ダホンでロングライド。ミニベロなのに走行性能の高さは異常

新たに購入したミニベロをシェイクダウンするつもりが、つい楽しくて100km以上走ってしまった。

その実力はまるで、ミニベロの皮をかぶった路上の狼。14インチの華奢な見た目からは想像できない、ダホンK3の走行性能に驚かされた。

K3でロングライドは可能

ダホンK3は極小サイズながら53×9-13-17Tというアグレッシブなギア比で設計されている。

重めの3速でペダルを回せば、見た目によらず時速30キロ以上のスピードを出せる。ホイールの小ささからからしてロングライドに向いているようには見えないが、淡々と漕げばどこまでも進む。

千葉県から都心経由で多摩川サイクリングロードに移り、終点の羽村取水堰まで試走。

STRAVA 千葉~東京

途中でStravaのデータが飛んでしまったが、地図から再計測すると走った距離は93km。寄り道も合わせると、一日の走行距離は120kmくらいになった

高速域ほど安定する

K3は漕ぎ出し時にハンドルがぐらぐらして、一瞬ふらつくように感じる。しかしある程度スピードが出てくると、特に意識しなくてもまっすぐ走れる。

高速域での直進安定性は予想以上。慣性が効いてくる面もあるのだろう。

ダホンK3で豊洲をサイクリング

さすがに手放し運転できるほどではない。しかし路面の段差に気を付ければ、ホイール径が小さくても恐ろしい感じはしない。

K3でサイクリングロードを巡航する感覚は、ロードバイクとほとんど変わらない。

Deltecが効いている

実測83センチと、ミニベロとしては長めのホイールベースで直進安定性を確保。そしてDeltecというトップチューブ下のワイヤーが剛性向上に効いていると思われる。

フレーム下のワイヤーのおかげで、扁平だがトライアングル形状が実現されている。Deltecでテンションがかかるため、折りたたみ用のヒンジさえなければトップチューブはもっと細くできたのではないだろうか。

長い下りなら時速40キロ以上出せる。車体が振動して制御不能になるようなこともなかった。

ただし酷使しすぎるとフォークが折れるとか、高速回転しすぎてハブが壊れるとか、未知のトラブルが懸念される。

あくまで街乗り目的のバイクとして、坂道を下る際はスピードを抑えておいた方がよさそうだ。

Vブレーキはすぐ慣れる

ロードバイクのキャリパーブレーキに比べると、K3のVブレーキは極端にガツンと効く感じがする。しかし慣れればレバーの引きを加減して、少しずつ減速できるようになった。

制動力自体はVブレーキの方が高いので、急な下り坂でも軽い力でブレーキングできる。

3時間くらい乗ったらフラットハンドルも体になじんできた。ドロップハンドルに比べて手首や手の平が痛くなるが、これはグリップの太さやクッション性による部分も大きいと思う。

乗車姿勢はロードより前傾が緩やかなので、首や背中は楽に感じる。

タイヤが太くて安定する

K3は小型の14インチ車だが、タイヤの幅は1.35インチ(ミリ換算で約34C)と広めに設定されている。

そのため幅23Cくらいのロードだと挟まりやすいグレーチングの溝も、K3なら楽に通り抜けられる。

ホイールの小ささを補ってタイヤが太い分、走行時の安定性はアップ。将来的に幅2インチのシュワルベ・ビッグアップルに履き替えたら、さらに安心感が出てくるだろう。

路肩の段差でリム打ちパンク(スネークバイト)にそなえる点はロードと同じ。車体や身体に伝わるショックは700Cでも14インチでも大差ない。

ガツンとくる衝撃にそなえて減速し、ハンドルをしっかり握っていれば、ミニベロでも難なく段差は超えられる。

ただし路面の細かい凹凸から来る振動の吸収性は、さすがにカーボンフレームの方がすぐれている。アルミの小径車に乗り換えると差がわかりやすく、この点はタイヤが太くても解消されない。

ミニベロに乗る際の注意点

K3はスピードを出すほど安定感が増して、「小径車に乗っている」実感が薄れていく不思議なバイクだ。

時々ビルのガラスに映る姿を確認すると、車体が極小サイズで滑稽に見える。かよわい外観と実際の乗り心地が違うせいか、変な気分になる。

鏡に映った姿が無防備に感じるのは、ホイールサイズが小さいせいだろう。まるで裸一貫で宙に浮いて、高速移動しているかのようだ。

クラッシャブルゾーンがない

これはセダンタイプの乗用車から、軽自動車の箱バンに乗り換えたときの感覚に似ている。

ミニベロは車体前後の「ホイール+タイヤ」というクラッシャブルゾーンが小さい。どこかに衝突したり追突されたら、身体にもろにダメージを受けて即死しそうな緊張感を覚える。

ダホンK3、ディズニーランド前でサイクリング

フラットペダルでシューズは固定していないので、ハンドル操作を誤らなければK3で自爆するリスクは少ない。ロードよりスピードが出ない分、転んだときのダメージも小さいといえる。

しかしこの「身体のむき出し感」という不安は、慣れるまで時間がかかる。路肩をよろよろ走る小径車は、車のドライバーから見てもおっかない代物だろう。

ミニベロは縦の段差に弱い

ロードバイクから小径車に乗り換えた際、まず心配になるのは路面の段差だ。

路肩の側溝やアスファルトの境界など、進行方向に走るギャップにタイヤ側面が接すると、ハンドルを取られそうになってヒヤッとする。

たとえば下の写真のようなところ。

ダホンK3が苦手な路面の段差

側溝と並行して路面が補修されており、K3ではこわくて乗り上げられなかった。

道路側にふくらんで段差を避けるとしても、後続車に迷惑がかかる。こういうところは素直に歩道を走るべきかどうかと迷う。

縁石と線上ブロックは危険

自転車通行可能な区間であれば、ミニベロは無理に車と並走するより歩道に逃げた方が安全だ。

しかし路肩の縁石は小径車の天敵。前輪を鈍角に当ててうまく乗り上げたつもりでも、後輪が引っかかって転びそうになることがある。

歩道に上がってからも、側溝のふたやアスファルトの段差など危険は多い。たとえば視覚障害者誘導用の線状ブロックはミニベロにとってかなり手ごわい。

ダホンK3が苦手な視覚障害者誘導用の線状ブロック

黄色のブロックは雨で濡れているとさらに滑りやすい。焦らず避けて走った方が安全だ。

砂利道も厳しい

小さいタイヤは他にも思わぬところで滑ったりする。直感的に怪しいと感じるところには、不用意に乗り上げない方がいい。

ためしに砂浜の近くを走ってみたが、激しくハンドルを取られて1メートルも先に進めなかった。

浜辺のダホンK3

砂利の浮いた道路や凍結した雪道など、ロードでも危ういと感じる路面はまず小径車で走れないと思う。

たとえロードバイクに乗っていても、路上の障害物や段差に気をつける点は変わりない。ミニベロでは地面の感触がダイレクトに伝わってくるので、普段より自然と運転が慎重になる。

K3はロードバイクも兼ねる?

K3の加速感や巡航速度は、以前試乗した20インチのミニベロと比べても遜色なかった。チェーンリングの歯数を増せば、もっとスピードを出せそうな気がする。

14インチの小径車にして、この走行性能の高さはもはや異常。

しかも車体は7.8kgと軽量で、折りたためば極小サイズになる特典付き。輪行もロングライドもそつなくこなす万能マシンが実売価格8万以下で手に入るというのは、ある意味すごい状況だ。

もしK3で峠も上れるなら、ロードバイクはいらなくなるかもしれない。14インチで平地も坂もこなせるなら、中途半端な20インチはますます出番がなくなってしまうだろう。

ダホン(DAHON) K3 3段変速 折りたたみ自転車 19K3RDBK00 レッド/マットブラック
ダホン(DAHON)
・Transmission:3 Speed ・Wheel Size:14inch ・Weight:7.8kg ・Saddle to Pedal:600~860mm ・Folding Size:W65 × H59 × D28cm ・Tires:Kenda K-1082, 14x1.35, F/V ・Pedals:Folding Pedal ・Kickstand:N/A