拝島ライナー、300円追加で乗れる有料西武線は快適だがもう一声

2018年3月10日から運航開始された拝島ライナー。西武新宿から拝島駅の間を大幅ショートカットする、座席指定の有料列車である。

青梅線沿線から都心に出る手段としては気になる列車だが、なかなか時間が合わなくて乗る機会がなかった。たまたま夜に新宿から帰る際、5分後に出る拝島ライナーに空席があったので試してみた。

青梅ライナーの方が速い

都心で乗車できる駅は西武新宿と高田馬場の2駅のみ。そこから小平駅まで一気にスキップするのが拝島ライナーの特徴である。しかし終点拝島まで乗ることを考えると、小平以降の全駅に各駅停車するので、その区間は普通の急行と変わりない。22:15新宿発の9号は拝島23:01着で実質46分かかる計算になる。

一方、拝島駅と新宿駅をつなぐJR青梅線~中央線にも、青梅ライナーという有料列車がある。こちらは途中で立川にしか止まらないという徹底具合なので、新宿~拝島間も最短38分で済む。追加購入するライナー券は、どこから乗っても一律510円、グリーン車で720円となっている。

さらにJRには青梅特快という追加料金なしで乗れる最速列車があり、この場合は拝島~新宿間が42分で済む。JRなら新宿以降の東京まで一気に行けるので、タイミングが合えば青梅特快のコスパが高いと感じる。

拝島~小平間在住なら利用価値あり

拝島からわざわざ西武新宿線を選ぶのは、新宿で降りる用事があり、かつJRより30円浮かせてもやしでも買いたいくらいの理由だろう。あとは拝島始発なので、上りの場合は青梅方面から来るJRよりも座りやすいというメリットがある。

拝島ライナーは、あくまで通勤時間帯に座ってゆっくりしたい。そして時間はかかっても青梅ライナ―より安い追加料金で確実に座りたいというニッチな層を狙っている。JRも選べる拝島在住の人より、西武立川~小平の西武沿線居住者がターゲットだろう。それ以遠の青梅線在住者には、ほとんど魅力がないといえる。

西武新宿駅からの乗り方

夜に西武新宿駅から拝島ライナーに乗る方法としては、まず平日も土日も18時から22時台、各15分発の時間に合わせる必要がある。1時間に1本なので、たまたま駅にやってきて乗れるタイミングは少ない。

今日は雨で電車の利用者も多かったと思うが、22:15発の拝島ライナー9号は直前まで空席があった。改札を入って左に券売機があり、ここに「○空席あり」と出ていればチケットを買える。

とりあえず現金決済したが、ICカードを入れる口もあった。料金は一律300円なので迷うことはない。小平も拝島も300円というのは不公平に思われるが、小平以降は各駅停車なので、拝島まで追加料金を取るとクレームが出るだろう。

南側の1号車の最初の扉は空いているが、それ以降のドアが閉まっていて車両側面のボタンを押しても開かない。時間がぎりぎりだと焦るので、とりあえず近くの空いているドアから乗車した方が無難だ。

座席指定のはずだが、シートに番号が書いていなくてとまどってしまった。しばらくあたふたしていると、他の乗客さんに上の網棚の金蔵棒に番号が振ってあるのを教えてもらえた。

電源は窓際1個のみ

シートは2列+2列だが、座席の幅はバスより広く、新幹線並みにゆったりくつろげる。

吊皮はこんなに要らないのではと思うが、車両間が透明な自動ドアになっていて見晴らしがよかったり、普通の電車とは違うデザインが見受けられる。

拝島ライナーには電源コンセントがあるのも売りだが、実際には壁面下側に1個だけついていて、通路側座席だと使いにくい。差し込み口も1個しかないので、実質的には窓際専用だろう。新幹線のコンセントより不便であくまで緊急用という感じだ。

回転シートもあるが使われない

拝島ライナーも青梅ライナーも、早朝・夜間に睡眠確保のため乗りたいお客さんが大半だと思う。1時間もない短い時間、ノートPCにがっつり充電しながら仕事したい人というのも少なそうだ。6時台の青梅ライナーは、最後の立川駅で乗る人に起こされる以外、静まり返って寝台特急のようである。

2列シートは足元のレバーを踏んで回転できるが、わざわざ向かい合わせにして歓談しているグループもいなかった。小田急ロマンスカーのような観光ムードはまったくなく、あくまで仕事用のビジネス超特急という感じ。隣と話でもしていると、他のお客さんにうるさいと怒られそうなくらいだ。

拝島始発なら普通に座れる

拝島ライナーはわずか300円でグリーン車的なプチ贅沢を楽しめる、庶民向けサービスといえる。自分の場合は、300円もあればもやしが10袋買えるし、鹿児島の安い温泉にも日帰りできる。たまに使う分にはいいが、毎日狙って利用するほど付加価値がないと思われた。

都心に出る用事といえば、今は羽田か成田空港に向かうことが大半だ。新宿どまりな上、JR駅まで長い距離を歩かされる西武線を使う理由がない。思い切り暇なら30円浮かせるために乗ることもあるが、ラッシュ時をずらせばわざわざ300円追加しなくても、始発の拝島から急行でも余裕で座れる。

名前は拝島ライナーだが、実際はそれより都心に近く、小平以遠の微妙な沿線に住むお客さんが想定顧客。ピーク時に空席が出ているところを見ると、いつまでもつかわからない有料サービスともいえる。せめて同料金で小平~拝島間もノンストップにしてもらえれば、JRよりメリットをアピールできると思う。