ダホンK3で初めて輪行旅行を試してみた。
行き先として選んだのは箱根。小田原から旧東海道を上って芦ノ湖周辺を観光し、2日目は標高1,000メートルを超える大涌谷まで行ってみた。
小田原~箱根コース紹介
1日目は小田原から旧東海道を上る。
芦ノ湖のまわりを走り、仙石原を見学。そこから小田原方面に若干下り、箱根登山鉄道の終点、強羅で宿泊した。

1日目のルート
2日目は再び仙石原に戻り、芦ノ湖側から大涌谷に上る。
その後、湖周辺を観光したあと山腹にある国道1号の最高地点を確認。そのまま1号線を箱根湯本まで下り、小田原駅から輪行して帰った。

2日目のルート
都内から小田原までは、町田経由でJRと小田急線を利用した。
橋本経由で相模線を使うルートもあったが、所要時間・運賃とも小田急線を利用した方が有利だった。
平日の小田急線はがら空き
たとえ極小サイズのK3といえども、自転車を電車に持ち込むのはまわりの人に迷惑だ。宿泊用の荷物を含めると重さ10キロは超えてしまうので、長い距離は持ち歩きたくない。
乗り換えの手間を最小限に抑え、さらに電車代を浮かすため、自宅から八王子まではあえて自走することにした。車の交通量が多く、自転車で走りにくいルートだけ電車でスキップする作戦だ。
平日ラッシュの時間帯を外し、町田から小田急線の快速下りに乗ってみた。以前通勤で使っていた経験からすると、日中の時間帯、厚木から先の下りは空いているはずだ。
予想どおり車内はガラガラだった。
自転車を置きやすいように最後尾の車両を選択。秦野駅を過ぎる頃になると、乗客はもう自分ひとりだった。
K3とランチを楽しむ
昼前に小田原に着いたので、駅前のファミレスで早めに腹ごしらえした。
バイクの置き場に困ったが、ほこりを払って向かいの座席に置かせてもらうと、一番邪魔にならないことがわかった。
折りたたんだK3はちょっとしたスーツケースくらいの大きさ。飲食店のシートに乗せることもできる。
カスタムした愛車を眺めながら、自宅でお酒をたしなむ人は多いだろう。ロードバイクは酒のさかなになる。
そして小径車であれば、こうして一緒に外食を楽しむこともできる。ひとり旅の輪行でも、さみしくない。
K3で箱根の旧街道を上る
小田原駅前の広場でそそくさとバイクを組み立て、小田原城のまわりを散策。
ミニベロなら人混みの中を走っても、ロードバイクほど迷惑はかからない。さりげなく公園内に持ち込むこともできる。
小田原駅から湯本までの区間は、平日でもそこそこの交通量があった。芦ノ湖まで現道と旧道のどちらを上るか決めていなかったが、車を避けて今回は旧街道を上ることにした。
箱根湯本の駅前で、三枚橋の交差点を左折して川を渡る。
温泉街、星野リゾート界を越え、箱根大天狗山神社に到達。行く手に大きな鳥居が見えるところから、本格的な上り坂が始まる。
つづら折りの左カーブは傾斜がきつい。できればアウト側に膨らんで楽したいところだが、車道に出すぎると危ない。
現在の東海道より交通量が少ないとはいえ、旧道もそれなりに車が走っている。芦ノ湖のまわりも観光バスが多いので、自転車で走りやすいエリアとはいえない。
七曲がりは小径車でも上れる
ミニベロなら坂を上っている途中でも、気軽にバイクをとめて写真撮影できる。ロードバイクではビンディングを外すのが面倒で、素通りしていたスポットがいくつもあった。
旧東海道で有名な「七曲り」は、案内板によると勾配10.1%とのこと。ここは気合いを入れて一気に上がってみた。
斜度のあるイン側しか攻められない左コーナーがやってくると、じわじわ体力を削られる。
しかし先日走った奥多摩の激坂、風張林道に比べればたいした傾斜でもない。ギアは1速しか使えないが、立ち漕ぎする区間は全体の半分程度で済んだ。
芦ノ湖~仙石原~強羅
七曲りの坂を上り切って甘酒屋を通り過ぎると、「お玉ヶ池」という名所が迎えてくれる。
背景の山並みも含め景色が良くて、登坂の疲れを癒してくれるスポットだ。
しかし由来を読むと、「奉公先から逃げた少女を処刑した」という不吉な池だった。人けもなく寂しい場所なので、あまり長居はしたくない。
5月の箱根は冷える
お玉ヶ池を過ぎて、現在の国道1号と合流。芦ノ湖沿いの県道75号を走る間、次第に雨が降ってきた。
寒さに耐えきれず、桃源台の観光船港で雨宿り。5月の箱根は気温が10度くらいしかなく、サイクリングには冬装備が必要だとわかった。
仙石原を抜けて、ガラスの森美術館を鑑賞しつつ食料補給。国道138号を若干下って、強羅駅に向けて上り返す。
強羅駅周辺は激坂だらけ
箱根の高原エリアはどこを走っても坂しかない。強羅の駅前にも局所的な激坂が多く、K3ではとても上れなかった。
もともと山岳地帯なのに、リゾート地として無理やり開発したせいだろう。
熱海や湯河原と似て、いたるところに信じられない勾配の坂がある。車がなければ、とても暮らせる気がしない。
K3は宿での保管も便利
宿に泊まる際は、自転車が邪魔にならないよう軒先に折りたたんでおいた。
チェックインの際、スタッフの方に相談したら、そのまま玄関の中に入れさせてもらえることになった。防犯上は安心だ。
その気になれば、輪行袋に入れて部屋まで運ぶことも可能だろう。
大型のロードバイクと比べて、宿泊先でも管理しやすいのが小径車のうれしいところだ。
2日目も仙石原へ
箱根一泊輪行の2日目は晴天にめぐまれた。
強羅の宿を出てポーラ美術館を鑑賞後、昨日は雨で、いい絵が撮れなかった仙石原で再撮影。
名物のススキが茂っていない季節は、牧場のようにしか見えない。
事前に見た写真から想像すると大草原かと思っていたが、切り取る構図によるらしい。鳥取砂丘とよく似た微妙なスケール感の観光名所だ。
大涌谷までのプチ激坂
国道1号の箱根峠は標高846メートル、大涌谷はさらに高く1,044メートルある。どちらも自転車で上ることができる。
芦ノ湖側から大涌谷までアプローチすると、約3キロの短い距離で250メートルも上ることになる。坂はきつく、特に終盤のT字路を過ぎてからは、まったく休める区間がない。
2015年に箱根の火山活動が活性化して以来、大涌谷の遊歩道は立入禁止になっている。
観光施設の「くろたまご館」も、断続的に閉鎖されたりオープンしたり。観光した日に開いていればラッキーだ。
今回は駐車場の付近しか歩けなかったが、遠くからでも火山の雰囲気や硫黄の臭いは感じられる。
黒たまごの試練
大涌谷の名物は黒たまご。温泉の鉄分と硫化水素が反応して、見た目が黒くなったゆでたまごだ。
そして黒たまごの問題は、どの売店でも「5個セット500円」でしか販売されていないという点。

※黒たまごのバラ売りはしておりません。
昨晩、宿で話した外国人が、しきりに「Black EggがFive!」とうめいていた。ここに来てその理由がやっとわかった。
今どき強羅の近くは外国人の観光客ばかり。日本人はよほど卵好きだと思われていることだろう。
卵を食わずには帰れない
ひとりで大涌谷を訪れると、強制的に卵を5個も食べさせられるハードなイベントが待ち受けている。たとえ2人組でも、1人あたりのノルマは2~3個。
しかしながら、わざわざ山の上まで来て「ここでしか食べられない」というプレミアム感がハンパない。たとえ高くても、話のネタとして食わずに帰るわけにはいかない。
大涌谷に来るのは人生で最後かもしれない。見送ったらきっと後悔することになる。
きっと中身は普通の卵だろうから、原価は1個20円もしないだろう。よくできたビジネスモデルだ。
ゆで卵は補給食に不向き
ヒルクライム後のエナジー補給とはいえ、さすがに滋養のありそうな黒たまご5個は食べ切れない。
周囲を観察すると、同じように困っている若いカップルがいた。こっそり相談してシェアすることに成功し、黒たまごは2個200円で食べられた。
実際のところ、殻が黒くて少し温泉の香りがする以外、中身は普通のゆで卵。そしてサイクリング中のゆで卵は胸やけがして、あまり補給に適さないとわかった。
箱根神社に参拝、小田原に戻る
大涌谷から芦ノ湖に下りて、箱根神社や関所のあたりをツーリング。
湖に突き出た鳥居の前では、写真撮影のために長い行列ができていた。順番待ちで軽く30分はかかりそうだ。
神社の近くから湖沿いにサイクリングロードが設けられている。しかし港の付近は人通りが多く、自転車に乗ったまま突っ切るのは難しい。
芦ノ湖の眺めがいいので、低速でポタリングするには適している。
駅伝広場を見学して、関所のあたりまで行って戻って来た。
箱根はコンビニが充実していて、こんな山の上なのに24時間営業。付近のレストランは高くて混んでいるため、コンビニの菓子パンで軽く食事を済ませた。
昨日と同じルートで旧道を下るのもありだったが、国道1号の最高地点を見ていなかったことを思い出し、現道の方に向かってみた。
国道1号最高地点
芦ノ湖から少し坂を上って、精進池を過ぎたあたりに目的のスポットがある。標高874メートル、国道1号でもっとも標高が高い場所だ。
とはいえ最高地点の看板以外には、特に何もない寂しいところ。標高は高いが、景観がよいわけでもない。
歩道に自転車をとめて写真撮影を済ませたら、小田原に向かって坂を下った。
東海道は交通量が多い
現在の東海道は、宮ノ下あたりから交通量がどっと増える。
途中にある有名な富士屋ホテルは改修工事中だった。2020年7月15日にリニューアルオープンする予定になっている。
路肩も狭くて走りにくく、現道を自転車で上るのはおすすめしない。勾配はきつくても旧道を上った方が安全だ。
日暮れ前に小田原に到着し、K3をパッキングして輪行で帰る。
町田駅で乗り換えて八王子に向かう区間は、通勤ラッシュと重なってしまった。先頭車両の広いスペースであれば、何とかバイクを置かせてもらえる。
もしこれがロードバイクだったら、乗客が減るまで時間を潰すか自走で帰ったと思う。「まわりに迷惑をかけにくい」という意味でも小径車は輪行に有利だ。
ロードより観光を楽しめる小径車
ダホンK3、折りたたみ小径車ではじめての輪行一泊旅行。
今までロードバイクで箱根に来たときは、現道・旧道どちらを上っても箱根の関所で休憩してすぐ帰る感じだった。
強羅で一泊すると、仙石原や大涌谷まで足を伸ばせる。ミニベロは電車だけでなく、宿での取り扱いも楽だった。スタンド付きなので、自立できて写真撮影にも便利だ。
今後はバイクパッキングを検討
K3は車体は軽いが、防寒用の着替えで荷物が重くなってしまった。
バックパックを背負いながら走ったので、肩や背中が余計に疲れた。旅先でロングライドするなら、フレームにバッグを取り付けてバイクパッキングした方がいいかもしれない。
下りのスピードはロードに劣るが、観光メインの旅行なら機動性の高い小径車が便利だと実感した。
ロードバイクで旅をすると、気持ち的にはどうしても峠を攻めたり、トレーニングが目的になってしまう。
ミニベロでは無理できないので、おとなしくポタリングして観光名所をまわることになる。そのおかげで、今まで知らなかった箱根の名所を開拓することができた。