京都に泊まる機会があれば、たいていお世話になるデザイナーズカプセルホテルの先駆け、9 hours。
いつの間にか成田空港にも進出していたので、ためしに泊まってみた。ジェットスターの早朝便を予約したのだが、さすがに朝早くて始発でも間に合わない。LCCの第3ターミナルは、9hがある第2ターミナルから歩ける距離にあるので、宿の立地としては問題ない。
空港とは反対のバックヤードにある
京葉線の改札口を出ると、突き当りで第2ターミナルとは逆の右に曲がるよう案内表示がある。いかにも業務用という感じの素っ気ない通路で少々不安になるが、ペットホテルもこちらの方向にあるようだ。
エスカレーターを上って地上レベルに出ると、ピロティーの下に忽然と9hのエントランスが現れる。備品用の倉庫か何かを改装したような、そういう雰囲気だ。
9hのコンセプトを表す単純明快な空間構成
料金は2日前予約で直前だったが、楽天トラベル経由の税込4,800円で済んだ。カプセルホテルにしてはいいお値段だが、空港直結の立地なので仕方ないか。フロントでチェックインしてタオルと寝間着をもらい、ロッカールームで荷物を置いて着替え、洗面所&トイレの部屋へ向かう。
平面図を見ると、ロッカーとトイレとシャワー室が一直線につながり、並行してカプセルが並ぶという素晴らしく単純なつくりになっている。着替える>出す>洗う>寝る、という宿に必要な最低限の機能が、そのまま図面に落とし込まれている印象だ。
京都のオリジナルは、ウナギの寝床型の細長い敷地を縦に積み上げ、階別に男女分けしてエレベーターで行き来するようになっていたが、成田の方がさらにシンプルで、コンセプトがわかりやすくなっている。ここには自販機やラウンジすらない。まるで禅堂のように、決められた作業を淡々とこなすだけだ。
空間が長細すぎて空調が行き届かないのか、各部屋で強力なサーキュレーターが回っていた。見た目はいまいちだが、手っ取り早く空気を循環させるにはリーズナブルな手段だ。
ターミナル前に人知れず広場がある
さすがに喉が渇いていたので、外に出てコンビニを探したが、ピロティ―から出てみると空港の第2ターミナルを臨む、都庁前のような半円型の広場があった。何度も利用している空港なのに、こんな隠れた休憩スペースがあるとは知らなかった。下手なカードラウンジより、開放感があってずっと気持ちがよさそうだ。
シャワーや洗面所はおなじみのデザイン
シャワーブースは京都と似たようなタイル張りで、浴槽はない。独特な香りのシャンプー・リンス・ボディーソープは健在だが、個包装でないので持って帰ることはできない。
9hがどうしてこんなにかっこよく見えるのかというと、その秘密は空間構成と色彩だけではない。たとえばティッシュ1つにしても、余計な箱を見せないように天板に埋め込まれていたり、細部のデザインまでこだわられている。
シャワー室の換気口は、ドアの上に縦長のガラリが埋め込んであって、見るからに特注品のようだ。しっとりした肌触りの人造大理石のような棚板は、まるで高級システムキッチンのようだ。
カプセルに流れる波の音
カプセルルームは、例のマトリックス的な寝床が70個も並んでいて、荘厳な眺めだ。仕切りがないので、出入りの騒音とかいびきが響きまくるのではと思ったが、平日でお客さんが少ないのか、それほどでもなかった。
カプセル内には自慢の睡眠コントロールシステムは入っていなかったが、BGMとして波打ち際の音が流れている。最初はザーザー言っている音がどこから出ているか気づかずに、隣のいびきにしてはでかい音だなと不安になったものだ。普通のアラームとスマホを充電できるコンセントは付いているので、こちらも必要最小限に絞られた機能といえよう。
カプセルホテルは安くて好きなのだが、地方都市にある昔ながらのサウナ付きは、タバコ臭いおっさんばかりで辟易することがある。最初はデザインを見たくて試してみた9hだが、清潔で快適な上に、さほど料金も高くないので、リピーターになってしまった。ぜひスーパーホテルのように、このまま全国展開してほしいものだ。