外出後のうがいに緑茶を使うのが、風邪の予防に効果的といわれている。スーパーでも「うがいにおすすめ」と緑茶の粉末が売られていたりする。
「緑茶をうがいに使って吐き捨てるのはもったいない」と思っていた。しかし緑茶うがいの正しい方法とは、うがいした後の緑茶を飲むことだと知った。
なぜなら緑茶に含まれるカテキンやストリクチニンというポリフェノール自体に、感染抑制作用が確認されているからだ。緑茶をそのまま飲むだけで、通常のうがい効果と有効成分摂取のダブルで予防効果を期待できる。
新型肺炎やインフルエンザの予防には、外出中20分おきにペットボトルでちびちび緑茶を飲めばよい。家に帰ったら「うがい専用緑茶」で粘膜を洗い流し、さらに濃い粉末緑茶を飲むと万全だ。
(2020年2月7日更新)
緑茶のウイルス抑制効果
伊藤園と静岡県立大学薬学部の共同研究によると、緑茶に含まれるカテキンにはウイルスの感染抑制効果がある。
2009~2010年に流行した新型インフルエンザ(H1N1型)に対してだけでなく、ヒトA(H3N2型)、鳥インフルエンザ(H5N3型)ウイルスに対しても有効という結果が出ている。
むしろ抗インフルエンザ薬であるアマンタジンよりも、カテキンの方が低濃度で効果が見られたというから驚きだ。
専用薬より効くカテキン
もはや薬を飲むより緑茶を飲んだ方が効くともいえる結論。微量に含まれるカフェインやシュウ酸以外は副作用の懸念も少ない。
さらにカテキンより効能があるといわれるポリフェノールのストリクチニン、その他の有効成分も緑茶には含まれる。実験結果を見るたび、緑茶は天然の風邪薬ではないかという気もしてくる。
緑茶の風邪予防効果は「うがい」で発揮されるのかと思ったが、実は体内にカテキン・テアニンを取り込むだけでも意味あるらしい。伊藤園の実験ではお茶を飲むのではなく有効成分のカプセルを飲んだ被験者に対しても、感染抑制効果が発揮されたという。
すると緑茶によるうがい及びカテキンの経口摂取は、うがいと体内のダブルで効くことになる。
そもそもうがいに効果はない
昔から風邪の予防といえば「うがい・手洗い」が定番だった。しかし最近はうがいの予防効果が疑問視されている。
喉の粘膜についたウイルスは、短時間で体内に侵入してしまう。それを防ぐには20分ごとに喉も鼻も洗わないといけない。
外出中に実践するのはほぼ不可能だ。家に帰ってからうがいをしても、20分以上前に吸い込んだウイルスはとっくに体内に取り込まれてしまっていることになる。
細菌やウイルスを胃酸で殺す
電車の中で堂々と「うがい」するのは厳しい。しかし水や緑茶ならこっそり「飲む」ことができる。
そもそもせっかくの飲み物を粗末に吐き捨てるのはもったいない。「うがい後のお茶を飲み込めばいい」というのは盲点だった。
喉に付いたウイルスを洗い流すのが目的なら、がらがらうがいをせずに液体を飲み込むだけでも効果がある。ヨウ素の入ったイソジンは飲めなくても、お茶ならおいしく楽しめる。
うがいした後の水、あるいは喉に付いたインフルエンザ・ウイルスを飲み込むのは、何か身体に悪そうな気がする。しかしたいていの菌やウイルスは胃の中の胃酸で死んでしまう。強酸性の胃酸の中でも生きられるのは、胃炎の原因になるピロリ菌くらいのものだ。
ウイルスは胃から体内に吸収されるのではなく、気道の粘膜細胞に付着して増殖する。感染を避けるには積極的に水を飲んで、胃の中にウイルスを流し込めばよい。
こまめに水分補給して喉をうるおせば、粘膜の線毛運動が促進されて自然とウイルスも胃に落ちるようになる。緑茶を飲めば、さらに感染予防の有効成分も摂取できるので一石二鳥だ。
うがいよりさらに進んで歯磨きすれば、歯周病だけでなく間接的に風邪の予防にもつながる。口腔内の細菌が出す酵素が、ウイルスの侵入を助ける悪影響を防止できるからだ。
抹茶より安い粉末緑茶でOK
緑茶の効能を高めるには、ティーバッグより粉末式の方が濃度を濃くできる。そして粉末状のお茶には抹茶=碾茶(てんちゃ)と緑茶の2種類ある。
日差しが当たらないように育てた碾茶をすりつぶしたのが抹茶。製造に手間がかかるので値段は高いが、普通の緑茶より旨味成分のテアニンが多く含まれる。
しかし茶葉に直射日光を当てることでテアニンがカテキンに変化する。その分、渋みは増してしまうが、カテキンを多く含む普通の緑茶の方がウイルス抑制効果を期待できる。
回転寿司に置いてあるような、インスタントの安っぽい緑茶粉末で効果は十分。
家でも茶葉やティーバックより粉茶や粉末緑茶、もしくはパウダー緑茶を使った方が栄養価は高まる。湯のみに粉を入れて混ぜるだけで急須は不要。ゴミも出ないので後始末が楽だ。
とりあえず茶葉やティーバッグの在庫が余っているなら、いつもより濃い目に煮出せばカテキン濃度は高まるだろう。
最近家ではお茶を飲み終えるまで、ティーバッグを引き上げず器に入れっぱなしにしている。コップや歯に茶渋が付きやすく、最後の方は苦いのが難点だが、それさえ辛抱すれば濃度の高いカテキンを摂取できる。
ティーバッグと粉末緑茶の価格比較
粉末緑茶はティーバッグより安っぽいイメージがあるが、製品によってはそうとも言えない。
伊藤園の「おーいお茶」シリーズで通販価格を比較すると、
- ティーバッグ(20袋)…1回分2グラム、単価12.9円
- 粉末スティック(100杯分)…1回分0.8g、単価17.45円
- 粉末500グラム大袋(625杯分)…1回分0.8g、単価8円
個包装のスティックタイプだと、プレミアムでない通常緑茶のティーバッグより単価は上がってしまう。ただしチャック付きの大袋で買えば、粉末でもティーバッグより安く済ませられる。
スティック式は保存が効くが、場所を取るし不要なゴミも出る。袋に粉だけ入っている廉価品は、湿気りやすく調理にスプーンが必要。しかし自分好みの濃さでお茶をつくれる。
風邪の予防に毎日緑茶を飲むなら、でかい袋でまとめ買いした方が安上がり。パウダー状なので茶葉から煮出すよりも有効成分を多くとれる。
毎日コンビニや自販機でペットボトルの緑茶を買うよりも、粉末緑茶を溶かして水筒で持ち運ぶ方がエコで経済的といえる。心持ち濃いめにつくれば、ウイルスの抑制効果も高まるだろう。
うがい専用、カテキンの濃い緑茶
緑茶を飲み込まず「うがい専用」に使うなら、それ用の茶葉が安く売られている。
通常のお茶よりカテキンが多めなため効果は大。苦みを我慢すれば、そのまま飲んでも体に害はない。値段は安いので、うがい茶を大量に煮出してストックしておくのもありだ。
ヘルシオお茶プレッソ(上級編)
自宅で茶葉から粉末をつくれる「ヘルシオお茶プレッソ」という機械が販売されている。
メーカーの説明によると急須のお茶では有効成分の3割しか溶けださず、残りは茶殻に残ってしまうらしい(「ヘルシオお茶プレッソ 教えて!お茶博士」より)。茶葉を無駄にせずパウダー状にして摂取することのメリットがうたわれている。
付属の石臼で茶葉を挽いて、新鮮なパウダーを作れるのが売りだ。石臼は自動で回り、できた粉末もお湯に混ぜてくれるので手間いらず。牛乳を混ぜれば自動で緑茶ラテまでつくってくれる。
一度に挽ける粉の量は約10杯分。そこから湯のみのサイズに合わせて4~8杯は同時にお茶をつくることができる。
家族数人で感染予防に緑茶を飲むなら、フル活用できそうだ。自宅で飲む粉末緑茶の風味を高めるには、なかなか魅力的なマシンといえる。
ほうじ茶という選択肢
腎臓の結石が気になる体質なので、緑茶よりもシュウ酸の含有量が少ない「ほうじ茶」の粉末を使っている。
お茶100グラムあたりに含まれるシュウ酸の量
- 玉露…1,350グラム
- 抹茶、煎茶…1,000グラム
- 番茶…670グラム
- ほうじ茶…286グラム
坂本善郎 監修 『スーパー図解 尿路結石症』より
ほうじ茶は茶葉を強火で焙煎するため、煎茶や番茶より各種成分が減少する。
上記のように、結石の原因となるシュウ酸は抹茶・煎茶の1/3くらいまで減らせる。同時にアミノ酸やビタミンCといった有効成分も1/10くらいまで落ちてしまう。カフェインの含有量はたいして変わらない。
ほうじ茶におけるカテキンの減少量は1~2割程度。風邪の予防目的としては、普通の緑茶と変わらないくらいの効果は期待できる。
伊藤園からは緑茶と同じ値段でほうじ茶のパウダータイプも売られている。
お湯に溶かして混ぜるだけ、という使い勝手は緑茶と同じだ。やや色が濃くなり、かおりも香ばしくなる。
粉末緑茶を水筒に入れる
外出するたびに緑茶のペットボトルを買うのは不経済だ。ためしに伊藤園のパウダーほうじ茶を溶かして水筒に入れたら、これで十分1日持った。
作り方は粉を入れて熱湯を注ぎ、ふたを閉めてボトルを振るだけ。ティーバッグのように抽出を待つ手間がない。忙しい朝には粉末緑茶の方がおすすめだ。
使い方としては、500mlの中型ボトルに濃い目に作っておき、半分くらい飲んだら水道水を継ぎ足して薄めつつ飲む。水分を多めに摂取すれば結石の予防にもつながる。
ナルゲンの透明ボトルが便利
透明容器はノースフェイスのショップで買ったナルゲンのボトル。一般に流通しているボトルのように、容量表示やロゴがないのが特徴だ。
アウトドア用なので密閉性や耐久性は抜群。構成パーツが少ないので、洗浄・手入れが楽というメリットもある。
本来は水筒でなくコーヒー豆用のキャニスター。シンプルで飾りっ気がないのは気に入っているが、お茶を入れると検尿容器のように見えてしまうのは否めない。
もともと濃いほうじ茶をさらに濃くつくると、まるでどす黒い血尿のようだ。見た目はグロイが外から見て残量がわかるので、やはり普通の水筒より透明ボトルは便利。
ナルゲンといえば蓋に脱落防止のひもが付いたモデルが一般的だが、カバンの中で引っかかってしまう。キッチン向けのシンプルなボトルの方が、実は屋外でも使い勝手がよかったりする。
緑茶うがいへの疑惑
カテキンのウイルス抑制実験は製茶メーカーがやっているものなので、都合の良い結果だけ報告している可能性もある。少なくとも、緑茶の大量消費を促すプロモーション活動の一環である点は否めない。
「軟骨成分のコラーゲンやコンドロイチンを経口摂取しても意味ない」といわれるように、カテキン入りの緑茶を飲んだところで効果は薄いとか、裏話はありそうだ。
たとえば昔流行った「塩歯みがき」も、最近では歯周病・口臭予防・美白作用いずれに対しても効果がないといわれている。むしろ余計な塩分が体内に吸収されたり、塩の結晶が歯や歯茎を傷つけたりする逆効果の方が懸念されている(「歯のアンテナ」より)。
カテキンに副作用はないのか
緑茶の飲みすぎで、カフェイン中毒やシュウ酸の過剰摂取につながるおそれはある。カテキンやテアニンが有益でも、摂りすぎると副作用が出るのではないだろうか。
花王のヘルシア緑茶を対象として、高濃度カテキンによる肝臓障害を警告しているサイトもある(My News Japan)。ポリフェノールの摂取目安はまだ明らかにされていないが、どんな成分でも「摂りすぎはよくない」というのは想像がつく。
ただし緑茶は1,000年以上前から日本で飲まれていた伝統食なので、そこまで致命的な弊害があるとは思えない。目に見えるほど有害な作用があれば、飲茶や茶道の文化はとっくにすたれていたはずだ。
マスクを着ける間接効果
緑茶の感染予防効果を疑うのは、「マスクをつけてもウイルスは繊維の目より小さいので意味がない」という話と似ている。
空中を漂うウイルスに対して、おそらくマスクは効果がない。しかし咳で直接飛んでくるつばがかかるのは防げる。ウイルスの付いてしまった自分の手で、口や鼻に直接触らずに済む。
予防効果がゼロではないので、マスクは「着けないよりはまし」。それ以上にうっかり自分が感染源になっていたときに周りに菌をばらまかない、咳エチケットの意味合いが強い。
どんな風邪対策でも「これさえすれば100%安全」というものは存在しない。もしそう宣伝している商品やサービスがあれば、逆に疑ってかかるのが常識的だ。
過去のSARSやH1N1の世界的流行でも、死亡例が多かったのは主に高齢者。新型肺炎が広まるにつれて、シニアの恐怖心をあおる悪徳商法も出てくるだろう。
とりあえず対策すれば気が休まる
そもそもすべての病気予防や治療法は仮説にすぎない。
昔は尿路結石の予防法として、カルシウムを摂らないことが推奨されていた。その後、腸内でシュウ酸と結合して体内吸収を抑制する効果が知られてからは、結石患者でも逆にカルシウムを摂取することが勧められるようになった。
カテキンの風邪予防効果も後年は評価が逆転するかもしれない。そもそも早めに新型ウイルスに感染しておいた方が、免疫ができて命が助かるなんてSFめいた話も想像できる。
結果がどうであれ、とりあえず最新医学で有効とされる対策を試すことで「打つ手は打った」という安心感が得られる。
何もしないで病気がうつるかどうかビクビク過ごすより、たとえプラシーボでも緑茶を飲んで過ごした方がポジティブになれる。精神面から体の免疫力を上げられるかもしれない。
新型肺炎・インフルエンザの予防法
新型コロナウイルスにはまだ特効薬がなく、対症療法しかできない。
潜伏期間に早期発見できたとしても、あまり意味がない。他の人への感染を防ぐために隔離されるか、みずから引きこもるだけだ。
新型肺炎に感染してから対策するよりも、予防に努めるのが一番。マスクも緑茶も効果はゼロでないだろうから、何でも試してみるのは悪くない。
- 睡眠・休息・栄養・水分を十分とって免疫力・自然治癒力を保つ
- 人ごみに出るときは、ダメもとでマスクを着ける
- 外出時は緑茶を携帯して、こまめに飲み喉をうるおす
- 家に帰ったら手洗い&濃い目の緑茶でうがい(そのまま飲み込む)
これで感染防止に1%でも役立つなら、やらないよりましだ。普通の茶葉よりもカテキンの濃い粉末緑茶や「うがい専用茶」を使えば、パフォーマンスは上げられるかもしれない。
何よりも自分がインフルエンザにかからないことで、家族や職場、日本全体に新型肺炎がまん延するのを防ぐことができる。
緑茶の効果が仮説にすぎないとしても、ダメもとで飲み続けてみる価値はある。