鹿児島港を出発したフェリーは、翌朝9時ごろ徳之島に到着した。レース会場で受付を済ませ、バイクを整備してから周辺を観光してみた。
大会参加者の特典として、レース前日に島名物の闘牛を見学できるイベントがある。その後は亀徳港の方までバスで送迎してもらえたりして、参加者は手厚いサービスを受けられた。
レース前日にチェックイン
鹿児島港を出発したマリックスラインのフェリーは、台風7号の接近にともない「条件付運航」になっていた。徳之島には無事たどり着けたが、予定の亀徳港でなく島の反対側にある平土野港に到着。島の中心街ではないが、レース会場には近かったのでかえって都合がよかった。
船から降りると、待機していたスタッフの方がトラックにバイクを積んで運んでくれた。ちょうど後輪がパンクしたまま走れない状態だったので、このサービスはありがたい。バイクだけでなく、人もバスで会場まで送ってもらえた。
トライアスロンの会場は、天城町B&G海洋センター。体育館のような公共施設に、受付のデスクが用意されている。
事務局からの案内によると、案の定明日のスイムは中止で、ラン→バイク→ランのデュアスロン形式になるそうだ。さらに本番ではバイクコースの短縮もあり、ほぼ「走るだけ」のマラソン競技になった。
見事に台風上陸と重なってしまったので、レースが開催されるだけありがたい。
ロードバイクの保管場所
バイクは別の体育館の空きスペースに、適当に並べて置く方式。セキュリティーチェックのようなものはない。翌朝ここからピックアップして、スイム会場のトランジションエリアにバイクを持って行く。防犯面が心配なら、夜は宿までバイクを持って帰った方が安全かもしれない。
会場でバイクのメカニックサービスを受けられる。1回1,000円と割安な料金で、チェーンの注油からディレーラーの調整まで、一通り車体を整備してもらえた。
鹿児島で調達したタイヤとチューブに交換したあと、ブレーキやスプロケットまわりをタオルで拭って桜島の灰を落とす。
しかし注油したばかりのチェーンから黒い液体が出てきて、らちが明かない。灰のせいというより、チェーン内部が錆びているのかもしれない。
会場付近を自転車で観光
会場近くで地元の人がおすすめしてくれたレストランは、お食事処「きりしま」。
街中の民家で、そこそこ大盛りの定食を食べさせてもらえる。見渡したかぎり、海洋センターのまわりにコンビニや商店は存在しない。
午後はまるまる時間が開いたので、パンク修理したバイクで会場周辺を散策してみた。
まずは「尚子ロード」(かつて高橋尚子が練習した道路)を北上し、サンセットリゾート近くのビーチで明日のスタート地点を下見。台風さえなければ、宮古島並みに透明度の高い海で泳げたと思う。
そこから会場に戻り、集落の近くにある西郷隆盛謫居(たっきょ)跡を見学。今は石碑しか残っていないが、西郷隆盛が島流しされて住んでいた場所だ。
その後、奄美大島に渡ってそちらにもある謫居跡を見学することができた。
ちょうど今年の大河ドラマは『西郷どん』。鹿児島市内では仮説の観光施設ができたりして盛り上がっていた。ドラマの影響で、徳之島や奄美大島にある、ゆかりの地を訪れる人もいるかもしれない。
石碑の脇には、「村の青年たちと力くらべをした」石が3個転がっている。一番軽そうな石は持ち上げられたが、ほかはびくともしない。レース前に腰を痛めてもおもしろくないので、無理はしないでおいた。走るのは得意だが、重い物を持つのは苦手だ。
平土野の観光名所
徳之島空港と平土野港の間に、陸の中の海「ウンブキ」という観光名所がある。かつて存在した鍾乳洞が沈下して400m先の海底とつながり、トンネルを伝って海水や生き物が内陸までやってきている。
階段を下りた先の洞窟はおどろおどろしい雰囲気だが、一見の価値はある。照明のスイッチを入れるとライトアップされる。
さらに海岸を南に進むと、「犬の門蓋(いんのじょうふた)」という名所がある。ここの展望台・駐車場にあるトイレは翌日ランコースの途中にあり、利用することができた。
遊歩道を海に下って行くと「めがね岩」がある。そこからちょうど平土野港を出航していくフェリーが見えた。
海岸には波で侵食された奇岩があちこちにある。遠いので今回は展望台の上から眺めるだけにしておいた。
徳之島名物の闘牛見物
徳之島トライアスロンの参加特典として、レース前日に無料で闘牛を観戦できる。奄美群島や沖縄では、庶民の娯楽として日頃から闘牛が行われているらしい。
一般の入場料は2,000円で、最後に行われる抽選で家電や草刈機がもらえる(無料の招待客は参加できない)。一等は現金10万円。変わったものでは子ヤギや畑の肥料もある。
最初に地元の闘牛太鼓と踊り、ネーネーズ出身歌手によるコンサートが行われる。
闘牛は封切から横綱まで5回戦。角も合わせず降参してしまう牛がいたり、逆に10分以上続く激闘もある。横綱までくると体も大きくなり、見どころのある試合を見せてくれた。
島内のシャトルバス
闘牛が終わると、各自の宿までまとめてバスで送ってくれるサービスがある。今回はレース会場とは島の逆側、亀徳港の付近に宿泊したので、会期中はシャトルバスに度々お世話になった。
バスの送迎を活用すれば、島のどこに泊まっても不便はない。どちらかというと亀徳港の方が栄えていてコンビニやスーパーも多い。フェリーもたいていこちらの港に着く。逆に空路でアクセスする場合は、徳之島空港のある天城町の方が近くて便利だ。
会場直結のホテルサンセットリゾートに泊まるのでなければ、あえて亀徳やほかの集落に泊まるのもありだと思う。デメリットとしては、当日の朝に早起きする必要があることくらいだろう。
徳之島トライアスロンのレース本番
徳之島トライアスロンの本番レポート。今年は台風の影響でラン・バイク・ランのデュアスロンになり、さらにバイクパートも距離が半分以下に短縮された。しかし当日は風が強い程度で、炎天下の厳しいレースになった。
第1ランはクロスカントリー
本大会はミドルディスタンスなので、スタート時間は朝8時とそれほど早くない。しかし亀徳港からの送迎バスは5時台に出る。レースまで時間があるので、バスの中で食事してなるべく栄養を蓄えておいた。
海洋センターの体育館で昨日預けたバイクをピックアップし、5kmほど自走してスタート地点のヨナマビーチに向かう。バイクラックには、各自のナンバーがついた荷物用のケースも置かれている。風が強いとタオルや道具が飛んで行ったりするので、これはありがたい。
台風上陸、嵐の前の静けさか、波は案外穏やかだった。この調子ならスイムをやってもよかったのではないかと思う。実際は昨日の通達どおり、デュアスロン方式になった。
第一ランは、ビーチから尚子ロードを走って、天城クロスカントリーパークという公園を2周回して帰ってくる。距離は合計5.48km。
クロスカントリーパークは山の中に設けられた遊歩道で、起伏もありトレランレースのようになった。さいわいまだ雨は降らなかったので、路面がぬかるむこともなく快適に走れた。レース序盤で距離も短いせいか、選手全体のペースが早かった。
バイクパートは強風
バイクパートはビーチから出発して島の北側を時計回りに走る。結局こちらも37kmと半分以下に短縮され、亀徳港までいかないところで折り返しになった。
空は晴れているが風は強い。ディープリムやディスクホイールは横風にあおられて危ないと思うが、対策済みなのか派手に吹っ飛んでいる人は見かけなかった。
島の外周は砂浜より崖のような地形が多く、アップダウンもそこそこあった。風向きによって走行ペースも大きく変わる。追い風・下り坂で50km/h以上出るときもあった。そこまで来るとトップギアでも足りずに加速できないのが残念だ。
下ろしたての後輪タイヤ、レバンタールの調子がよかったのか、バイクパートでは一人も抜かれず7人は抜いた。後ほどリザルトを見ると、ラン2回よりバイクが一番順位もよかったようだ。
第2ランは灼熱のサトウキビ畑
外周道路を折り返して海洋センターに戻り、バイクを置いたら2回目のランスタート。最後は予定通りミドルの20km走ることができた。
事前配布の資料にランコースの記載がなかったせいか、どこを走っているのかわからない。伊仙天城線という島のメイン道路に合流し、内陸部を南に下ったように思う。ランコースも起伏が多く、風も強いので無理せずペースを落として走った。
天城町のどこかで折り返して集落を抜け、サトウキビ畑の中を走るかたちになった。前日に撮った写真では、ランコースはこのような感じ。
何となく沖縄の離島と変わらないように思った。サトウキビと牧場、たまに道端からヤギが出てくる。映画『秒速5センチメートル』第2話に出てくる種子島のような風景だ。
一直線の農道を北に向かって、昨日観光した「犬の門蓋」から海岸沿いの道に移る。
平土野の港、徳之島空港のそばを通り過ぎて、海洋センターでゴール。時間はちょうど正午ごろで、炎天下のなか20km走るのはきつかった。
南の島で7月に行われるレースは、ほとんど暑さとの戦いになる。エイドごとに水やスポーツドリンクをもらって、ものすごい量の水分を摂取した。
ゴール後はスタッフの人が全身に濡れタオルをかけて冷やしてくれる。
持久力だけでなく、体温・免疫など極限状態での生体恒常性も試される鉄人レースといえる。
どんちゃんパーティー
レース終了後は、当日中に海洋センター内の体育館でパーティーが行われた。例年、晴れていれば外の広場で開催されるらしい。
全員ゴールして夕方になると準備が始まり、歌や踊りがメインの「どんちゃんパーティー」がスタート。
人数も少なくステージが近いせいか、宮古島のときより賑やかに感じた。徳之島出身の有名ミュージシャン、禎一馬(ていかずま)が登場して盛り上がった。
料理は宮古島のカーボパーティーのような争奪戦になることもなく、ビーフンや豚足など名物料理を堪能できた。
バイクは今回手持ちなので、レース後に急いで梱包する必要がない。汗や塩気を適当に拭って翌日ピックアップしに来ることにした。
どのみち台風でフェリーはしばらく欠航予定。これから数日は島でのんびり過ごすことになる。
台風のため参加者も減少
リザルトを見たところ、台風直撃の天気予報を知って参加を断念した人が多かったようだ。結果的に飛行機もフェリーも欠航して、その後2日は島に閉じ込められた。
レース後に仕事を休めない人は、島に入らずDNS不参加というのが常識的な判断だったのだろう。離島レースは天候により、旅程が大幅に狂うリスクがある。
さいわい今回はその後の予定がなくバイクも手元にあったので、島内をのんびり散策できた。次に渡った奄美大島でも予約便が欠航したので、奄美でも一泊して観光できた。