2017年分の確定申告。今年もマイナンバーカードを使ってe-Taxで済ませた。家から税務署が遠いので、書類を出しに行くのも郵送する手間もなくて便利だ。会社の税務申告にも使えるので、一人零細企業の経営者はe-Tax導入した方が便利だ。
青色控除の残りは流用できない
昨年、税務署からのご達しがあり、個人事業は廃業することにした。会社と個人事業を並行して2事業育てていくつもりだったが、いまいち売上が伸びないので一本化した方が手続きも楽だと思った。
すでに廃業届は出しているので、個人としては今回が最後の青色申告。昨年試した無料のMFクラウドを使って、仕訳を数件入力。決算書を出力して国税庁の青色申告コーナーでフォームに転記。
売上は青色控除の65万で余裕で相殺できる金額だったので、経費は入れなかった。本当は控除しきれなかった余りを給与所得に充てたいところなのだが、世の中そんなうまい話はない。
もしそれができるなら、ダミー事業をいくつも作って青色控除を受けまくれる。しかし個人事業は複数できても、青色控除が効くのはその合算額に対して1度きりなようだ。誰でも思いつく安易な脱税手段はとっくにふさがれている。
住民税は普通徴収で
事業所得は計算できたので、次は給与所得。まだ自分の会社で源泉徴収票を作っていなかったので、ここで作成。源泉徴収票用の無料で配られているエクセルはいくつかあるが、毎年このサイトのものを利用させていただいている。徴収票のフォーマットは昨年大きく変わったが、そのあたりも毎年反映してくれるのがありがたい。
住民税については微細な額を会社で徴収するのも面倒なので、いつも通り「普通徴収」をチェック。本当は特別徴収が義務で、自治体も一本化に向けて推進しているようだが、いつまでグレーな普通徴収がいけるのだろうか。会社側からすれば面倒くさすぎるので、お役所と会計ソフトメーカーが結託した陰謀にしか思えない。
給与所得控除の時点で所得ゼロ
去年は途中から月給5万から6万に昇給させたので、給与は額面63万。給与所得控除を計算すると、「650,000円に満たない場合は650,000円」というルールにより、まるまる控除されて所得0。先に計算した事業所得も青色控除で0。
もはや引けるものがないので、第一表左下の「所得から差し引かれる金額」は丸々どぶに捨てることになる。貧乏人には、寄付金控除のふるさと納税を楽しむ余地すらない。
所得なしでもiDeCoは満額
わずかな社会保険料控除と基礎控除を使わないのはもったいない気もするが、所得税より融通の利かない保険料を最小化しようと決めたので、これは仕方ない。もう少し給与を増やしても無税を維持できるが、保険料は等級が上がって問答無用に増えてしまう。
DCの掛金も所得控除の恩恵は受けられないのだが、無税で長期積立運用できるメリットを考えると、満額2.3万収めて損はなさそうだ。将来退職金として受け取る際の税額も試算したが、インデックス投信に積立を続けて年率3%くらい複利で増えていくと仮定すれば、利益の方が上回るという皮算用になった。
所得控除を株の利益に充当?
続いて証券会社から届いた特定口座の年間取引報告書を転記。空前のトランプ景気で、さすがに去年はアホでも儲かった。源泉徴収はしない設定にしてあるので、確定申告でがっつり20%も引かれるのが憂鬱だったが、なぜか国税庁のフォームで納付額が出ない。いや、むしろ還付金が発生している…。
どこで入力を間違ったかと何度も調べたが、いっこうに原因がわからない。ググってみると、なんと給与から控除しきれなかった分が、株の利益に充当されていたようだ。これはうれしいサプライズ!微妙に源泉徴収されていた講演の謝礼が逆に戻ってくることになった。
青色申告控除のイメージで、ほかの事業に流用は効かないと思っていたが、所得控除は分離課税の株や配当に回せるようだ。とすると、社会保険1等級の最低枠でも自己負担分が年間13万くらいあるから、
- 社会保険料控除 13万
- 小規模企業共済等掛金控除 27.6万(iDeCo満額)
- 基礎控除 38万
合計 78.6万
このくらいは毎年株取引の利益と相殺できる計算になる。もはや一人NISA状態。さらに生命保険とか扶養控除とか加えていけば、控除額は青天井だ。
もし株で稼げる自信があるなら、小規模企業共済も満額7万突っ込んで、さらに84万控除枠を増やすこともできる。配当だけに充てるなら、仮に2,000万円を3%で運用したとしても利益60万はまるまる懐に収められる。さえない銘柄は年末に損失確定したが、控除枠の流用を考えるとその必要もなかった。
余った控除の使い道
よく「株取引でサラリーマンは20万、学生主婦で38万以下の利益なら実質非課税」といわれるが、今回はその発展版・レアケースといえる。
普通に雇用契約して月給5~6万とは、労働基準法の最低賃金法に違反するだろう。会社役員として報酬を出す場合でも、いろんな控除を考慮すれば年棒200万くらいは合理的に支給できる。
余った控除枠があれば、普通はその分給与を増やしたくなるのが人情というものだ。毎年株で確実に稼げるという保証もない。もし逆に損失が出れば、せっかく貯めた控除枠をみすみす逃すことになる。株の損失のように、余った控除額を次年度に繰越できるなんて話も聞いたことがない。
今の体制で黙っていても毎年78.6万、株・配当から利益相殺できる余地があるとすれば、インデックスファンドに資産を寝かせておくより、早めに現金化した方がお得でないだろうか。いわゆる「課税の繰り延べ効果」より、毎年の控除枠の方が勝る可能性がある。
その場合は毎年確実に税金控除できる分だけ解約して、そのまま投信に再投資するのが正しい戦略だろうか。解約時の手数料と手間を考えると億劫だが、それは現状維持バイアスに過ぎないのかもしれない。
所得税の最適化は複雑
- リタイア後のまとまった資産運用
- 一人会社経営で所得ゼロ
- DC・共済等活用して控除はMAX
以上の条件で、最適な給与支給額と資産運用のポートフォリオはどんなものだろうか。
あまりに特殊な状況でネットに情報が見当たらないが、これからリタイア後に会社を興す元気なシニアも増えてくるだろう。「所得税と社会保険料の最適バランス」のように複雑な計算になりそうだ。
そもそも所得がなくて一人暮らしなら、社会保険料より国民健康保険料の方が安くなる。会社を維持するのに赤字でも毎年7万円かかる。しかし出張手当で経費をがんがん積めるメリットは大きいので、個人事業は法人化しておきたい。ただしそれも安定して売上が立てばの話…
不確定要素が多いので、自分なりに試行錯誤しながら最適解を探っていくしかなさそうだ。退職時にあれほど資産運用を勉強して一件落着と思ったが、税の世界は奥が深い。