二槽式洗濯機、最低限の使い方。不便なのに売れ続ける理由

田舎暮らしで久しぶりに遭遇した二槽式洗濯機。庭先への設置方法と、最低限の使い方をまとめてみた。

実際に使ってみて、二槽式の隠れたメリットをあらためて感じることができた。

精密にカスタム可能な使い勝手は、まさに業務用。一部のプロやマニアに売れ続ける理由がわかった。

二槽式洗濯機の設置方法

知り合いから譲ってもらった洗濯機は二槽式。今やめずらしい三洋電機のSW-520Nという型番で、洗濯/脱水槽とも5.2kg、水量43リットルまで対応している。

三洋電機の二層式洗濯機SW-520N

洗濯機が二槽式でも、置き方やホースのつなぎ方は普通のものと変わらない。

家の中を調べると、洗濯機用の防水パンがないことに気づいた。キッチンや洗面所から水を入れるのは可能だが、風呂場や流しに排水するのは気が進まない。

二層式洗濯機の設置方法

庭先を調べると「おすい」と書かれた排水溝があった。洗濯に使った汚水はここに直接流せばよさそうだ。散水用の水栓も運よく近くにあったので、ホースをつなげばここから給水できる。

二層式洗濯機を庭に設置

冬場や雨の日は面倒だが、洗濯機はしばらく外で使うことにした。よく考えると洗濯は基本的に晴れた日しかやらない。

アースの処理

電源は室内から延長コードで引っ張ってきた。防水仕様のケーブルではないので、雨に濡れて漏電しないよう、使うときだけ延長することにした。

その際に困ったのが、外にはアース線をつなぐ専用端子がないということ。

そもそも洗面所にアース端子のないマンションも存在する。最近の洗濯機は漏電すると遮断器が働くので、アース接続はそこまで必須でもないようだ。

しかし「昔はアースなしの洗濯機で感電死する主婦が多かった」と聞いたことがある。屋外設置で風雨にさらされることもあるので、念のため養生しておきたい。

やり方としては、金属製のアース棒を地面に刺してケーブルをつなげばいいようだ。しかしこのアース工事には専門の資格が必要で、業者に頼めばお金もかかる。

洗濯機のアース接続

とりあえず何もしないよりはマシかと思って、窓のサッシにアースの先端を貼りつけておいた。洗濯機の置き場所が定まったら、きちんと処理するようにしたい。

二槽式洗濯機の使い方

おおまかな作業手順は以下のとおり。

二層式洗濯機の操作パネル

  1. 水流・排水切換ダイヤルを「標準」にセット
  2. 注水切換スイッチを「洗濯側」にセット
  3. 水道の蛇口をゆるめて、洗濯槽に必要なだけ水を溜める
  4. 洗濯槽に洗剤を入れ、洗濯機を少し回して溶かす
  5. 洗濯槽に服を入れ、5分くらい回して洗う
  6. 洗濯槽の中身を脱水槽に移し、1分くらい回して軽く脱水する
  7. その間に洗濯槽の汚水を排水して、すすぎ用の水を溜めておく
  8. 脱水槽から洗濯槽に中身を戻し、2分くらい回す(ためすすぎ)
  9. すすぎが不十分に見えたら、水を入れ替えてもう一度すすぐ
  10. 洗濯槽の中身を脱水槽に移して、2分くらい脱水する

洗いとすすぎの時間・回数は、洗濯物の汚れ具合によって適当に調整する。洗った後に一度軽く脱水しておくのがポイントだ。そうやっておくと、すすぎの効率がよくなる。

二槽式洗濯機の特徴

実際に使ってみたところ、二槽式は全自動に比べ、やることが多くて面倒くさい。しかし水槽が2つに分かれていることによって、うまく使えば「同時に洗濯・脱水できる」という利点に気づいた。

二層式洗濯機

二槽式洗濯機のメリットとデメリットをまとめてみよう。

メリット

  • 洗濯と脱水が同時にできて作業時間を短縮できる
  • 2回目以降に洗濯液を使いまわしできて経済的
  • 洗濯物の汚れ具合が目に見えてわかりやすい
  • すすぎ回数や水量を細かく調整できる
  • 全自動式洗濯機より安くて壊れにくい
  • 洗濯/脱水槽が一槽構造なのでカビが生えにくい

デメリット

  • 洗濯槽から脱水槽に洗濯物を移すのが面倒(上記の手順では2往復)
  • 洗濯物を移す際に、洗剤や水が手につく(冬は冷たい)
  • 手動で水道の蛇口をひねって給水する必要がある
  • 手動でスイッチを切り替えて排水する必要がある
  • 洗濯中はその場を離れられない

大家族には便利で経済的

マニュアル操作が単純に「面倒くさい」か「細かく調整できて便利」と考えるかは状況による。洗濯が趣味という人でもなければ、家庭用としては普通の全自動式で十分だろう。

大家族で洗濯物が毎日大量に出る場合は、二槽式による時間短縮のメリットが生きてくる。2回目以降の洗濯で「洗剤を溶かした水を使いまわせる」という利点も大きい。

二層式洗濯機の洗濯槽

全自動式より使う水も洗剤も少なくて済み、ランニングコストを抑えられる。購入費も維持費用も安いので、長い目で見れば二槽式の方が経済的だ。

プロが選ぶ二槽式

業務用として二槽式洗濯機のニーズが根強いのもわかる気がする。

洗濯槽も脱水槽も手際よくフル回転させれば、二槽式の方が圧倒的にパフォーマンスは高い。投入する水や洗剤の量、洗濯・脱水時間の調整も自由自在。

二層式洗濯機の排水方法

仕事としてハードに洗濯をこなすプロであれば、全自動式など最早かったるくて使っていられないだろう。

安い二槽式はハイアール

今から二槽式洗濯機を導入するならハイアールがリーズナブルだ。

日立やパナソニックの製品に比べて、洗える容量あたりの単価が安い。

自宅の炊飯器や冷蔵庫もハイアールでそろえている。長年使っても特に問題はなく、デザイン性はむしろ国内メーカーのものよりすぐれているように思う。

もしハイアールの廉価製品が手に入らない場合は、MAXZENなどでも代用できる。

洗濯板との併用もあり

二槽式洗濯機より古い洗濯板も、いまだに売られているのが不思議だ。

安いプラスチック製から趣のある木製まで、さまざまな素材やサイズを選べる。

頑固な汚れをせっけんでこすり落としたり、ちょっとした量の洗い物を済ませたりする際に便利なのだろう。古いやり方にも、それなりにメリットがあったりするものだ。

うまく使いこなせば二槽式洗濯機はエコで経済的な家電。シャツにアイロンをかけるように「プロセスとしての洗濯」を楽しむなら、あえて二槽式を選ぶのもありだと思う。

ポイント洗いに洗濯板も併用すれば、さらに効率的だ。ついでにいい運動にもなる。

三槽式洗濯機の提案

二槽式は便利だが、欲を言えばもうひとつ「ゆすぎ槽」を増やして三槽式にしてほしい。

空いた槽に一時的に洗濯物を退避したり、洗い物が多い時は2槽で分担したりできる。さらに複数の槽に同時注水できる機能もあれば便利だ。

二槽式洗濯機を2つ買えばよいともいえるが、2台の間を移すときに水がしたたるのは気になる。横並びに合体させた方が見た目もスマートだ。

多槽式で気分はDJ

二槽式洗濯機を使いこなせるようになると、まるでクラブのDJみたいな気分になってくる。

2つの槽の運転時間を見計らいながら内容物を移し替える作業は、まさに「皿をまわす」感覚だ。気分は『とんかつDJ』ならぬ洗濯DJ

かつてジェフ・ミルズというテクノDJが、ターンテーブル3台を同時に回してプレイするのを見たことがある。

二槽式洗濯機も3槽式~多槽式とオプションが増えれば、さらに究め甲斐が増す。

慣れてくれば頭を使わず、肌感覚で洗濯槽を回せるようになってくる。脱水槽の回転音で経過時間がわかるようになればベテランだ。