与那国島の一泊旅行を経て、フェリーで石垣島に戻ると午後2時。まだ日没まで5時間はあるので、レンタサイクルを借りて今度は島の内陸部を40km程度走ってみた。
バイクは前回島一周したのと同じ、エイトサイクルさんのキャノンデールSL4。不思議なことに洋上のフェリーでも携帯電話が通じるので、早めに予約してセットアップしてもらえた。
サドルの位置はそのままで、不調だったフロントの変速機能も直っているようなのでありがたい。
石垣島鍾乳洞
まずは市街地の近くにあるバンナ岳を目指して北上。その途中にある石垣島鍾乳洞に寄ってみた。入場料1,080円のところ、離島ターミナルにあったパンフに付属の割引券で10%オフになった。
石垣島にあるのは、海底で形成され隆起したタイプの鍾乳洞。水中に石灰分が多いため、「3年で1mm」という通常の2倍以上のスピードで成長しているらしい。
全長3.2kmのうち660mの区間が公開されている。奥多摩の日原鍾乳洞もたいしたものだが、石垣島はまた別格。贅をつくしたバロック様式の宮殿か教会のようだ。
石筍(せきじゅん)の数は日本一とのことで、50万本もある。洞内のいたるところからマングローブの根のように生えており、「滑りそうで落ちない」受験石やトトロ石など、個性的な名前がつけられている。
石垣島鍾乳洞の少し北に、八重山鍾乳洞という看板が見えた。そちらはまた別の鍾乳洞のようで、動物園もあるらしい。伊原間のサビチ鍾乳洞も含め、石垣島には多くの洞窟が残っているようだ。
バンナ岳~バンナスカイライン
引き続きバンナ岳を目指し県道208号を北上。標高は230mで、先日登った野底マーペーより低い。
ふもと一帯がバンナ公園になっており、道は整備されている。展望台に向けて観光バスがひっきりなしに往復するので、自転車で向かう際は車に注意が必要だ。
最初にたどり着いたのは「エメラルドの海を見る展望台」。独特な展望台付きの東屋で3層構造になっている。ちょうど団体客と鉢合わせして、ガイドさんの説明を一緒に聞かせてもらった。
あいにく曇りがちでほかの離島までは見えなかった。石垣島の市街地は一望できるので、人気の夜景スポットでもあるようだ。
西の山頂には天文台、北は於茂登岳まで見渡せる。於茂登岳は今日も山頂に雲がかかっていて、全容を確認することはできなかった。
展望台からそのままバンナスカイラインを下って、坂を上り返すと奇妙なモニュメントに遭遇した
モチーフはカンムリワシの卵らしい「渡り鳥観察所」。ここに隠れて鳥たちを観察できるらしい。
らせん階段を上ると、エメラルドの展望台よりさらに素晴らしいパノラマを見ることができた。こちらはキャパが小さいからか、団体の観光客も訪れないようだ。落ち着いて景色を眺めるにはおすすめのスポットといえる。
バンナ岳を下って道沿いに進むと、島の中心部に到達した。このあたりは畑と森ばかりで、特に見どころはない。ときどきパイナップルの売店も通り過ぎたが、閑散として開いているのかどうかもわからない。そのまま西に進路をとって、名蔵の石垣やいま村に向かった。
石垣やいま村~マングローブ林
やいま村は有形文化財の赤瓦古民家を移築した施設だ。江戸東京たてもの園や明治村、沖縄本島の琉球村と似たような建築のテーマパークといえる。
様式としては、竹富島で多く見かけた八重山諸島の古い民家が中心。基本的にどれも平屋の似たような間取りで、あまりバリエーションはない。
台所以外、ほぼすべての戸を開け放てる仕組みになっている。風通しがいいというか、屋根がある以外はほぼ屋外という雰囲気だ。神棚や床の間、物置は建物の中心に配置されている。何となくファンズワース邸のように、合理的でモダンという印象を受けた。
室内に置かれている椅子は、まるでリートフェルトのベルリンチェアのように見える。椅子も伝統的な工芸品なのかわからないが、このデザインは斬新だ。
村内には古民家の他に保護されたカンムリワシの飼育所やリスザル園がある。
ちょうど餌やりのタイミングで、カットされたフルーツに猿たちが群がっていた。近づくと体に飛び乗ったり、木の上から降りてきたりする。リスザルはかわいいが、おかげで果汁まみれにされてしまった。
歴史的建造物の展示だけでは地味すぎるので、動物園や体験コーナーも充実させてバランスをとっているようだ。もちろん飲食やお土産コーナーもある。
やいま村の中には、マングローブ林を観察できるウッドデッキの遊歩道もある。このあたりの名蔵アンパルの干潟はラムサール条約の登録域。遊歩道では見かけなかったが、カニや爬虫類の希少動物も豊富に生息している。
唐人墓~石垣島ヴィレッジ
やいま村から島の西岸に出て、79号線を南下。前回の一周ツーリングではスキップした、フサキビーチと観音崎に寄ってみる。岬の近くに唐人墓と富崎観音堂があった。
唐人墓とは、19世紀にアモイからカリフォルニアに航行中の奴隷貿易船で起きた暴動に由来するもの。船は石垣島に座礁し、上陸後に捕縛・虐殺された中国人128名をまつっている。
市街地に戻り、石垣港のターミナルビルがある区画に行ってみた。海上保安庁の船があり、ほかは港を猫が歩いているくらい。自転車を返却して、繁華街をうろついていたら、石垣島ヴィレッジという建物を見つけた。先月オープンした新しい複合飲食施設らしい。
ちょっと変わったかまぼこ料理のお店に入ってみた。地元の名物「マーミヤかまぼこ」から取り寄せたかまぼこ盛り合わせに、海ブドウやちゃんぷるーをいただく。ドリンクは沖縄名物の乳酸菌飲料、ゲンキクールを炭酸で割ったもの。
自転車で島一周だとさすがに一日がかりになるが、今回の内陸コースなら半日で帰って来られる。時間がなければ、バンナ岳の展望台に上るだけでも眺望を楽しめて爽快なサイクリングになることだろう。