イケアめし。まずいと評判のIKEAレストラン北欧料理を検証

IKEAのウリは安い家具だけでない。

もうひとつはショップ内のレストランで提供される数々のスウェーデン料理。およそ今まで日本人が味わったことのない珍奇な食物を楽しめる。

期待を裏切らない本格派すぎて、口に合わないお客さんも続出。そのせいか「イケアはマズい」という噂が後を絶たない。

3年ほどイケアに通って開拓した、レストランのおもしろメニューを紹介しよう。

(2020年1月12日更新)

イケア名物の北欧料理

イケアのレストランはたいてい2階の真ん中くらいにある。

巨大な店内を歩き回って疲れたら、ここでひと休み。買い物に飽きた子どもたちを遊ばせるスペースも用意されている。

イケアのレストラン

そしてイケアレストランで提供されるのは、庶民にとってなじみの薄い本格北欧フードばかり。

だだっ広いショールームをめぐるだけでなく、めずらしい料理を試してみるのがひそかな楽しみだ。1階売り場のホットドッグやソフトクリームだけで、安く食事を終わらせてしまうのはもったいない。

家具などそうそう買い替えるものではない。しかし北欧食堂でランチやカフェを楽しむためだけでも、イケアを訪れる価値はある。

賛否両論のイケアめし

イケアレストランのドリンクバーは100円と格安。

しかしフードメニュ-はそこまでリーズナブルでもない。そのうえ食べてみるまで味が予想できない運要素も含まれている。

吉と出るか凶と出るか。良く言えばエキゾチック。悪く言えば激不味い

イケアレストランの北欧料理

伊太飯ならぬスウェーデンミール。イケアめしを制覇せずしてイケア通は名乗れない。

個人的に「うっ、これは…」と思ったイケアめしをピックアップしてみよう。

衝撃のアークティックブレッド

イケアレストランの中では比較的安く、70円で食べられる薄型の食事パン。

見た目はどちらかというと巨大なクラッカー、もしくはフォッカッチャのような感じだ。

イケアのアークティックブレッド

かじってみると期待したようなサクサク感はなく、グニョッと口の中で潰れるイメージ。

そして味はしない。プレーンというより無味そのもの。塩気のあるクラッカー/フォッカッチャという期待は見事に裏切られる。

アークティックブレッドを始めて口にしたときは、これが食べ物なのかと驚いた。

たとえるならば「湿ったワラ」。完食するのは罰ゲームに近いといえる。

アークティックブレッド

アークティックブレッド

何かの間違いで廃棄予定の不良品に当たってしまったのだろうか。

スウェーデンではこれが伝統食らしいので気の毒だ。その名も北欧(arctic)。現地ではフランスパンのようにありふれた存在なのだろう。

たしかにイギリスの料理もたいしてうまくないことで知られている。気候が寒冷になると食材の選択肢や調理のバリエーションが限られ、味覚が衰えるのではなかろうか。

コスパを求めるなら、さらに安い50円のロールパンを選んだ方がいい。

イケアのロールパン

ロールパン

これとて別においしいわけではないが、食べ物かどうかわからない何とかブレッドよりマシだ。

ほかのおやつは問題ない

アークティックブレッドと似たようなバタースコッチクッキー(120円)も試してみた。

バタースコッチクッキー

バタースコッチクッキー

おそるおそる口に入れたが、こちらは案外普通の味。湿っぽい食感は似ているが、味は濃厚で北海道土産のマルセイバターサンドのよう

どちらも安いとはいえ、アークティックより1.7倍も高い値段がそのままクオリティーに反映されているように感じた。

イケアのシナモンロールとワッフルも別に味は悪くない。穀物メニューのなかでは北欧ブレッドだけが突出して味がおかしい。

イケアのシナモンロールとワッフル

シナモンロールとワッフル

イケアのパン類はいずれも食感がしっとり・しめやかなのが特徴だ。

ノルウェーやスウェーデンは老後の介護制度が手厚い福祉国家として知られている。日常の食事も咀嚼力が弱ったシニア向けを意識して、柔らかめに調理されているのかもしれない。

ホットドッグのパンがおかしい

イケアのエントランス横で売っているホットドッグは1本100円。2020年1月現在は80円に値下げされている。

イケアのホットドッグ値下げ

上階のレストランではなく1階でしか手に入らない、客寄せ格安メニューのひとつ。

途中からピクルス・オニオンが有料化されたので、最安で頼むとパンにソーセージを挟んだだけになる。ケチャップとマスタードは使いたい放題だ。

イケアのホットドッグトッピング有料化

コンビニの肉まんを買うような値段で、大きなホットドッグが食べられるのはうれしい。しかし味に期待をしてはいけない。

イケアのホットドッグ

ソーセージはまだましだが、上階レストランにある1本100円のプレーンソーセージに比べれば格は下がる。業務用スーパーの冷凍品でバルク販売されているたぐいのものだ。

そしてホットドッグのパンはどこで仕入れたのか、不思議なほど味気がない。

外側はパリッとしているのだが、中身はモサモサしたスポンジ層。パンというより、まるで紙を食べているような気分になれる。

同じ肉料理でもイケア名物のスウェーデン・ミートボールは一皿599円。

イケアのスウェーデン・ミートボール

スウェーデン・ミートボール

ミートボールの値段で格安ホットドッグが6本食べられると思えば、クオリティーは知れたものだ。腹だけは膨らむが、あまり幸せにはなれない。

それでも値段だけは安いので、ホットドッグの早食い競争など大量消費には向いていると思う。

謎の漬物、ビーツ

開店直後の早い時間帯にだけ提供される「スウェーデンの朝食プレート(149円)」。

この中に含まれるビーツと呼ばれる漬物も不思議な味だ。

スウェーデンの朝食プレート

スウェーデンの朝食プレート

ロシア料理のボルシチに入れられる大根の一種らしい。乳酸菌で発酵させたピクルスとしても出回っている。

見た目はちょうど輪切りにした赤カブ。

しかしイケアのビーツは野菜というより固めのゼリー。食感もカマボコのような練り物に近い。

イケアのビーツ

ビーツ

ビーツは甘いとも酸っぱいも言えない奇妙な味で、今まで食べたことがない代物だった。2切れくらいならまだいけるが、大量摂取したいとも思えない。

ちょっとしたカルチャーショックを味わえる西洋風の漬物といえる。

ベジタブルメダリオン

ほかにも「ベジタブルメダリオン」という、圧縮したかき揚げのような加工食品も売られている。

見た目はポテトのようだが、食べると香草のような変わった味がする。隣のプレーンソーセージも想像以上に塩っ辛い。

イケアのソーセージとベジタブルメダリオン

プレーンソーセージとベジタブルメダリオン

どうも北欧料理には宇宙食と似た感じの、工業製品に近い造形センスを感じる。

そして日本の東北地方と同様に、寒い地域は保存食が多いせいか、イケアの味付けも濃いめな気がする。

夏の名物ザリガニプレート

イケアレストラン夏の風物詩はザリガニ。

現代日本でゲテモノ贅沢なロブスターを食べさせてくれる貴重なスポットだ。

イケアのザリガニプレート

ザリガニプレート

海外のレストランではわりと高級な食材として提供されるらしい。実際に食べた人の話によると、そこそこうまいとも聞く。

しかしザリガニといえば子どもの頃、田んぼのドブで拾ってくるペット。水槽で育てているとエサや糞で水が淀んで、だんだん臭くなってくる。

どうしても「ドブ川に生息するキタナイ奴ら」というイメージが抜け切れず、食べようという気が起きない。

夏休みはレストランで毎年ザリガニフェスティバルが開催されて、肝試しのような体験ができる。

イケアのザリガニフェスティバル

ザリガニの調理前には泥抜きが必要。寄生虫を殺すため長時間熱湯で茹でる必要もある。

食あたりや感染のおそれを考えると、カキやフグに近いリスキーな食物とみなせる。

サーモンのバリエーション

北欧といえばサーモン。そしてイケアのサーモンマリネはミートボールと同じ定番商品だ。

たまにIKEA FAMILY限定価格の399円に加えて、サービスで2倍増量されたりしている。

イケアのサーモン

べロッとお皿に乗った巨大な肉片は、なかなか国内のスーパーやレストランでは見かけないスタイルだ。大きなサーモンをナイフとフォークで切り分けて食べる。

イケアのサーモンマリネ

サーモンマリネ

そこまでスモーク風味でもないが味は相当しょっぱい。

刺身と思って口に入れると驚かされる。「おかず」なのか「おつまみ」なのか、位置づけが難しい食品だ。

イケアの鮭料理にはバリエーションがあり、焼いた状態で和風サラダ(349円)に混ぜられていることもある。

イケアの和風サラダ

サーモン和風サラダ

和風といいつつアボカドや半熟玉子がミックスされた謎の無国籍料理。

ドレッシングはノンオイルの青じそなので、さすがのイケアも料理の一部はローカライズしているようだ。

マッシュポテトはソースが独特

スウェーデンではマッシュポテトもよく食べるらしい。

普段は定番ミートボールの下に敷かれているポテトだけ、安く単品でいただくこともできる。これだけ大量の練りポテトを食べられる機会はそうそうない。

イケアのマッシュポテト

マッシュポテト

ジャガイモ自体は普通だが、黄緑色のソースは食べたことのない味だ。

グレービーでもデミグラスでもなくスウェーデン風。甘すぎず辛すぎずニュートラルすぎて、つけてもつけなくても変わらない液体。イケアの中ではめずらしい薄味のソースだ。

クリームソースの成分は不明だが「アレマンスレッテン」というシリーズで冷凍ベジボールやポテトと一緒に売られている。

好みによるが、こうした食材を集めればイケア料理を自宅で再現することも可能だ。

IKEAのスイーツフェア

イケアのデザートは流動性が高く、時期によってはこんな椅子型のかわいいケーキも登場する。さらに食後はIKEA365+のグラスを持ち帰れるという特典付き。

イケアのグラススイーツ

グラススウィーツ

2月から3月にかけてのバレンタイン・ホワイトデーシーズンは、スイーツフェアと称してデザートが一気に増える。

イケアのスイーツフェア

この時期しか食べられないレアなデザートも多く、めずらしい北欧スイーツをいろいろ試せる絶好のチャンスだ。

北欧シュークリームのセムラ

なかでもセムラというスウェーデンの伝統的お菓子はおすすめ。

小さいくせに1個299円もするが、固めのシュークリームという感じで日本人の口にも合う。

イケアのセラム

セムラ

見た目も味も楽しめて、セムラはイケアレストランの中でトップクラスの人気商品と推測される。

イケアで「スウェーデン式」をうたった伝統料理は当たり外れが大きいが、このセムラとミートボールだけは安心して食べられる。

甘すぎるアーモンドケーキ

定番デザートのひとつが199円のアーモンドケーキ。ほかのケーキ類よりなぜか値段が安く設定されている。

薄くて小型なわりに中身はギッシリ詰まっている。まるでお菓子のスニッカーズのようだ。

イケアのアーモンドケーキ

アーモンドケーキ

そして味付けが甘すぎる。ネバネバと歯にくっつくので、すぐに虫歯になってしまいそう。

お腹が空いたらアーモンドケーキ。ネットリした油脂とクリームで空虚に胃袋を満たしてくれる。

青と黄色のロールケーキ

もうひとつイケアのデザートで有名なのはスウェディッシュ・フラッグ・ロール。スウェーデン国旗の色を模して青色のスポンジに黄色のクリームが挟まれた合成食品だ。

見るからに身体に悪そうなこの一品。子どもはよろこびそうだが、健康志向の大人はまず手を出せない。

ディズニーランドのトゥモローランドあたりで売られていそうな、人工的エイリアンフードの一種といえる。

派手なわりには期間限定のメニューなので、見かけたら試してみてもいいかもしれない。見た目がグロテスクすぎて、ザリガニと同じくらいハードな一品だ。

正体不明のノルディック飲料

イケアのドリンクバーはたった100円で利用できる。近所にイケアがあれば、ファミレスで長居するよりもリーズナブルだ。

とりあえず誰もが一度は試してみるのがオリジナルの「ノルディックフルーツウォーター」。

イケアのドリンクコーナー

スパークリングのレモン、ラズベリー、シトラス、洋ナシと4種類もそろっている。さらにラズベリーだけ炭酸抜きのバージョンもある。

甘くないフルーツウォーター

見た目は普通のジュースかと思いきや、基本的にはその名のとおり「水」。

ほんのり薄くフレーバーを付けた程度で、たいして甘くもない。イケアのケーキ類が軒並み甘すぎるのとは対照的だ。

イケアのノルディックウォーター

ノンスパークリングラズベリードリンク

ノルディックウォーターとは和菓子に合わせるお茶みたいなものなのだろうか。

炭酸入りならまだ飲めるが、ノンスパークリングのラズベリーを飲んだときの衝撃は今でも忘れられない。味が薄すぎて思わず吹き出してしまった

強いて選ぶなら炭酸入り、そしてレモン味が一番ましだ。おしゃれなカフェやスーパー銭湯に置いてある、スライスレモンを浸けたミネラルウォーターだと思って飲める。

イケアで普通に甘いジュースの飲みたいなら「なっちゃん」かペプシネックスの二択になる。

イケアのコーヒーマシン

一方でコーヒー・カフェオレの製造機はファミレスやコンビニのマシンと同等クラス。特に問題はなく何杯でもおかわりできる。

ジュースが薄まる原因

極薄味のラズベリードリンクにすっかり懲りて、イケアの水は1年ほど遠慮していた。

コーラばかり飲むのも身体に悪そうなので、たまには味を変えてみようと思って久々に試してみた。すると昔飲んだときよりも格段においしくなっている。

甘さが増して普通のジュースに近い。イケア内部でレシピの改良が進んでマイナーチェンジされたのだろうか。

そうかと思えば、やはり薄まった状態で出てくることもなる。機械を観察して理由を考えると、どうやらイケアのジュースマシンは性能にむらがあるようだ。

そもそもここのレストランの収容人数が多いわりに、ドリンクマシンの数が足りていない。土日休日で混んでくると行列になるうえ、回転率が高すぎてひんぱんに補給とメンテが必要になる。

イケアのコーヒーマシン調整中

そのためタイミングが悪いと内用液が足りず、調合バランスが崩れた状態で排出されてくる。

どうやら水分よりもジュースの濃縮液が先に切れるようで、タンクが終わりに近づくと妙に味の薄まったドリンクが生成される

お湯のようなアメリカンコーヒー、色と香りだけつけた水のようなジュース…それらはおそらく機械のエラーに過ぎない。見た目が変だったら遠慮なく捨てて、別のマシンを利用した方が早い。

ちなみにコーヒーマシンに補給される牛乳はメグミルクの特濃だった。普通の牛乳より高いやつなので、イケアに来たらぜひブラックコーヒーではなくカフェオレを楽しもう。

すべてが不味い訳ではない

振り返ってみると、イケアで摂取した数々の料理すべてがマズかったというわけでもない。

アークティックブレッドやノルディックウォーターといった失敗作が強烈すぎて、レストラン全体の評価を下げている。

イケアで感動するほどうまい料理に出会ったことはないが、これらの地雷と個人的に苦手なビーツを避ければ、ほかは問題なくいただける。

単に腹を膨らませるだけの目的なら、イケアの100円ホットドッグほど効率よい手段はない。労働生産性は最高だ。

考えようによっては50円のソフトクリームなど、フラットパックの家具と同じくらい革命的なデフレサービス。ボリュームもそれなりに大きい。

イケアのソフトクリーム

50円ソフトクリーム

要は慣れの問題で、子どものうちからイケアの料理を食べさせれば、ザリガニや塩辛いサーモンもおふくろの味に変わるのだろう。

イケアのレストランはテーマパーク「スウェーデン村」。日本にいながら北欧文化と触れ合える愉快なスポットとして、今後も独自路線を貫いていってほしい。

2020年の目標は食わず嫌いのザリガニを試してみること。夏のシーズンが待ち遠しい。

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