自宅用のヘッドホンをグレードアップしようと模索中である。BOSEの安いビックカメラ限定モデルを見つけて良さげに思ったが、残念ながら好みのブラックカラーが品切れだった。高級品に投資するなら、BOSE以外も一応調べておきたいと思い、予算1~2万円で他社製品も一通りチェックしてみた。
普段、音楽は320kbpsのmp3に変換してスマホで聴いているので、正直音質についてはさほどこだわりがない。ハイレゾなど、メーカー側の販売戦略で意味がないと思っている。そのため、ヘッドホンの評価も音質というよりは、見た目のデザインと使い勝手が中心である。
SONYも真似するBOSEのシックなデザイン
ソニーのMDR-100Aはハイレゾ対応だが、パナソニックなど国内メーカーの同等品に比べると2倍くらい高い気がする。しかも、ヘッドホンとしては新鮮な単色カラーリングも、完全にBOSEの真似ではないかと思われる。
BOSEのヘッドホンは、高価なわりに主張しすぎない地味なデザインが気に入っている。SoundTrue II around-earはブラックとネイビーの2色あるが、どちらも全体的に単色でマットに塗られていて忍者のような製品だ。ロゴも控えめで近くに寄ってみないとBOSEだと気付かない奥ゆかしさがある。
見た目は美しい高級ブランドB&OとB&W
一方で、Bang & Olufsenはミニマムでかっこいいデザインだが、革や布素材で差を出そうというのは、工業製品として少し間違った方向に向かっていると思う。
Bowers & Wilkinsもギラギラしたクロムメッキのパーツや本革で高級感を演出しているのが鼻につく。その点、BOSEはあくまでプラスチックにこだわって人間工学的なフィット感と軽量化を図ろうとしているようで好感が持てる。
B&OのH2は同社ラインナップの中では一番廉価で見た目もさりげなく、素直にいいかもと思ったが、若干締め付けがきつく感じた。各社ヘッドホンを比較したが、やはりかけ心地の緩さに関してはBOSEを超える製品は見つからなかった。
AKGもかっこいいが、ややバランスが悪い
AKGのファッショナブルなYシリーズ、Y40/50は1万円を切る価格でリーズナブルである。しかもそれぞれBluetooth対応モデルが出ていて、カラーリングも選択肢が多い。さらに似たようなデザインでノイズキャンセリング機能付きのN60NCも存在する。
実際にかけてみたところ、Y40は小型で持ち運びやすいが、耳に当てる部分がやや小さすぎるように感じた。密閉型だが、これだと家で使っていてもまわりの道路や線路の騒音が気になってしまいそうだ。
Y50は40mm径ドライバーでハウジングもちょうどよい大きさだが、ヘッドバンドの素材が金属だからか、全体的にやや重く(211g)感じた。樹脂に比べてメタルパーツは耐久性が高いと思うのだが、家で使う分には多少強度は落としても軽い方がうれしい。
ロゴのAKGが大きく目立つのも、デザインとしてはかっこいいと思うのだが、ちょっと若向きで自分に似合わない気がした。カラーも豊富だが、選ぶとしたら黒しかないだろう。
SENNHEISERは候補から除外
AKGと似た感じのゼンハイザーは、昔持っていたことがあるので今回は選択肢から外した。
一応、各モデル視聴はしてみたが、現在のラインナップはどれも自分にはかけ心地が悪く、いまいちな印象だった。
PioneerのBT対応機はよさげだったが致命的な欠陥が…
パイオニア製品の中では、Bluetooth対応のワイヤレスヘッドホン、SE-MJ553BT とSE-MJ561BTがルックス的にかっこよく思われた。
価格はいずれもアマゾンで6,000円である。特にSE-MJ561BTの方はハウジングとヒンジがアルミ素材のシルバー色で、海外高級ブランドに引けを取らないグッドデザインだと思う。ボタンまわりも精密機器のようにミニマムに収められていて美しい。
メーカーはパイオニアだし、この価格帯にしては掘り出し物ではないかと思ったが、調べているうちに致命的な欠陥に気づいた。Bluetooth対応だが、有線ケーブルを接続できない…。即ちバッテリー切れで使用できなくなり、家で聴くときもわざわざスマホとペアリングしてBluetooth接続しないといけない。
自宅のPCは一応Bluetoothアンテナが付いているが、不安定で使い物にならなかった記憶がある。シンセサイザーとか楽器類はそもそもBT非対応だから、別売りのアダプターをかまさないと使えないだろう。
おそらく「USB-Cポートしかない新MacBook」と同じ思想で設計したと思うが、残念ながら自分の心には響かなかった。他製品でも「ARカーナビ」とかコンセプトやデザインはよいのだが、なかなか売り上げに結びつかず、いつも惜しいパイオニア…。
豊富なラインナップのaudio-technica
国内メーカーとしてはソニーと並んで評価が高いオーディオテクニカ。ヘッドホンのラインナップも、廉価品から高級品まで幅広いが、最初に目についたのは1万円以下で投げ売りされていたATH-RE700だった。
ハウジングがアルミで、ヘッドバンドは合皮と思うが革が貼ってある。そのため、見た目はちょっとレトロな印象である。同じような革製でレトロ感をアピールしているマーシャルのヘッドホンなどより価格も安くて、6,000円台とは思えない高級感がある。
ATH-R700は、今どきハウジングを折り曲げてコンパクトに収納できないというデメリットがあるが、コードは着脱式で、端子周辺もアルミでしっかりしていて耐久性も高そうだ。ただ、かなり耳への締め付けがきつくて長時間使用するのは疲れそうだった。自分は緩い装着感が好きなので、遮音性を重視する人にはリーズナブルでよい製品と思う。
オーディオテクニカの高級ラインも一応試してみたが、EARSUITシリーズはコンパクトで側面の金属部分に高級感があるが、ケーブルが片出しでないのが気になった。
アートモニターシリーズは昔からの憧れだが、実際にかけてみるとエアーダイナミックのオープン型はまわりの騒音が気になり、防音のしっかりした戸建て住宅のシアタールームとかでないと厳しい気がした。隣人のいびきがうるさくて眠れないくらい壁が薄い我が安アパートでは、オーバースペックだと思った。
密閉型のシリーズなら遮音性は問題なさそうだが、ハウジングが大きすぎて置き場所に困りそうな気がした。
無骨な見た目のMシリーズに魅かれる
オーディオテクニカで一番興味を持ったのが、ATH-Mシリーズのモニターヘッドホンである。音楽制作用に通常のヘッドホンよりフラットな広帯域再生を実現しているらしい。そもそも元の音をダイレクトに出力する以外に、ヘッドホンに求められる機能などあるだろうか。
ATH-M50xあたりが売れ筋らしく、限定生産のマットグレーモデルM50xMGは見た目がBOSEっぽくてかなりいけている。
価格面で比較すると、コードが着脱できるか、予備のコードが付属するか、という違いでM20、M30、M40…と数千円ずつ高くなっていくようである。店頭で聴き比べても音質のが違いがわからず、正直余計な機能よりは費用を押さえたかったので、自分はATH-M20xの一番廉価なモデルで十分かと思った。
Mシリーズはいかにも業務用・プロ御用達という感じで、一切の装飾を排したスパルタンな装着感である。ATH-M20xを買おうと思ってレジに持って行こうとしたところ、ふと魔がさして隣にあった未チェックのパナソニックのヘッドホンを視聴してみた。
モニター用と普通のヘッドホンの違い
パナソニックはRP-HD5という型番だったが、いかにも国内家電メーカーの製品らしく、ソニーのMDR-100Aを劣化させたようなあか抜けないデザインである。ハイレゾ対応というのも何となく無駄な費用が上乗せされているようで気に入らなかったが、自分のスマホから曲を流してみて印象が一変した。
先ほどまで聴いていたオーディオテクニカのモニターシリーズより、明らかに音がよいと思った。特に中音域に空間的な広がりがあるというか、シンバルの繊細な震えとか空気感のようなものを感じられた。
自分の音感はあてにならないので、なにかの間違いか個体差かと思って、ATH-M50xと交互に聴き比べたが、やはりRP-HD5の方が音が豊かだと感じる。これはもしかしたらモニターヘッドホンの特性が裏目に出ているのかもしれない。食品のように、普段から化学調味料で味付けされた音を聴いているので、無添加のフラットな音域再生では味気なく感じてしまうではなかろうか。
再生端末は普通のスマホなので、ヘッドホンがハイレゾ対応であることは関係ないはずである。また、人間の可聴域20kHzを超えたハイレゾ音源など、そもそも老化で高周波数が聴こえなくなっている自分には無用の長物だと考えている。あるいは、ハイレゾ機能と関係なしに、パナソニック製品の基本的なつくりがよいということだろうか。
また、オーディオテクニカのMシリーズは他社製品に比べると、ややデザインが無骨に過ぎる気もしてきた。モニター用としては適切で見た目ほど重量はないが、ハウジングやヘッドバンドが大きくて部屋に置くにはかさばる。また、特にDTMをするわけでないのに、伊達にモニターヘッドホンを常用するのは、見栄っ張りでかっこ悪い気がしてきた。
パナソニックのハイレゾはウェブのレビューで高評価
RP-HD5のあまりの好印象に迷いが生じたので、ATH-M20xの購入はいったんあきらめ、帰宅してパナソニック製品を調べてみた。音響メーカーとしてはいまいちメジャーでない気がするが、オーディオマニアの間ではハイレゾシリーズのヘッドホンのうち、特に上位機種のRP-HD10の評判がいいようである。
高級ラインのソニーMDR-1A、オーディオテクニカATH-MSR7と並んで「ハイレゾ御三家」と呼ばれるらしいが、発売から数年経って、パナソニックのRP-HD10が1.5万円くらいで一番リーズナブルだった。興味を持って家電屋で3製品を聴き比べてみたが、ソニーのMDR-1Aがやや低音を強調して聴こえるほかは、同じくらいの品質に思われた。
デザイン的にMDR-1AとATH-MSR7は差し色の赤や青が妙に安っぽく見えた。どちらも2万円を超える価格帯であり、そのくらい予算があるなら素直にBOSEを買いたい。
RP-HD10の唯一の弱点は、320gもあるヘビー級の重量かと思ったが、耳に当たる部分と頭に乗せる部分の荷重バランスが絶妙なのか、100g近く軽い重量228gのRP-HD5より装着感が良好に感じた。
ヘッドホンとしては、有名な海外メーカーでもなく、定評あるソニーやオーディオテクニカでもないという、パナソニックのマイナーな位置づけがおもしろいと思った。地味なメーカーが本気でつくった通も認める傑作だが、マーケットには受け入れられず値段も下がっている割安バリュー株を見つけたようでうれしい気もした。
思わぬ伏兵、エレコムのハイレゾモデルが…
ちょっと予算オーバーだが、RP-HD10を買おうと思いながら、ビックカメラの店内をうろうろしていたところ、思わず棚に並んでいたセール品のエレコムが目に入った。「えっ、エレコムなのにハイレゾ?」