東京の国立にある谷保(やぼ)天満宮で、大宰府の古いお守りを返納してきた。同じ天神さまをまつっている神社なので、奉納先としては問題ないだろう。
古いお守りを安全に処分する方法と、谷保神社の見どころについて紹介したい。
30年以上使った学業お守り
年末に持ち物を整理していたら、カバンの中から古いお守りが出てきた。
小学校の入学前に、福岡の太宰府天満宮で親が買ってくれたお守りだ。何となく縁起がいい気がして、大人になってからもバッグに入れて持ち歩いていた。
最初は白かったはずだが、年月を経て微妙なベージュ色に変化している。
なぜかお守りを噛みしめると甘い味がする気がして、子どもの頃はよくしゃぶって遊んでいた。
気になるお守りの中身
不謹慎な気もしたが、お守りの袋を開けて中身をチェックしてみた。
お守りの中には赤い布製の札が入っている。芯地は安っぽいボール紙のようだ。
糸をほどけばさらに分解できそうだが、さすがにそれはやめておいた。お札の上の方が破れているのは、子ども時代に無理やり開けようとした名残だろう。
大宰府学業御守の効果
太宰府天満宮といえば、学問の神様、菅原道真で有名な神社。
子どもの頃から学業成就のお守りを握りしめてきて、まずまずご利益はあったように思う。
高校・大学受験とも第一志望にストレートで合格できた。滑り止めもすべて受かった。
しかしいざ実社会に出てみると、にわか勉強だけでは通用しないのが悲しいところ。学問にばかり精進しても、自動的に年収が増えたり幸せな家庭を築けたりするわけではない。
また単に「受かりそうな学校ばかり選んだから落ちなかった」という理由もある。
かの天神さま菅原道真は頭が良すぎてまわりに妬まれ、左遷されて早死にしたという不遇の生涯だった。
その後の祟りを恐れてまつられたのだから、「学問の神様」と呼ぶのは皮肉な気もする。高学歴ワーキングプアだったのかもしれない。
役目を終えたお守りの処分法
お守りについて調べたところ、有効期限は1年しかないと知った。古びて汚れたり埃が積もったりすると、かえって縁起の悪いものと化してしまうらしい。
学業については十分願いが成就したということで、ついに大宰府のお守りを処分する気になった。可燃物なのでゴミ箱に捨ててもよさそうだが、さすがにそれは忍びない。
大宰府へ郵送する案
お守りは授かった神社に返納するのが本式らしい。
しかし九州の太宰府まで行く予定はない。以前出張で博多に寄った際にでも、ついでに納めてくればよかった。
太宰府天満宮の公式サイトを見ると、遠方から合格祈願してもらったり、お守りを送ったりしてもらえるサービスがある。相談すれば、古いお守りも郵送して引き取ってもらえそうな気がする。
近くの天満宮で返納する案
ご利益がありそうなのは大宰府本家だが、同じ天満さまをまつっている神社は全国各地に存在する。
東京にある天満宮を調べたところ、以下の3つが老舗とわかった。合わせて関東三大天神と呼ぶそうだ。
- 谷保天満宮(903年創建)
- 湯島天神(458年または1355年創建)
- 亀戸天神社(1661年創建)
湯島天神の創建年代は諸説あるため、東日本でもっとも古いのは谷保天満宮とされている。
三大天神のうち東京の外れにある谷保にだけ、まだ行ったことがない。そこでお守りの返納ついでに、谷保神社にお参りしてみることにした。
谷保天満宮の由来
谷保天満宮は東京都国立市の谷保という場所にある。
この地名は「やほ」と読み、JR南武線の駅名も谷保駅(やほえき)だ。
谷保の読み方は「やほ」「やぼ」?
しかし谷保天満宮に関してだけは、なぜか「やぼてんまんぐう」と呼ばれる。
本来は「やぼ」が正式だが駅名が「やほ」とされたことにより、そちらの読み方が普及してしまったらしい。おそらく野暮(やぼ)というイメージを避けたかったのだろう。
パソコンで漢字を変換しようとしても、「やぼ」では野暮しか出ない。「やほ」と打ち込むと谷保になる。
交通安全の神様でもある
谷保神社は都内を東西に貫く幹線道路の甲州街道(国道20号)に面している。
道路は広いが交通量が多いので、自転車で走るのには向いていない。歩道もすれ違い困難なくらい狭い。
谷保天満宮にまつわる有名なエピソードは、明治時代に「皇室がはじめてドライブした」という話だ。そのため菅原道真とはまったく関係なく、谷保天神は「交通安全祈願発祥の地」とも呼ばれている。
自動車のお祓いといえば成田山や川崎大師がメジャー。しかし東京の西側では、谷保天満宮の交通安全ステッカーを貼った車もよく見かける。
谷保天満宮の見どころ
門を抜けて境内に入り、南側に向かって坂を下りて行く。
谷保神社には、なぜか立派な鶏が何羽も放し飼いされている。人に慣れていて、近寄っても特に逃げる様子はない。
本殿は1600年代、拝殿は江戸末期の造営ということで、古びた趣がある。
大学の入試前という時期でもあり、合格祈願の絵馬が大量に吊るされていた。
そのまま境内を散策してみると、坂を上ったところにちょっとした梅林があった。
天満宮といえば梅林
天神さまといえば、梅が有名なモチーフ。
菅原道真は梅を詠んだ歌が有名で、子孫の家紋も梅模様。太宰府のお土産といえば梅ヶ枝餅(うめがえもち)。お守りに刺繍されている文様も梅の花だった。
天皇家の食事会もこの梅林で行われたらしい。2月はまだ風が冷たく満開にも早いが、老夫婦がござを広げて花見をしていた。
もう少し暖かくなれば、境内で気軽にくつろげる穴場だ。
お守りの返納と新規購入
グッズ売り場の巫女さんに、古いお守りの返納方法をたずねてみた。「そこの箱に入れといて」ということで、見るとゴミ箱のような入れ物が置いてあった。
側面には梅の御紋が描かれており、破魔矢やお札、神棚を解体したらしき木材など、いろいろなものが納められている。さすがにこうしたものは、そのままゴミに出すのが憚られるのだろう。
感謝の気持ちをこめて、大宰府のお守りを上の方にそっと置いておいた。
新しく買ったのは交通安全御守
せっかく谷保まで来たので、新しいお守りを買って帰ることにした。
学業の次に選んだのは交通安全。由来は微妙だが、いちおう谷保が強いとされるジャンルだ。
窓口で巫女さんにお守りを注文すると、独特な言い回しで対応してもらえる。
- 「500円です」→「500円お納めください」
- 「ありがとうございます」→「奉納ご苦労様です」
メイドカフェならぬ神社カフェとかで使えそうな気がした。
谷保天満宮の梅林には、こんな感じの顔出し撮影スポットも用意されている。昔はキツネも出没して、境内の鶏がよく襲われたらしい。
梅と車と鶏、それが谷保天神を訪れて記憶に残った名物だった。
その後のご利益は…
古いお守りを返納、新規購入してからの経過報告。
谷保天満宮に参拝した2017年、新たに挑戦してみた一級建築士の資格試験は、一次の学科に受かったが二次の製図に落ちた。
一勝一敗。学業御守を失った影響は何ともいえない。
その代り事故には遭わなかったので、新しい交通安全御守は効いたような気がする。
貧乏性なので、使用期限とされる1年を過ぎてもまだ持ち歩いている。谷保天満宮のお守りはビニール袋に封入されているため汚れに強く、耐久性も高そうだ。
谷保天満宮へのアクセス
東京都心から谷保天満宮を訪れるには、JR 南武線の谷保駅が最寄駅になる。
中央線で立川まで来て折り返すか、川崎あたりから南武線に乗れば1時間くらいでたどりつける。
その気になれば新宿から甲州街道経由でアクセスできる。がんばれば自転車で来られないこともないが、交通事情が厳しいのでおすすめはしない。
交通安全を祈願しに来て、交通事故に遭ったら笑えない。
やや遠回りになるが、自転車なら南側の多摩川サイクリングロードを走ってくる方が安全だ。