文具好きとしては、財布と一緒に手帳も持ち歩かないと落ち着かない。スマホも加えた3点セットは、現代におけるビジネスマンの必須アイテムといえる。これらをいかに小型化し、可能なら兼用・合体できないかというのが、ミニマリストを悩ませる永遠のテーマだ。
10年近く愛用したミニ5穴のシステム手帳を卒業して、しばらくはカードサイズダイアリーで間に合うと思っていた。ミニ財布に挟んでしまえば、持ち歩くのはスマホ・財布の2点セットで済ませられる。
究極形態と思われたこのツールをなぜ手放すことになったのか、使いにくいと感じた理由を整理してみたい。持ち物は増えるが財布と手帳は分離して、さらにメモ用のノートも分けた方が便利な点が多いと気づいた。
ポーター製ミニ財布の問題点
ポーター・B印ヨシダの別注財布はナイロン製で、見た目がカジュアルすぎる。実用上は軽くて丈夫で何の問題もないが、人の目に映る姿はどうしても子供っぽくなる。自分一人で使っている分には申し分ないが、にわかに仕事でお客さんと会うようになると、違和感を覚えるようになってきた。
また、中央のカード収納部がマジックテープで閉じる構造なので、人前でべりっと剥がすのが意外と騒々しい。昔、アウトドアメーカーのナイロン財布を街中で使っていて、同じ問題点を感じた。
ポーターは財布にマジックテープを多用するが、開くのがうるさいしジッパーより力がいる。くっつけたつもりで接着がゆるかったりするときもある。ミリタリー用とかでなければ、財布や手帳の開閉機構にマジックテープを使うのはスマートでないと思う。
特に本製品はPORTERのタグが目立つので、B印やBAMBOO SHOOTのロゴ、別注という薀蓄を知らなければ、中高生が持つような安価なモデルと一緒に見える。
このブランドが嫌いなわけではなく、むしろ常用しているバッグ類はポーターばかりだ。ただ他人とあまりにかぶりまくるので、普段はあえてロゴが目立たない商品を選んでいる。
スノッブなミニマリストという矛盾
マーケティング的には「スノッブ効果」と呼ぶらしい。「まわりが持っているから買いたくない」という心理があてはまる。ミニマリストを目指すなら、こういう余計なこだわりは捨てるべきなのだろう。ブランドや世間体という迷妄から解放されれば、100均や無料の買物袋で用は足りるはずだ。
歳をとればファッションに関する執着心も弱まると思ったが、一方で予算と選択肢が増すため煩悩も膨らんできた。「使えれば見た目はどうでもいい」と思う一方で、「いずれ死ぬ前に一度は究極の製品を使ってみたい」という気持ちもある。文具や革小物、時計やガジェット類など、身の回りの道具すべてに共通する。
今回、安価な中古品だが背伸びしてエルメス製品を買い求めたのも、そういう心理がある。そして持ち物の中に高級品が加わると、ほかの装備も足並みをそろえてグレードアップしたくなることがブランドの魔力だ。とりあえず手帳に合わせて、財布も革製にそろえたくなってきた。
カードサイズダイアリーの問題点
財布を革製にグレードアップすることを考えると、今度は相対的にカードサイズダイアリーがお粗末に見えてくる。道具としての格をそろえたいというか、サブ手帳ならともかく、取引先と仕事の予定をすり合わせるのに、これだとちょっと恥ずかしい。
また、カード2枚分の面積に詰め込まれた月間スケジュールだと、フライトや打合せの予定が収まらない事態になってきた。フリーな期間はこれで十分間に合うのだが、本格的に仕事を引き受けると紙面スペースが心もとない。
移動中や散歩しながら、思いついたことをジョッター的に付箋にメモしていたが、これもカードサイズだと間に合わなくなってきた。買物メモくらいなら十分足りる。しかし1時間くらい歩きながらブレストすると、付箋が10枚くらい必要になってしまう。
さすがに収拾がつかないので、LIFEから出ている名刺サイズのメモ帳を挟んでみた。一見便利だが、めくるたびに紙がはがれてしまい、使用感は普通の付箋と変わらない。
財布の中でよれないよう厚手の情報カードを挟むことも考えたが、そもそもカードや名刺サイズのメモ帳だと、面積が足りないのが原因に気づいた。
結局、カードサイズのダイアリーが手狭になってきたというのも、エルメス手帳に買い替えた理由のひとつ。ハンディピックのスモールサイズリフィルから、一回り大きなパスポートサイズに変更してみて、紙面が広がった便利さを実感している。
手帳とノートを分離すべき3つの理由
財布・手帳の検討と別に、使いやすいノートの研究も進めていた。取引先との打合せで、手帳のリフィルにメモを取るには、そのサイズに関わらず限界がある。
まず、手帳とノートを兼用していると、うっかり人前でスケジュールが見えてしまうことがあって恥ずかしい。特に仕事中だと、別案件の機密スケジュールが漏れてしまったりしてまずい。エルメス手帳カバーのように、ダイアリーとメモ用のリフィルを分離して差し込むならリスクは減らせるが、コンプライアンス的に完ぺきではない。
次に、プロジェクトの内容によってはバイブル~A5サイズの手帳でもメモを取るスペースが足りない。ちょっとポンチ絵を描いて情報共有するとか、卓上で複数人と共有するのにプライベートな手帳はそぐわない。
さらに、打ち合わせの場面では180度開けるリングノートが圧倒的に便利だ。綴じノートや手帳を手で押さえながらメモを取るのは意外とストレスを感じる。そして、180度開けるシステム手帳というのはめったにない。
思いつくのはアシュフォードのエレンという限定品くらいだ。販売終了してから続々と後継製品が出ているところをみると、「180度開ける手帳」というのはニーズがあったのだろう。
現行製品のレクタングルMICOR5はミニ5穴サイズなのに13,000円もして高価だが、いつか試してみたい。ペンホルダーは付属しないが自作すれば間に合うだろう。
財布・手帳・ノートの3つに分離
会議や打合せでの利便性を優先すると、ドキュメントスキャナーの規格に合うA4サイズのレポートパッドが一番だと思う。あるいは同サイズでミシン目入りのリングノート、マルマン・スパイラルの40枚入りがベストだ。
バッグ内での収まりや持ち運びやすさを優先するならB5サイズでもいいが、テーブル上で共有するならA5までが限界だと思う。サイズ的な観点以外に、上記の理由から手帳を打ち合わせで兼用するのは推奨されない。
手帳内のリフィルは、個人的なメモ程度にとどめた方が無難だと思う。とりあえず財布と手帳はしばらく分離して使ってみることにしたが、用事があるときはノートも別に持ち歩くようにした。
今のところスパイラルノートか、コクヨのソフトリングノートが便利だと思う。利用シーンや持ち運ぶバッグによっても最適な組み合わせは変わってくる。革小物に比べればノートは安いので、いろいろ使い比べて評価してみようと思う。