『年収は住むところで決まる』という本を読んで、にわかに都心に引っ越してみたい気がしてきた。
期待される年収の上昇分は家賃の値上がりで相殺されるので、貯蓄可能額はあまり変わらないだろう。それよりも同業者のコミュニティーに近くなることで、情報交換したり仕事を融通できる生産性・収益向上のメリットの方が大きい。
とりあえず都心にほど近く生活環境も充実した、二子玉川の付近を散策してみた。駅前ショッピングの方が注目されがちだが、このエリアの魅力はむしろ裏手の公園や河川敷にある。
自然が豊かなイメージ
プライベートな居住条件としては、散歩やジョギングが趣味なので広い公園が近くにあるとうれしい。また、自転車で郊外にアクセスできるサイクリングロードをそなえた多摩川・荒川沿いだとさらにありがたい。日常の足は電車より自転車派なので、駅より河川敷や遊歩道に近い方が楽だ。
ひとまず土地勘のある多摩川沿いに、シェアオフィスも充実していそうな二子玉川で賃貸物件を探してみた。RC造のワンルームで、探せば共益費込み5万円くらいから空き部屋が出ている。二子玉川から渋谷までは、新宿~吉祥寺くらいの距離。246号沿いに、自転車でも都心にアクセスできる。そして多摩川にすぐアクセスできるのが最大のメリットだ。
物件の下見がてら周辺を歩いてみると、駅前の高島屋やライズの商業施設の裏手に素晴らしい公園が存在することがわかった。再開発が完了した二子玉川は「お金持ちしか住めない」というイメージがあるが、「川や公園が近い」という意味ではかなり恵まれている。
まわりを国道246号、環状8号、第3京浜道路に囲まれているので、ピンポインで大気汚染が心配な反面、車での移動には便利だ。さすがに車を所有して駐車場は借りなくても、たまにカーシェアして東名道や京浜道路を利用することができる。
二子玉川公園にあるスタバ
駅前からライズ~楽天本社を越えて、ペデストリアンデッキ沿いに二子玉川公園にアクセスできる。途中にある高層マンション群の専用公園とでもいえそうな立地だ。周囲の自然公園に比べると人工的な計画だが、起伏を生かしたランドスケープがおもしろい。
公園随一の観光スポットといえそうなのが、丘の上につくられたスターバックスだ。公園側を見下ろすテラスは特等席で、平日昼下がりでも満席の大人気だった。
しかしこの公園の見どころは、スタバ脇の広場から多摩川の方を見下ろすビューポイントにある。左手に武蔵小杉の高層ビル群を見込み、空気が澄んでいれば右手に富士山や丹沢の山々も望めるだろう。
コーヒーをテイクアウトして、この階段に腰かけて一服するのは至福のひとときだ。代々木公園や井之頭公園といった都心の広い公園でも、さすがにここまでの眺望は体験できない。
上野毛自然公園
二子玉川公園から北西に歩くと、上野毛自然公園にアクセスできる。こちらも駅前から徒歩圏内だ。自然公園は小規模だが、斜面をに沿って遊歩道が縦横無尽にめぐらされている。ここを毎日ウォーキングすれば、相当いいエクササイズになりそうだ。
頂上にあるひっそりとした公園には桜が植えてあり、これから花見で盛り上がりそうだ。駅前の公園に比べて、ほとんど訪れる人はいない。人けがなさ過ぎて心配かもしれないが、穴場のにおいがプンプンする。近くにあるとうれしい公園だろう。
上野毛公園から稲荷神社、五島美術館にいたる傾斜地は連続的な緑地になっていて、自然に恵まれている。車どおりも少なく静かで、近くの瀬田と並ぶ高級住宅街なようだ。上野毛駅・環八道路の方向にはきつい坂道になっており、そのまま斜面沿いに東に向かうと等々力渓谷にたどりつく。
等々力渓谷と日本庭園
二子玉川から歩くとなると30分くらいかかるが、等々力渓谷公園はこの地域の観光名所だ。環状8号の下に交差して、長さ1kmくらいの遊歩道が整備されている。
「渓谷」といわれるだけあって、小規模ながら地形は本格的。ところどころ崖の斜面に断層も見える。北側のゴルフ橋付近は、川側に手すりがないので、ちょっとしたスリルも味わえる。
ところどころ道を譲らないと歩けないくらい狭いところもある。休日はかなり混雑すると思うので、よろけて川に転落する人も出てくることだろう。途中で川に降りて水遊びできそうなスポットもあるが、さすがに立地的に水質はかんばしくない。魚も棲まず、ドブのような臭いが漂う渓谷だ。
川沿いには等々力不動尊や日本庭園といった見どころもある。小規模な庭園だが、その上にある芝生広場の見晴らしがすばらしい。9時~17時(冬季は16:30)の開園時間の間、居心地の良いベンチは取り合いになると思う。
ここまで上がって来る観光客は少ないので、平日、芝生公園で読書や昼寝ができたら幸せだろう。
買物より自然の豊かさが魅力
二子玉川の賃料相場が高いといっても、タワーマンションが異常なだけ。築年数の古い低層住宅は、山手線内側に比べればリーズナブルな方だ。
武蔵小杉も似たような雰囲気の街だが、「自然の豊かさ」という面では二子玉川の方がすぐれている。パタゴニアやbillsが出店しているのも、アウトドア・健康志向というイメージ向上に一役買っている。
駅前のデパートで買い物することはなくても、裏手の公園や河川敷でくつろげるメリットは大きい。通勤の必要がなく、同じ家賃を払うなら都心より二子玉川の方が有利だと感じた。そのまま西の多摩丘陵の方に行けばもっと自然は豊かだが、仕事上の都合と住み心地のバランスがちょうどよい。
個人的にはショッピングの利便性より、オフィス街として乗数効果が高まる方を期待したい。楽天以外の企業も移ってきて、渋谷エリアと連続したITベンチャーの集積地になるとおもしろい。近くに渓谷があるという意味では「なんとかバレー」みたいなネーミングも、二子玉川~等々力エリアなら無理がない。