改良型ノート対決。コクヨ・ソフトリング vs マルマン・スパイラル

久々に手帳をリニューアルしたくなって、スケジュール管理と別に「ノート・メモ帳」を分離する方向を検討してみた。昔ながらの大学ノートや綴じノートのほかに、ソフトリングやミシン目入りなど進化した製品も出てきている。

いくつか使い比べてみて、単独ノートとしてはマルマンのスパイラルノートが一番使いやすいと思った。ほかのリングノートに比べた利点を整理してみようと思う。

綴じノートの王者Campus

いわゆるノートといえば、コクヨのキャンパスシリーズに代表される糸で閉じられた方式が代表的だ。表紙にCampusと書いてあるのがいかにも学生っぽいが、昔の受験勉強を思い出して集中できるという人もいるだろう。

建築家の青木淳のように、デザイナーがあえて罫線入りのキャンパスノートをスケッチに使うという外しのテクニックも存在する。あまりにメジャーな国民的商品といえるため、キャンパスを使うとそれだけで「無難、地味、真面目」というメッセージが発せられてしまう。

最近のCampusシリーズも進化していて、表紙がブラック・グレー基調のシックな「大人Campus」、ノート型をした月間・週間「Campusダイアリー」など、魅力的な新商品が出ている。

特にA5サイズで自立できる、卓上カレンダータイプはニッチな売れ筋商品に思われる。オフィスのデスクに置きながら、打合せにも持っていける便利さは、サブ用途のカレンダーとしてツボを押さえている。

あえてキャンパスよりツバメを選ぶ理由

国産メーカーであれば紙の品質は大差ないが、ミドリのMDやライフのベージュがかったLライティングペーパーは、さらに別格に思われる。これらに比べると、3倍も高いモレスキンのノートなど裏透けしまくるクズ紙に見えてくる。さすがに普及品より値段が張るので、めったに書かない日記帳など特殊用途を除いてはツバメノートを愛用している。

ライフ株式会社の商品一覧にツバメノートがあるので、ツバメ株式会社というのはライフの傘下なのだろうか。コクヨのキャンパスと変わらない価格だが、「ツバメ中性紙フールス」という紙でこだわりを感じさせる。

200円くらいの安いノートでも、万年筆の裏写りがそれほど気にならない。キャンパスの紙も同等の品質に思われるが、表紙の色使いが渋いツバメノートの方をよく使っている。

紙に少し色味が欲しければ、高級クリームフールスのクリームノートシリーズが安く手に入る。ライフのノーブルノートと使用感は変わらず、綴じ枚数が少ない分、携帯にすぐれているので、ツバメのクリームノートの方がお気に入りだ。

ライフの秀逸デザインノート

一方、ライフも重厚なノーブルだけでなく、バーミリオン・ピスタチオ・活版ノートという薄型の変わり種ノートを出している。表紙のデザインはツバメに似ているが、書体がゴシックなため古風になり過ぎず、計算されたレトロ感のようなものをうまく演出している。バーミリオンの紙は標準的なクリーム色だが、ピスタチオは薄いグリーンという独特なカラーだ。

KAPPANはその名の通り、罫線が微妙に揺らいで印刷されている。方眼紙でも上下に余白があって、日付やタイトルをメモしやすいのが特徴だ。ライフの活版は傑作だと思うが、他製品に比べると、東急ハンズやロフトの大型店でも扱っているところが少ない。1枚当たりの単価を計算してみたが、この商品群はツバメもライフもたいして変わりはない。

ツバメのコラボや太罫が便利

ツバメはその古めかしい外観と裏腹に、意欲的なコラボ商品や変則的な罫線のノートを多く発売している。特にリュウドのThinking Powerとコラボしたシリーズは、表紙のデザインがおもしろいだけでなく、ページにミシン目入りなので実用性も高い。超小型や変形規格も豊富だが、A5の縦長「ジャーニー」が素直に使いやすい。

また、行間10mmという横太罫のシリーズはペン先太めの万年筆と相性がいい。キャンパスノートで標準的なA罫(7mm)、B罫(6mm)だと、文字が行間をはみ出るので一行空けて書くことになってしまう。U罫(8mm)、UL罫(10mm)という規格もあるようだが、店頭で見かけたことがない。

一方、ツバメの太罫はなぜか近所の文具屋に置いてあり、禁欲的な表紙デザインのSECTIONと合わせて何冊も買わせていただいた。ロフトにはコクヨが豊富に揃っている代わりに、ツバメもマルマンも扱っていなかったりする。文具の流通経路にはすみ分けがあるのだろう。

綴じノートとミシン目の組み合わせ

綴じノートは安定した一体感がその魅力で、講義ノートのように時系列で書き溜めていくスタイルに向いている。資格勉強の際には、科目ごとに何冊か分けてツバメノートを使っていた。適当なレポートパッドに書いてファイルに挟む手間がない代わりに、失敗が許されないという緊張感をもって臨むことができる。

一方、日ごろのメモや打合せ用となると、日によって使わなかったり書く分量もまちまちで、ランダムアクセスという使い方に近い。時には書いたメモをちぎって誰かに渡したり、スキャンしてメールで配ったりもする。

綴じノートを途中でちぎると糸がほどけてしまうので、無差別に使うメモとしてはリングノートやミシン目入りノートが向いている。そのため、使いやすい5mm方眼で簡単に切り取れるThinking Power Noteを打ち合わせで使う時期もあった。表紙がポップなので使える業種も限られそうだが、綴じノートの安定感とミシン目入りの利便性を兼ね備えた名品だと思う。

180度開けるリングノート最大の利点

リングノートの最大の売りは、卓上で180度開いておけるという点だ。綴じノートでも圧力をかければ開いた状態を保てるが、最初や最後の方はどうしても厚みが偏るため、しなってきてしまう。ミーティング中に、常時ノートを開いたまま上から押さえつけるのは相当なストレスだ。

その代りデメリットとして、開いた状態で書こうとすると、手の小指側に金属リングが当たって不快な思いをする。右利きだと左ページが書きにくいので、ページの裏は使わないと割り切れば解決する。せっかくメーカーが裏写りしにくい紙を作ってくれているのだから、それももったいない話だ。

コクヨの新発明、ソフトリングノート

金属リングの不快感を解消する工夫として、2種類の商品が販売されている。また、どちらもミシン目入りで任意のページを切り離せるため、裏表両側から攻めたり、適当に開いたページにメモするというような、シーケンシャルでない使い方にも対応できる。

1つはコクヨのソフトリングノートで、その名の通りリング部分が柔らかい樹脂でできている。用紙を束ねつつ、適度にたわむ素材なため、手で押しても刺激が少ない。方眼でなくドット柄というめずらしいパターンも、意外と使い心地がよかった。

まったく違和感を感じないかといえばそうでもないが、少なくとも標準的な金属製ツインリングよりは圧倒的に使いやすい。また、裏技としてリング部分に細めの筆記具を挟んでも、ペン軸がリングと擦れて傷つきにくいとういメリットがある。

エクリドールのXSは短いわりにそこそこ太いので、サイズはぎりぎり。樹脂製リングがしなってフィットするので、ホールド感は問題ない。

これは画期的な商品だと思って、クリアータイプやブラックの表紙など数種類試してみた。キャンパスノートと違って、パステルカラー以外に渋めのカラーも充実しており、ビジネス用に使いやすい。

樹脂製リングが引っかかりやすい

コンセプト通りソフトリングは便利なのだが、断面がD型をしているためか、時々紙が引っかかるのが気になる。どうやら各リングを縦方向に接続している部品が、ページめくりを邪魔するようだ。特にページを切り離して枚数が少なくなると、スムーズに180度開閉できなくなってくる。

ある程度リングを太くしないと強度を保てないのか、プラスチックが幅広なのも摩擦を高めている要因に思われる。書き心地は劇的に向上したが、リングノートの基本性能である開きやすさが損なわれてしまうのは、残念なポイントだ。

マルマンのスパイラルノートは40枚で

2つ目の商品はマルマンのスパイラルノート。実は50年も販売しているロングセラー商品らしいが、文具店で扱っているところは少ない。リング部分は金属製なのだが、バネ状になっているため荷重をかけると適度にしなる。普通のリングよりピッチが狭いこともあって、手を乗せてもそこそこマイルドなタッチに感じられる。

表紙は無印良品っぽいクラフト紙が標準だが、適度に厚みがあるため立ったままでもメモしやすい。コクヨのソフトリングは表紙もプラスチック製なので、防水性を取るか、ベタベタしない触り心地を取るか、好みが分かれるところだろう。実はソフトリングにもシンプルなクラフト表紙のバージョンが出ている。

マルマンのサイトでは、ソフトリングのように金属スパイラルが「手にやさしい」とはうたっていない。設計段階では意図していなかった副次効果なのかもしれない。薄型の40枚を選ぶと、コイル部分が細くなってさらにメリットが生かされる。

今のところスパイラルが優位

リングの径が狭いのでペンは差せなくなるが、総合的な使い勝手とバリエーションの豊かさからすると、ソフトリングよりスパイラルが勝っているように思う。特にA4やB6といった、ソフトリングにはないサイズのバリエーションも揃っている。

スパイラルノートは後発のソフトリングノートより、サイズや罫線パターンが豊富だ。特に同じ規格で40枚と80枚のバージョンがあるのがうれしい。80枚の方が単価は下がるが、40枚の方が薄くて軽くて持ち運びやすい。打合せ用ならそこまで毎日使わないので、40枚運べれば十分という人も多いだろう。

個人的にはA4サイズの5mm方眼40枚バージョンをよく利用する。ハンズやロフトで見かける機会は少ないが、なぜか西友スーパーの文具コーナーに豊富に揃っていたりする。流通の少ない40枚は、送料負担してでも通販で買うしかないと思っていたが、ひょんなところから入手できたりするので、日ごろの文具店巡回は欠かせない。

最適なノートのサイズ

ノートのサイズはどれがベストかというのも悩ましい問題だ。A4を超えるサイズのノートもおもしろいが、ドキュメントスキャナーで読み取りにくいので却下。ScanSnapのオプションで、A3用紙を折り込みスキャンできるキャリアシートも持っているが、1枚ごとにセットするのがわずらわしい。

A6以下くらいの小型になると、バイブルサイズのシステム手帳とかぶってくる。せっかく単独でノートを持ち運ぶなら、紙面を広く使えるA5以上が候補だ。小学生の頃から使って馴染んでいる規格としては、B5もしっくりくる。

ノートの面積は広い方が作業を妨げないが、A4サイズになると電車の中で開きにくい。また、日ごろ使っているサコッシュタイプのバッグに収まらなかったりする。一般的な事務用文書の規格としてA4にそろえたい気持ちもあるが、何となくA5~B5サイズの方が可搬性は勝ると思う。

ソフトリングの新商品に期待

結局のところ、最適なノートサイズは使う目的や普段持ち運ぶバッグの大きさによって変わってくる。そもそも少量のメモでよければ、手帳で代用できる部分もある。大きめのA4サイズを打ち合わせに持って行っても、メモする内容が少ないときは余白がもったいない。次回も空欄から続けて書くと、後々書類の整理が困難になる。

節約志向、貧乏性の具合によっても、選ぶノートのタイプは変わってきそうだ。価格的な面では、ソフトリングもスパイラルも気軽にリピート可能なプライスといえる。特にソフトリングの方は新商品が続々出てくるから、いずれスパイラルから戻ってくることもあり得そうだ。