下側の親知らずを一本抜いてから4日経った。抜歯当日はぐったりして何も手につかなかったが、翌日病院で消毒してもらったあとは、みるみる体力が回復した。
事前に聞いていたとおり、抜歯の痛みと腫れのピークは2~3日後がピークなようだ。4日目になると徐々に頬の腫れも引いて、口を動かさなければ痛みも気にならないレベルに落ち着いてきた。
手術の翌朝は菓子パンOK
手術当日はゼリー食品しか口にできなかった。翌朝は、コンビニで買っておいた菓子パン類をかじってみた。試したのは刺激の少なそうなスナックスティックやロールパン。後者は中にマーガリンが注入されているので、エナジー補給も期待できる。
もっと柔らかい蒸しパンのような種類に比べると、やや皮が固いように感じた。相変わらず患部から血は出るが、前日より口は少し開くようになった。前歯でパンを噛み切れる程度に口が開けば、あとは健側の奥歯で咀嚼して飲み込める。
ゆっくり食べるので時間はかかったが、久々に固形物を食べられたのはうれしい。追加のジェル類と合わせて消耗した体力を補うべく、朝食で1,000kcal以上摂取した。
もしジェルだけで1日に必要な2,000kcalも摂取しようと思ったら、ウィダーinゼリーかカロリーメイトのような高濃度なタイプを10パックは飲む必要がある。食べてもあまり楽しくないし、何よりお金がかかってしかたない。安い菓子パンでも固形食で栄養補給できるようになるのは、うれしい限りだ。
甘くない「ごま豆腐」は重宝
砂糖や果糖入りのジェルは甘くておいしい。しかし歯周病の治療のため、ここ数か月意識的に砂糖を断って暮らしていた。しばらく口が開かず満足に歯磨きできないので、甘い物ばかり食べていると虫歯や歯周病の悪化が気になってくる。
糖分を含むという意味では、プリンもヨーグルトも野菜ジュースもすべてNG。スーパーで買ってきた中で唯一健康的だったのは、ごま豆腐だった。
普段は高級食というイメージがあるが、賞味期限直前で半額セールで売られていた。原材料は「ごま、でん粉、葛粉」の3種だけで、余計な添加物も含まれていない。ゴマはペースト状に磨り潰されているので、患部に挟まるようなこともなかった。
1パックで103kcalあり、タンパク質もバランスよく補える。もし近所で手に入るところがあれば、パックタイプのごま豆腐は抜歯後の流動食としておすすめだ。かき混ぜれば液状に近くなるし、ほのかなゴマの風味で甘ったるくなった口の中をリセットできる。
甘酒としょうが湯
療養中の栄養源として、甘酒やしょうが湯の粉末も買ってみた。混ぜ物なしの本物の甘酒だと、固形の米粒が残っていたりして患部にさわる。人工的な甘酒飲料の方が抜歯後は取り入れやすい。多少は酒粕も入っているので、栄養素としては申し分ない。
しょうが湯もぬるめにつくれば問題なく飲むことができる。しかし後から考えると、体を温めたり血行を良くするのは治療に逆効果なのかもしれない。
一般論でいえば、受傷直後は患部を冷やして炎症を抑え、慢性期に入ったら温めて筋肉を柔らかくするのがセオリーだ。素人考えだが、術後4日目以降で腫れが引いてきたら、しょうがを食べたり入浴したりするのはOKだと思う。
翌日の夕食は丸亀製麺へ
しっかり栄養補給した効果が出たのか、翌日の朝食後はほとんど出血も止まって回復に向かいつつあるように思われた。昼は残りのジェルやジュースで簡単に済ませ、夕食は気分転換を兼ねて久々に外食に出てみた。
柔らかめのメニューということで、思いついたのは丸亀製麺の釜玉うどん。カロリー補給のために大サイズ(税込480円)を選び、調理時に生卵を混ぜてもらってカルボナーラ状態にしてみた。
はなまるうどんに比べると丸亀製麺は高いイメージがある。普段は毎月1日半額の釜揚げうどんか、最安のかけうどんくらいしかオーダーしない。たまたま半額翌日の2日だったせいか、夜のピークタイムでもお客さんはガラガラだった。
口の中に入れる量を抑える
うどんは口当たりソフトなイメージだったが、丸亀製麺の讃岐うどんは予想外にゴリゴリしていた。
武蔵野うどんほど強烈な歯ごたえではないとはいえ、太麺で思いのほか噛むのに時間がかかった。胃の調子は問題ないが、大サイズだと完食するのに30分くらい要してあごが疲れた。
口の中では安全な方の右側で噛む。しかしたまに食材が回り込んで患側で噛んでしまうと痛い思いをする。コツとしては一度に口に入れる量をセーブして、健側のみで辛抱強く噛み続けることだ。
ソースうどんにアレンジ
釜玉うどんは玉子の他に具がないので、歯にも負担が少ない。ただしあまりに単調なので、途中から味に変化をつけたくなってくる。丸亀製麺では卓上にある「だししょうゆ」が定番だが、いきなり味が濃くなるので量の調整が難しい。
もうひとつ天ぷら用に「だしソース」という変わり種が用意されており、これはうどんにも使える。ソース焼きそばのような感じで、一気に料理のテイストが変わる。イメージとしては、長崎ちゃんぽんにソースをかけて食べるような具合だ。
いろいろ混ぜて少し濃い目に味付けしてみたが、患部にしみるようなことはなかった。料理が多少熱いくらいなのも平気で、逆に冷たいドリンクやヨーグルトはてきめんにしみるようだ。
流動味噌汁を自作
うどんを完食できたので、3日目の夜はいよいよ自炊を再開してみた。
シイタケや長いもなど、柔らかそうな具材を選んで可能な限りみじん切りにする。これらを鍋で味噌煮込みにして、卵を2~3個溶いて混ぜる。
料理としてはヘンテコなものだが、栄養のありそうなネバネバ玉子味噌汁という感じだ。3日目はついでに納豆も入れてみた。
見た目はグロテスクなので、あまり見ないようにして口に注ぎ込む。長いもや納豆の固まりが患部に直接当たると痛く、すりこぎがあれば磨り潰して入れた方がよい。とにかく何でもペースト状にして味噌で味付けすれば、サバイバルな流動食は自作できるとわかった。
抜歯後の歯磨き
抜歯の後は歯磨きにも気をつかう。
口が半開きなので歯ブラシを差し込みにくいが、抜いていない側の歯は上下とも通常どおり磨ける。問題は患部のまわりで、口腔内の腫れた部分に少しでも歯ブラシが当たると激痛が走る。
縫合個所を引っかくと再出血のおそれがあるので、怪しい部分にはほんの少ししか歯ブラシを当てられない。うがいも強くはできないので、どうしても腫れた頬と歯の間に食べかすが溜まってしまう。
親知らずが抜けて第2大臼歯の後ろは歯茎が陥没しており、今までなかった隙間ができている。抜いた後ここが虫歯になっていると指摘されたので、悪化させないよう念入りに磨いておきたい部分ではある。
タフトブラシと歯間ブラシ
抜歯後4日経つと徐々に口の中の腫れも引いてくるので、小さい歯ブラシなら隙間に差し込めるようになる。
先端の細いタフトブラシは必須。さらに言えば、奥歯の奥に届かせるためにL字型の歯間ブラシもあった方がいい。歯の間に入れるわけではないので、Sサイズくらい太いタイプの方が効率よい。
歯間ブラシは一週間くらいでへたってしまう消耗品なので、通販でまとめ買いした方がドラッグストアより安く調達できる。有名ブランドでなくても品質は大差ないだろう。
患部の近くをおそるおそる歯間ブラシで掻きだすと、いつから溜まっていたのかおびただしい量の食べかすを除去できた。奥の方は血が混ざっているものもあるので、手術後からずっと挟まったままだったのだろう。
術後に摂取するジェル類はどうしても糖分多めになってしまうので、満足に磨けない間に虫歯になってしまうのも怖い。刺激が強くならない程度に歯間ブラシでケアしつつ、あとは洗口液で口内を殺菌して、細菌が増えないよう祈るしかない。
軽い運動の再開
抜歯後数日は、医師の指示どおりなるべく運動しないで安静に過ごした。翌日、消毒のために通院して、置きっぱなしだった自転車に乗って帰ったが特に問題はなかった。
あまりに体を動かさないと夜寝られない気がするので、3日目からは朝の体操や1時間程度のウォーキングも行ってみた。血の巡りはよくなるが、傷口が開いたり唾液に血が混ざるようなことはない。
3日目の夜に軽くヨガも試してみたところ、逆立ちのようなポーズを取ると頭に血が上る感じがした。心臓より患部が下になり、明らかに血圧が高まっている。これは再出血の危険性が高いと考え、ほどほどでやめておいた。
入浴のスケジュール
入浴に関しても、術後2~3日は湯船に入らないよう言われている。
11月になるとさすがに冷え込んできて、シャワーだけでは物足りない。手術当日の夜はこっそり足湯だけ、2~3日目は腰湯、4日目はいよいよ全身浴に戻してみた。今のところ患部から血が出たり、腫れが強まるというような症状は出ていない。
しかし数日、中途半端な入浴で済ませたせいか、体が冷えて風邪をひいてしまったようだ。食事の量が減ったり生活リズムが崩れたので、いろいろな原因が考えられる。かえって体を壊すくらいなら、1日くらいシャワーを浴びなくてもよかった気がする。
歯が痛いだけでなく、喉が腫れて全身もだるい。抜歯後の回復を早めるには体調維持がマストだが、こうなってしまうと仕方ない。風邪をこじらせるようなら、一週間後の抜歯は無理せず延期した方がよいか迷っている。