自転車を家から出し入れする際、玄関の扉にホイールをぶつけてスポークが折れてしまった。「コツン」というよりは「ゴッ!」というくらい派手にぶつけて、ニップルの根元から見事にもぎ取れた。
5年くらい乗ったホイールで、もともと劣化が進んでいたのかもしれない。以前、道端の車止めに引っ掛けて、スポークを曲げてしまったこともある。山奥のツーリングや輪行中のトラブルでなかったのが不幸中の幸いだ。
ホイールが振れて回らない
わずか1本でもスポークを失うと自転車は走行不能になる。ぶつけて曲げた程度なら走って帰れるが、完全に折れるともう無理なようだ。
「スポーク1本くらい失ってもしばらく乗れる」と聞いたことがある。しかし今回はホイールがチェーンステーにこすれるくらい歪んでしまった。ここまで来るとブレーキを解放してもホイールは回らない。
折れたのが前輪であれば、まだ乗れたかもしれない。後輪は左右スポークの本数が違ったりして、テンションのかかり具合も複雑なようだ。
山奥でスポークが折れたら、バイクを担いで最寄りのバス停か駅まで歩くしかない。車輪が回らないので転がすこともできず、車体をかついで移動することになる。
いざというときのことを想像すると、スポークの破断はパンクよりダメージが大きい。自走できないほどのトラブルに備えて、遠征時は輪行袋を携帯しておきたいと思った。
折れたのはニップル
NOVATEC JETFLYのリムはSapim Laserダブルパテッド。完成車についてきたWH-R500のスポークに比べるとかなり細い。軽量・エアロ仕様でパフォーマンスは上がる反面、衝撃には弱かったようだ。
リムの中でカラカラ転がっていた残骸は、穴からうまく取り除けた。よく見ると折れているのはニップルだけなので、スポークは使いまわしできないだろうか。
しかし傷んだ部品は他に影響が出る前に交換した方が無難だろう。パーツの寿命も絡んでいるとしたら、次々折れても不思議ではない。
ホイール購入時にスペアパーツとして、予備のスポークも付いてきた。しかしながら前後輪の左右で形状が違うため、ニップルと合わせて1セットずつしか替えがない。
折れたのは後輪の非ドライブ側。1本だけなので、とりあえず交換は間に合う。
振れ取りはショップ任せ
スポーク1本折れただけでも、ホイールは激しく振れている状態。いずれにしても修理後の調整が必要で、専用工具がないためショップ任せになる。とりあえず自宅近くの店舗に持ち込んでみたところ、取り扱いのないメーカーだったが快く修理を引き受けてもらえた。
ただしバイク本体を預けると、タイヤを外すところから工賃を取られるとのこと。面倒だが、いったん持ち帰ってホイールだけ預けに行った。確かにホイール修理だけならフレームは必要ないし、場所を取るだけ迷惑だろう。見積もりは振れ取りも含めて4,000円程度。
IRCのX-Guardは耐久性が高い分、チューブレス用のタイヤレバーを使ってもなかなか外れない。久々に作業すると、ビードが固くてレバーがまったく食い込まなかった。どうやらチューブに空気が少し残っていたようで、バルブを外して空にしたらすんなり外せた。
修理不能で購入元に持ち込み
数日後に預けたお店から連絡があり、思ったより症状は深刻とのことだった。聞けばスポーク1本テンションを緩めただけで、他のスポークも次々外れてしまう状況らしい。
もうホイール全体をオーバーホールした方がよいとのことで、それなら購入元のショップに持ち込んだ方が話が早い。「修理不能だったので工賃は必要ない」というのは良心的だった。
引っ越して遠くなってしまったが、ホイールをかついで出かけることにした。自転車の輪行はカバーをかけるのがルール。ホイールの場合はどうなのだろう。
あいにくホイール専用カバーは持っていないので、家にあった楽器のキーボード用カバーをかぶせたら、ちょうどいい具合に収まった。伸縮性のある布地で、ホイールにぴったりの大きさだ。
これを持って電車に乗っても、特に注意されることはなかった。少しはみ出るが網棚の上にも載せられる。
原因はニップルの腐食
購入店舗の診断としては、どうやらスポークというよりニップルの腐食が原因らしい。確かにトライアスロンのレースで海辺を走ったり、海水のしたたるウェアで乗ったりして酷使した。
さらに雪道の滑り止め融雪剤(塩化カルシウム)も錆びの原因になるとのこと。冬に岐阜の凍結した林道を上ったりして、その後まったく手入れをしていなかった。融雪剤のまかれた道路を走ったら、ホイールを拭わないといけないようだ。
ほかの錆びかけたニップルも含めて全交換。ついでにJETFLYデフォルトのアルミ素材から、ブラス製ニップルに交換してもらった。
多少重量は増えるが、自分の雑な乗り方なら頑丈な真鍮製の方が合っているだろう。特にトルクのかかる後輪は耐久性を重視したい。クイックリリースもシマノ製に交換したところだ。
ブラスニップルはカラーバリエーションが少ないらしく、初期状態のブラックからシルバーに変わってしまった。JETFLYのスポークはバルブの両端だけ、最初から「銀色スポーク+赤色ニップル」になっていた。ここだけ見ると、銀色ニップルの方が統一感が出てよい。
鈍く光る真鍮のかたまりは、元から付いていたアルミニップルより見るからに強度がありそうだ。アルミより腐食に強いとも聞くので、比重が3倍になる分、そのくらいは長持ちしてほしい。
予備ホイールは持っておきたい
あいにくゴールデンウィーク中で作業が立て込んでいたこともあり、お店を転々として修理完了まで2週間以上かかった。機材のトラブルは、たいていよく乗る時期に集中するものだ。レースの直前でなくてよかった。
今回のトラブルを経験して、保管スペースが許せば予備のホイールを持っておいた方がよいと思った。昔持っていたR500は、ローラー台の肥やしにしてから人に譲ってしまった。あれほど酷使したのに故障知らずの頑丈なホイールだった。
たとえ2kg近い鉄下駄ホイールでも、替えがないよりはましだ。むしろ練習中は重いホイールの方がトレーニングになるし、メンテの手間も省ける。レース前のトラブルでDNS、エントリー代や旅費をふいにするくらいなら、安いホイールでもスペアを持っておいた方が無難といえる。