TUMIと並んで人気のビジネスバッグ、BRIEFING。MILスペックのタフなバリスティックナイロン素材で、表についたミリタリー調のナイロンテープが特徴だ。
フォーマルな革鞄と別に、自転車通勤で使えるナイロンバッグを探していたら、好みに合う製品が見つかった。ナノ・ユニバースの別注モデルで、ショルダーベルトを省いた手提げとバックパックの2way。
ありそうでなかった組み合わせ、そして考え抜かれたミニマムな仕様が非常に便利と感じた。通勤や出張で1年間ハードに使ってみた、別注ブリーフィングバッグの魅力をレビューしてみよう。
ITエンジニアに人気の3wayバッグ
ブリーフケースとバックパックを兼ねた3wayのナイロンバッグが人気だ。重い荷物を運ぶには、やはり手で持つより背中に背負った方が楽に感じる。ほかにも両手を使って運ぶ荷物がある場合、ショルダーで肩掛けしたりリュックになるバッグは重宝する。
特に自転車に乗る際は、バッグを背負ってハンズフリーにならないと危険だ。ジャケット姿にリュックというのは正直さまにならないが、背に腹は代えられない。目的地に着いたらベルトを格納して、手提げ型のブリーフケースにカモフラージュすればよい。
純粋な機能性以外に、隠しポケットからベルトが出てくるギミックも人気の理由だろう。ガジェット好きのミニマリストとしては、トランスフォームする多機能アイテムに憧れる。何となく筆記具のマルチペンと同じで、IT系のエンジニアやプログラマーが愛用しているイメージがある。
小回りの利く手提げかばんでありつつ、移動時は快適に背負える。そして人前に出てもビジネスバッグとして恥ずかしくないルックスの製品なら、365日活用できる万能アイテムといえる。
手提げとリュックの稀な2way
しかし3wayのバッグを観察すると、肩掛けとリュックの用途がかぶっていることに気づく。ショルダーベルトでさっと肩に掛けられるのは便利だが、長い距離を歩いたり自転車に乗るときはバックパックの方が便利だ。特に前傾姿勢でロードバイクに乗ると、ショルダーバッグが体の前に滑ってくるのがわずらわしい。
突き詰めれば、3wayのハンズフリー形態は手持ちと肩掛けのどちらかでよい。そして手放しで作業するなら、ショルダーよりバックパックの方が安定して便利だ。「手提げ+ショルダー」という2wayバッグは世にあふれているが、「手提げ+リュック」という2way製品は、あまり見たことがない
バックパックになるならショルダーベルトは必要ない。側面のアタッチメントも省略できるから、構造がシンプルで重量も軽くなるはずだ。手提げからバックパックに変形し、なおかつ仕事用に使える雰囲気のビジネスバッグ…長年探していた製品をついに発見した。
実はMADE IN USAでない
BRIEFINGがnano・universeとコラボした別注2wayバックパック。2016年に販売された製品で、残念ながら今は店頭に並んでいない。現行ブリーフィング製品の中でも、このタイプの2wayバッグは手に入らないようだ。
タグを見ればわかるとおり、BRIEFINGロゴの下にMADE IN USAの記載がない。実はこのブランドには高額製品と廉価帯の2ラインがあり、本製品は中に小さくMADE IN CHINAとタグが挟まれている。
製造元の違いは素材の厚みから判別できる。米国製の方はディポンのバリスティックナイロンを使っていて、耐久性は最高だが持ってみると結構重い。TUMIやBRIEFINGのバッグが見た目以上に高価なのは、単純に材料費や加工費が高いという理由もある。
コーデュラナイロンでも強度は十分
高強度のバリスティックナイロンは素材が厚すぎて縫製が難しい。軍需用の工場でないと作れないというエピソードが、ブリーフィング製品の価値を高めている。ブランドのコンセプトブックを読むと、そのあたりの逸話や苦労話が披露されていて興味深い。
中国産のこの別注製品は薄手のコーデュラナイロンで、USAモデルに比べればずっと軽い。それでも1,000デニールの糸が使われているので、通常のナイロン素材よりは何倍も強度がある。
MADE IN USAにロマンはあるが、日常利用としてはコーデュラナイロンでも十分な品質だ。1年間ハードに使いこなしたが、表面が毛羽立ったり糸がほつれるようなトラブルは出なかった。むしろ持ち運びに便利な軽さを追求すれば、コーデュラやリップストップナイロンの方が有利。価格的にリーズナブルなのがうれしい。
リュック用のベルトも頑丈
バックパック用のベルト収納機構は、ほかの3wayモデルと同じ。上部のポケットから取り出したストラップの端部を、ワンタッチで留められるようになっている。プラスチック製のバックル部分は汎用品のようだが、着脱を繰り返しても耐久性は問題ない。
ベルトを収納してジッパーを閉じれば、ほとんど普通のブリーフケースに見えるのが本製品の売りだ。ベルトを出したまま手提げスタイルで持ち運ぶこともできるが、背負わないときは閉まった方が見た目的にスマート。目的地について顧客を訪問する際は、手提げ型のバッグとして使っている。
ベルト部分は思ったより幅広なので、重い荷物を背負っても肩が痛くならない。汚れたり汗臭くなったら、ネットに入れて洗濯機で丸洗いできる。出張先でそのまま観光したり、山に登ったりしても問題ない品質といえる。
長さ調節バックルの締め付けが弱いのか、背負っているうちにベルトが伸びてくるのが難点だ。一方で、余ったストラップを束ねるゴムバンドが付属しているのは、地味にありがたい。
短いハンドルがかえって便利
側面のハンドルは長辺と短辺の2か所についている。手で持つのに最低限の長さしか用意されていないのが、逆に便利だと感じた。
バッグから出っ張りが少ないので、持ち運び中に引っかかることがない。中身を出し入れする際も取っ手が邪魔にならない。ぎりぎり手首を通せる隙間はあるので、バッグを上腕で支えながらスマホや手帳を確認したりもできる。
ハンドルが短いので、持ち方としてはアタッシュケースや小型のスーツケースに近い感じになる。トートバッグのようにハンドルが長いと肩掛けできる利点もあるが、手で持つとブラブラ揺れて邪魔になる。最小限の取っ手でも、安定してコンパクトに持ち運びできることがわかった。
ジッパー全開できて出し入れ便利
この2wayバッグはスーツケースと同じ仕組みで、ジッパーを全開すれば180度フラットに展開することができる。出張時に荷物を詰め込む際は、ベッドの上に風呂敷のように広げてパッキングできるのが好都合だ。
マチ幅は9cmで薄型だが、面積は広いためA4ノートや15インチのノートPCも余裕で収まる。1泊2日程度の出張なら、着替えも含めてこれ1個で十分間に合うサイズ感だ。電車の網棚や機内の上部収納スペースから出し入れする際も、余計な出っ張りやストラップがないのでスムーズに感じる。
使い勝手としては、ビジネスバッグより「背負える小型スーツケース」とでも表現した方が適切かもしれない。コンテナのような四角い形状で無駄がなく、収納効率も高い。
ポケットの数が少ないのはOK
ポケットは外側に1つ、内側にもジッパー付きの小物入れがついている。どちらも中はバッグ内全体に広がっているので、大きなものを入れても重なって厚みが出にくい。
財布や手帳の小物類は、外側の付属ポケットで一元管理できるのが効率的だ。多機能性を売りにして、ポケットをたくさん取り付けたバッグがあるが、どこに何を入れたかわからず中身を探しにくいというデメリットがある。
普段使いでも出張でも、小物入れのポケットは大き目のものがひとつ付いていれば十分だと感じた。その方が構造がシンプルでメンテナンスが楽なうえ、重量もかさまない。
別注モデルの見えないこだわり
独自の2way機能だけでなく、全体的に余計な機能を減らして軽量化を図った製品といえる。ポケットが少ない、持ち手が短いというのは、使ってみると逆にメリットを感じる。ジッパーが3方全開できるのも地味に便利だ。
ファッション性重視のセレクトショップ別注モデルかと思ったが、ブリーフィングの正規ラインより工夫や改良点が多いと感じた。アメリカ製のMILスペックという押しの強さはないが、研ぎ澄まされたデザイン性を感じる。
ショルダーベルトを省いた2wayというコンセプトも、きっとそこから出てきたのだろう。日ごろ持ち運ぶ道具には、最低限の機能しか求めないというミニマリストには、うってつけといえる。
ビームス別注や軽量生地の3way
ナノ・ユニバースの別注2wayモデルは廃番で、中古市場でもなかなか見かけない。今からブリーフィングの3wayバッグを買うなら、ビームスの別注ラインやリップストップナイロンの軽量モデルがおもしろいと思う。
バリスティックナイロンのC-3ライナーはブリーフィングの定番だが、最近は生地が薄手の軽量モデルも多く出している。20周年記念のモデルやブランドタグなし、オールブラックの限定品もたまに出るがすぐ売り切れてしまう。
次々発売される新製品は気になるが、丈夫すぎてめったに買い替える機会がないのが悩ましいブランドだ。バリスティックでもコーデュラでも、ていねいに扱えば10年は余裕で持つと思う。