最近気になっている左腕のしびれは、どうやら首のヘルニアが原因らしい。膝を診てもらっている整形外科の先生に相談して、しびれの緩和に役立つビタミン剤などを処方してもらった。
神経根症は保存療法が第一だが、症状の改善に役立つストレッチや筋トレもあるようだ。自転車乗りの宿命とおぼしき頚椎症の予防・対策として、調べてみたところをまとめてみたい。
首をマッサージするリスク
医師やリハビリの先生に相談すると、民間で受けるマッサージのたぐいは気休めに過ぎないとよく言われる。
『首・肩の頸椎症は自分で治せる!』の本も、マッサージの効果についてはどちらかというと否定的。筋肉をほぐすには弱めの刺激で十分で、ツボ押しグッズや強すぎるマッサージ器具はNGとされている。特に首・肩の筋肉は繊細な組織なので、過度に刺激することで血管や神経に悪影響を及ぼすリスクがある。
これまで肩まわりのマッサージを受けると、「首の左側に固い部分がある」と言われることがあった。自分で触ってみると確かに首の後ろの片側にだけ、しこりのようなものがある。ここを外から押しても痛みは出ない。
頚椎症であれば神経が原因なので、マッサージで筋肉をほぐしても効果は薄い。そもそも椎間板や骨が変形しているとしたら、外から揉んでも意味はないだろう。
これまで施術を受けても特に「揉み返し」と呼ばれるような炎症状態を経験することはなかった。ただしマッサージを受けている間は首がかなり痛む。今となっては痛みを我慢して首を揉んでもらうことで、かえって症状を悪化させていたような気もする。
首をストレッチしすぎる危険
退院後の松葉杖生活で、首・肩まわりに何らかの器質的変化が生じた可能性もある。運動が制限される代わりに全身のストレッチをよくやっていて、首もあちこちひねったり伸ばしたりしていた。
特に首を斜め後ろに倒すと、上述の個所がこわばるのは認識していた。ここを刺激した方がコリが取れるかと思って、痛みを我慢しながらぐいぐい圧迫してしまった。今思えばこれは危険な勘違いだった。関節や神経の障害というのは、「つらさに耐えれば鍛えられる」筋トレとは訳が違う。
またしても自己流のストレッチで、かえって頚椎を傷めてしまったように思う。膝の手術後、ロードバイクに乗れない代わりに取り組んだ自主トレがあだになった。首・肩に痛みがあるときは、無理に伸ばしたりひねったり刺激しない方が無難だ。
首のストレッチとしても、斜め前に倒す方向なら問題はないようだ。筋肉がこわばって固まると、たいてい別の腱や靭帯に負荷がかかることになる。動かせる部分は動かして、ほぐしておくのは有益だろう。このあたりも膝の治療と事情は同じだ。安静と運動のバランスが難しい。
神経根症は保存療法が基本
頚椎症性神経根症の改善について、調べた限りは保存療法しかないようだ。脊髄の圧迫であれば外科的な手術もありえるが、神経根が原因で首にメスを入れる事例は非常に少ない。
おそらくこれまでのように、負荷を減らして放っておけば自然と治るのだろう。そう思って2か月様子を見たが、あまり症状の改善は見られない。一般的に腕のしびれが強く出てしまった場合は、治癒するのに数か月かかるようだ。
痛みやしびれは不快であるが、耐えられないほどではない。さいわい神経根は再生可能な組織のようなので、圧迫が弱まれば改善されるのだろう。ヘルニアや骨棘が原因であれば、そちらは自然治癒しない気がするので、今後は再発しないよう生活習慣を見直す必要が出てくる。
酒井先生の本によれば、「頚椎は他の関節より柔らかいので異常が出やすいが、その分、各種体操で矯正もしやすい」というのがせめてもの救い。自己診断ではストレートネックも進行しているので、アゴを押し込むエクササイズなど試してみようと思う。痛みの出る方向に首をそらすことなく実践できそうだ。
ビタミンB12とリリカ
対症療法として消炎鎮痛剤や筋弛緩剤の薬物治療もあるが、副作用が心配なのであまり受けたくはない。一方、膝の手術後2か月経ってもすねの感覚鈍麻が取れないので、医師にビタミン剤の服用を提案されていた。
調べてみたところ、しびれ対策として使われるビタミンB12には末梢神経の修復作用がある。そして神経根症の症状改善にも共通して有効とわかった。膝の担当医に相談したところ、ビタミンB12は効き目が遅いとのことで、即効性が期待できるリリカという鎮痛薬も処方してもらった。
薬局で受け取ったのは、ビタミンB12のメコバラミン錠(0.5mg)とリリカOD錠(25mg)。どちらも食後に服用する小さな錠剤だ。
さっそく飲み始めたところ、翌日には腕のしびれが半分くらい緩和された。膝下の感覚が鈍い方はまだ効果を感じないが、頚椎症の痛みとしびれにはすぐ効くようだ。
どちらも根本的にヘルニアを改善する薬ではないが、鎮痛効果は大きいと実感した。腕の痺れも取れてだいぶ生活が楽になったので、もっと早く処方してもらえばよかったと思う。
等尺性の首筋トレは有効
保存的治療で安静にしている間、積極的に首の筋肉を鍛えたり、部分的にストレッチするのは有効なようだ。膝の疾患に対して大腿四頭筋を鍛えるのと同じく、頚椎に負担がかかるのを抑え、症状緩和や再発防止の効果が期待できるらしい。
筋トレとしては、手で頭を押しつつ首で踏ん張るアイソメトリック(等尺性)収縮が基本になる。首で空気椅子をやるような感じだ。試してみたところ腕に痛みは出ず、確かにこれなら患部に負荷をかけずにトレーニングすることができそうだ。
道具も必要なく、どこでもできる手軽な筋トレとはいえる。しかしその代り、相当な忍耐力を要するエクササイズであることは間違いない。ジョギングや自転車といった有酸素運動の真逆で、爽快感というものは一切得られない。エンドルフィンのような脳内物質もほとんど分泌されないだろう。
さいわい脊髄は無事だと思うので、膝ほど深刻な症状にはいたっていない。しかし長期的な原因としては、トライアスロンやロードバイクの無理な姿勢が確実に影響していると思う。
もはや職業病とでもいえそうな頚椎の損傷を予防するため、ストイックな空気椅子式トレーニングで首を鍛えておくのは自転車乗りにおすすめだ。