DABADAの格安トレッキングポールを使い始めて約半年。登山や散歩に持ち運んで使い方も慣れてきた。
ノルディック・ウォーキングは膝のリハビリとして長く続けられそうだ。足にかかる負担をやわらげて、上半身も同時に鍛えられる。杖を使って歩くと普通のウォーキングより散歩が楽しくなる。
すり減った先ゴムを交換するついでに、ポールごと上位製品に買い替えたいと思った。
DABADAも悪くないが、いくつか気になる点がある。またグリップに付いた簡易ストラップではない、ノルディック専用のグローブも試してみたい。
現在日本国内で手に入る、主なノルディック・ポールのブランドを調べてみた。
アルミ製ならLEKIが最安だが、あえて上級者向けの固定式で選ぶとナイト工芸の製品がリーズナブル。カーボン素材でも1万円以下で買える。
運動強度の高いアグレッシブ・スタイルのポールに絞って、各メーカーの製品を紹介したい。最終的に固定式を優先して、naitoのセレクトカーボンを購入した。
格安トレッキング・ポールの問題点
手持ちのDABADAポールは3分割できるコンパクトタイプで可搬性は高い。
アルミ製でヒンジが多いため重量はありそうだが、ほかと比べたことがないので特に不満もない。4,000円で買えた最初のポールとしては、山でも散歩でも使えて重宝した。
ただしノルディック・ウォーキングを毎日続けていると、気になる点がいくつか出てきた。
先端ゴムが勝手に回転する
DABADAポール最大の不満点は杖を地面に突いた際、先端のゴムキャップが勝手に回転してしまうことだ。
ノルディック・ウォーク用の先ゴムは底が斜めになっていて方向性がある。これが斜めになったり90度回転したりすると、路面をうまくキャッチできず滑ってしまう。また腕に跳ね返ってくる反動も大きくなる。
石突きとキャップはしっかりネジ止め固定されている。よく見ると一番下のポッチが出た接合部に、回転を防ぐストッパーがないようだ。ゆるゆるではないが、ちょっと力を加えてひねると簡単に回ってしまう。
継ぎ目の自動回転を防ぐには、ビニールテープなどでぐるぐる巻きにして固定する手もある。しかしたまに分解して山でも使うので、ロック解除できなくしてしまうのは気が進まない。
杖ごと回転させる苦肉の策
回転対策として手にストラップを通さず、先端が回転したらそれに合わせてポールも回して握り替えるようにした。
ポールの反発力に違和感を覚えたら、その都度ゴムの船底面が地面に着くようポールを回転させる。
これで歩くのも不可能ではないが、たびたび調整が必要になるのでストレスが溜まる。またグリップにもくぼみや方向性があるので、変な握り方を続けると手が痛くなる。
登山用の丸型キャップなら問題ないが、DABADAをノルディック・ウォークに使う上では致命的な欠陥といえる。
カチャカチャ音が鳴る
もうひとつ気になるのは、地面にポールを突くたびカチャカチャと金属音が響く点。
歩くたび継ぎ目がきしむのは、アルミ製の松葉杖と似ている。石突きをアスファルトに当てるのに比べれば音は小さいが、長く使っていると気になってくる。
原因を探って振動部分をテープで留めるなど、工夫すれば音は小さくできるかもしれない。しかしポールの分解・収納性を考えると、あまり余計な加工はしたくない。
三節棍タイプのポールは短く分解できるのが売りだが、どうしても可動部が増えてノイズや振動が生じてしまう。
次に買うなら長さ固定式のポール
以上の反省点をふまえて、次にポールを買い替える際は、長さ固定式を選んでみようと思った。
今のところノルディック・ウォークは自宅の近所で散歩がてらに行っている。わざわざ電車や自転車で遠くに行って、ウォーキングするというシチュエーションは思い浮かばない。
自転車でポールを運ぶなら伸縮式もしくは3分割できることが条件だ。バッグに入れるにしてもフレームにくくり付けるにしても、1メートル以上あるポールは収まりが悪い。
電車に乗って旅するなら、別に伸縮させなくてもそのまま持ち運べばよい。駅まで向かう途中も、ついでにポールを使ってウォーキングできる。
固定長ポールのメリット
固定式なら分解・伸縮にともなう余計な部品やレバーが必要ない。その分、重量は軽くなり、構成パーツも少ないので故障のリスクも抑えられる。
さらに継ぎ目がない一体構造のため、不快なきしみやノイズが発生せず振動吸収効果も高まると期待される。シャフトに出っ張りがないのでも物が引っかからず、見た目もすっきりして清掃しやすい。
「固定式=上級者向け」というのは、長さの変更が効かないという意味だろう。逆に自分の最適長ささえ決まってしまえば、固定式の方が使い心地はずっと良くなるような予感がする。
ポールの最適長さ計算
DABADAのポールでいろいろな長さを試した結果、自分の身長(174センチ)では 115センチくらいがちょうどいいと感じた。
一般的には「身長×0.68」が適正長さとされる。ポールを垂直に持つと、だいたいその長さで肘が直角に曲がりベストなポジションになる。会社によっては「身長×0.65」を適正としているところもある。
- 身長174cm×係数0.68=適正長さ118.32cm
- 身長174cm×係数0.65=適正長さ113.1cm
自分の場合、右ひじの可動域に制限があるので、杖は心持ち短めの方が疲れにくい気がした。アグレッシブ・スタイルで体の後方に突いた際、ポールが短ければ肘を伸ばした状態をキープできる。
普段履くシューズのソール厚みを加えても、きりのいい115センチあたりが最適と判断した。諸説ある係数0.68~0.65の間をとった感じともいえる。
ノルディック・ポールの購入候補
登山用のトレッキング・ポールに比べて、ノルディック・ウォーク専用品は選択肢が少ない。
アウトドア専門店、石井スポーツの店頭ではLEKIしか扱っていなかった。Black Diamondやモンベルといったメジャーブランドも、ノルディック用のポールは販売していない。
近所の散歩コースで他の人が使っているポールも観察したが、DABADAのような見慣れないブランド品ばかり。
そもそもまわりでノルディック・ウォーキングしている人が少ない。ここ半年で見かけたのはせいぜい3~4人だった。
種類豊富で最安のLEKI
ノルディック・ポールの分野でもっとも種類豊富なのはLEKI。ビビッドな色づかいがスポーティーで、見た目も若々しく好感が持てる。
アルミ/カーボン素材、折りたたみ/伸縮式と、幅広いグレードの商品がラインナップされている。最高級のマイクロトレイルバリオカーボンIIだと定価26,000円だが、一番安いスピン(int’l)なら8,000円で買える。
最後まで購入候補として迷ったのがLEKIの最安スピン。他モデルに比べてグローブの構造が簡素で、ワンタッチ取り外し式ではない。アルミの2段伸縮式なため、比較的重量もかさむ。
しかし現在使っているDABADAに比べれば、明らかにハイスペックなLEKIスピン。ノルディック入門用としては、十分実用的な製品に思われる。
国内メーカーはディフェンシブ中心
国内メーカーのポール製品は、どちらかというとノルディックより身体負荷の少ないポール・ウォーキング(ディフェンシブ・スタイル)用だ。
シニア向けのリハビリ・エクササイズ需要を見越してのことだろう。運動効果を増すだけでなく、歩行を安定化して転倒予防にもなる。
ディフェンシブ用の先ゴムは船底型でなく丸い形状になる。グリップも直線状かつ着脱しやすいストラップ形式が中心。準備がいらず、気軽に握れるメリットがある。
ポール・ウォーキングに対応したメーカーとしては、ミズノ、シナノ、キザキ、ハタチ、ナイトなど。なぜかカタカナ3文字の社名ばかり出てくる。
ポール先端ゴムへのこだわり
ディフェンシブ・スタイルのポールでも、先ゴムを変えればアグレッシブに傾けて地面に突くことができる。
ミズノやキザキは初期装備が丸型だが、オプションで船底型のキャップに交換可能。ノルディック・ウォーキング用のグローブや着脱が面倒なので、あえてストラップ型の製品を改造する手もある。
シナノとハタチには、ポール・ウォーキングだけでなくノルディック専用のポールもラインナップされている。どちらも三分割、伸縮式のタイプがあり、価格はLEKIの上位製品より安い。
SINANOの先ゴム(型番PP-NW)は船底型だが先端がフラットになっており、180度回転させて垂直にも突ける。羽立工業の「ライフラインブーツ型」というキャップは逆V字ソールになっており、突いた角度に変形・追従して接地面積が増える仕組みになっている。
ポールやグリップの素材・形状は横並びだが、先端ゴムの構造については各社のこだわりがあるようだ。
杖の直径が同じなら互換性はあるだろうか。各メーカーの先ゴムを使い比べてみたい気もする。
先ゴムはどうしても交換が必要になる消耗品。サードパーティー製の格安ゴムをまとめ買いすれば、維持費用も抑えられる。
固定長ポールの選択肢
LEKIや国内メーカーのノルディック・ポールをひと通り調べたが、長さ固定式の製品はほとんど見つからなかった。
一部の通販サイトではLEKIの旧モデルSPペーサーバリオシャークや、廉価なアルミ製の固定ポールが売られていたりする。しかしどちらも在庫僅少なのか、長さ110センチしか見当たらなかった。
固定タイプのポールとしては、ほかにSWIXやLapinといったブランド品もある。どちらも輸入品で価格が高く、サイズの選択肢も少ない。日本ではマイナーなのか、レビュー情報も見あたらない。
現時点で固定長ポールの種類が多く、かつ価格もリーズナブルなのは国内ブランドのnaitoだった。
ナイト工芸の固定式ポール
固定式のスタンダードポールとして、素材はナノカーボン、通常カーボン、アルミの3種類選べる。
最上位のブライトナノカーボン以外はカラーバリエーションが豊富で、長さも94~124センチまで、3センチ刻みで細かく選べる。特に夜間の視認性に配慮してか、セレクトカーボン1,000円アップで蛍光色が選べるのはおもしろい。
固定式ポールは構造が単純なためか、折りたたみ・伸縮式の製品より価格が安い。ナイト工芸の固定式アルミ製「スポーツ」なら、定価わずか4,500円で手に入る。ただしアルミ版のグローブはワンタッチ取り外し式でない。
有名ブランドの伸縮式ならLEKIのスピンが最安だが、長さ固定で選ぶならナイト工芸「スポーツ」がもっとも安い。通販で売られている中国製の廉価製品を探しても、きめ細かくサイズが用意された固定長ポールは見つからなかった。
思い切ってカーボン製を注文
キザキの「歩ミングポール」というディフェンシブ・スタイルの製品にも、アルミ製・固定長で6,000円の商品が存在する(型番APH-102A)。
これの先端を船底型(型番AAK-W004)に替えれば、アグレッシブ・スタイルで使えないこともない。
ただし本体価格とゴム交換費用を含めても、ナイト工芸「スポーツ」の方が割安だ。固定長ならカーボン素材でも1万円を切るため、思い切って定価8,000円のセレクトカーボン(長さ115cm、色はブラック)を選んでみた。
同じく固定式でさらに軽量なブライトナノカーボンもあるが、価格が7,000円も上がってしまう。その割には重量差が1本あたりたったの6グラムしか変わらない(長さ100センチの場合)。
イエローやオレンジの蛍光色が選べるセレクトフラッシュカーボンも魅力的だが、家のインテリアとしては派手すぎる気がする。ポールは部屋の隅に立てかけて保管しているので、色味は地味な方がいい。
ナイト工芸は国内受注生産のためか、通販で注文してから家に届くまで1週間ほどかかった。自転車フレームなどたいていのカーボン製品は中国・台湾製なので、その点では逆に信頼感が持てる。
固定カーボンは期待どおりの性能
ナイトのセレクトカーボンをしばらく使ってみて感触は上々。固定長・カーボン素材・グローブ装備のメリットは期待どおりだった。
身長から計算して選んだ長さも、今のところ不満はない。ノルディック・ウォーキングを本格的に始めるなら、格安の伸縮式ポールを使って最適長さを確認し、固定式に買い替えるのが賢いと思う。
DABADAで感じていた先端回転・金属音などの不具合は一挙に解決した。継ぎ目のないカーボン製で体感的にもずっと軽くなり、長時間歩いても腕の疲れが減った。
精悍な見た目はまさにプロ用という印象。良い道具をそろえると、毎日ウォーキングに出るのがますます楽しくなる。
実売価格7,000円程度の買物としては、リーズナブルな投資だったと思う。まるでママチャリから高級ロードバイクに乗り換えたような感動を味わえた。
ナイト工芸セレクトカーボンの詳しいレビューはこちら。