14インチのミニベロで都内屈指の激坂、風張林道を上る実験

ミニベロのダホンK3で普通の峠は上れることがわかった。それでは勾配20%を超えるような、いわゆる激坂クラスの斜面はどうだろう。

東京都内、奥多摩エリアで最難関のひとつといわれる、風張林道にK3で挑んでみた。

武蔵五日市駅からアプローチ

風張林道は前回上った風張峠につながる裏道。あきる野市のJR武蔵五日市から檜原村を抜けて、林道の入口までアプローチできる。

STRAVA 風張林道

今回はK3のダウンヒル性能も確かめるため、峠からの帰りは同じ風張林道を下ってピストンしてみた。

檜原村のトイレがリニューアル

武蔵五日市駅から檜原村役場に向かう途中、しばらく工事中だった公衆トイレが完成していた。

入母屋造りの豪華な外観に変わり、雨宿りできる休憩スペースまで付いている。トイレ内は木の香りが香しく癒される空間。特に用事がなくても立ち寄りたくなる魅力的なスペースだ。

檜原村の公衆トイレがリニューアル

サイクリストに人気のコースとあって、トイレの横にはバイクラックも配備されている。

木製でサドルを引っかける部分も柔らかそうだが、なぜかバーの高さが低すぎる。ミニベロのK3でもハンドル上のアクセサリーが引っかかってしまい、車体をくぐらせるのに苦労した。

ステムの長いロードバイクだと、ラックに収まらないおそれがある。デザインは良いのだが、寸法がタイトすぎて設計ミスではないかと思う。

林道入口までは快適な山道

檜原村役場を通り過ぎて、橘橋のT字路を右に進む。

自転車に乗ってここから北に向かうのは、風張林道か鋸山林道を目指す物好きな人たちだ。なお鋸山林道は木材搬出のため2019年11月29日まで通行止めになっている。

檜原村の橘橋交差点

観光名所の「払沢の滝」を過ぎると閑散とした山道に変わる。

「都民の森」に向かう南側の道路よりはずっと交通量が少ない。林道入口までは快適に走れる区間だ。

風張林道に向かう途中の道

北秋川の合流地点、 T字路を過ぎたあたりから、徐々に道がさびれて勾配もきつくなる。K3ではここからローギア・ダンシングを解放しなければ進めなかった。先が思いやられる。

風張林道の入口

風張林道入口の転回場所で一休み。連休中とあって、ロードバイクの方も3名ほどいらっしゃった。

しばらく激坂ネタで談笑してから呼吸を整え、少し助走してから林道に挑む。

風張林道で無念の足つき

最初の木陰を進むところから、すでにギアは1速で立ち漕ぎ全開。

風張峠ではときどき2速に戻して休める区間があったが、風張林道では最初から最後まで1速しか使わなかった。

途中で4か所ほど、ほんの少し勾配がゆるむ部分がある。そこでやっとサドルに腰を下ろせる感じで、それ以外の99%、ゴールまでの45分間はほとんどダンシング状態だった。

風張林道のダホンK3

坂を上る速度は時速5~6キロ。さすがにこれ以上スピードを落とすと転倒するので、傾斜がきついところはジグザグに蛇行せざるを得ない。

路面は荒れていて落石や落ち葉も多い。しかも途中で車とバイクが合計4台下りてきて、脇に避けるのに必死だった。

林を抜けると、崖の右側が見晴らせるようになる。そこからヘアピンカーブを曲がった先が、風張林道で最も勾配がきつい区間だ。

きのこセンター手前で断念

どうあがいてもペダルが重すぎて回せず、道路を斜めに行ったり来たり。

とうとう耐えきれずに前輪が下り側を向いてしまい、やむを得ず地面に足を着いた。

風張林道のきのこセンター前

リタイアした場所は、道路の右側にグレーの廃車が横たわっているあたり。檜原きのこセンターまでたどり着くこともできなかった。

ここから先は、まだ100メートルくらい地獄のような直登が続く。ハンドルにバーエンドバーを付けた以外、ほとんどノーマル仕様のダホンK3ではとてもでないが無理だった。

立ち漕ぎしすぎて腰にくる

ペダルに足は固定されていないので、速度が落ちても転倒する危険はない。激坂ではビンディングの引き足が必須と思っていたが、フラットペダルでも案外通用するようだ。

ただしギアの重さだけはいかんともしがたい

自分の体重を乗せるだけではトルクが足りないので、ハンドルを腕で引く反作用でペダルを押さえつける。

ジムにあるアークトレーナーやステアクライマーといった有酸素運動マシンで体を鍛える感じだ。ペダルの負荷を思い切り上げて、全身の筋肉を使って踏み込むというイメージ。

奥多摩のDAHON K3

高強度のダンシングを長時間続けていると、明らかに腰が痛くなる。筋肉的な疲労というよりも、炎症になりそうなヤバい感触がする。

無理せずひと休みしてからリトライしたが、その後数か月、腰の違和感が消えなかった。一時的に椎間板のヘルニアになってしまったのではないかと思う。

ポジションを変えて疲労分散

もう諦めてバイクを押して上ろうかと思ったが、きのこセンターの難所を越えればやや勾配がゆるくなる。

冷静に考えると、耐えきれなかったのは傾斜というよりも腰の痛みだ。

荷重をコントロールすれば前輪は浮かず、後輪も砂利で滑ることはなかった。K3のタイヤは太いので、グリップはしっかり効いている。

落ち着いて自転車に乗り直し、今度は腰の疲労を分散させる作戦をとってみた。このレベルの斜度ではもはや固定ギア状態。あとは体の動きでカバーするしかない。

ダホンK3のハンドルが勝手に回る

ハンドルの上で腕を伸ばして背伸びするような姿勢を取ると、背筋を使う位置を少しずらせる。ペダルを踏む力は弱まるが、体勢を変えると少し腰が楽になる。

前のめりに背中を丸めてガシガシ踏むポジションと、棒のように背伸びして足だけ回す姿勢をローテーションしたら腰の痛みをやわらげることができた。

きのこセンターから先はOK

足つき後の再挑戦で、なんとか自転車に乗ったまま「きのこセンター」に到達。そこから先で勾配がゆるむので、ようやくサドルに腰を下ろせた。

集落を抜けると林の中の急勾配ゾーンに再び突入する。何度か腰にこたえる場面があったが、ときどき現れる休憩スポットでシッティング休憩しつつ。そのまま最後まで乗り切れた。

風張林道のゲート

一度だけ足をついてしまったのは無念だが、それ以外はノンストップで風張林道を上ることができた。

ミニベロ激坂登坂の課題

一度だけ足をついてしまったが、K3で激坂を上るのも不可能ではない。ただし立ち漕ぎしすぎて腰を痛めるおそれがあり、決しておすすめはしない。

限界に挑戦するスリルは味わえるが、激坂登坂は身体に良くない趣味だ。トレーニング上もそれほど有効とは思えない。

ダホンK3で風張林道を上って気づいた技術的な課題をまとめてみたい。

ステムのクリップが強度不足

始終立ち漕ぎで強く力をかけたせいか、途中からステムのクリップが滑ってハンドルが前下がりに回転してしまった。

ダホンK3、ハンドルの回転問題

運転中にハンドルが外れることはなさそうだが、K3のステム接合部は強度的に不安を抱えている。街乗りレベルでは問題ないが、高強度のダンシングを続けるとずれてくる。

グリップの性能がいまいち

今回はうっかりバイク用のグローブを忘れてきてしまった。バーテープもグリップも付けてない金属製のバーエンドは細すぎて、素手で握ると汗で滑ってしまう。

K3初期装備のEVAグリップはクッション性がいまいちなのか、帰ってみると手の平が赤く腫れていた。デフォルトの軽量グリップでロングライドするなら、パッド付きのサイクルグローブは必須だ。

決定的にギアが足りない

予想どおりK3で激坂を上る最大の問題はギアの少なさだった。

感触としてはロードバイクでロー側にギアを2~3枚残したまま、無理やりダンシングで坂をこなすイメージ。コンパクトクランクのカーボンロードなら足つきなしでこなせる激坂でも、K3では到底無理だった。

ダホンK3

マウンテンバイクくらい軽いギアに交換すれば、どんな坂でも淡々と上っていけるだろう。重いギアを無理に回そうとして、腰に負担がかかりすぎたのが今回の敗因といえる。

距離が短ければK3でもいける

しかしギアが足りない以外は、ミニベロでもロードとたいして変わらない。

登坂で体がつらいのは一緒で、ホイールが小さいから不安定ということもない。小径車の方が車体が軽いという点では、むしろロードより有利だと思う。

風張林道の見晴らしがよい区間

似たような激坂でも、近くにある「子の権現」くらい短い区間だったら、K3でも気合いでクリアできそうな気がする。

風張林道の全行程となると、さすがに体がもたない。ラピュタ坂や御岳山の登山道も、長すぎるのでおそらく厳しいと思う。

激坂でもK3で下りは問題ない

風張林道の上の方は、ガードレールのない崖がある。

ここをミニベロで下るのはどうかと思われたが、K3のVブレーキはやはり強力だった。路上の落石に気をつけてジワジワ減速すれば、K3でも問題なく急坂を下れる。

ただしブレーキをかけすぎると、前輪のリムから異音が発生する。ブレーキシューはまだ十分残っているはずなので、原因がよくわからない。先日、雨天走行した際も同じ現象が見られた。

写真撮影に便利なスタンド

手持ちのダホンK3にはスタンドを付けているので、道端のきわどい場所に自立させて写真を撮ることができる。

風張林道は傾斜が険しいが、頂上付近では視界の開けたビュースポットがある。スタンドなしのロードバイクでは、こんなショットはまず撮れないだろう。

風張林道のダホンK3

金属製のスタンドを付けると重量は増えてしまう。室内に運ぶ際も、よく足をぶつけて痛い思いをする。

しかし路上でも駐輪場でも好きなところにバイクをとめられて、自立した状態で写真を撮れるのは大きなメリットだ。