KHS・DAHON試乗レビュー。20インチ小径車の乗り心地を比較

小径車を買いたいと思い、10万円台の高級ミニベロに試乗させていただいた。

今回試したのは以下の4種類。

  1. KHS: F-20RC
  2. KHS: P-20RC(折りたためないタイプ)
  3. DAHON: Visc EVO
  4. DAHON: Dash Altena

実際に乗ってみた印象と折りたたみの方法、手持ちのロードバイクとの違いについて、感じたことをまとめてみたい。

2台目の自転車はミニベロ

自転車は室内保管のカーボンロード(アンカーRFX8)と、街乗り用スチールバイクを2台使い分けている。引っ越しを機に、屋外保管で傷みの激しかった後者の鉄製自転車を買い替えることにした。

似たようなロードバイクを2台持っていてもおもしろくない。そこで1台は以前から興味があった折りたたみ式の小径車に替えることを検討。700Cより小さい自転車を買うのは初めてだ。

走行性重視のスピード系ミニベロといえば、ロードと値段が変わらないハイエンド機がいくつも出ている。

モールトンやタイレルの高級商品を始めとして、「折りたためない」車種も含めればジャイアントやラレーなど無数の選択肢がある。ロードバイクより種類は少ないとはいえ、それでも多くの競合メーカーがひしめいている世界だ。

予算10万の小径車選び

ただし今回は普段の足として、マンションの駐輪場に置く予定。高すぎる機材は取り扱いがシビアで、盗難の不安もある。

フォールディングバイクについては初心者なので、使用感さえ試せればコンポのグレードにはこだわらない。

そこでとりあえず「予算10万まで」という基準で候補を考えてみた。このくらい出せば適度に走りも楽しめて、盗まれても後悔しない範囲だと思う。

KHSは走行性重視

調べたなかで価格とスペックのバランスがよさそうなのはKHS。

台湾製だがDesigned in USAで見た目がいい。上位モデルに装備された、ブルホーンハンドルの攻撃的な外観にそそられる。

F/Pシリーズの違い

フォールディング式のFシリーズだと、6万円台のフラットハンドルから17万のカーボンフォークまで、幅広くラインナップされている。

F-20G以上のグレードは、最初からドロップハンドルやブルホーンを装備しているのがのがうれしい。長い距離乗ることを考えると、ハンドルのグリップは内側を向いていた方が姿勢が楽だ。

その一方で、折りたたみできないパッケージバイクのPシリーズというのも存在する。

前輪を外してダウンチューブに固定すると、薄くて細長い形状になる。梱包サイズを比べたところ、折りたためるFシリーズより体積が小さくなるとわかった。収納幅が狭いので、背中に背負える専用バッグも販売されている。

フレームの剛性向上と軽量化のメリットを考えるとPシリーズも悪くない。ただし商品数はFシリーズより少なく、10万以下だと1種類しか存在しない。

やはり小径車といえば、折りたたんで運びたい人が多いのだろう。Pシリーズはコンパクトになるといっても、ロードバイクのようにホイールを着脱するのは面倒だ。

折りたたみ最高級のF-20RC

まずはフォールディングの最高機種、F-20RCに試乗させてもらった。

定価17万で予算は大幅に超えてしまうため、今回はあくまで参考という感じ。ミニベロの最高峰を一度は体験してみたい。

KHS F-20RC

F-20RCは普段乗っているカーボンロードとほとんど変わらない走行感だった。ペダルを踏めばグイグイ進み、時速30キロ以上で巡航できる。

同じクラスのパッケージバイク、P-20RCにも乗らせてもらえた。こちらもスペックどおりの走りで、折りたたみモデルとのフレーム剛性・重量差は微々たるものに感じた。

変速系はシマノTiagraとMicroshiftの混合仕様。

適切にアッセンブルされているのか、手持ちのロードに付いている105に見劣りしなかった。もっともこちらは2世代前の旧型コンポなので、今は1グレード下のTiagraとそう変わらないのかもしれない。

ソフトテールの振動吸収効果

KHSの上位モデルには、シートステーの上端に「ソフトテール」と呼ばれる機構がついている。下の写真で金色に塗装されている部分だ。

KHSのソフトテール

MTBのサスペンションのように、バネやオイルが仕込まれているわけではない。中身はゴム製のエラストマーで、年数が経って劣化するとディーラーで交換してもらえるらしい。

ソフトテールの効果はKHSの公式動画を見るとわかりやすい。

オフロードを走っているあいだ、ゴム部分が後輪の微細な振動を吸収している様子がうかがえる。目で見てわかるくらいだから、たしかに威力がありそうだ。

ゴム素材がトラクションも高める

小径車はホイールが小さい分、路面の振動を拾いやすいといわれる。フレームも小さくしなりにくいので、ロードバイクより乗り心地が悪くなる点は否めない。

タイヤやサドルにクッション性を持たせることも可能だが、フレーム接点で衝撃を吸収できれば加工は最小限で済む。ロングライドでは確実に身体の疲労を軽減してくれることだろう。

実際に試乗して段差のある路面を走ると、お尻の下のゴムがおもしろいくらい振動を抑えてくれる。不整地で車体が弾んでも、地面にタイヤを押し付けてトラクションをかけてくれる効果も確認できた。

小径車で砂利道を走るのは厳しいと思っていたが、ソフトテール付きのKHSなら難なくこなせそうだ。

巡航性能はロードに近いが、MTBの汎用性もそなえた機材といえる。さらに折りたたみもできるとは末恐ろしい万能マシン…

値段は高いが将来KHSを手に入れたら、ぜひとも20インチのグラベルタイヤを履かせてオフロードを走ってみたい。

バーコンは使いにくい

KHSの車体性能は高いが、ブルホーンの先端に付いているバーエンドコントロールが思いのほか使いにくかった。

取り付けられていたのは、ギアチェンジでクリック感のあるインデックスタイプ。調整がきつめなのかレバーが固く、右手=リア側を細かく変速するのに苦労した。

KHSのバーエンドコントロール

シフト機構に関しては、ロードに付いているSTIレバーの方が格段に便利だと感じた。ブラケットを握ったまま変速できるし、レバーを押し込む際の抵抗も少ない。

トライアスロンのレースで見かける「ブルホーン+バーコン」の組み合わせに憧れていたが、デュアルコントロールレバーの良さを改めて実感することになった。

廉価帯はフラットバーハンドル

KHSはブルホーンが特徴だが、安いモデルはフラットハンドルが標準。折りたたみのことを考えると、かさばらないフラットバーの方が有利なのだろう。

できれば小径車でも「ドロップハンドル+STIレバー」を使いたいと思ったが、そうする今度は収納性が犠牲になってしまう。快適性と可搬性を両立させるのは難しい問題だ。

KHSはチタンカラーが魅力

KHSのバイクが素敵に見えるのは「フレームカラーがチタン色」なせいもある。

なかにはP-20RTIという、本物のチタンでできたバイクまで販売されている。ただしフレームセットで定価28万と、小径車なのにカーボンロード並みの高価格になってしまう。

持ち運ぶ機会の多いミニベロだと、カーボンフレームは強度が心配なのも事実。質実剛健なイメージのKHSでは、せいぜいフォークまでしかカーボン素材が使われていない。

P-20RAC、P-20RC、F-20RC、F-20Rという機種はフレームがアルミ・クロモリ素材で、見た目がチタンライクな鈍いシルバーで塗装されている。

性能や実用性はともかく、「チタン」という素材に魅かれる顧客層がいるのも事実。KHSのカラーリングは、趣味性の高いハイエンド志向のユーザーを狙っている気がする。

DAHONはわりと安い

続いて試したのは折りたたみ自転車の老舗ダホン。

シティー用モデルからスポーツ志向のミニベロまで、車種や価格帯が豊富にそろっている。国内の取扱店や販売台数が多いせいか、KHSより価格はこなれているようだ。

上位機種のVisc EVO

Visc EVOは定価12.7万で20インチの折りたたみ式。

ダホンのスピード系ミニベロとしては代表的なモデルといえる。名前は「ヴィスク・エヴォ」と呼べばいいらしい。

Dahon Visc EVO

ハンドル形状はフラットバーで、TiagraのSL-4700シフターが両側についている。

見た目はバーコンの方がカッコいいと思っていたが、実用性はこのラピットファイヤープラスが上回る。指先の軽い力でスパスパ変速が決まり、KHSより圧倒的に使いやすい。

Tiagra SL-4700

Visc EVOの走行感は、KHSの高級機種F/P-20RCに匹敵する。ギアはフロントダブルで20段あり、平地も坂道もラクラク走破できる。

ここまで高性能なミニベロだと、街乗り用としては少々オーバースペックだ。ロードバイクの代わりとして、ロングライドやヒルクライムもこなせそう。

予算10万の基準は若干オーバーするが、本気で使い込めば元は取れるだろう。

独自折りたたみ機構のDash Altena

ダホンのDash Altenaにも試乗させてもらった。

アルテナは2019年モデルのなかで唯一のドロップハンドル仕様。Lock JAWという隠し折りたたみ機構が仕込まれており、ダイヤモンドフレームなのにフォールディング仕様という変わり種だ。

外観からすると、どう見ても折りたためるようには見えない。

Dahon Dash Altena

ほかのモデルにあるトップチューブの開閉機構がゴツくてダサい(そして重い)と感じる人にとっては、魅力的な選択肢といえる。

分解には六角レンチが必要で、ヒンジが2か所あり作業に時間がかかる。しかしめったに輪行・分解しないという人にとっては、合理的な構造ともいえる。

ドロップハンドル+STIレバー

ダッシュ・アルテナのもうひとつの売りは、最初から付いているドロップハンドル。

コンポのグレードはClarisなので、手持ちの105よりブラケットが大きくゴツゴツしている。変速もややモッサリした印象だが、やはりSTIレバーは人間工学的に有利だと感じた。

Lock JAWを取り入れて理想的なフレーム形状を実現しているためか、走行性能はVisc EVOに劣らない。これも小径車なのに、ロードバイク並みによく走るマシンだ。

アルテナは定価12.8万でVisc EVOと同程度。KHSならF-20RSあたりのグレードに相当する。

「予算10万」とはいいつつも、もう3万くらい上乗せすれば次元の違う快適さを味わえる。こうしてジワジワ金額が膨らんでいくのが、自転車選びのおそろしいワナだ。

20インチ小径車の問題点

今回試させてもらったKHSとDAHONの車種は、いずれも20インチの標準サイズだった。そして試乗した状況は、距離にしてせいぜい1キロ程度。

100キロ以上のロングライドや本格的なヒルクライムで使ってみれば、細かい違いが出てくるかもしれない。これ以上は実際に買って乗りまわさないとわからないレベルだ。

高級モデルだったこともあり、どれも乗り心地は悪くなかった。しかし「持ち運び」という観点からすると、いくつか気になる点も見つかった。

そこまで小さくならない

20インチのフォールディングバイクは、収納サイズが普通のロードバイクとそう変わらない。

小さいことには小さいが、見た目的に半分以下ということはない。特にドロップハンドルのダッシュ・アルテナだと、折りたたみ寸法はダホンの中でも最大級。

小径車なのに体積はロード並み。そしてカーボンフレームに比べると、アルミのバイクはやはり重い。

輪行の都合を考えると、あえて折りたためないKHSのパッケージバイクもありな気がした。フォールディング機構がない分、重量は軽く、収納時の縦長形状が便利そうだ。専用バッグに入れれば背中に担げるというのも利点。

走行性能と輪行性能はトレードオフの関係にある。

スピード系ミニベロの走りはミドルレンジのロードと同じくらい。そして分解サイズも大差なければ、強いて小径車を買い足す必要はない。

価格面とパーツの互換性を考えると、普及している700C規格の方が維持費が安く、改造の自由度も高い。メーカーも販売店も豊富に選べるメリットがある。

ロードバイクとかぶるジレンマ

KHSやダホンの「良くできたミニベロ」を追加購入しても、手持ちのロードバイクと使い方が被ってしまう懸念が出てきた。

よくよく考えると105コンポ搭載のカーボンロードの方が、変速性能やポジション選びに優れている気がしないでもない。12万円台のミニベロも性能はいいが、あくまで「小径車にしては」という感想だ。

それなりの金額を払って「ロードバイクの劣化版」を手に入れるよりは、街乗り用と割り切って安いモデルを買う方がリーズナブルともいえる。

選んだのは14インチのダホンK3

悩みながらダホンの2019年カタログを眺めていたら、表紙に出ていたK3というモデルが気になった。

14インチのスモールサイズながら、3段変速をそなえているのは唯一無二。収納サイズはきわめてコンパクトで重量も軽い。

ネットに出ているレビューを調べると、2018年から登場した車種で評判はよさげ。売れ筋で在庫も品薄なようだ。

あらためてK3に試乗させてもらうと、走行感は想像以上だった。トップスピードや安定性は20インチに劣るが、見た目以上のポテンシャルを感じた。そして価格も10万以下で買える。

いろいろ悩んだが、結局は「ロードバイクとの差を比べてみたい」という好奇心で、DAHON K3を購入することにした。