退職後に合同会社を立ち上げて1年、とうとう決算を迎えた。節税目的で立ち上げた資本金1円の合同会社だが、ブログの広告収入や知人の受託開発を手伝ったりして微妙に売り上げが立った。
それでも合法と思われる範囲でアマゾンでの日用品買い物から出張日当まで、がんがん経費を突っ込んだので、計画通り赤字を出すことができた。給与も月額5万に抑えたので、社会保険は最低限の等級に収めつつ、来年は所得税ゼロ、住民税もミニマムで済む予定だ。
いよいよ夢の無税生活を実現できそうだが、寂しいのはあれほど研究したふるさと納税を楽しめないことだ。控除すべき税額がないので、寄付する意味がない。
まさかの無料版、税務申告ソフト
会計ソフトは無料のフリーウェイ経理Liteで済ませられたが、法人税の申告はいかがだろう。税理士さんに相談すれば、基本月額1万円とか格安で顧問になってくれたとしても、申告作業だけは10万円くらい取られるのが相場である。
2016年にfreeeの税務申告版「クラウド申告freee」がリリースされて、とうとう税務申告もソフトから楽にできるようになったかと思ったが、調べると年間20万円(税抜)もかかるとわかった。これなら普段freeeを使っているユーザーでも、決算書だけ出して申告は税理士さんに頼む方が割安だろう。
一方、フリーウェイ経理の姉妹版にフリーウェイ税務というソフトがあり、こちらも無料版が用意されているとわかった。しかもブラウザから利用できる今どきのクラウド型だ。世間相場で10万以上はかかると思われる税務申告が、無料で済んでしまうとは一体どんなサービスだろう。試しに登録して使ってみた。
無料版はすべて手入力
とりあえずログインした画面の見た目は、フリーウェイ経理と似たように不愛想なボタンが並んでいるだけだ。最近まわりでMacbookを使っている起業家がこぞってfreeeを使っているのは、価格やプロモーションだけでなくデザイン的な観点があるのかもしれない。ださい楽天市場の方がポイント還元率は高くても、気分的にはAmazonで買物したいというというような…
マニュアルを見ながら、とりあえずフリーウェイ経理の方から出力した決算書の科目残高を入力していく。このあたりは有料プランだと自動で取り込みできるようだが、無料版は「手入力しかない」と書かれている。無料なのだから、このくらいの苦労はいとわないとしよう。
無料・有料版ともIEのみ対応
フリーウェイ税務でまず気をつけなければいけない点は、ブラウザがIEのみ対応という点だ。Chromeでも問題なくログインして作業できるのだが、さんざん入力してから登録ボタンを押すと、エラーで反映されないことが何度かあった。
今どきIEを使うのはMUFGの法人向けネットバンキングBizSTATIONを使うときくらいだが、このあたりの不便さも甘んじて受け入れるしかない。フリーウェイの有料版は初期費用30万に加え月額費用まで取られるが、対応ブラウザは同じくIEのみなようだ。
別表の作成手順
法人税申告書の別表作成について、備忘のためメモしておきたい。初年度でしかも赤字の申告なので、必要な書類はごくわずかで済む。自分で別表記入して申告するのは実に9年振りだが、様式はそれほど変わっていないようだ。
①決算書の作成
なにはともあれ決算確定しないと申告書はつくれない。フリーウェイ経理で仕訳の漏れがないかチェックして、決算書を出力する。株主資本等変動計算書も出せるが、ここで資本金の1円を入れていなかったことに気づいた。
(純資産の部)
- 資本金 1円
- 繰越利益剰余金 ▲X,XXX,XXX円
巨額の債務超過を抱えたやばい会社だ。損失はすべて代表者からの借り入れで埋め合わせている。とても人様にお見せできる決算書ではないが、なぜかこれでも大手都市銀行に口座開設できたのが不思議だ。
②内訳書と事業概況説明書
フリーウェイ税務では、各種の内訳書と法人事業概況説明書を先につくる。内訳書を見ながら、決算書の数字が間違いないか確認することにもなる。
いずれもブラウザ上のフォームから埋められるようになっているので、そこはクラウド版の便利な点だ。ときどき接続か切れる不具合に気をつければ、スタバのWiFiでも作業できる。別にセキュリティーとか気にするほどでもない弱小企業の決算なので、公衆回線でアクセスして問題ない。
③別表2、15、16(省略)
決算書に関係ない別表2「同族会社の判定に関する明細書」からスタートする。1人会社なので、当然特定同族会社に該当する。
続いて別表15「交際費等の損金算入に関する明細書」を作成。今期は一人5,000円を超えるような飲食費はなかったから、すべて会議費で済ませている。取引先へのお土産代など、若干の交際費で800万もいかないので、全額損金でOK。
別表16「一括償却資産の損金算入に関する明細書」は、今期10万円を超えるような固定資産の購入がなかったので作成省略。
④別表6関連(省略)
別表6-1「所得税額の控除及びみなし配当金額の一部の控除に関する明細書」関連は、源泉徴収された利息分を控除する書類だ。毎年逆算するのが面倒くさいところだが、今期は預金残高も少なくわずか数円程度だったので、簡単のため別表を作成せずに済ませた。申告して還付されるのも1円くらいのものだろう。
⑤別表5-2、5-1
ここからの別表は相互に関連してくるので、作成する順番に配慮が必要である。フリーウェイ税務では、一部の値は他の別表から自動で入力されるが、完全自動化されていないのがいまいちだ。
別表5-2「租税公課の納付状況」を入力していて気づいたのだが、会社の創立日が10/3だったため、端数切捨てで1期目は11か月分しかカウントしなくてよいとわかった。
赤字でも7万円納付が必要な住民税の均等割りだが、今期は道府県民税18,300円と市町村民税45,800円の合計64,100円で済む計算になる。新しく会社をつくるなら、設立日を微妙に月初の1日からずらしておくのが節税上有効といえる。
別表5-1「利益積立金額及び資本金の額」の繰越損益金にマイナスの赤字分を入れ、納税充当金や未納法人税等の欄に別表5-2で計算した額を入れる。下部の資本金は1円。
⑥別表4、7-1、1
申告作業のメイン、別表4「所得の計算(簡易様式)」も、上記の欠損金額と納税充当金を入れていくだけだ。赤字の申告だと、このあたりがシンプルなのでうれしい。
別表7-1「欠損金又は災害損失金の損金算入に関する明細書」に当期の欠損金額を入力。青色申告でこれから9年、欠損金の負の貯金を積み上げていくのが楽しみだ。
別表1の表紙は、左上の最初の欄に欠損金額を入れて、後は決算確定の日付を埋めておくくらい。赤字なので法人税も地方法人税の欄もすべて空欄でOK。
⑦地方税 6号、20号
続いて地方税の申告書作成。都税事務所から送られてきた書類が、6号様式とその別表14だけだったので不思議に思った。どうやら特別区でない都内市町村に事務所がある場合、別表4-3は提出不要であるらしい。その代り、市役所から第20号様式というのが届いていた。
東京23区外だと、都税事務所と市役所に別々に申告・納税手続きしないといけないのが面倒だ。とはいえ今期は都税・市民税の書類とも、欠損金額と均等割りの納税額を入れるだけなので簡単に終わった。
フリーウェイ税務の注意点として、無料版では6号別表9の「欠損金額等及び災害損失金の控除明細書」など細かい書類を作成できない。左側のメニューにボタンは用意されているが、押しても反応しない。
後々込み入った申告をするようになったら、無料版では対応しきれないという罠がある。それでも割高なフリーウェイの有料版を契約するよりは、不足の別表だけ手書きするか、他のソフトを購入検討した方がよいだろう。
⑧決算書の修正
最後にフリーウェイ経理に戻って、未払法人税等の仕訳を追加し、決算書を修正。赤字でも11か月分で64,100円の住民税納付というのは痛い。黒い三角形が並んだ、見事な損益計算書が完成した。
赤字続きなら個人事業の方がお得?
法人の維持経費と、出張日当を多めに計上できたり退職金を経費化できたりする節税メリットは、どちらが大きいのだろうか。結局、売上が立たなければ、個人事業に戻して国民健康保険に加入した方が、トータルで安く済むのかもしれない。合同会社とはいえ設立費用に6万もかかったし、早まってしまったのかも…
以上でフリーウェイ経理とフリーウェイ税務を手動で連動させた申告書作成は無事完了した。そのまま郵送提出はできないが、まとめてPDFに印刷できるので予備にはなる。
せっかくなので、続いてe-TaxとeLTAXを使った電子申告と電子納税も試してみた。