駒場の日本近代文学館内ブックカフェBUNDANは都心の穴場

先日の日本近代文学館見学の際に気になったカフェ。知り合いを誘って平日の昼過ぎに行ってみた。

場所的に相当空いているだろうと思ったが、館内のカフェスペースは意外と満員。東京ピストルが手がけるおしゃれカフェなので、口コミで評判が広まって人気なのかもしれない。天気がよかったので、テラス席でケーキセットをいただいた。

作家の名前がついたコーヒー

小説に出てくるというわけではないが、なにかしら作家にちなんだメニューが用意されている。メインの珈琲は寺山、鴎外、芥川、敦の4種類。お値段は700円でかなり高級だ。ケーキとのセットなら400円引きになる。

コーヒーは酸味が少ない方が好みなので、マンデリンベースのジャワコーヒー鴎外を頼んでみた。ブラックで数口含んでからミルクで割ったが、さすが値段相応にまろやかでおいしい。

小説にちなんだデザートメニュー

ケーキメニューも文学作品にちなんでいる。梶井基次郎の檸檬パフェはまああり得るとして、他の作品のチョイスはマイナーでよくわからない。

自分が頼んだのは村上春樹『カンガルー日和』に由来する「三角地帯のチーズ・ケーキ」。貧乏にはこれでも食べておけ、という解説にひかれた。

読んだことのない短編小説集で、その後アマゾンの古本で買ってみたが、わりとおもしろかった。作中で出てくる「三角地帯」とは、「フォール・サイズのまるいチーズ・ケーキを十二等分」とあるので、出てきた実物よりもっと薄っぺらいと思う。

「駆け出しの貧乏時代に住んだ安アパートが、線路に挟まれたデルタ地帯だった」という粗筋なのだが、不思議と自分も子供の時から線路沿いに住む機会が多い。今も会社は朝5時から深夜1時まで、ひっきりなしに電車が往復する私鉄沿線だし、自宅は三路線に挟まれたトライアングルで、上空からは米軍と自衛隊の輸送機が轟音で離着陸するというおまけつきだ。今も昔も貧乏人は騒々しい界隈に吹きだまる定めらしい。

ケーキの味は悪くない。連れが頼んだスコーンセットと特製生チョコレートケーキもまあまあだ。5月末の屋外なので、アイスが溶けるのは早い。

渋谷に歩いて行ける距離だが、駒場から代々木上原にかけてのエリアは緑の多い住宅街。駅からちょっと離れているので、地元の人でないと足を運びにくいかもしれない。日本近代文学館の地味さも相まって、穴場感たっぷりのカフェBUNDANは文学好きにおすすめのスポットだ。