島根の出張で松江に滞在中、3連休を生かして鳥取大山へ登ってみた。夏山登山道とユートピアルートという2つのコースをピストンし、その後は米子市街まで走って下山。
関東圏の人は、大山と聞けば丹沢の大山(おおやま)を思い浮かべるだろう。しかし全国的には鳥取にある百名山、大山(だいせん)が有名らしい。「伯耆富士」という別名のとおり、山頂からの眺めは富士山と似た壮大な景観だった。
気軽なハイキング目的なら、山小屋も充実した夏山登山道。鎖場も含むハードな岩場を体験したいなら、ユートピアルートがおすすめだ。がんばれば1日で両方制覇することもできる。
米子駅からバスで大山寺へ
大山への登山口がある大山寺まで、米子駅から片道720円でバスが出ている。午前中は7:20と9:20発の2本しかないので注意。朝、松江駅を出て電車で到着すると、乗り換え時間がタイトだった。
標高800mの大山寺付近には、観光客向けの飲食店や宿がたくさんあるが、コンビニは存在しない。モンベルのショップで高価な補給食は手に入るが、食料・飲料は米子駅にあるコンビニで調達しておいた方がいい。
夏山登山道
バス乗り場の脇にある大山情報館という施設でトイレを済ませ、装備を整える。大山寺へ向かう坂道を途中で右折、モンベルの前を通った先の駐車場に夏山登山道の入口がある。
登山道を登り始めるとまず阿弥陀堂に到着する。これは1552年に建てられた、かなり古い重要文化財。大山では山岳信仰が盛んで、明治22年までは一般の入山が禁止されていたらしい。
登山道は石段が整備されていて歩きやすい。中には走って上り下りするトレイルランナーの人もいる。ところどころ傾斜のきついところがあり、がれきのような岩が転がっている部分もある。
夏山登山道は尾根沿いのルートなので見晴らしがよい。たまに後ろを振り返ると、米子市街から弓ヶ浜半島まで見渡せる。
五合目の先には行者谷コースとの合流点がある。六合目には避難小屋があり、ここで休憩している人が多い。
今日は3連休の中日で天気もよいせいか、登山道は多くの人でにぎわっていた。小学生の遠足や高齢者のグループなどさまざまな人がいて、200人はすれ違ったように思う。山頂の近くでは道が狭くなり、渋滞も発生していた。
大山の山頂
八合目を過ぎると、視界が開けて山頂が見えてくる。山頂には「ダイセンキャラボク」というイチイ変種の低木が群生している。見渡す限りの草原の中を、木道を伝って歩くのが大山登山の醍醐味だ。
山頂の遊歩道は一方通行で周遊できるルートになっている。歩いて行くとやがてたどり着く山小屋。売店ではコーヒーやビールを売っている。さらに登った先に標高1710.6m山頂の石碑がある。
少し足を延ばして、石室(いしむろ)のあたりまで行ってみた。なかば崩壊している石室は、昔の避難所跡。その周りには、かつて宗教行事に使われたという地蔵ヶ池・梵字ヶ池という池もある。
山頂からふもとを見渡すと絶景。草原を歩いて、そのまま雲に手が届きそうな感じがする。まわりに高い山や、視界をさえぎる木もないせいか、富士山頂のような壮大な景色を眺められる。
行者谷コースからユートピアへ
渋滞する夏山登山道を五合目付近までいったん下山。「行者谷別れ」の分岐点から行者谷コースへ向かい、広い枯れ沢を横断。このあたりは人けも少ない。
「下宝珠越・ユートピア避難小屋」の道標が示す方向へ進むと、道が苔むした岩場に変わってくる。
林道に合流して舗装路を登ると、先ほど通った「元谷」に逆戻りしてしまった。このあたりの道は少しややこしい。
来た道を引き返すと「ユートピアコース登山道」の看板が見えてきた。どうやら一見登山道とは思えない藪だったので、無意識にスルーしてしまったようだ。「登山の安全確保は自己責任」という文言から、この先の道の険しさがうかがえる。
お花畑とユートピア避難小屋
大人気の夏山登山道と違って、ユートピアコースではめったに人と出会わない。たまにすれ違う人は本格的な登山装備をしている。次第に霧も出てきて、物々しい雰囲気になってきた。
わずかな踏み跡を頼りに木の根が這う荒れた道を進み、傾斜のきつい岩場を登る。さすがに「中・上級者向け」といわれるコースだけはある。濡れた岩場はトレラン用のシューズでも滑って頼りない感じだった。
道端の草も茂っていて、ところどころ藪になっている区間もある。夏でも短パンでなく、長ズボンを履いてきた方がいい。
崖のような岩場を何度か越えて、三鉾峰との分岐を過ぎるとようやく避難小屋が見えてきた。高山植物が咲き乱れる「お花畑」、霧の中に山小屋が浮かぶ光景はまさにユートピア。ただしここまでいたる苦労は並大抵でない。
大神山神社奥宮と大山寺
避難小屋の中には特に何もない。その先には「象ケ鼻」という頂きがあるようだが、今回はここで引き返した。
往路で道の状況はつかめたので、帰りは早いペースで下れた。岩場の難所は時間がかかるので、一部は渋滞している個所もあった。途中で立入禁止のルートに進む常連さんらしき人もいる。聞けばそちらの方が近道らしい。
霧の中、ぽつぽつ雨も降り始めた頃、ようやく大神山神社奥宮の裏手に到着。こんな標高の高いところにあるにしては、かなり巨大な神社だった。
石敷きの参道も相当豪華。ついでに石段を上って大山寺の方も見学した。登山だけでなく、参拝目的で大山を訪れる人も多いのだろう。
参道にある無料の足湯で疲れをいやした。島根や鳥取を観光していると、あちこちに足湯があってうれしい。
次の米子行きバスが出るのはだいぶ先だったので、トーレニングも兼ねて走って下山することにした。
大山から米子までランニング
大山寺から米子市街までは約20km。裾野に沿った一直線の県道24号をひたすら下る。
ここは皆生トライアスロンのバイクコースで、午前中にバスの中から観戦することができた。ところどころ斜度8~10%の表示があり、自転車で上るのはそこそこつらそうだ。
途中でいくつか見かけた「落下注意」の標識は、イラストがなかなか衝撃的。
標高が下がると次第に気温も上がって疲労がたまってきた。その後、国道9号に合流して日野川を渡り、米子市街まで淡々と走った。富士見町駅の近くで予約したホテルが、たまたまトライアスロンのゴール近くだったので、チェックイン後に見学に行ってみた。
松江を早朝に出て大山の夏山・ユートピア登山道を連続踏破。さらに米子まで走って戻ったので、かなりの運動量になった。ユートピアコースは道が険しかったが、一日で2つの登山道を登るのも不可能ではなかった。