アーティゾン美術館・開館記念展レビュー、建築と展示の見どころ

2020年1月18日にオープンしたアーティゾン美術館にさっそく行ってみた。

元のブリヂストン美術館は訪ねたことがなかったので、昔と比べてどう変わったのかはわからない。ビル全体の建て替えだが旧館のモチーフも残しつつ「古くて新しい」ミュージアムにアップデートされているように感じた。

建築や設備、館内施設の見どころと、開館記念展「見えてくる光景 コレクションの現在地」の感想をまとめてみたい。

※新型肺炎の感染予防対策により、アーティゾン美術館は2020年3月2日~16日まで臨時休業の予定です。

アーティゾン美術館へのアクセス

アーティゾン美術館へは東京駅から歩いて行ける。八重洲口から2ブロック進んだ交差点にあるので、特に迷う心配はない。

時折ビルの前を通り過ぎるたび、ずいぶん長いこと工事をしているように感じた。2015年から5年もかけて、丸ごと建て替えしたようだ。

アーティゾン美術館の外観

こんな一等地に文化施設があるのはぜいたくな感じがする。しかし東京駅にはステーションギャラリーがあるし、丸の内側には三菱一号館美術館や出光美術館といった企業系のミュージアムもある。

丸ビルや新丸ビル、KITTEのような商業施設が散在する丸の内に比べて、八重洲の方は純然たるオフィス街というイメージを持っていた。仕事以外で行く用事があるとすれば、八重洲ブックセンターか高速バスを利用するときくらい。

名前だけ聞いていた旧ブリヂストン美術館が、こんな駅の近くにあるがとは知らなかった。

チケットは事前予約制

アーティゾン美術館のチケットは、めずらしく予約制になっている。

空きがあれば当日、現地の受付でもチケットを買える。しかし万が一、完売になることを考えると、ウェブサイトから予約しておく方が確実だ。

料金は開館記念展で一般1,100円。現地購入の場合は1,500円と、400円高くなってしまう。大学生も含めた学生はチケット無料という太っ腹なサービス。

専用のウェブサイトから時間帯を予約して、クレジットカードで購入する。

アーティゾン美術館のWebチケット

手続きが終わるとメールが届き、リンクをクリックするとQRコードが表示される。QRコードはスマホ画面で見せるのがスムーズだが、紙に印刷した状態でも通用する。

空きがあれば当日予約も可

予約というと事前のスケジュール調整が面倒そうだが、各時間帯の終了10分前までウェブから購入することができる。また予約日時の変更も1回限り可能。

開館直後、2月の平日だったが当日朝でも12:00~13:30の枠を予約できた。実質的に入場制限が行われているおかげで、東京の美術館・博物館にありがちな行列や混雑を避けることができた。

時間帯ごとの入替制ではないので、一度入れば閉館まで長く居ることもできる。落ち着いた環境でじっくり作品鑑賞できるため、他のミュージアムでも導入してほしい制度だと思った。

建築・家具・設備へのこだわり

アーティゾン美術館の公式サイトには、施設の紹介とは別に「建築・デザインについて」という特設ページが存在する。

空間設計のコンセプトから空調・照明機器、床や壁材にいたるまで、こだわりのポイントが説明されている。

美術館のサイトなのに、ここまで詳しく建築について語っているのはめずらしい。ウェブサイトで予習してから現地を訪れると、絵画や彫刻だけでなく建築を鑑賞する楽しみも増える。

建築は日建設計、家具やオブジェはトネリコ、デジタルサイネージの機器はチームラボというそうそうたる顔ぶれ。空間・備品も作品の一部、という自信のあらわれだろう。

内装は全体的に自然石や木材を使ったぬくもりのあるデザイン。旧館から引き継がれた伝統性を感じさせながら、ディティールに現代的なセンスを反映させている。

1階ロビーの床模様

ポーラ美術館やホキ美術館など、名建築を手がけてきた日建設計ならではの安定感を感じられた。

開館記念の建築展示コーナー

開館記念展では、6階展示室の奥に模型や家具見本を並べた部屋が設けられていた。

美術館の受付前に置かれていた、3次元ボロノイ図を模したパーティションも展示されている。

アーティゾン美術館のパーティション

よく見ると前後2列の立体層はつながっておらず、間が空白になっている。加工の難易度を減らしつつ、間隙の厚みによって疎密調整ができる工夫だと思う。

デザインマテリアルの見本展示

興味深いのはサンプルが展示された「デザインマテリアル」のコーナー。美術館の空間構成やディティールよりも、建材に関する説明が充実していた。

アーティゾン美術館の建築紹介コーナー

外壁は黒御影石をバーナー加工したものと、インド砂岩のサンドブラスト。床材はテラゾタイルに白い大理石のラインを入れているなど。

これなら建築の専門家以外でも楽しめるうえ、現物の見本もあってわかりやすい。これから館内の散策を楽しみながら、インテリアを見て謎解きするような要素もある。

フロアごとに床の色が違う

展示室の床材は、上層階に行くほど色が濃くなるパターンになっている。

内装の色を変えてフロアやエリアごとの違いを出すテクニックは、認知症患者の対策で取り入れられることが多い。一見ベタな演出だが、オフィスビル・基準階型の美術館なので、展示室ごとに変化を出すためのアイデアだ。

床材見本のグラデーション

あまり極端だとグループホームや介護施設のように見えてしまうが、そこは美術館らしく色数を抑えたベージュ~茶色系のグラデーションで仕上げられている。

特殊製法の真鍮パネルが渋い

マテリアルの中で最も興味深いのは、特殊加工された真鍮製の金属パネルだ。

3ミリ厚の無垢板をサンダーで研磨して光沢を抑え、かつ傷が目立たないように処理している。さらに合金のうち亜鉛より銅の割合を増やすことによって、赤みが少なく黄色みが強いオリジナルな素材をつくっている。

展示室以外の共用部壁面、エレベーターや手すりにこの真鍮パネルが使われている。普通の真鍮・黄銅では金色に近すぎてゴージャスになりすぎそうなところ、淡い黄色のパネルで穏やかな印象に抑えられている。

真鍮製の手すり

ホワイトキューブが基本の美術館・ギャラリーとしては、なかなか野心的なデザイン。新収蔵の金箔貼り『洛中洛外図屏風』と関連性を持たせた演出だろうか。

彩度を抑えた黄銅色はまるで年月を経たいぶし銀(金)。エレベーターホールはさながらラグジュアリーなホテルのようだ。

真鍮パネルのエレベーターホール

何となく新宿のビームス地下にある、日光金谷ホテルクラフトグリルのインテリアを思い出した。真鍮素材がビールサーバーやウイスキーの蒸留所をイメージさせるせいだろう。

金属パネルとLEDサイン

石材・木材・金属のテクスチャーを生かした内装が、どことなく和風レトロな感じにも見える。

極細LEDを用いたサインシステム

もうひとつの見どころは、細いLEDが埋め込まれた自己発光するサイン。

一歩間違うと商業施設やパチンコ屋のようになってしまいそうな仕掛けだが、派手になりすぎないよう工夫されている。

フォントやピクトグラムが限界まで細められていて、ありふれた既製品に見えない。文字は黒い素材でふちどりされているため、線が細くても遠くからよく見える。

LEDを用いたサインシステム

あえて壁に埋め込まず、立体的なカルプ文字にしているのも視認性を確保するためだろうか。キッチュなデザインになりそうなギリギリのラインで踏みとどまっている。

美術館建築としては斬新なサインだが、現代美術ではネオン管を使った作品もありふれている。アーティゾン美術館の収蔵品とは雰囲気が異なるとはいえ、建築設備に「光り物」があっても不思議はない。

ひと部屋だけカーペット敷きの理由

床の素材に注意しながら展示室を巡っていると、4階にある最後の部屋だけカーペット敷きであることに気づく。6階の建築解説コーナーでも、カーペットのこだわりについては触れられていなかった。

特に展示品がほかと違うわけでもなく、ここだけ絨毯を敷いた理由がわからなかった。後ほど会場で配られていた小冊子を読むと、その答えがわかった。

最後の展示室は旧ブリヂストン美術館の空間を再現したコンセプトであるらしい。低い天井とカーペット敷きで、当時の趣を再現している。

古くからのリピーターであれば仕掛けに気づくという、にくい演出だ。ここで展示が終わり、最後のINFO ROOM(資料室)に続くという空間的・心理的なアクセントにもなっている。

館内の空間構成やディティールの見どころをイラスト入りで表現したこの小冊子。

アーティゾン美術館の見どころ紹介小冊子

一般向けの建築ガイドとしては、非常にわかりやすくおもしろいプレゼントだった。

街路側の共用部吹抜け

最後に立体的な空間の特徴に触れると、箱型オフィスビルの一部という制約の中で、可能な限り上下の「抜け感」をつくろうとしているように見えた。

外構は交差点と南のビルに面した側を切り欠き、天井の高いピロティーを設けている。その代り1階エントランスは平面に余裕がなく、風除室を抜けるとすぐ美術館の受付になってしまう。

設計時には行列整理用のパーティションポールが想定されていなかったのだろうか。玄関前に警備員が控えているのは、まるで銀行のようだ。

アーティゾン美術館のエントランスホール

カフェ側に出るとソファーの置かれた小さいロビーがある。こちらは休憩や待ち合わせに使える、館内の貴重なパブリックスペースだ。

クラシカルな石張りの円柱

L字の吹抜けは1~2階でいったん区切られ、3~6階は美術館専用の有料ゾーンに変わる。

上層階も街路に面して背の高い吹抜けが設けられ、石材貼りの円柱が垂直方向の連続性を強調している。フロアを隔てた1~2階ともつながっているが、下階はロビーの外に出ているので柱の存在に気づかなかった。

吹抜けにある円柱

今は南側のビルが工事で仮囲いされているため、ますます柱が見えにくい。本来は新アーティゾン美術館の外観を象徴するモチーフになるはず。

3階から室内に現れる石柱は、オブジェのような存在感があり展示品の一部に見える。

円柱と勝利の女神像

外側に化粧材の御影石を貼って陰影を出しているのは、西洋古典建築のオーダーをイメージしたものだろうか。3階にある「勝利の女神」像の背景としては、よく似合っている。

2層構造の特別室

上から順に展示室を歩いていると、5階の奥に四角い吹き抜けがあることに驚く。敷地は狭いが多層型のミュージアムだからこそ実現できた立体構成だ。

上側はガラス張りなので、体を乗り出してのぞき込むことはできない。しかし続く4階にどんな展示物があるのかチラ見せして、期待を盛り上げる効果がある。

展示室内の吹抜け

吹抜けの出入り口は2方向に絞られているため、ここだけ回廊に守られた特別な空間という雰囲気がある。館内全体の順路からも独立している。

4階の吹抜け下は他と同じ絵画の展示だったが、将来的に天井の高さを生かして立体物を置くことも可能だろう。

吹抜け下の特別展示室

展示のシークエンスからすると、吹き抜けの敷地奥側にある壁が間違いなく最上級の展示場所になる。企画展の目玉は今後ここに設置されそうな予感がする。

INFO ROOMで資料閲覧

展示の最後にあるインフォルームでは、旧ブリヂストン美術館時代のカタログなどを閲覧できる。展示品検索のiPadもあり。

この部屋の見どころは、カンディンスキーとフランツ・マルクが創刊した『青騎士』冊子の全ページを閲覧できるコーナー。

青騎士のタブレット展示

さすがに本物は貴重すぎて触れることができないが、隣に置かれたタブレットで縮小版のページをめくることができる。

インフォルームも5階の途中から見下ろせる吹抜け構造になっている。

吹抜けから見下ろしたインフォルーム

壁のスリットがグラデーション模様になっているのがユニークだ。例のイラスト小冊子によると、これは本を開いたページの重なりを表現しているらしい。

デジタルサイネージの操作法

4階と5階の吹抜けに面して、チームラボ作のデジタルサイネージが2台設置されている。

チームラボのデジタルサイネージ

当美術館の膨大な所属品を検索できるデジタルアーカイブになっていて、作品のサムネール画像に触れると拡大表示される。

検索方法はランダムに表示される画像に触れるか、メニュー画面からカテゴリーか技法の2つで絞り込んでいく方式。階層は深くないので、直感的に操作できると思う。

タッチパネルの操作方法

拡大表示された作品画像はそこそこ解像度が高い。しかしせっかく美術館に来ているのだから、モニター画面より実物を見るのに時間を割いた方がベターだ。

無数に漂う縮小画像を眺めながら、「こんな作品もあるのか」と発見したり出会いがあったりする。タッチパネルは4枚あって独立操作できるので、来館者が多くても順番待ちになりにくい。

収蔵品約200点を公開

アーティゾン美術館の収蔵品は、古代美術から印象派、近代、現代美術まで幅広い。

およそ2,800点にものぼるコレクションのうち、開館記念展では厳選された約200点が出展されている。そのうち30点程度は新収蔵のものらしいので、旧館からのリピーターにも配慮されている。

展示室は3フロアあり、壁に掛けられている絵の密度も高い。じっくり観賞すると1時間は余裕でかかる。

ラトゥールの静物画など

たとえば冒頭にあるアンリ・ファンタン=ラトゥールの静物画も新規のもの。

ARTIZON開館記念展

どこかで見たことがあると思ったら、ニュー・オーダー『権力の美学』のジャケットに使われている絵と同じ画家だった。5曲目の“Your Silent Face”あたりが名曲で、今でもたまに聴くアルバム。

原題は”Power, Corruption & Lies”なので、おそらく歴史家ジョン・アクトンの「権力は腐敗する(Power tends to corrupt)」を引用している。

ピーター・サヴィルがタイトルのネガティブなニュアンスを薔薇の細密画と組み合わせたのは皮肉な感じだ。邦題は「美学」とまとめられてしまったので、また別の意味が加わってしまった。

ボッチョーニの彫刻作品

個人的にもっとも期待したのは、同じく新収蔵のウンベルト・ボッチョーニ『空間における連続性の唯一の形態』。

未来派の彫刻家が残した代表作で、イタリアのユーロ硬貨にも刻まれている。

高校生の頃はこの作品が大好きで、美術書の写真を模写したりしていた。当時のスケッチブックを捨てる前にスキャンした画像が残っていた。

ウンベルト・ボッチョーニ『空間における連続性の唯一の形態』

その後ロンドンのテート・モダンを訪れた際、はじめて本物に遭遇して感激した。20年くらい前に実物を見ながら描いたスケッチがこちら。

ウンベルト・ボッチョーニ『空間における連続性の唯一の形態』

ボッチョーニの「形態」を生で見るのは20年振りだが、趣味が変わったのか昔ほどの感激はなかった。10代の頃はロボットやジョジョのスタンドっぽい、デフォルメされた造形に魅かれたのだろう。

後ろからも見ごたえある立像

今あらためてボッチョーニの彫刻を見ると、写真で紹介されない裏側が気になる。

特にお尻のあたりの滑らかな3次元曲面がリアルで、思わず手で触れたくなる。照明の当て方で後ろがやや暗がりになっていたのは残念だ。

ウンベルト・ボッチョーニの彫刻の後ろ側

表に見えている大殿筋のほか、深部にある中殿筋や小殿筋の活動もありありと感じられる。たまたま膝のリハビリでジムに通っていて、足回りの筋肉が気になっているせいかもしれない。

抽象的な作品に見えて、要所要所の筋肉は非常に写実的に表現されている。そのあたりのバランス感覚が名作とされるゆえんな気もする。

未来派やファシズムという歴史的な文脈を抜きにしても評価できる作品だと思う。これは1910年代の美意識を反映した20世紀版「サモトラケのニケ」なのだ。

館内での模写は禁止

アーティゾン美術館では展示室内における作品の模写が禁じられている。

  • 作品の模写はできません。
  • 鉛筆以外の筆記用具の持ちこみはできません。メモをする場合には鉛筆をご使用ください。

ARTIZON MUSEUM「入館時のご案内」より

欧米とは違って、一般的に日本の美術館で作品を模写する行為は歓迎されない。鉛筆でメモ書きする程度でも、ときには著作権違反と怒られる場合もある。

作品を観た感想や気づいた点などは、展示室を出てから忘れないうちにメモすることになる。

そういう意味では写真撮影OKなミュージアムが増えていてうれしい。あとで見返すことは少ないが、記憶を思い出す助けになる。

作品撮影時のマナー

アーティゾン美術館で模写はNGだが、一部の作品を除いてカメラやスマホによる写真撮影は許可されている。見渡したかぎり撮影禁止の作品は見当たらなかった。

最近は美術館でもSNSでの拡散を狙ってか、撮影OKにしているところが多い。個人的な記録用としてはうれしいルールだが、マナーが悪いと他の人の迷惑になってしまう。

スマホカメラの無音化

スマホで撮影するなら、最低限シャッター音を無効化するアプリを入れておくべきだ。静かな会場でパシャパシャ撮影音を響かせるのはいただけない。

Androidなら「カメラICS」というアプリが便利。

無料版を使って気に入ったので、広告除外できる有料版も購入した。6年くらい使って3台はスマホを乗り換えたが、今のところどの端末でも正常動作している。

iPhoneも最近の機種であれば、無料アプリやマナーモードでシャッター音を消せるようだ。調べた限り今はJailbreakやNAND書き換えなど、怪しい作業をする必要もなさそう。

他の人の観賞を妨げない

もうひとつは他の鑑賞者の邪魔にならないタイミングで撮影すること。

作品の正面からごついデジカメでひたすら連射している、はた迷惑なおじさんもいる。そんなに何十枚も撮って意味があるのか不思議だが、まわりの人のことまで気が回っていないのだろう。

どうしても撮影したい作品があるなら、人が空いたタイミングでこっそり撮るべきだと思う。

カフェのメニュー紹介

1階にあるミュージアムカフェは美術館のチケットを買わなくても利用可能だ。

フードメニューはサンドイッチやリゾットのほか、生ハムとサーモンのガレットが用意されている。デザートはシフォンケーキなど5種類から選べて、1,200円~のドリンクセットのみ。

コーヒーは600円なので相場より高いが、ここはまわりにカフェチェーンが少ないエリア。天井が高く広々しているので、東京駅近くの打合せスペースとしても使える。

アーティゾン美術館のカフェ

日中はかなり空いていそうな気配なので、高速バスの待ち時間に暇をつぶすにもよさそうだ。もっとも格安バスを利用する旅なら、飲み物はコンビニや自販機で間に合わせた方が経済的といえる。

おすすめのお土産はボールペン

カフェの上にあるミュージアムショップでは、美術館関連のグッズが販売されている。こちらもチケット不要でエントランスから直行できる。

企画展がらみのカタログやポストカードのほか、アーティゾンオリジナルのバッグや文具も売られていた。

なかでもやけに力が入っているのが、このボールペン。クリップにARTRIZON MUSEUMとプリントされているが、それ以外はいたってシンプルな外観だ。

アーティゾン美術館のオリジナルボールペン

LAMYのnotoあたりを連想させるソリッドなボディーは、シリコン系のゴム素材でできている。よく見ると全体がランダムな多面体にカッティングされており、吸い付くような手触りでグリップ性は最高級。

お土産として文具好きにもウケそうな、完成度の高い一品に見えた。

株主優待、年間パス希望

企業の私設美術館としては創業者、石橋正二郎の胸像が飾られているくらいで宣伝色はまったくなかった。

施設名称から社名が外れてしまったので、ほかに館内からブリヂストンを連想させるものは何ひとつ存在しない。

ブリヂストンの製品といえば、車のタイヤか自転車くらいしか思いつかない。個人的にアンカーブランドのロードバイクを持っているので思い入れは深い。

2020年モデルはフレームからANCHORの文字が消えて、BRIDGESTONEロゴに回帰した。「アンカー」というとモバイルバッテリーのAnkerの方が有名になってしまったせいだろうか。

自転車関連で投資したお金のいくらかは、収蔵品を増やすのに役立ったかもしれない。高額商品のオーナーには、株主優待のように美術館の優待を受けられるサービスがあってもいいと思う。

これから膨大な収蔵品を順繰りに公開していくなら、年間パスを販売しても売れそうな気がする。上野にある国立美術館・博物館よりも「東京駅に近くてすぐ寄れる」という立地が魅力だ。