2016年から運用が開始されたマイナンバーカード。さっそく取得して久々にe-Taxで確定申告を試してみた。
オンラインで申告まで済ませるのは、住民基本台帳カードを使ったとき以来7年振り。利用者識別番号の入力に手間取ったが、無事に済ませることができた。
e-Taxの場合、源泉徴収票や控除証明書などの原本提出は不要だった。しかし今回は退職所得もあって申告内容が複雑だったせいか、5月になってから税務署から郵送依頼の通知が届いた。
マイナンバーを使った新しい電子申告について、使った機材や作業内容、気になった点をまとめてみたい。
※以下は平成28年(2016年)分の確定申告に関する記事です。令和元年(2020年)の最新情報はこちら。
(2020年2月4日更新)
自分史上、最も複雑な確定申告
昨年会社を退職したこともあり、確定申告の内容は今までで一番複雑だった。
主な収入源・所得の種類をリストアップすると、このくらいある。
- 株式会社の給与
- 株式会社の退職金(会社と小規模企業共済の解約手当金)
- 個人事業の青色申告
- 合同会社の給与
- 有限事業責任組合の収入
- 株投資の譲渡損益・配当金
長年勤めた株式会社を辞めて、新しく合同会社(LLC)を設立。以前からやっていた個人事業と有限事業責任組合(LLP)の方でも、微妙な副業収入あり。
退職金の支払元は会社と中小機構の2つ。これに例年どおりの株取引や投資信託の損益・配当が加わる。
申告書に記入する項目は多いが、国税庁のウェブサイトを使って作業すれば簡単に済ませられた。さすがにこの量の確定申告を、用紙に手書きして何度もやり直すのは気が進まない。
住基カードはいまいちだった
以前、居住地の住民基本台帳カードを使って、e-Taxでの確定申告を試してみたことがある。
その後の引っ越しで住基カードの電子証明書が無効になってしまった。転居先でカードを書き換えるのが面倒なうえ、電子証明書の再発行に500円かかる。
いろいろ考えて確定申告は紙で出す方法に戻した。経理に慣れた人に聞いても、当時は「パソコン作成、紙で提出」というハイブリッドな方法が主流だった。
国税庁の確定申告書等作成コーナー
用紙に数字を手書きするのは面倒なので、国税庁のウェブサイト「確定申告書等作成コーナー」を長年活用している。
実は確定申告書だけでなく、個人の青色申告決算書までいちから作れる便利なサービスだ。作成コーナーを使いこなせば、個人用の税務ソフトは不要といえる。
ここから計算結果をPDF出力して、源泉徴収票や各種控除・寄付の証明書をのり付けしたうえ、税務署持参か郵送で提出する。
提出前に申告書のコピーを取れるので、所得の証明など他の手続きにも使いまわせるのがメリットだ。
税務署に持参すれば、控えに受付印を押してもらえる。効力は不明だが、何となく税務署のハンコが押されていた方が、書類としての信用度は増す。
年末調整で済むならその方が楽
副業収入や株取引がなかった年は、会社の年末調整だけで済ませていた時期もある。
各種の控除も会社に申告して精算してもらえるなら、わざわざ確定申告をする意味はない。必要なのは年間の給与から控除して所得を計算するだけ。
家族構成や加入保険・共済制度に変わりがなければ、会社(年末調整)でも個人(確定申告)でもやることは毎年同じ。自分が経営している会社なら、両方に作業を分散させると二度手間になってしまう。
マイナンバーカードの導入
2016年から開始されたマイナンバーカード。役所に行ってさっそく入手してきた。
これさえあれば今までの住基カードのように、「転居するたび書き換え&手数料を払う」必要はないはず。
今は管轄の税務署が遠方にあるので、紙に印刷して持参するのは面倒くさい。郵送するにも切手と封筒代がかかる。何より自宅にプリンターがないので、データをつくってコンビニまで出力しにいくのが面倒だ。
新しく手に入れたマイナンバーカードを使い、数年ぶりにe-Taxを用いた電子申告に取り組んでみた。
必要なのはICカードリーダー
マイナンバーカードをパソコンに読み取らせるには、ICカードリーダーが必要。
先日、合同会社を設立する際、定款の電子認証にも必要だったので、NTTコミュニケーションズの一番安いデバイスを買った。
型番はACR1251CL。カード読み取りだけの単機能で、FeliCaには対応していない。
ビックカメラの店頭販売価格は2,000円前後。USB外付けICカードリーダーのなかで一番安かった。
そもそも自宅でSuicaの残高を確認したり、電子マネーでネットショッピングする必要性を感じられない。ポイント還元率は微妙に変わるかもしれないが、買物にはクレジットカードがあれば十分だ。
電子申告ウェブサイトの事前準備
国税庁の確定申告書作成コーナーでe-Taxを選ぶと、事前準備のソフトを落として入れることになる。
作業自体はブラウザ上で完結するが、ルート証明書や署名送信モジュールなどをダウンロードしてパソコンにインストールする必要がある。セットアップファイルを開いてボタンを押していけば、簡単に済ませられる。
古い利用者識別番号で通った
準備ができたらブラウザで利用者識別番号とパスワードを入力する。不思議なことに、7年前のe-Tax申告時に取得した番号でも問題なくログインできてしまった。
その後の画面で表示された住所が古かったので、現住所に変更しておいた。ついでに暗証番号の変更も求められたので更新。
適当にパスワードを設定したら、「更新前暗証番号と3文字以上異なる新暗証番号を入力してください」と弾かれた。妙なところでチェックが厳しい。
続いて表示された登録済みの住所は7年前と同じ。さすがに古いので現住所に差し替えた。
電子証明書の登録・再登録
すると次の画面で電子証明書の登録(再登録)というのを求められる。
「ICカード発行元の認証局サービス名」というのをプルダウンメニューから選択。
ICカードリーダーにマイナンバーカードをセットしてパスワードを入力。これを5回連続で間違うと、ATMの暗証番号のようにカードがロックされてしまう。
実は役所でカードを受け取る際、暗証番号を適当に入れてしまったので記憶がおぼろげだった。3回連続で入力ミスしてかなり焦り、4回目で何とか成功することができた。
マイナンバーカードの暗証番号などめったに使わないので、忘れてしまう人は多いと思う。
カードの読み取りは成功したが、なぜか「HJS0408E 電子証明書の有効期限が切れている…」というエラーが出てしまう。
以前もらった住基カードの電子証明書は有効期限3年。確かにそちらはとっくの昔に切れている。
しかし読み込ませたのは今年取ったばかりのマイナンバーカード。有効期限はたっぷり5年あるので、電子証明書が使えないはずはない。
住民基本台帳とマイナンバーの混同
何かおかしいと思い、前の画面に戻って手順を確認した。
どうやら「認証局サービス名」のプルダウンが初期選択で「公的個人認証(住民基本台帳カード)」になっており、これを選んだまま次に進んでしまったようだ。
2番目の「公的個人認証(マイナンバーカード)」を選んで再びカードを読み込ませたら、今度は問題なく先に進むことができた。
画面に表示される手順に従い、電子証明書の登録・再登録を行う。
再び利用者識別番号とパスワードの入力を求められたが、ここも7年前に取得した住基カードのもので通った。受信通知が表示され、証明書の登録は無事完了した。
これでようやく事前準備が終了。
その後はいつもの申告書等の作成画面になり、個人事業の青色申告決算書や確定申告書を作成して送信した。
マイナンバーカードを用いた提出手続きは事前準備と同じ。パスワードさえ間違えずに入力すれば、電子署名・送信は問題なく完了できた。
はがきで届く利用者識別番号
ちなみ作業の途中で申請したのか、管轄の税務署からe-Tax用の利用者識別番号がハガキで届いていた。
すでに確定申告が済んだ後なので番号は用済み。
利用者識別番号に関しては、結局古い住基カードのもので間に合ってしまった。住所も最新のものに変更したので問題ないと思う。
複数もらえる利用者識別番号に注意
来年以降は、新しく発行された利用者識別番号を使えばいいのだろう。マイナンバーに比べると、電子申告用の利用者識別番号は複数発行されてしまうのが謎だ。
当然ながら識別番号にひもづくパスワードも別々。ついでに会社の方でも電子申告すると、個人とは別の利用者識別番号が与えられてしまう。
嫌な予感がしたが案の定、翌年以降の確定申告で暗証番号を忘れてしまい、識別番号を再発行してもらう羽目になった。発行依頼した後に古い番号を使って申告すると、税務署から電話がかかってきて再提出が必要になるようだ。
今回2016年分の申告では、なぜ昔の番号がそのまま使えたのか、よくわからない。マイナンバーの新規導入で、税務署の職員さんが忙しかったせいかもしれない。
e-Taxでも控えのPDFは手元に残る
e-Taxで電子申告した場合でも、控えの資料をパソコンから印刷できる。
税務署窓口で申告書を手渡しする場合は、手元の控えに押印してもらえる。これに対してe-Taxの場合は、保存したPDFファイルが控えとしての役目を果たすのだろう。
何かしら過去の所得証明が必要になった際は、PDFファイルを送るか印刷して渡せばよいと思う。
作業途中でも確認用にPDFは書き出し可能。事前確認では「送信前の確認用です」と赤字で印字された状態になる。送信後はこの表示が消える。
源泉徴収票などの原本提出は不要
申告書の表紙に「提出書類等のご案内」として、添付書類の提出区分が指示される。
紙提出の場合は源泉徴収票やその他の原本貼り付けが必須だが、e-Taxの場合は不要なようだ。すべて区分は「電子」または「提出省略」で、郵送すべきものはひとつもなかった。
各種控除の証明書など、原本を手元に置いておきたい場合はe-Taxの方が有利といえる。
預貯金口座振替依頼書だけ郵送
ひとつだけ所得税の追納分を銀行口座から引き落としてもらうために、「預貯金口座振替依頼書」という書類の郵送が必要になった。
別に残額は銀行や税務署の窓口で納めればよかったのかもしれない。
電子申告した以上、意地でも手続きを遠隔で済ませたかった。また今後のためにも税金は銀行引き落としに設定しておいた方が便利だと思った。
税務署から書類提出のお願い
e-Taxでの申告完了後、5月下旬になって税務署から郵便が届いた。
申告時は提出免除だった源泉徴収票や控除証明書について、あらためて郵送で提出せよとのことだ。
「国税関係法令に係る行政手続等におけう情報通信の技術の利用に関する省令第5条3項」を根拠として、以下のように記されていた。
税務署では、この制度をご利用いただいた方の中から一定の方を抽出させていただき、平成28年度分の所得税及び復興特別所得税の確定申告書に係る次の書類を税務署まで提出していただくようお願いしております。
≪保管されている書類の提出のお願い≫ より
さすがに収入源が多くてイレギュラーな退職金まであったので、調査が必要と思われたのだろう。今回提出を求められたのは以下の5種類。
- 給与所得の源泉徴収票
- 退職所得の源泉徴収票・特別徴収票
- 特定口座年間取引報告書
- 小規模企業共済等掛金控除の支払った掛金額の証明書
- 寄付をした団体等から交付を受けた寄付金の受領証等
会社関連と証券会社、小規模企業共済と確定拠出年金、ふるさと納税の領収証明書など、郵送書類は膨大な数に及んだ。親切なことに返信用封筒が同封されてきたので、切手代はかからなかった。
下の方に「※書類の返却を希望される場合は、税務署へご連絡ください」と書かれていたので、送付状にその旨一筆したためておいた。
提出書類は無事返却
その後6月に入ってから、書類の確認結果として「相違はありません」とお墨付きをいただいた。希望どおり送った書類もそのまま返却してもらえた。
これで退職所得の源泉徴収票など、一生に何回もらえるかわからない貴重な原本も戻って来た。e-Taxであれば、後から郵送確認されることになっても添付書類の原本は取り戻せるようだ。
源泉徴収票にマイナンバー記載
平成28年1月からのマイナンバーの導入に関する余談。
会社側から税務署・市区町村に提出する源泉徴収票に、マイナンバー(個人番号)記載が必須になった。そのせいか源泉徴収票の様式が2倍くらい大きくなってしまった。
従業員に渡す源泉徴収票には、マイナンバーは記載されない。しかしお役所にはしっかり給与と紐づけて通知されるので、確定申告でごまかしてもバレやすい仕組みだ。
個人情報の取り扱いが気になる
マイナンバーは一応個人情報なので、スタッフから教えてもらう際も厳重に管理する必要がある。逆に個人としては、取引先の企業からマイナンバーを知らせるよう要請があった(カードのコピーも添えて)。
自社内はともなく、相手先の会社でどのようにマイナンバーが管理されるのか気になる。
別に番号だけで過去の所得や納税額を突き止められることはないと思う。しかし税務署以外の民間企業に提出するのは、何となく気味が悪いものだ。