今年は暖冬で3月でも気温20度近く上がる日がある。天気予報を見ながら快晴で風の弱い日を選び、例年より早めに奥多摩のツーリングを始めてみた。
術後の膝の経過を見ながら、先日はロードバイクで栗坂トンネルまで到達できた。今日はさらに距離を伸ばして、都民の森を超えて風張峠までチャレンジ。
帰りは観光名所の払沢の滝を見るつもりで、道を間違え時坂峠を登坂。思わず快適な峠を発見してうれしかったが、檜原村では有名な練習コースだったようだ。
コロナウイルスの影響もあったが、都民の森の売店や払沢の豆腐屋が開いていたのは助かった。道中で観光とグルメも楽しめて、久々に気持ちのいいヒルクライムを満喫できた。
奥多摩の台風19号崩落個所
約1年ぶりに走る檜原街道。昨年の台風19号の影響で、あちこちで道路の崩落が起こっていたようだ。
とりあえず目立つのは、檜原村役場を超えた先の採石場前の崩落。2車線のうち谷側の1車線が完全に崩れ落ちている。
山側の車線はまだ通れるので、片側通行の規制が行われている。
ほかにも奥多摩駅から日原鍾乳洞に向かう道や、日の出村のつるつる温泉に上る坂道も崩れているようだ。
奥多摩の脇道なら、崩落したまま何年も放置されているところがある。
しかし今回の災害現場はいずれも生活道路。自転車で走るうえではそこまで支障はないが、山奥に住んでいる人や営業している店舗にとっては災難だと思う。
ゲート前の道路が快適に
しばらく見ない間に、奥多摩周遊道路のゲート手前の直線道路が整備されていたようだ。
こんな山奥の道なのに、まるで新しくできた高速道路のように路面がすべすべになっている。
中央道や甲州街道の裏道というわけでもなく、純粋に登山やツーリングのレジャー用といえる檜原街道。利用者としてはありがたい限りだが、ここまで気合いを入れてメンテナンスする必要があるのか疑問に思う。
昨年できた新しい公衆トイレは、アロマを炊いているわけでもないのに今でもヒノキのかぐわしい香りが漂っていた。
県道沿いの便所としては過剰なデザインにも見えるが、檜原村は東京都随一のアウトドア・レジャースポットにした重要な水源。それなりに費用をかけて維持する意味はあるのかもしれない。
周遊道路より手前の勾配がきつい
久々に都民の森側から風張峠にアプローチしてみると、標高の高いところより温泉施設「数馬の湯」付近の方が局所的な勾配はきつい。
ゲートから都民の森まではずっと上りだが、平均勾配は低く抑えられている。ときどき姿勢を変えて背中をほぐす以外は、立ち漕ぎする必要性も感じなかった。
奥多摩湖側から上る場合も同様。風張峠にいたる道は長いが、そこまで傾斜がきつくないのでリハビリに向いている。
閑散とした風張峠
そこそこ息は上がってきたが、都民の森まで来たところでまだ余裕があった。ついでにそのまま浅間尾根の駐車場まで上ってみた。
3月の平日、道すがら対向車線を走るロードバイクは数台みかけたが、風張峠では1台もすれ違わなかった。都民の森の駐輪場にも自分ひとりしかいない。
ほかにはひたすら麓から駐車場まで往復している単車が1台。3分おきに爆音を立てて峠を上ってくる。
コロナ対策とはいえ、きっと普通の人は自宅勤務でまじめに働いているのだろう。平日の山にいるのは、頭のおかしな連中か無職の暇人ばかりだ。
それともツーリングにはまだ早い時期なのだろうか。今日は標高1,000メートルでも気温15度あったので、3月にしては例外的にめぐまれた気候だったといえる。
都民の森、売店は営業中
峠を下って都民の森で一休み。人もまばらで不安に感じたが、売店「とちの実」は普通に開いていた。
コロナウイルスの感染対策で、名物のだんご販売だけ休止している。しかし店内では磯辺餅やカレーパンが販売されていた。
現在「とちの実」店内ですぐにいただける、フードメニューの構成・価格は以下のとおり。
- カレーパン:190円
- いそべもち:130円 ※2個だと250円で10円お得
- おはぎ(2個):300円
- 串こんにゃく(3玉):100円
- 栗蒸ようかん:350円
コロナ対策がなければ、そばやうどん、カレーも作ってもらえる。コーヒーやビールのドリンクメニューも充実している。
普段はお腹にたまる磯部餅を2個セットで注文することが多い。今日は久々にカレーパンをいただいた。
もとは冷凍食品だが、こんな山奥にもかかわらず普通の値段で売られているのがうれしい。都民の森の自販機では、大容量のホットミルクティー(午後の紅茶)が街中と変わらず150円で買える。
自転車で都民の森に入る場合は、入口の巨大なグレーチングに要注意だ。疲労困憊して坂を上って来ると、駐車場前の鉄格子でうっかり滑って転びやすい。
さすがに転倒は免れたが、路面が濡れていて何度か滑ったことがある。奥多摩の見えにくいトラップ、危険個所のひとつ。
払沢の滝に寄り道
都民の森から上川乗の交差点までは下り基調なので、上りの半分以下の時間であっという間に到達する。
橘橋まで来たところで時間に余裕があったので、少し遠回りして払沢(ほっさわ)の滝を見に行くことにした。何年も通っている奥多摩の観光名所なのに、実はまだ見たことがない。
道案内に従って豆腐屋の脇道から坂を上るが、一向に滝らしきものが見えてこない。駐車場を過ぎてだんだん道が険しくなり、さすがにこれは遠すぎる気がした。
道を間違った予感がするが、どうもこの坂は上っていて気分がいい。車がまったく来ないうえ、木陰が多くて癒される。
次第に林道らしい雰囲気になってくるが、路面はそこまで荒れていない。勾配もそこまできつくなく、穴場の練習コースではないかという予感がしてきた。
滝の奥にある未知の峠
とりあえず行けるところまで行ってみようと坂を上ったところ、視界が開けてまるで風張林道のような雰囲気になってきた。
檜原村の中心部から近いところで、こんな素晴らしい坂があるとは知らなかった。ところどころ登山道の入口があり、ハイカー向けなのか公衆トイレまで設置されている。
峠のピークらしきところに辿り着くと、うらぶれた「峠の茶屋」が出現した。
こんなところに人が来るのか謎だが、12月から3月までは冬季休業中。4月に開店したらぜひもう一度訪れてみたい。
茶屋の前にはちょっとしたベンチと、見晴らしのいい展望台が設けられていた。
自分のほかには誰もいない。標高はそこまで高くなさそうだが、周囲の山々を見渡せる絶好のビュースポットだった。
土砂崩れで通行止め
Googleマップで確認すると、どうやらこの道は風張林道の入口にいたる県道205号に通じているようだ。
さらに奥まで進んでみると、残念ながら土砂崩れで通行止めになっていた。場所的に補修する必要性が薄いうえ、工事が行われていないところをみると復旧には時間がかかりそうだ。
すぐ先には派手に土砂が崩れたところがあり、土山には轍がついている。そのまま自転車を担いで越えられそうな気もしたが、この先も崩落だらけで難儀するかもしれない。
新ルートの開拓は今後の楽しみとして、今日はおとなしく引き返すことにした。
時坂峠というらしい
後ほど家に帰って調べたところ、払沢の滝から先は時坂峠(とっさかとうげ)という有名なコースであることがわかった。
橘橋から栗坂~甲武トンネルまで行かなくても、近場で手ごろなヒルクライムを楽しめるのはうれしい。武蔵五日市周辺の入山峠という手もあるが、あちらは路面が荒れているので普段使いするには厳しい。
雰囲気的には埼玉の名栗湖の手前にある、成木峠と似ている気がした。
車で通過するメリットがないため、道が空いているのはありがたい。途中ですれ違ったのは、間伐作業用の軽トラック1台だけだった。
練習向けのコンパクトな峠
走り屋が行き交う奥多摩周遊道路のようなデスロードよりも、こういうひなびた林道の方が自転車で上るには向いている。
落石とガードレールのない崖にさえ気を付ければ、追い抜きや排気ガスでストレスを感じることなくヒルクライムに集中できる。
和田峠や風張林道に比べて、時坂峠は激坂というほどの勾配でもない。「コンパクトな風張峠」といった趣なので、都民の森に向かうよりここを往復してトレーニングした方がいい気もする。
近くにある大ダワ(鋸山林道)よりも落石が少なく、麓に下ればトイレや補給スポットも充実している。何年も通っている奥多摩にこんな峠があったというのは、うれしい発見だった。
払沢の滝にアプローチ
時坂峠を下る途中で、ようやく払沢の滝にいたる正しいルートを発見した。
駐車場から脇道にそれた先に滝はある。この付近は観光客が多いのか、公衆トイレもやたらと充実している。
駐車場にロードバイクをとめて、ここから先は歩いて滝に向かう。徒歩15分なのでビンディングシューズでは少々きつい。フラットペダルにスニーカーで来ると、こういう場面で活動範囲を広げることができる。
払沢の滝にいたる遊歩道は、一面にウッドチップが敷き詰められている。都民の森の三頭大滝に向かう道と似ていて、ふわふわした足元の感触が心地よい。
川沿いの道は傾斜も少ないので、普通のスニーカーでも歩ける。直前まで車で来られてちょっとしたハイキングも楽しめるので、観光には便利なスポットだと思う。
三頭大滝と似ている
道の終点にある払沢の滝は、説明によると落差60メートルもあるらしい。
これは表に見えている1段目の滝(28メートル)と、その下にある小さい滝3つを合わせた高低差。
パッと見は三頭大滝と同じくらいのスケールの滝。払沢の方は岩場を上れば、滝つぼまで近寄って見られるのが売りだ。
場所が便利なせいか、平日にもかかわらず若いカップルや夫婦連れのお客さんが多い。観光シーズンの休日には、かなり混雑するのではないかと思われる。
遊歩道沿いにある変な家
払沢の滝の帰りには、こんなユニークな外観をした建物が見られる。
中身はカフェ併設の陶芸ギャラリー。窓や扉を顔に見立てた家はあるが、わざわざメガネや鼻まで鉄で表現しているのがおもしろい。
ちとせ屋の「うの花ドーナツ」
払沢の滝を見た後、交差点にある豆腐店「ちとせ屋」に寄ってみた。
表に出ている「ホット濃厚豆乳(120円)」と「うの花ドーナツ(110円)」はテイクアウトできる。店内には150円の「がんもどき」や、その他の豆腐商品も並んでいた。
たまたま現金の持ち合わせが残り110円だったので、今日はドーナツを選んでみた。焼き立てではないが、甘さ控えめで素朴な味わいは「はらドーナツ」に似ている。
これで税込110円というのはお買い得。自転車でツーリング中なら、カロリー補給に2~3個いただいてもいい気がした。
膝手術後のロードバイク復帰
左膝の半月板再手術から約10か月。今回は術後の安静を優先したため、年明けから本格的なリハビリを開始してようやく足の筋肉が戻ってきた。
公営のプールやスポーツセンターはウイルス感染対策で休館中。仕方なく最近は自宅でダンベルを使った筋トレを続けている。
昨日各種のスクワットやデッドリフトに取り組んだので、今日はツーリングの前からちょっと疲労がたまっていた。
年齢によるのか、本格的な筋肉痛はトレーニング直後でなく2日後以降に出ることが多い。負荷をかけた翌日は筋肉がショック状態で無反応。痛くはないが力が入らないような状態になる。
体幹を意識して坂を上る
檜原街道を走っている間、ちょっとした坂でもフロントをインナーに落とさなければ苦しくて上れなかった。やはり1年のブランクは長く、ランニングも中止しているので明らかに体力が落ちている。
峠を上る前から体が疲れている状態だったので、かえって効率よいぺダリングを意識できた。
足で踏み込むでも腕でハンドルを引くでもなく、腹筋に力を入れて丹田のあたりを固めながら四肢の力を抜くと、不思議とするする上れる気がした。
『自転車の教科書』にも書かれていたとおり、ロードバイクでは体幹の使い方が大事なのだろう。加齢とけがによる体力・筋力の衰えを、テクニックでカバーするという新しい課題ができた。
奥多摩トレーニング計画
風張峠まで到達できたら、次の目標は小菅村。
風張峠の表裏、もしくは鶴峠の連続ヒルクライムがこなせるようになった段階で、柳沢峠という奥多摩のラスボスに挑むことができる。
その先、山梨県に下って上日川峠(大菩薩峠)、または大弛峠まで往復するのが自転車で日帰りできる限界だろう。
都民の森はかつての通過点に過ぎなかったが、今はここまで来るのでも精一杯。ロードバイクを始めた初心者の時期に戻った気分だ。
年齢的にも故障前のレベルまで体力を戻すのは難しい気もする。
実力に応じてルートを選び、ステップアップできるのが奥多摩ツーリングの魅力。いくつかの峠を組み合わせ、補給と休憩を含めた周遊コースをアレンジできる。
今回発見した時坂峠は、コンディションを調整するために常用してもよさそうなコースだと感じた。武蔵五日市駅から近いので、輪行・ミニベロでも軽いヒルクライムを楽しめると思う。