イケアが大好きすぎて近くに引っ越した。それから毎日のようにレストランに入り浸って作業をしている。
IKEAのレストランは電源こそないものの、WiFi完備の快適な作業スペース。近頃は家よりイケアにいる時間の方が長い。
イケアレストランに常駐するノマドワーカーの日常と、店内の魅力的スポット、おすすめ商品を紹介しよう。
(2020年1月13日更新)
イケア(IKEA)とは
自宅用に家具を安く買うなら真っ先にイケアを思いつくくらい、今ではメジャー感のあるブランド。
しかしイケアはまだ全国に両手で数えるほどしかお店がない(2020年1月時点)。
関東圏でも千葉や埼玉の微妙な郊外に出店しているので、東京都心の人はわざわざ買い物に行かないかもしれない。
何より車がなければ重たい家具を持って帰るのは至難の業だ。配送に3,000円かかることを考えれば、電車賃をかけて往復するよりもっと近場のホームセンターを利用した方が安い。
イケアと似たようなコストコが流行っていると言われても、自分はピンとこない。
一度だけお試しで利用したことがあるが、ひとり暮らしでは到底食べ切れない量の食料しか売っておらず、結局何も買わなかった。
地方ではIKEAを知らない人もいると思う。イケアの歴史と特徴をざっくりまとめてみよう。
イケアの日本出店は2回目
IKEAはスウェーデン発の世界最大家具ブランド。全世界の都市郊外に大型の店舗を出店している。
日本では「イケア」と呼ばれるが、外国人が発音すると「アイキーア」と言っているように聞こえる。
2006年に千葉の船橋、スキードームザウスの跡地に出店してから全国にジワジワ増えている。2020年1月現在は仙台や福岡も含め全国9店舗存在する。
Wikipediaによると実は1974年に日本で合弁会社をつくり、千葉や神戸に出店したことがあったらしい。
しかし当時は業績が振るわず1986年に撤退。2006年にオープンした船橋店は2回目の上陸ということになる。
高度成長期に日本展開・撤退して、21世紀に再進出した海外ブランドとしては、ファストフードのタコベルを思いつく。
発祥は北欧とアメリカで異なるが、イケアのショップ内で提供される料理もタコベル並みかそれ以下だ。ものすごい安いか逆に高いというのが、日本で流行る海外ブランドの特徴だと思う。
2006年のイケアブーム
2006年にIKEA船橋店がオープンした当時は一時的なブームになった。
車を持たない東京都民も、ディズニーランドより遠い船橋までわざわざ電車で通い詰めた。休日のJR京葉線では、イケアオリジナルの青いバッグに家具や雑貨を詰めて持ち帰る風景が見られた。
当時は「安くてシンプル」というユニクロ的な家具メーカーといえば無印良品一択。その無印の半額以下で、そこそこのクオリティーの家具や雑貨を販売するイケアはインパクトがあった。
巨大なショールームをさまようこと自体が、エンターテイメントとしても成立する。そのため東京や神奈川から、わざわざ千葉まで訪れる意味がある。
安い、重い、でかい家具
イケア家具の特徴はその圧倒的な安さだ。
最安スツールのマリウス(MARIUS)などワンコイン。一脚499円で売られている。
フラットパックと呼ばれるシステムで製品を限りなくコンパクトに分解梱包して、流通・在庫のコストを抑えている。ショップの内観も飾り気のない倉庫のようなディスカウントストア風だ。
木製家具の中身はたいてい熱圧成型された木質ボードなので、中身が詰まっていて決して軽くはない。パッケージが小さいので手持ちで運べそうだが、車がないと持ち帰りに苦労する。
またパズルのように複雑な組立が必要な製品も多く、ドライバーやペンチを使って軽くDIYしないと完成できないこともある。イケア家具の組み立てだけで休日がつぶれることもざらにある。
日本人にとっては家具のサイズが大きめで、デザインもやや奇抜。スウェーデンが発祥ではあるが、いわゆる「シンプル&ナチュラルな北欧家具」とはちょっと違うように思う。
イケアレストランの魅力
イケアと聞いてイメージするのは家具や雑貨。しかし店内のレストランも名物として知られている。
カレーやパン類といったファストフードと並んで、スウェーデン本国の伝統的な料理を味わうことができる。なかには日本人の口に合わなそうなメニューもあるが、「本格的」ということだけは間違いない。
無料~100円のドリンクバー
イケアのレストランも価格は安い。サーモンやミートボールといった魚肉製品を除けばロールパンは50円~、ドリンクバーも100円で楽しめる。
以前はメンバー登録すると、常時60円で楽しめたお代わり無料の飲料コーナー。
2020年1月現在はドリンクバーの通常価格が120円から100円に値下げされ、会員特典としては朝11時までに来ればドリンクが無料になった。
お店が空いていれば追い出されるようなこともない。朝から晩まで無料ドリンクで粘ることすらできる。
ランチは1階の80円ホットドッグを何本か頬張れば、格安で済ませられる。ほとんどお金を使わずにクールシェア&ウォームシェアできるイケアの店舗は、まるで公共施設のようだ。
IKEAレストランでコワーキング
イケアのレストランは土日祝日の来客を見越してキャパが大きい。
平日はガラガラに空くため、ここを日中リモートオフィスとして活用するノマドワーカーが現れるようになった。
残念ながらイケアレストランにノートパソコンやスマホを充電できる電源はない。
しかしWiFiは一度登録すれば無料で使える。スタバのように1時間ごとに強制切断されて再ログインが必要になることもない。
ひとつだけ不便なのは、レストランの照明が薄暗いことだ。本が読めないほどではないが、長時間作業していると目が疲れてくる。
そのため窓際の光量の多い席がフリーランスには人気。ただし映画を上映しているキッズコーナーの付近はやや騒がしくなる。
たいていは奥側の暗い席が仕事と勉強用。そして窓際・ドリンク近くの便利な席は子ども連れと、自然に使い分けられている。
ノマドワーカー vs 高校生
夕方になると、今度は地元の高校生がイケアレストランで大勢たむろするようになる。
広々したスペースにたった100円で長居できるのだから、マクドナルドやモールのフードコートに集まるより効率的だ。
放課後に勉強しているように見えて、大半の生徒はスマホでオンライゲームに興じている。
特に年明けから3月にかけては高校生の受験勉強がピーク。この時期になると「長時間のご利用はお控えください」という警告が店内に出始める。
ドリンクコーナーに近いテーブルは、買物客が優先利用できるように確保されてしまう。
たかだか100円のドリンクバーで粘るノマドな大人たちも、人のことは言えない。さすがにこの時期の休日は混み過ぎるので、イケアへの出勤を控えて在宅ワークする。
レストランへの抜け道
イケアのレストランはたいてい2階にある。
入口からエスカレーターを上って普通のルートで向かうと、レストランにたどり着くまで数100メートルもの距離を歩かなければならない。
実は2階に上がってすぐ横にレストランへの抜け道があり、そこからショートカットすることができる。
帰りはトイレ脇のエレベーターから、広大な雑貨コーナーを通らずとも1階レジ前に抜けることが可能。
関東圏の何店舗かと東北の仙台にできたイケアを訪れたが、ほとんど同じレイアウトだった。
平日は家具を買うよりも、レストラン目的のお客さんの方が多いように見える。一見わからない隠し通路を覚えれば、イケアを攻略しやすくなる。
大型モールを真似した迷路的要素があり、ゲーミフィケーションを意識した動線設計がうかがえる。
そして開店時間になると常連客がぞろぞろと店内に入り、近道を通って特等席をゲットする。まるでイケアレストランへの通勤ラッシュのような現象を見ることができる。
コスパの高いIKEAの椅子
仕事に疲れたら店内のショールームをブラブラ歩くと、いい気晴らしになる。
実際のところ迷路のように入り組んだ通路を端から端まで歩いたら、1キロ以上距離がありそうだ。ちょっとしたウォーキングコースとしてもイケアは使える。
おかげでイケアの商品ラインナップはほとんど覚えた。
神経が図太ければ、モデルルームのソファやベッドで仮眠をとることもできるだろう。個人的にはポエング(POANG)という一人用のアームチェアが並んでいるエリアでくつろぐのが好きだ。
椅子に座っていると、たまに他の買物客に話しかけられることもある。そして店員さんの代りに材質やカバーの違いを説明したりすることもある。
普段イケアでお世話になっている分、アンバサダーとして役に立つのも悪くない。ポエングの売上には何脚か貢献したと思う。
いつか欲しいポエング
今は家が狭いので余計な家具は置けない。
しかしポエングを置きたいがために、広い部屋に引っ越したいと思うときもある。
昔はミニマリストを目指して、折りたたみできるニーチェアのロッキングタイプを愛用していた。しかし接合部がギシギシなるので、間にものを挟んで養生するのが面倒だった。
その点ポエングは安いわりに造りがしっかりしている。
実際に店内で耐久試験のデモンストレーションが行われているほど、その頑丈さは折り紙付き。
キャンティレバー構造の曲木がしなるため、ロッキングタイプでなくても体を揺すぶってコリをほぐすことができる。
椅子に体重を乗せて弾ませると、座面がビョンビョン跳ねておもしろい。アーム部分の振動減衰特性は、誰でも心地よくなるよう絶妙に設計されていると思う。
オットマンもおすすめ
ポエングの値段はカバーの材質でほぼ決まる。
本革や高級ファブリックでない最安の布生地でも基本構造は変わらない。
見た目にこだわらなければ安めの生地を選び、浮いた予算でオットマンも追加した方がいいと思う。
ポエングとフットスツール。
この最強セットがそろえば、下手なビーズチェアなどより容易に人をダメにしてくれる。
合わせて1万ちょっとで手に入る、この世の至福だ。
ペロなら5千円
イケアの家具はいずれも安い。
その中でも499円のスツールから6,990円のアームチェアまで、椅子のコスパは傑出していると思う。
ポエングとよく似たペロ(PELLO)はさらに廉価で、驚きの店頭価格4,999円。
ただし木材の接合部がポエングより弱くて不安定に感じる。
体重が軽ければ気にならないと思うが、少しの価格差なら上位のポエングを選んだ方が無難だ。ていねいに扱えば、安くても一生もつ品質ではないかと思う。
アウトレットと端材コーナー
ほかにイケア店内にあるレアなスポットといえば、レジ横のアウトレットコーナーや端材売り場も探索を楽しめる。
イケアのアウトレットと聞けば、どこまで値下がりするのが気になるところ。
実際は1~2割程度のディスカウント。そして品数も多いとはいえない。
色違いも含めてお気に入りの家具が見つかるかどうかは運しだいだ。
端材は加工用の穴が開いていたりもするが、どれも200円以下と激安。ホームセンターで同等品を買うよりも、ずっと安く材料を仕入れられる。
イケアの複雑な家具を組立てられる人なら、ちょっとした工作はお手の物だろう。ベースが安いイケア家具を改造して、DIYを楽しむという遊び方もある。
イケアのぬいぐるみ
子どもがいなければ特に用事はなさそうだが、レストラン前のおもちゃコーナーも実はなかなかおもしろい。
ハロウィーンの時期に出回る仮装グッズは独特なので、ほかの人とかぶる心配がなさそう。値段は安いがドンキや100均で売られているグッズよりも、明らかにセンスがいい。
各種のぬいぐるみは、まるで屠殺場のように積み上げられている。
クローン培養されたケモノたち。こういうディスプレイの仕方はエヴァンゲリオンの影響だろうか。
大流行したイケアのサメ
なぜだかわからないが、2019年の初頭にはブローハイ(BLAHAJ)というサメのぬいぐるみが全国的なブームになった。
体長1メートルもある大型のソフトトイ。
ちゃんと布地でキバも表現されていて、甘すぎないルックスが世代を問わずに受け入れられたように思う。
子どもくらいのサイズがあるので、ネクタイを結んだり服を着せたりして擬人化するのが流行した。
とはいえ、いかんせんこのサメはでかい。一時は品薄になるほど出回ったが、その後は飽きられて大量廃棄されていることだろう。
イケア犬の改造案
似たような感じでイヌやパンダのぬいぐるみもそろっている。
いずれもカートにうず高く積まれていて、見方によってはなかなかシュール。
動物たちのやつれた姿を見ていると、思わず拾ってしまいたくなる。こういう大人の憐れみを誘うような見せ方も、実は計算のうちなのだろう。
ポエングの椅子が置けるくらい広い部屋に引っ越したら、一匹くらい置いてもいいかもしれない。
大きさ的には中身を抜いて、皮だけaiboにかぶせたりできるのだろうか。こういうふざけたスマートペットよりは愛着を持てそうだ。
イケアの製品は元が安いので、なんでも工作材料として生かせそうな気がする。