確定申告してから3か月後くらいに税務署から電話がかかってきた。「個人事業と法人を両方やっているなら、どちらか一つにしてください」との内容だった。
自分の中では個人と法人の事業内容は明確に分けていて、しばらく併存させたい考えだったが、税務署的にはよろしくないらしい。青色申告の控除を二重に受けるのはけしからんということだろうか。電話口では特に義務というわけではなさそうで、ネットで調べた限りでも違法な状態とは思われなかった。
税務署からの勧告により個人事業を廃業
このままスルーしてもよかったのだが、痛くもない腹を探られるのは癪だ。あまり稼げていない個人事業の方は大人しく廃業して、遅ればせながら「法人成り」して事業統合することにした。
廃業の手続きとしては、自分の場合「個人事業の開業・廃業等届出書」と「所得税の青色申告の取りやめ届出書」の2通を所轄の税務署に提出する必要がある。
書式はどちらも国税庁サイトからPDFファイルをダウンロードできて、Acrobat Readerからフォーム形式で入力・印刷できたので楽だった。
税務署窓口での提出時に、「翌年の平成30年分から取りやめ」と書いておくと今年度も青色申告のメリットを受けられるとアドバイスいただいたので、訂正印を押して直しておいた。おそらく今期の個人事業は青色控除がなくても赤字になると思うので意味はなさそうだが、親切に教えてくれたので指示に従っておいた。
セーフティ共済の引継ぎが課題
個人事業を廃業すると、納付月数を稼ぐため低額でしこしこ積み立てていた倒産防止共済の引継ぎが問題になる。法人口座があるゆうちょ銀行では引き落としで掛金納付できず、社会保険料のようにペイジー払いにも対応していない。
今のところ、ゆうちょ銀行で特に不都合はないのだが、いずれ社会保険料も自動引落しに変えたいので、ダメもとで都市銀行に法人口座開設申し込んでみることにした。
法人口座申請と電話インタビュー
向かったのは近所に支店がある三菱東京UFJ銀行。登記簿謄本に法人・個人の印鑑証明書、さらに取引の実績として、ゆうちょ銀行の通帳や、契約書の類をごっそり持って行った。書類は一通りコピーを取って返してもらえるが、審査に数日かかるとの回答でその日は終了。
数日後、銀行支店の上役から電話がかかってきて、社名の由来や業務内容、営業手段など、会社の実態について根掘り葉掘り聞かれた。昔はここまで厳しくなかったが、いろいろ事件があったせいか都市銀行での法人口座開設審査が厳格化されたようだ。資本金1円で、事業内容もアフィリエイトとか、ゆうちょ銀行口座に毎月Googleから入金があるというのも、かえって怪しく思われたのかもしれない。
個人で数十年口座を維持してきた実績とか、前の会社でもMUFGで口座を持っていたとか、とにかくプラスの材料になりそうなことは電話口で何でも伝えた。それでも10分以上しつこく聞かれるので、だんだん回答が投げやりになってきたが、もしかすると電話応対の態度とか、ストレス耐性テストのような評価項目もあったのかもしれない。
最後にIT企業への定例質問として、「フィンテックのような事業をやる予定はありますか?」ということを聞かれた。何かMUFG自体と競合する事業になるとか、資金洗浄に口座が使われることを警戒しているのだろうか。特に予定はないが、この質問は地雷だと思ってはっきり否定しておいた。
MUFGの法人口座開設に成功
なんとなくこれはダメかなという感触だったが、数日後にメールが来て支店に行ったら口座開設の審査は通ったとのことだった。どのあたりが評価されたのか謎だが、ひとまず2017年9月現在、資本金1円の合同会社で創業1年未満でも、MUFGに口座開設できるということはわかった。
万が一、審査に落ちても、地元の信用金庫とか地方銀行でも共済掛金の引き落としはできる。だが、いずれ事務所移転して支店窓口で手続きが必要とかになったりしたら、面倒なことは間違いない。
ゆうちょ銀行は全国に支店があるので便利だが、他のネット銀行と同じで社会保険料・共済掛金の引き落としに対応していないのが残念だ。結局、法人口座は可能なら大手の都市銀行に開設しておくのが、取引上も安心というところだろう。
無料のBizSTATION Lightで十分
その後、手順通り通帳とキャッシュカードをつくり、無料版のBizSTATION Liteに登録してワンタイムパスワードのカードも受け取った。開設時は多めに1万円入金しておいて、あとから当座の運転資金を多めに入金しておいた。資本金1円なのに、借入までして今さら見栄を張る必要はないのだが…
前の会社では有料版のBizSTATIONを契約していたが、毎月税込1,728円も利用料がかかる。基本料金ゼロのLight版は、「入出金明細を初回利用から90日間しか見られない」という変な制約があるが、一人会社でたまにネットから振込する分には差支えない。
社会保険料の引き落とし開始
続いて社会保険料の引き落としのため、「保険料口座振替納付(変更)届出書」を作成して、銀行で印鑑を押してもらう。それを年金事務所に持って行けば、今後はゆうちょ銀行でペイジー払いせずに、MUFG口座から振替になるはずだ。9月末に手続きして、10月末の納付分からただちに適用された。
セーフティ共済の方も、同じ流れでMUFG口座から納付できるかと思ったが、法人成りによる変更手続きは思った以上に大変だった。