦
毎朝の食事は玄米に卵かけ納豆ご飯。パンやシリアルが主食だった時期もあるが、玄米食に切り替えてからもう5年以上経つ。
たまたま親知らずを抜歯して流動食しか食べられなかったため、久々にスーパーのパンコーナーをのぞいてみた。蒸しパンやスナックスティックなど、柔らかめのパンなら口を大きく開けなくても飲み込める。
そんな中、食パンの棚に並んでいる異様に安い商品を見つけた。「情熱価格」とついているドンキのプライベートブランド「薫麦(くんばく)」だ。
ドンキは68円、驚安堂は59円
スタンダードな6枚切と8枚切の2種類あり、価格はどちらも59円。普通の菓子パン1個買うより安い価格で、標準サイズの食パンが丸ごと手に入ってしまう。
食パンの相場といえば、よく見るフジパンの本仕込やパスコの超熟が130~180円くらい。ちょっと豪華なヤマザキのダブルソフトで200円くらいだと思っていた。
100円を切る値段の食パンなど、少なくともコンビニあたりでは目にしたことがない。郊外にある大き目のスーパーでも、最低価格は78円。ドンキのPB価格はそれをさらに下回る。
さすがにドン・キホーテがいちから食パンをつくっているわけではなく、製造元は第一パン。流行りのPBコラボ商品だ。
ためしに他のドン・キホーテも訪ねてみたところ、期間限定の驚安プライスで68円だった。
夕方の時間帯には食パン2種類、山型、ロールも含めて薫麦シリーズはすべて売り切れていた。確かにこんな低価格なら、毎日飛ぶように売れてしまうだろう。
どうやら関東圏にまだ4店舗しかない驚安堂というスーパーでだけ、通常店より9円安くオリジナル食パンが手に入るようだ。
定価79円で値引き試験中?
驚安堂ではカードや電子マネーが使えないかわりに、曜日限定で5%オフになるLINEクーポンが導入されている。クーポン適用すれば59円からさらに5%引きで2~3円安くなる計算だ。
後ほどスーパーのレシートをチェックしたところ、薫麦は79円から59円に20円値下げされる特別ルールが適用されていた。
やはり元の定価は79円で、何らかのセールかキャンペーンにより59円で試験販売されているのだろう。
驚安堂の店頭には特に「期間限定」という表現は見なかったので、一部のスーパー業態でだけ実施されているマーケティングテストなのかもしれない。
格安ドンキ食パン弁当
試しに食パンを持って外出し、お弁当として使えるかテストしてみた。
薫麦6枚切の場合は1枚148kcal、8枚切りなら1枚111kcal。それぞれ1袋全部食べれば合計888kcal。59円でも十分主食になりえるカロリーだ。
病院の待合室で、おもむろに食パンを取り出しムシャムシャ食べる。
おにぎりや菓子パンを食べるのに比べると見た目は変わっているが、食パンの香りは弱いのでまわりに迷惑はかからない。
たまにポロポロ落ちるパンくずに気を付ければいいくらいだ。それもこぼれやすいメロンパンやクロワッサンの比ではない。電車の中で食べても差し支えないだろう。
普段パン食でないせいか、普通の食パンでもほんのり甘く感じる。原材料には、ぶとう糖果糖液糖、砂糖、食塩といった調味料かいくつか含まれる。
糖分が添加されているという時点で、スーパーの食パンは菓子パンの一種ともいえる。
具なしのランチパックは物足りないかと思ったが、案外おかずなしの食パンだけでも食べられると知った。
食パンは単調で飽きる
しかし6枚切を4枚くらい食べたところで、わりと満腹になってきた。ここまでの摂取カロリーは592kcalなので、成人男性の昼食としてはやや物足りないくらいだ。
「満腹になった」というより「飽きて満足した」という感想。詰め込めば6枚すべて完食できるが、強いてこれ以上食べたいという気がしない。
シンプルな食パン弁当は、あまりの単調さに腹八分でもう結構といった感じになる。ドンキの薫麦はバターが入っていないせいか脂質は少ない。ダイエットにも使える食品だと思う。
外で食パンを食べるときは、せめて味付け海苔でも乗せて、のり弁風にアレンジしてもいいかもしれない。ピーナッツクリームやコロッケ、焼きそばなど惣菜を挟めば、即席でヤマザキのランチパックを再現できる。
元が安いので、その分おかずに投資してもよい。薫麦はランチパック好きに、カスタムベースとしておすすめできる食パンだ。
かつて貧乏学生のお供だった、山崎製パンの「スイートブール」はめっきり見かけなくなってしまった。コンビニで買っても100円ちょっとなので、出先のランチは食パンを見直してみようと思う。
朝食で薫麦のトーストを評価
次にドンキの食パンをトーストして食べてみた。
パンを焼くのに借りられたのは、プロクターシレックスのポップアップトースターと、デザイン家電amadanaの2種類。元の値段は不明だが、見た目はどちらも高級そうだ。
玄米食だと縁のないマシンだが、たかが食パンを焼くだけのマシンに1万以上かけるとは酔狂な趣味だ。
別に焼いても焼かなくてもパンの栄養価が変わるわけではない。トーストすれば若干水分が飛ぶという程度。
しかしこんがり焼かれた温かい食パンには、シズル感というか独特の魅力が加わる。
パックスアメリカーナ時代のサバービア(郊外)文化への憧憬だろうか。子どもの頃の朝食は白米と食パン半々くらいのペースだったので、何となく懐かしい気もする。
amadanaトースターの感想
ポップアップトースターはタイマーが終わると自動的にパンが飛び出してくる。このギミックを楽しむだけのパン焼き専用機といえる。
しかし普通のトースターと比べて水分が飛びやすくカラッと仕上がるうえ、「放置しても余熱で焼け過ぎない」というメリットがある。
アマダナのトースターはツマミが高級オーディオ機器のようで、上部のハンドルには革が巻いてある。家電製品としてはこうした素材感の工夫に必然性はなく、個人的にはどうでもよく感じる。
アマダナがもうひとつおもしろいのは、前面のガラスがミラー仕上げになっている点だ。ヒーターが点くまでほとんど鏡になってしまい、中が見えない。
「見せない収納」ならぬ「見せない家電」。外観はスマートだが、スイッチを入れるまで「中に何を入れたかわからない」というデメリットもある。
ポップアップトースターとの違い
2つのトースターで焼いた食パンを比べてみた。素材はどちらも薫麦の8枚切。
アマダナの方は案の定、知らない間に焼けすぎて焦げてしまった。しかし皿なしで焼くと網目の跡がくっきり残るので、こちらのトーストの方が香ばしくみえる。
食感としてはどちらのトースターで焼いても違いがわからなかった。元の食パンが安すぎるだけで、高級ホテルブレッドでも投入したら真価を味わえるのかもしれない。
しかし手間をかけただけあって、焼き立てのパンはやはりおいしい。素の食パンより幸福度が3倍くらいアップする。
アマダナの方なら適当に「とろけるチーズ」でも乗せて、ピザパン風にアレンジしてもよかったかもしれない。
ずんだあんを乗せてアレンジ
調味料として、たまたま手元にあった「ずんだペースト」を使ってみた。
枝豆をすりつぶした「ずんだ」という餡は東北地方の名物料理。仙台のお土産としてはメジャーだが、冷蔵・冷凍保存が必要なため遠距離運ぶのは案外めんどうくさい。
ほかの地域ではレアなずんだも通販で購入することができる。原材料は枝豆なので、普通のあんこより栄養価が高そうに見える。
見た目が鮮やかなのは着色料のおかげ
しかし鮮やかな黄緑色は、たいてい着色料によって表現されている。
わりと本物っぽい岩村製餡工場の製品も、しっかり黄4と青1の添加物が含まれていた。どちらもタール系の合成着色料でアレルギーの懸念や発がん性を有する。ヨーロッパではすでに使用が禁止されている成分だ。
保存料のおかげか、やけに賞味期限も長い。
そのあたりは気にせず食パンに盛ってみると、かなり豪華なずんだパンに変わった。ランチパックでも見たことのない組み合わせだ。
パンの甘みがずんだの糖分で倍増し、ほぼデザートいえる料理に変わった。元はドンキなのに、まるで高級店のパンケーキ。
ホクホクのトーストと冷やした枝豆あんこの温度差が絶妙で、まるで食パンにソフトクリームを乗せているかのようだ。
ランチパックもどきに挑戦
次につくってみたのはピーナッツクリームを塗ったヤマザキのランチパックもどき。
クリームは140グラムの紙パックがで100円で買えた。この量なら10枚分くらいは余裕で間に合いそうだ。
食感をランチパックに近づけるため、わざわざパンの耳を落としてみた。普通の包丁ではボソボソしてうまく切れない。形はいびつだが、とりあえず材料はできた。
ピーナッツクリームをたっぷり塗って2枚をサンド。見た目は素っ気ないが、この味はまさにランチパックのピーナッツ味そのものだ。
8枚切でもオリジナルのパン生地より少し分厚いくらい。そして面積も大きいランチパックの巨大版。
強いて違いを挙げれば、本物のクリームの方が薄味で充填量が多かった気がする。またよく買うのは「深煎りピーナッツ」の方だったので、ペーストだけでツブツブが含まれていないのはさみしい。
ためしにトーストにも塗ってみたが、ずんだあんほどの甘みやインパクトがなくいまいちだった。ピーナッツクリームを塗るなら、焼かずにサンドする方が味を引き立てられる。
卵入りのカスタードクリーム
ピーナッツの次は、ソントンから出ているカスタードクリームも試してみた。
「卵のコク」とあるとおり、ランチパックの「たまご味」に近くなるかと思ったが期待外れだった。
卵黄色の見た目に反して、中身はピーナッツクリームより甘い砂糖と油脂のかたまり。バニラビーズの香りも強すぎて、フルーツ系のジャムよりデザート感が増してしまう。
おやつにはよいが朝食には向かない。ドンキのパン自体が甘いので、本来はトッピングなしか、塗るのはせいぜいバター程度で済ませた方が楽しめそうな気がする。
材料費は本物の半額以下
ランチパックのピーナッツ味は2個入りで1袋130円くらいする。
ドンキの薫麦8枚切なら59円で、その2倍以上の量がつくれる。クリームは1個あたり10円で計算すると、ランチパック1袋2個分に相当する金額は約50円。
調理の手間を抜きにすると、ランチパックの半額以下で同じ量のサンドがつくれる。おまけにパンの耳まで別で味わえるという特典つきだ。
ランチパックが好きで毎日のように食べるなら、毎朝食パンとクリームで自作して持ち運べばリーズナブルだ。さすがに素の食パンだけでは味気なかったので、次回はこれをお弁当にしてみようと思う。
ドンキのスーパーは安すぎる
ドンキの格安パンもアレンジ次第では絶品メニューに化ける。ほかの100~200円くらいの食パンとは、まったく品質は違わないように見える。
「パンは米より高い」と思っていたが、59~68円の薫麦なら朝食のローテーションに加えてもよいかと思った。
ドンキ系のスーパーは他にも信じられない低価格の商品が多くて、地味に食費を節約できる。
チープな雑貨に興味はない人でも、情熱価格の食品は試してみる価値がある。