キーボードはテンキーレスの英語配列がベスト~右Alt漢字変換の利点

長年試行錯誤してきたキーボードの配列。毎日何時間も仕事で使う道具なので、1%でも作業効率が上がるならどんな改良にでも投資したい。

今のところ自分にとって最適な製品は、FILCOのMajestouch NINJAの赤軸USアスキー配列87キー。まだまだ改善の余地はあるが、一般に流通している市販品の中ではこれがベストだ。

とりあえず2年間使い続けて不満は思いつかない。一度だけ安い日本語配列のキーボードに戻してみたが、やはりFILCOに戻って来た。なぜこの配列がしっくりくるのか、ハード設計と言語配列の面から考察してみたい。

省スペース型は疲れる

いろいろな配列のキーボードを試してみて、自分にとっては十字キーやHome、Endキーを残した中間サイズのテンキーレスタイプが使いやすいとわかった。

フルサイズは机の上で場所を取り過ぎる上、キーボードとマウスを行き来する右手の距離が長くて疲れる。キー入力時に、モニターに対して体が左に寄ってねじれるのも気になる。

一方、FILCOのMINILAやPFUのHappy Hackingのような省スペースタイプは、ファンクションや矢印キーが単独でないのが使いにくい。

ブラウザのリロードにF5、カタカナ変換にF7、WordやExcelの「名前を付けて保存」にF12キーは意外とよく使う。ウェブサイトをのんびりブラウジングするときに、十字キーやPage Up/Downはたまに使う。文書作成やコーディングでHome/End、さらにCtrlと組み合わせて文頭/文末に移動するショートカットも多用する。

MINILAの親指Fnキーを使いこなせば高速化できるかと思ったが、1か月ほど使っても定着しなかった。デスクトップPC以外に、外出時はノートPCや他のマシンも使うので、特殊なキーボードに慣れても生かせない場面が多い。

また左手小指・人差し指でCtrlやShiftを同時押しするならまだしも、Fnキーと他のキーを指2本で押さえるのは意外と疲れる。同時押しの指ポジションをつくるのに、ワンテンポ遅れるストレスがある。

数字入力は慣れれば上段の数字キーでも間に合うので、テンキーは不要と思う。決算時のレシート打ち込みなどでがっつり数字入力する際は、別途USBか無線で外付けのテンキーを使う方が合理的だ。

テンキーレスがちょうどいい理由

結局、十字キーとDel/Home/End/Pg Up/Pg Dnの5キーが独立した島になった、FILCOのテンキーレス配列が一番しっくりくる。十字キーが他の島にめり込んでいたり、余計な工夫がない整然としたレイアウトで使いやすい。東プレのテンキーレスも同じ配列なので、ある程度汎用性もある。

ながらで作業しているときや集中力が落ちたときに、いちいちマウスを握らなくても右手の指1本だけで画面をスクロールできるのが便利だ。使い手のコンディションがいまいちなときでも、必要なキーに迷わず到達できるフェイルセーフなデザインを追求するとテンキーレスに辿り着いた。

練度の足りないユーザーには、多少不格好でも「わかりやすい、壊れない」という性能が重要である。太平洋戦争で使用された米軍機で、逆ガル翼が優美なF4Uコルセアより、ずんぐりむっくりした無骨なF6Fヘルキャットが活躍した理由もそうだった。

アサルトライフルでも、メンテの厳しいM16を使いこなせるのはゴルゴのようなスペシャリストだけだ。凡庸な訓練兵は黙ってAKの汎用品を選んだ方が無難といえる。

テンキーレスよりスリムな省スペース型は見た目が美しいが、道具としてはいまいちだ。外出先にもマイキーボードも持ち歩く文化ならいいが、結局キーボードは借り物も含めて複数使い分けるのが現実。日本語/英語配列が混ざるだけでも混乱するのに、キー配列までごっちゃになるとますますストレスがたまる。

東プレはちょっとダサい

FILCOのメカニカルはまあまあだが、東プレの静電容量無接点スイッチも一度は使ってみたい。店頭で試したが、しっとりした軽い押し心地で好感が持てた。メカニカルよりむしろ安いメンブレンスイッチに近い感覚。ハッピーハッキングも同じ方式だが、こちらはコンパクトすぎて好みのキー配列がない。値段も東プレ並みに張る。

テンキーレスはFILCOと似ているが、マジェスタッチと比べて上部にある謎の出っ張りが気になる。寸法を比較しても2~3cmは奥行きがある。左上のREALFORCEロゴもカッコいいとはいえず目障りだ。フォントも微妙だが、Aだけ赤になっていたりして余計にダサい。せっかく高級品なのだから、もっとデザインにこだわったらいいと思う。

その点FILCOはEsc~ファンクションキー列の上でスパッと切れていてフットプリントが小さい。奥行き・縦方向も短く、机の上ではなるべく面積を取らない方が望ましい。

ロゴも前面右側に黒色の金属素材でさりげなく入っているだけだ。フォントもREALFOECEの特にこだわりなさそうなセリフ体よりは、断然カッコいい。

変則配列のLEOPOLD

デザイン的には東プレがOEMで作っている韓国LEOPOLDの方が優れているように思う。配色もノスタルジックな白~グレーと黒~グレーが今っぽい。

変則的なキー配列の2製品が出ているが、FC660Cの方はコンパクトすぎて自分には合わなそうだ。右上の独立2キーがユニークだが、その1つが絶対使わないInsertなのは残念。

テンキーありのFC980CはDelete~Pg Dnまでがテンキーの上に配置されているのがユニークだが、Home/EndがFnと合わせ押しになるのがいまいちだ。DIPスイッチはあるが、この仕様は変えられないのが惜しい。

変則配列のキーボードは海外製のゲーム用など変わった製品を試してきたが、いまいち定着しなかった。

  1. キーボードは同時に何台も使いまわす
  2. どのみち数年おきに気が変わって買い替える

という点を考えると、東プレやLEOPOLDに2万円近くかけるのはナンセンスに思われる。もしFILCOが1万円以下で静電容量無接点式のタイプを出してくれたら、ぜひ検討してみたい。

USアスキー配列の利点と欠点

日本語配列から英語配列に切り替えて5年ほど経ち、すっかり慣れてしまった。最初は安いキーボードで英語配列を試してみたが、欠点も含めて総合的に使いやすいと判断したので、思い切ってノートPCもUS配列に統一した。

英語配列キーボードのメリットとデメリットを比べてみよう。

メリット

  • 右AltにIME切替を設定すると半角/全角キーより便利
  • Enterキーがホームポジションに近く、右手小指で押しやすい
  • キートップに無駄な日本語印字がなく、見た目がすっきりする
  • 海外製のキーボードがそのまま使える

デメリット

  • +と*キーがホームポジションから遠くて押しにくい

プログラミングには不向き

先にデメリットから考察すると、日本語配列だとホームポジションの右手小指にある+とその右隣の*が最上段でShiftキー併用になる。自分の能力ではこれらのキーがブラインドタッチできず、毎回目で見て確認することになる。特にプログラミングするとき多用するキーなので、ストレスがたまる。

AdobeのPhotoshopでは、画面拡大のショートカットがなぜかCtrl+;になってしまう。日本語配列だと+と;が同じキーだからだろうか。Illustratorでは印字通りCtrlに+キーのままでいける。

それ以外にUS配列の欠点は特に思いつかない。次に利点について順に紹介しよう。

右Altで半角/全角切り替える技

US配列の最大のメリットは、日本語と英語入力を切り替える半角/全角キーを、左手小指から右手親指の位置に移せることだ。どちらもホームポジションのまま押せるが、小指を伸ばすより親指の方が負担が少ない。

Macの「英数」「かな」キーは一見便利そうだが、どちらを押すべきか迷うことがあるのでいまいちだ。やはり右Altで「半角/全角」のように、トグル式に日本語入力のON/OFFを切り替える方が単純でわかりやすい。

設定方法としては、スタート>ファイル名を指定して実行>regeditでレジストリエディターを起動し、HKEY_LOCAL_MACHINEのSYSTEMCurrentControlSetServicesi8042prtParametersから以下の値をいじれば、OS再起動後に有効になる。

  • LayerDriver JPN: kbdax2.dll
  • OverrideKeyboardIdentifier: AX_105KEY
  • OverrideKeyboardSubtype: 1
  • OverrideKeyboardType: 7

これまでデスクトップ・ノートも含めWindows7~8.1のOSで何台か試したが、この方法でうまくいかないことはなかった。

Enterキーが近くて助かる

2番目の利点として、Enterキーが横長になり1キー分左に出てくるので、右手小指で押しやすい。個人的な理由だが、昔のケガで右手の小指が短いので(自分で詰めた訳ではない)、 Enterに指が届きやすいのはありがたい。

JIS配列の方がEnterキーが大きくて押しやすいという人も多いだろう。しかしUS配列で横長になったからといって、その上のキーを間違って押すことは少ない。

基本的に右手小指を2キー分右にずらした位置でEnterを押すので、それよりさらに遠いキーまで指が届いてしまう懸念はない。小指を動かす距離が短い分、Enterを押す動作を省力化できる。

ひらがな印字がない

US配列に興味を持った最初の動機は、単純にキーにひらがな印字がなくてすっきりしていることだ。デザインにうるさそうなMacユーザーが、ひらがな印字されたJIS配列に甘んじているのはどうにも解せない。

昔、家に富士通のワープロOASYSがあったため、最初に覚えたのはローマ字でなく「かな入力」だった。ワープロに付属のミニゲームでタイピング練習していたので、子供ながらにほとんどブラインドタッチできた記憶がある。当時は「くまのりれけむ…」と唱えて暗記していたものだ。

しかし大学に入って習うのはローマ字のタイピング。今でも「かな入力」している日本人が10%もいるというのは驚きだ。おそらくワープロ時代に腕を鳴らしたビジネスマンだろう。実家に帰ると共用PCが常に「かな入力」モードになっているので、毎回切り替えるのが面倒くさい。

かななしJIS配列もあるが…

残り90%の人にとってはまったく不要なキーボードのひらがな印字。もはや視覚的にはノイズでしかない。FILCOには「日本語配列・かななし」というアイデア商品があり、しばらく愛用していた。

慣れたJIS配列のまま、不要なひらなが印刷だけ省略した優れものだ。東プレやPFUにも同じ構成の製品がある。しかしノートPCの分野でFILCO式に「かななし」の日本語配列というのは見たことがない。結局見た目を優先して、US配列に体を慣れさせたというのが正直なところだ。

FILCOのNINJAタイプなら、キーの前面にアルファベットと記号が印刷されているのでさらにシンプルだ。一見、印刷が見づらく押しにくそうだが、実用上はたいして違わない。むしろプリントが指で隠れないので、前面印刷の方が合理的かもしれない。

このグレードの製品なら、使っているうちにキートップの印刷が消えてくる心配は少ない。完全に印刷を省いたステルスタイプのキーボードもあるが、さすがに使いこなせる自信がない。見た目と実用性のバランスを取ったFILCOのNINJAがちょうどいいと思う。

海外製品も試せる

海外製のキーボードは基本的にUS配列である。昔は秋葉原のクレバリーキーボード専門店くらいでしか見る機会がなかったが、最近はアマゾンでも並行輸入の海外キーボードが売られている。

特にゲーム用のキーボードでは、海外製品の方が種類豊富である。KingstonやSteelSeriesなど、東プレやPFUより押し心地滑らかな逸品が存在するかもしれない。タイプライター風(もちろんうるさい青軸)のメカニカルキーボードもおもしろい。

これらの輸入品も選択肢に含められるという意味で、US配列のメリットは大きい。世界中の、得体が知れないヘンテコデザインのキーボードを開拓できる。

また海外旅行中に空港やゲストハウスの共用PCを使うときなど、US配列に慣れていると迷うことが少ない。日本語配列のように各国言語の独自キーは存在するが、基本的にはUS配列がベースになっているように思う。

中国語でもスペイン語でも「@マーク=数字の2」という配置は変わらない。海外製のPCで作業することになった際、日ごろから英語配列のキーボードに慣れているとストレスが少ない。

JIS配列には戻れない

久々にプログラムを書くと、やはり+と*が遠いのは不便に感じた。試しにエレコムの安い日本語配列のキーボードに戻してみたところ、上記の2キーはJISの方が押しやすい。@キーも右手の近くにあり、Shiftなしで打てるので便利だ。

やや浅めのメンブレン構造で打鍵感はメカニカルに劣る。しかし千円ちょっとで買える堅実な有線キーボードとしてTK-FCM084BKは秀逸だ。

実はJIS配列でも右Altキーによる漢字変換は実現できる。スペースキー両脇の「無変換」「変換」キーをそれぞれIMEオフ/オンに割り当てると、Mac的な「英数」「かな」の使い方ができる。

しかしEnterキーが遠いので右手小指で[]キーを間違って押してしまう。また、見た目もやはりひらがな印刷があるとダサくて作業のモチベーションが下がる。どちらも一長一短あるが、結局英語配列のFILCOに戻してしまった。