配当目当てで買った株で、思わぬ株主優待が届くというサプライズがあった。Mac-House…ハンバーガーを食べられるわけでもApple製品が買えるわけでもない。今さらながら四季報を調べたところ、カジュアル衣料のチェーン店だとわかった。せっかくなので視察も兼ねて郊外のマックハウスに行ってみたところ、ちょい安オヤジにおすすめの名店だとわかった。今、マックハウスについて、すべての真実を語ろう。
さらに地方郊外のさびれたショッピングモールで、マックハウスのアウトレットを発見した。遭遇率はレアだが、GUより安い価格でディッキーズがたたき売られている。
かつては田舎のカリスマファッションリーダー
中学生の頃から男性ファッション雑誌を月に数冊買いあさり、高校生になると、北陸の片田舎から特急サンダーバードで大阪のアメ村によく繰り出したものだ。とはいえお金があるわけではないので、話題のショップに行ってもバンダナくらいしか買えない鼻たれ小僧だった。その時買ったBEAMSのハンカチは20年たっても現役だ。
昔は「大人になったらもっと稼いで、アルマーニとかトム・フォードでスーツを誂えているんだろうな」と思っていたが、実際そんなことはまるでなかった。むしろファッションに興味がなくなるというか、それ以外の家賃や食費に予算配分する必要が増えてきて、服など「端切れを巻いて済ませればいい」とまで思うようになってきた。
ユニクロより安い○○
世はファストファッション全盛の時代。かつてはユニクロで服を買うと、たいてい人とかぶって気まずい思いをしたものだが、最近はZARAやH&Mも進出して多様化してきたので、あまり気にせず安い服を着られるようになってきた。
ファッション雑誌でも、「UNIQLOで一週間着回しコーデ」なんて特集があったり、佐藤可士和のディレクションや銀座・ニューヨークへの出店で高級化が進むユニクロに対し、GUやしまむらという、さらに安いブランドも出てきた。「g.u.=具?」なんて思ったが「自由」と読ませたいらしい。Tシャツなんて500円台で買える値段だが、意外としっかりつくられている。
衣服なら食品のように「○○製だと健康が心配」ということもないので、ミニマリスト的にはファストファッション大歓迎だ。まとめ買いなしでも「1着目から千円スーツ」なんてどこか出してほしいものだ。
なぜグレーの服ばかり買うのか
我が家に代々伝わる家訓に「身の回りの品は鼠色で揃えるべし」というものがある。白だと食べこぼしや洗濯の色移りが目立ってみすぼらしくなる。黒だとホコリが目立ってみっともなくなる。服であれば、結局地味な灰色が一番長く着られるという理屈だ。実家の車の色はシルバーしか見たことがない。
子供の頃は、貧乏くさい奢侈禁止令だと思っていたが、おかげでエスキモーが52種類の言葉で雪を表すように、四十八茶百鼠の鼠色系統は見分けられるようになった。大人になった今、ワードローブを見ると結局グレーやネイビーの服ばかり買い集めていると気づく。ただ下着・ふんどしだけは『花の慶次』を見習って、男なら潔く白だろうと考えていた。
清潔感第一、黄ばんだ白シャツはNG
保温性や防御効果など、衣服としての基本機能は意外と長く保たれる。ほつれて分解するより前に、汚れてしまったり、流行遅れになって服を捨てることの方が多いだろう。物持ちがいいので、下着でも5年、スーツやコートの大物なら20年は持たせられると思う。自分は気にならないのだが、はたから見ると毛玉や色あせ、擦り切れたところが意外と目に付くらしい。
最近、社内の女性陣から「シャツが黄ばんでいてみっともない」とダメ出しされて、他の服も見てもらったら、白シャツはすべてアウトだった。まだ数年は着られるつもりでいたのだが、さすがにスタッフや取引先に不快な印象を与えているとしたら、考えを改めなければならない。
世の男性諸君、「女の子に受ける」という観点からは、擦り切れて破れたビンテージのジーンズは今すぐ処分した方がいい。洗いざらしのマックハウスで好感度アップを狙おう。プロダクトインよりマーケットアウト。「自分のこだわり」より「お客様のニーズ」を優先するのがマーケティングの基本だ。清潔感を演出するなら純白が一番だが、シーズンごとに買い替える財力がないなら、とりあえずグレーの服を選んでおけば間違いないだろう。灰色の脳細胞が、そうしろとささやく。
マックハウスの株主ご優待券
そんなタイミングで、思いがけずマックハウスの株主優待券が届いた。最低単元株なので1,000円だけのチケットだが、マックハウスで買物するには十分だ。
調べたところ、都心に店舗がなく、阿佐ヶ谷やよみうりランドまで電車を使って行かなければならないらしい。節約のため、多摩川サイクリングロード沿いにアメリア稲城SC店まで自転車でがんばって行ってみた。ぜひ渋谷や銀座にMac-Houseのフラッグシップショップをつくってほしいものだ。
ショッピングセンターに入った店舗は、通路側にセールコーナー、男女子供コーナーに分かれ、見やすいレイアウトだ。Tシャツは税抜490円、ビジネス向けのシャツは1,990円からさらに50%オフと、ちょっとしたセレクトショップの1/10くらいの価格に衝撃を受ける。さらにナイトセールで税抜4,000円以上お買い上げは10%オフ、モバイル会員登録でさらに5%オフというサービスだ。
普段この手の販売戦略には絶対に引っかからないが、ついでに黄ばんだ下着も買い換えようと思って、今回はあえて乗ってみた(そしてまんまとカモにされた)。
モバイル会員はレジでQRコードを読み取って空メールを送れば、すぐに登録できた。
ディッキーズのワークシャツを購入
安売りコーナーにDickiesのシャツがあって、2,990円からさらに40%オフになっていた。事前の調査で下北沢のDickiesのオンリーショップがあることは知っていたのだが、そちらは優待券の使える店舗リストに含まれていなったので、まさかマックハウスで買えるとは思っていなかった。
ディッキーズはアメリカのワークウェアブランドで、中学生の頃からあった気がする。カーハートやベンデイビスのようにスケーターに人気で、ややストリート色が強いが、品質はMADE IN USAというイメージで丈夫そうだ(実際は中国製)。チェックシャツと迷ったが、上述の灰色理論に従い、無地でグレーの半袖シャツを選んでみた。刺繍された文字がちょっと若向きかと思ったが、ちょい安オヤジがアメカジを気取って福生の横田基地周辺を練り歩くには似合いそうだ。
ディッキーズのシャツが2,500円で買えるとは、さすがに何かおかしいだろうと思って帰ってから調べたら、どうもGENUINE Dickiesというディフュージョンブランドらしい。偽物ではないが、廉価ラインの方が「Genuine (真正)」とは、ちょっとしたアメリカン・ジョークだ。まあ自分も店頭でタグを見て気づかなかったくらいだから、誰も気にはしないだろう。
さすが老舗のワークウェアブランドらしく、肩まわりの縫製はトリプルステッチ、裾の継ぎ目はリベット止めと、ディティールに抜かりがない。頑丈そうなツイル素材で、孫の代まで着続けられそうだ。胸元のメッセージは「Arbeit macht frei(労働こそ自由への道)」というのはウソだが、袖からボタンまでいたるところに「Genuine(ホンモノですよ)」とアピールされている。
後継製品のワークシャツはアマゾンでも購入できるようだ。皮肉なことに定価でもGenuineでないオリジナルDickiesの半額で手に入る。
超高級ハイブランドはロゴがない方が奥ゆかしく思われるが、中途半端なブランドは全面に出ていた方が安物と間違われず無難だ。ヴィトンはタイガが限度。直線的なカッティングやポケットの切り込みでしか見分けられないヴァレクストラなど自分的には最高峰だ。
一方、パラブーツとかセントジェームス程度なら、世の中の9割の人にはタグが付いてないと、その辺の東京靴流通センターやイオンのPBと見分けがつかないだろう。
ビジネス用の半袖シャツと下着も購入
割引も含めて税抜き4,000円に達するために、シャツと下着も購入した。
ブルーの麻混半袖シャツは50%オフで990円。ファッションモデル御用達、ベージュのVネックTシャツは990円で2枚目は半額。ディッキーズと合わせて、計算間違いで800円ほどオーバーしてしまったが、まあよいか。ナイトセールとモバイル会員登録で15%オフ、税込4,470円の買い物になった。
満を期して株主優待券を取り出そうとしたところ、持参した優待券ポケットに入っていない…。先日の「わたみん家」に引き続いて、また家に忘れてきてしまったようだ。優待目当てにわざわざ矢野口まで来て、割引につられて4,000円以上も自腹で購入。年間お洋服予算の半分も使ってしまい、もう自分が嫌になってきた。
まあ、マックハウスは気に入ったので、今日の買った服が問題なければ、またシャツでも買い足せばよいかと自己正当化し、無意識のうちに認知的不協和を解消して済ませた。
ディッキーズの半そでシャツは何度か着たが、洗濯時の色落ちがすさまじいとわかった。布団のシーツやタオル類がすべてグレーに染まってしまい、3回くらい洗濯しても一向に色落ちが収まる気配がない。結局耐えきれずに古着屋で売却してしまった。
グレーな服も、色は薄目で霜降りカラーとかの方が使い勝手はいいようだ。
マックハウスのポイントカード
さらにレジでポイントカードをつくってもらった。入会金・年会費無料、有効期限1年間。買物すると10%ポイントがついて、各グループ店で使えるらしい。そっけないデザインでチープな紙製。薄いので財布の中でかさばらず助かる。
ミニマリストも3着は服を持とう
実のところ、ミニマリストに宗旨替えしてから服が劣化しているのは薄々気づいていた。90年代前半のグランジ・ファッションで押し通していたが、さすがにカート・コバーン張りにパジャマで商談というわけにはいかない。しかし今夏はマックハウスの格安シャツのおかげで、いまどき風のクールビズでイメチェンできそうだ。
フランス人は10着しか服を持たないらしいが、真正Bライファーは1着も持たないだろう。社会派ミニマリストとしては、せめて3着くらいは揃えておきたいものだ。