ミニマリストが辿り着いた小型手帳、カードサイズダイアリーのカスタム技

久々にメインの手帳を買い替えた。10年選手のミニ5穴手帳を蹴落としてその座を射止めたのは、レイメイ藤井のカードサイズダイアリー。その名の通り、クレジットカードサイズの極小カレンダーだ。

使う人を選ぶ極小カレンダー手帳

パッと見た瞬間、これにはやられたと思った。携帯性を優先させたコンパクトな手帳やメモ帳は多いが、思い切って「カードサイズ」というわかりやすいコンセプトを目指したのは、企画の勝利だ。

おそらく技術的にはこれまでも不可能ではなかっただろう。もしかすると過去に類似品もあったかもしれない。しかし大手のレイメイ藤井が全国規模で量産するには、いろいろクリアすべきハードルがあったはずだ。

小さいということは、当然予定を書き込める面積も減る。システム手帳のサイズはいくつかあるが、ミニ5穴が最小だからといって、A5やバイブルサイズが廃れることはなかった。人によってはコンパクトさよりも、紙面を大きく使えて可読性を優先する人もいると思う。極小サイズのダイアリーが発売された背景には、昨今の断捨離・ミニマリストブームがあるのだろう。

自分も普通に仕事をしているときだったら、こんな飛び道具のようなおもちゃは相手にしなかったと思う。カードサイズダイアリーは使う人を選ぶ道具だ。

リタイアして予定がなくなった

今、フリーになって1ヶ月先の予定表に書き込まれているのは、ヒゲ脱毛の予約だけである。それもなかば趣味みたいなものだが、それ以外に取引先と打合せするとか友人と会うとか、対外的な予定はほとんどない。

不定期に飲み会や勉強会に顔を出すくらいで、それらはわざわざ手帳に書くほどのスケジュールではない。 長年使ってきたミニ5穴のシステム手帳も、持て余し気味だ。

他に予定がなくて寂しいという気持ちはあまりしない。むしろ朝起きるたび「今日も予定がない。さて何しようか」と考えるのは、至福のひとときである。

毎朝口ずさむChick Coreaの”What Game Shall We Play Today”。日中、電話もメールもLINEもほとんど来ないというのは、平穏な生活である。

30代でこんな呆けたキリギリスのような暮らしをしていて、いつか痛い目に遭う気がしないでもない。なので、あとで後悔しないように、しっかり満喫しておこうと思う。前向きに考えれば、来るべき本格的な老後にそなえて、リタイア後の生活をシミュレーションしているともいえる。シニアマーケティングの一環ともいえようか。

こんな暇人にふさわしい手帳が、カードサイズダイアリーなのである。

黒以外は派手めのカラバリ

アマゾンでの通常販売価格は432円。しかし、発売からだいぶ遅れて6月に買った「2017年10月始まり」モデルは2倍以上のプレミアムがついていた。人気のカラーは1,000円を超える。2018年モデルはまだまともな価格なので、早めに押さえておいた方がよいだろう。

初回はなくさないように少し明るい目立つカラーのシルバーを選んでみた。ほかにもイエロー、オレンジ、レッドなど、わりと派手めの色がラインナップされているのは、そういう理由だと思われる。

半年ほど使っていてシルバー色は表紙の汚れが目立つようになってきたので、2年目は無難に黒を注文した。

最低限の月間/年間カレンダー

表紙はクレジットカードを模して年月がエンボス加工されているが、そのあたりはどうでもいい。2018年モデルは1ページ目にもエンボスが追加されたが、理由はわからない。それ以外に目立つロゴやプリントがないのは、好感の持てるデザインだ。

1ページ目にタイトルと7cmまでの定規がついている。東急ハンズでボードや木材の厚みを測るとか、覚えておけばちょっとしたときに役立つだろう。コンパクトな製品なので、設計者としては十得ナイフ的な機能をいろいろ詰め込みたくなりそうだ。そこをあえて定規だけ搭載して、ミニマムなコンセプトに絞ったという開発ストーリーがうかがえる。

2~3ページに2年分の年間カレンダーが印刷されている。長期の予定はここにメモ書きしておくとよいだろう。

通常の0.5mm芯シャーペンでも書けないことはないが、できれば0.2mmのぺんてるオレンズがあれば便利だ。4ページ目以降は見開きの月間カレンダーになる。開いたサイズはミニ5穴手帳の紙面2/3くらいの面積だ。日付の数字はマスの左上に小さく、土日祝日は薄いグレーで表現されている。

紙面を稼ぐ様々な工夫

細かい点だが、曜日が中央の糸綴じ部分の余白(デッドスペース)に印刷されているという工夫がある。普通のカレンダーは一番上についているので、ついついそちらを目で探してしまうが、マス目の面積を最大限稼ぐためのアイデアなのだろう。

これらの工夫のおかげで、例えばアシュフォードのミニ5穴見開き月間カレンダーよりも、面積は狭いが予定を書き込めるエリアは広くなっている。

日付のマス目以外に、あえて余計なメモスペースを設けなかったというのも評価ポイントだ。前月~来月の日にちが前後に数日分薄く印刷されているので、必要ならここにメモ書きすればよいだろう。

日付のマス目は、時間帯と内容を1日3つも書けば一杯になってしまう。自分の場合、図書館やコメダ珈琲でその日の日経新聞を読んだかどうかのチェックも入れている。

予定を書き込むというより、ダイエットやトレーニングのチェックリスト、体重メモとして使うのもありだろう。1冊400円くらいで手に入るので、サブダイアリーとして目的ごとに複数買って使い分けることもできる。

さらに最後のページに少しだけメモスペースがある。よくかける電話番号とか、ウェブサービスのアカウント情報とか、最低限の情報を書いて携帯できる。

逆にいうと、ここ以外にフリースペースが一切ないのは手帳として斬新である。クオバディスは対極的に、使いもしない世界地図とかロンドンの地下鉄マップとか、賑やかな付録がついている。

カードサイズダイアリーはリフィルの拡張もできないので、必要ならメモ用紙を糊付けするとか付箋を貼るとかして自己流でカスタマイズすればよいだろう。

ペンホルダーを付けてカスタマイズ

自分の場合はまず終わった月のページからカッターで切って極力ダイアリーを薄くしていく。綴じ糸がほどけないぎりぎりの余白を2mmくらい残してカットするのがコツである。

さらに右下の月のプリントがあるあたりを斜めにはさみで切って、クオバディス流にすぐに現在のページにアクセスできるようにしている。システム手帳を使っていた時は付箋を貼って代用していたが、本製品は財布に入れる都合上、飛び出た付箋が剥がれやすいので切り込みで代用している。

裏表紙には、ミニモのシャープペンシルを貼り付けて一体化している。ミニモに付属のプラスチックのペンホルダーがカードサイズなので、1cmくらいの糊しろを残して切断し、両面テープで貼るとちょうどいい感じだ。ミニモの方が若干長くてダイアリーの幅からはみ出るが、それ以外は今のところ不都合はない。

付箋を貼って紙面拡張

表紙には50x75mmサイズの付箋を数枚分束で貼り付けて、1日の予定やToDoリストをメモするようにしている。最初は普通の黄色いポストイットを使っていたが、強粘着でないと剥がれて取れやすい。逆に粘着力が強すぎるとダイアリーの表紙を痛めそうだ。

文具屋を見ていたら、コクヨの粘着メモで「全面にのり」タイプがあったので、これの白色を使うようになった。その名の通り、付箋の全面にドットタイプの糊がついているので剥がれにくい。一応、端の一部は糊なしになっているので、指先を引っ掛けて剥がすこともできる。

ダイアリーはそのままだと自然にページが開く仕様になっているので、作業中は机の上に自立させておくことができる。

付箋のメモと組み合わせると、小型サイズのメッセージボードのように見えて、ちょっとおもしろい。

小型財布に入れて持ち歩くダイアリー

ここまでカスタムしたカードサイズダイアリーを、B印ヨシダの別注ミニウォレットに挟んで持ち歩いている。財布と手帳の融合を夢見て試行錯誤してきたが、今のところこの組み合わせがベストなソリューションである。

ミニサイズの手帳や道具は、通常サイズに比べて「価格が安い」というのもメリットである。カードサイズダイアリーとミニモのペンを合わせて買っても1,000円しないくらいなので、とりあえず揃えてみて使い道を考えるという贅沢もできる。ミニマリストにはぜひ試してみてほしいアイテムだ。

ちなみに自分は最近予定がなさすぎて、もはや手帳自体要らないのではないかという段階に達してきた。カードサイズダイアリーですら持て余し気味で、うっかり財布に入れ忘れて外出してしまっても、特に困ることがない。本来のカレンダーというより、買物メモの台紙というかジョッターメモ的活用の方が多くなってきた。