仙台南IC最寄りの鍾景閣で懐石ランチ、茂庭荘の日帰り温泉に寄れば、自然も文化財も温泉もコンパクトに満喫できる。せっかくなので、ついでに秋保温泉にも観光に寄ってみた。
宿に泊まらず無料で楽しめるエンターテイメントといえば、まずは磊々峡の遊歩道散歩。そして新名所の秋保ワイナリーで一服し、最後は主婦の店さいちでおはぎや惣菜をお土産に買って帰るのがおすすめプランだ。
磊々峡とハートの石
磊々峡(らいらいきょう)は秋保温泉を流れる名取川河岸の絶壁。宮城県立自然公園、二口渓谷の別名でもある。隣接する秋保街道を車で走っているとわからないが、谷底をのぞき込むとかなりの落差があって驚く。
渓谷に沿って、温泉街のホテルをつなぐ遊歩道が設けられている。「秋保・里センター」の無料駐車場に車をとめて、足湯の脇からアプローチするのが便利だ。里センターにはトイレやレストランがあり、道の駅のように利用できる。その昔、温泉街に通っていた秋保電気鉄道や、地元の民俗芸能に関する資料も展示されている。
磊々峡の遊歩道はそれなりに階段や傾斜が多く、落ち葉で滑りやすい。途中、断崖を渡した覗橋(のぞきばし)の欄かんからのぞき込むと、ハート形をした水たまりが見える。
名古屋タワーの上でも見かけた、例の「恋人の聖地」に認定されているらしい。
ハートの池は思ったより小さくてあっけないが、わかりやすい位置にあるので見つけるのはたやすい。
秋保ワイナリーのカフェで一服
秋保温泉に最近できた観光名所が、仙台秋保醸造所、通称「秋保ワイナリー」だ。普通の芝生みたいなところに、葡萄畑が唐突に出現する。栽培には寒すぎる気もするが、近くの作並温泉にもニッカウヰスキーの宮城峡蒸留所があるので、酒類の貯蔵や熟成には適した気候なのかもしれない。
地場産のほか、山梨産のワインも扱っていて1瓶2,000円くらいの相場で販売している。1,000円くらいのシードルも豊富に取り揃えてあった。中には一部、白ワインの試飲コーナーもあるので、車の運転がなければおすすめだ。
併設のカフェで、ワインやコーヒーもいただける。緑色の仙台ガラスの器も展示されており、ちょっとしたワイン関連の雑貨も扱っている。瓶のラベルやロゴなど、全体的にデザインがおしゃれなので、女性や若い人にも喜ばれそうなスポットだ。
宮城~山形の廉価ワインは外れがない
表通りから見えない小高い丘の上にあるせいか、いつ寄ってもわりと空いている。ワインの製造プロセスもガラス越しに一部を見学できる。地下室に樽を寝かせているようなイメージだったが、近代的なステンレスのタンクで醸造しているようだ。
秋保はともかく、隣接する山形県の方はもともと果物の生産が盛んで、各地でワインも生産している。これまで何本か買って試飲したが、1,000~2,000円前後の銘柄でも外れはない。
もっとも普段飲んでいるのは、スーパー最安レベルのデリカメゾンやビストロばかり。ペットボトルや紙パックでなく、ちゃんと瓶詰めされているワインなら、何でもおいしく感じるのかもしれない。
さいちのおはぎは平日でも品薄
秋保温泉に来たら、寄らずに帰るのはもったいない東北を代表する名店が「主婦の店さいち」。久々に訪れたが、平日でもメインの駐車場は満車で、おはぎは残りわずかだった。
できたてほかほかのおはぎが補充されると、次々と売れていってすぐに棚が空になるいつもの風景。あんこ、きなこの順に人気が高く、変わり種の納豆はまだ残っている。ごまはいつまで待っても出てこなかったので品切れだろうか。
おはぎ以外にお惣菜もおすすめなのだが、めぼしいものはほとんど売れてしまっていた。入手できたのは里芋とこんにゃくの煮物くらい。ほかにも佃煮や漬物系はわりと残っている。2,700円もする業務用の生あみやしじみしぐれもキログラム単位で売っていたりする。
さいちに煮物は確実にファミレスなんかの和定食よりレベルが高い。毎回おかずをいただくたび、これが本当の和食、忘れられてしまった家庭の味だと感心する。惣菜の味は、他店の和食を評価するベンチマークにできるくらい、いつも安定しておいしい。
季節や天気に合わせて微妙に味付けも変えるというのだから、容易にマニュアル化できず生産量も限られているのだろう。ちょうど専務の奥さんが店頭に出てきて仕切っていらっしゃったが、この方の采配がなければ再現できない職人芸に思われる。
さいちのレシピ本を発見
レジ横の書籍コーナーには、社長の本と一緒にレシピのムック本が並んでいた。
これを読めばさいちの味を再現できるのかと思ったが、詳しく製法が紹介されているのは一部の料理のみ。あとは豊富にあるおかずのバリエーションを紹介する、豪華なメニューカタログという感じだった。
見ているだけでよだれが出てくるが、添加物なしで日持ちもしないため、本当にここでしか手に入らないというのが残念だ。特におはぎはお会計時に「今日中にお召し上がりください」と念を押されるくらいなので、そのまま東京に持って帰って知り合いに配るのも難しい。1日くらい経ってからレンジで温めても十分食べられるが、新鮮さという意味では、生暖かい出来立てのうちに車の中で食べてしまうのがベストだ。
後ほどいただいた里芋はほどよい固さと味加減で期待通りのクオリティー。こんにゃくも、高速SAで売っているような玉こんにゃくより味がしっかりしみ込んでいる。つくりおきの惣菜だが、総じて味が薄めで飽きずに食べられるというのが、さいちの特徴だと思う。おはぎのあんこが値段の割に異常に多いというサービス精神も、人気の理由だろう。
さいちの食材はお土産用というより、その場で買って食べるのが一番の、地元の料亭という感じがしてきた。おはぎカフェとか、その場で割りばしをもらって食べられるイートインスペースなんてあれば、もっと便利だと思う。
秋保以外でも買えるおはぎ
店内にパンフレットがおいてあったパンフレットによると、実は秋保の本店以外でもおはぎを販売していることがわかった。
- 仙台駅1階、食材王国みやぎ…毎週木金土曜、AM11:00販売開始
- フレスコキクチ、亘理店、大河原店、角田店、東原町店(宮城・福島県)…毎月2回
- 茶蔵、サンモール一番町、東一中央ビル1・6F(仙台)…毎週火金曜
- 藤崎デパート本館地下1階(仙台)…春秋彼岸、お盆期間のみ
- スーパーキリンヤ、バリュー一関店など(岩手県)…毎月第一水曜日
近隣県に限られるが、曜日や日付限定でさいちのおはぎを販売しているようだ。いずれも数量限定とのことなので、その日に行っても手に入るかわからない。観光客にとっては、週3日やっている仙台駅の販売店が便利そうだ。