トライアスリートの職業病?腕のしびれは首のヘルニアが原因かも

ここ数年、ロードバイクに乗るたび首の後ろに違和感を覚えていたのだが、どうやらこれは椎間板ヘルニアの予兆だったようだ。

2か月ほど前から左手が痺れる症状が出て、次第に腕全体~肩まで広がってきた。原因を調べると、頚椎症性神経根症という病気の症状に当てはまる。膝の通院ついでに整形外科の医師にも聞いてみたが、おそらくそうだろうとのコメント。

このところ急に悪くなってきた膝も首も、間接的には加齢が原因と考えられる。しかし体組成計で表示される体内年齢はまだ20代。毎年の健康診断は問題なく、大きな病気も患っていない。因果関係を探ると、首の不調もやはりトライアスロン(こちらは特にロードバイク)をやりすぎたせいでないかと思う。

頚椎が原因の腕のマヒについて、ざっくり調べたところをまとめてみよう。

左腕だけしびれる

自覚症状はまず左手のマヒから始まった。人差し指の第一関節より先が、どうもしびれて感覚が鈍い気がする。痛みはなく動作にも支障はないが、常にじわっとしびれている違和感を覚えた。

片腕のしびれ

次に、筋トレで背筋をやっているときに、左腕全体がしびれる感じがした。背筋の筋トレ(バックエクステンション)は首を後ろに反らせる姿勢になりやすいので、局所的に負荷がかかってしまったおそれがある。

思い返すと、これまでも左肩から腕にかけてしびれが出ることはあったような気がする。放っておけば治るので気にしなかったが、今回は症状が持続するようになった。

姿勢を正そうと思って胸を張って首を後ろに反らせたりすると、確実に腕がしびれて痛む。歯磨きで左腕を上げる際も、同じ症状が出る。特に首を斜め後ろ左側に倒すと、明確に頚椎のあたりで痛む個所がある。その姿勢を無理に続けると、肩から腕全体に痛みが広がる。

原因は骨棘とヘルニア

首の「けいつい」には頸椎・頚椎のどちらの漢字も使われる。正式なのは「頸」の方で、「頚」という漢字は俗字にあたるようだ。どちらも使う機会のない難しい漢字だが、長らく「まぎらわしい」と感じていたのは、2つ混在して使われているせいでもあった。

首が原因で四肢がしびれる場合、原因のひとつは腰痛と同じ「椎間板のヘルニア」。首の骨(椎骨)の間にある軟骨組織が変性し、変形して外側に飛び出てくる。そこに神経や脊髄があると、圧迫されて痛みやしびれが出る。

原因は椎間板だけでなく、骨が変形してできる骨棘(こつきょく)や、靭帯が肥大する場合もある。骨棘は膝や股の骨にもできて、変形性関節症の特徴といわれる。首に対しても不自然な荷重が継続的に加わると、骨が変形してトゲトゲになってしまうのだろう。

片腕だけなら神経根の圧迫

ヘルニア・骨棘形成の結果として、以下の2種類の疾患が生じる。

  1. 脊髄の圧迫…頚椎症性脊髄症
  2. 神経根の圧迫…頚椎症性神経根症

脊髄が原因の場合は、腕だけでなく脚や膀胱・直腸にも影響が及ぶおそれがある。また四肢の左右どちらかでなく、両方に症状が出るのが特徴のようだ。

それに比べると神経根は脊髄から伸びている部分なので、圧迫されても症状は軽い。自分の場合、しびれているのは左腕だけなので、おそらくこちらが原因だろう。

頚椎以外の原因

頚椎症に関する一般向け情報としては、酒井慎太郎先生の『首・肩の頸椎症は自分で治せる!』が参考になった。内容は症状のセルフチェックやエクササイズが中心で、各種の症例についてコンパクトにまとめられている。

本によると、腕や肩の痛み・しびれには以下のような原因も想定されるようだ。

  • 四十肩・五十肩
  • 胸郭出口症候群
  • 肘部管症候群
  • 手根管症候群

これらは頚椎でなく、肩や鎖骨、肘・手首が原因となって引き起こされる症状。ただし自分の場合は頚椎回旋に問題がなく、首を後方に反らすと明確に痛みが出るので、やはり頚椎症性の神経根症が疑わしい。

ストレートネックの兆候

頚椎症の前兆であるストレートネックは、上記の本によると「日本人の8~9割に兆候が見られる」という。

その原因は日常的なうつむき・前かがみ姿勢。スマホやパソコンだけでなく、読書・勉強、料理や炊事、車の運転まで当てはまる。特に電車で居眠りすると確実に首が痛くなるので、体勢的にかなり症状を助長していると思う。

いろいろ考えると、頚椎の変形はトライアスロンだけでなく、長年のうつむき姿勢が引き金となって引き起こされた生活習慣病のようにも考えられる。自転車通勤(電車通勤で居眠り)~デスクワーク~自宅で読書など、振り返れば日常生活のほとんどが前かがみの姿勢で行われていた。

エアロポジションは首に悪い説

椎間板は年齢を重ねるにつれ徐々に水分を失い、弾力性が減って変形していく。これは誰もが避けられない老化現象だ。しかし変形性膝関節症と同様に、仕事やスポーツで過度な負荷をかけることも原因になるといわれている。

マラソンで首に負担がかかることはまずない。クロールで泳ぐと、息継ぎの際に首をひねる動作を繰り返すが、肩も同時に回すのでそこまできつい感じはしない。問題はロードバイク。そして空気抵抗を減らすため極度の前傾姿勢(エアロポジション)をとるトライアスロンは、明らかに首によくない競技でないかと思う。

ロングのレース、それに向けた練習ともなれば、首を反らせた不健康なエアロポジションを数時間もキープしなければならなくなる。うつむいたままならよいのだが、どうしても前方確認のため無理して頭を起こす必要が出てくる。

エアロポジションの首

長年トレーニングを積むにつれて、徐々に首の後ろがきつくなってきたのは覚えている。ツーリング後に数日休めば収まるので、一時的な筋肉痛のようなものかと思っていた。実際は椎間板や骨が傷んできている危険信号だったのかもしれない。

自転車は不快なスポーツ

新しいバイクを手に入れて3週間は毎日乗っていたが、その結果得たのは、サイクリングというのは人間の発明したスポーツの中でもっとも不快なものだという結論だった。

『デイブ・スコットのトライアスロン』 小林信也 訳

上記の名言については、村上春樹もランニングに関するエッセイでわざわざ引用している。アイアンマン・レースのレジェンドがそう言うのだから、おそらく間違いない。そしてTTバイクは不快どころか、身体(特に頚椎)にとってきわめて有害な乗り物でないかと思う。

長時間自転車に乗っているプロ選手は、いったいどうやって頚椎症を予防しているのだろう。すさまじい筋トレによって首を鍛えているか、先天的にヘルニアになりにくい体質なのだろうか。

自分の場合は、窮屈な姿勢でのスマホやパソコンの長時間利用も原因と考えられる。ロードバイクだけで首を傷めたとは断言できないが、明らかに職業病といえそうなこの症状に対して、他の自転車乗りがどうやって対策しているのか気になるところだ。

フラットバーハンドルでしびれる

膝のリハビリが進んだので、手術後2か月半ぶりに自転車(小径車のK3)に乗ったら、案の定、左腕はずっとしびれていた。ブレーキレバーが握れないほどではないが、それほど前かがみでもないリラックス・ポジションなのに、腕の違和感は著しい。

バーエンドバーを握って腕を開いたら症状は緩和された。春先にフラットバーの小径車に乗り換えて集中的に乗っていたのも、神経根症が悪化した一因ではないだろうか。

まだ憶測に過ぎないが、ドロップハンドルやブルホーンハンドルの方が腕・肩に負担が少なく、頚椎症を予防・緩和できそうな気がする。フラットハンドルについても、ひょっとすると肘を回内させないニュートラルな握り方など、秘訣があるのかもしれない。