若きトム・クルーズが出演する80年代の名作映画『トップガン』。ストーリー内容のレビューに引き続き、どうでもいい小ネタを紹介しよう。最後に2020年公開予定のトップガン2について、予告編の映像から適当に内容を推測してみる。
(以下ネタバレ)
パイロットウイングスの元ネタか
『トップガン』のストーリー終盤で、「卒業パーティーの最中に出撃指令」というのはさすがにうけた。1990年に発売されたスーパーファミコンのゲーム「パイロットウイングス」で、課程をクリアするといきなり実戦に飛ばされたエピソードを思い出す。
スカイダイビングやハンググライダーの練習を目的とした、平和なフライトクラブ。クリアすると、なぜか訓練もしていないヘリコプターで麻薬シンジケートを壊滅するよう、指令がくだされる。
しかも裏面はアホみたいに難易度が高く、スクールを好成績で卒業したトップガンでも、たやすく地対空ミサイルで撃ち落とされる。敵は絶対に麻薬組織なんてチンピラでなく、高度に訓練された特殊部隊に違いない。
オスプレイで突撃せよ
今思えば、パイロットウィングスの元ネタはトップガンだったのかもしれない。そしてこのゲームの異常性を映画のシナリオにたとえると、
「すぐに敵国の旅順要塞に特攻を仕掛けよ。ただし使用機はオスプレイで」
という無茶振りだ。
いくら訓練校のエリート揃いといえども、新型ヘリの操縦までは訓練していないだろう。おそらく「F-14トムキャットは整備中」とかの理由だ。そしてターゲットはいつの時代?どこにあるの?ミラマーの海軍基地から燃料はもつの(片道分ですか?)と、インポッシブルなミッションについて、ふつふつと疑問がわいてくる。
この場合、単に「トップガンは他の奴より成功率が高そう」という理由で選ばれたにすぎない。しょせん兵士は戦略上の捨て駒である。きっとエルヴィン団長みずから陽動作戦を指揮しつつ、裏からランボーのようなリヴァイ兵士長が侵入して寝首をかく作戦だろう。
「トップガン」とは鉄砲玉の隠喩である。
空中戦の理解を助けるBGM
戦闘機同士の空中戦が、映像表現としてストイックなテーマであることは、前回の記事で触れた。
たとえばラストで戦意喪失した敵のミグ2機が「離脱した」とコメントされても、飛行機が飛んでいるだけの映像からはそうとも見えない。むしろ反撃に出てきそうな勢いだ。エンディングに向けた平和なBGMが同時に流れ始めて、観客としては「やっと終わった」と実感することができる。
2017年に公開されたクリストファー・ノーラン監督の『ダンケルク』も、まさにこの空中戦描写に長けた映画だった。『トップガン』も同じくストーリーは単調だが、密室劇としての空中戦は見どころが多い。
そして、全体的に戦争映画と思えないポップなBGMが、シナリオのわかりやすさを助長している。大ヒットする大衆映画はここまでサービスするという、見本のようなサウンドトラックだ。
80年代ファッションと流行歌
作中ずっと後ろで流れているアメリカの80年代歌謡曲は、強烈に時代性を反映している。
Kenny Logginzの”Danger Zone”や”Playing with the boys”という流行歌が使われ、前者は日本のCM曲としても採用された。表現要素のとぼしい空中戦シーンでは、これらのベタなBGMが状況の理解を助けてくれる。
映画『トップガン』では、日本のバブル時代に相当する80年代アメカジファッションをお勉強できる。男も女もブルージーンズに白Tシャツで、革製のフライトジャケットを羽織るのが粋とされていた。
そして訓練学校では、なぜか裸でシャワーを浴びたり、ビーチバレーに興じるシーンがたくさん出てくる。さすがにグースが死んだ直後、マーベリックがパンツ一丁で登場する必要はないと思うのだが。
筋肉番付でいえば、もっとガチムチな俳優も出てくる。しかし、若いトム・クルーズの裸体をおがめるという意味でも、トップガンは貴重な映画といえる。
米軍戦闘機は横田基地で見られる
第2の主役といえるF-14トムキャット(のような戦闘機)を東京近郊で見られるポイントとして、在日米軍の横田基地が挙げられる。
そもそもF-14はもう引退して、国内に存在しないのかもしれない。機種や型番に詳しくないので多分間違っていると思うが、それっぽい見た目の写真を1枚紹介しよう。
毎年9月に行われる日米友好祭では、民間人もパスポートなしで基地内に入れる。巨大ステーキやハンバーガーの屋台も売りだが、当日の滑走路には自衛隊機と並んで米軍戦闘機や輸送機も勢ぞろいする。2020年のトップガン2公開に合わせて、横田基地友好祭の来場者も急増しそうな予感だ。
展示してあるだけならいいのだが、実際に戦闘機が発進するときの騒音はすさまじい。あっという間に視界から去るが、10秒くらい持続的にバリバリと雷が鳴り続けるイメージだ。アフターバーナーを点火している最中は、夜空に火の玉が上がったように見える。
トップガン2はぜひ映画館で
固定翼状態のオスプレイが発する重低音も、建具が揺れるほどすごい。しかし、戦闘機が離陸する際の爆音に比べればたいしたことない。近隣住民にとって、もっとも厄介なのはオスプレイよりトムキャットの仲間たちだろう。
その意味では、『トップガン』の続編はぜひ映画館で鑑賞した方がいい。戦闘機のエンジン音も見どころ・聴きどころのひとつ。花火大会を生で見るのと、テレビで見るくらいの違いがあると予想される。
2020年に公開予定の続編で、マーベリックはトップガンの教官として登場するらしい。グースの息子も出てくるとのことなので、『クリード』のロッキーみたいな役回りになりそうだ。
今度の敵はエイリアンか?
しかし事前に公開された予告編を見ると、壮年に達したトム・クルーズ=マーベリック教官もコックピットに座っている。『ミッション・インポッシブル』であれほど生身のスタントにこだわる俳優が、指令室で大人しくお茶を飲んでいるわけがない。
冷戦終結後の仮想敵国がどこなのか気になるが、高層ビルの立ち並ぶ都市部で空中戦が行われていたりする。もしかすると今度の敵は、『インデペンデンス・デイ』みたいな地中外生命体なのかもしれない。
トップガンシリーズはトム・クルーズと戦闘機さえカッコよければ、ほかの設定はなんでもオッケー。そんな開き直りを予感させるプロモーション映像だった。