ナイト工芸のノルディックポール、固定長セレクトカーボンレビュー

日ごろのノルディック・ウォーキング用に、ナイト工芸のカーボン製ポールを購入してみた。

これまで使っていたDABADAの分割式アルミ製ポールに比べて、圧倒的に使用感がよくなった。先ゴムの質感も上がったうえ、摩耗に対する耐久性も高まったように感じる。

2週間ほど使ってみたセレクトカーボンの使い心地をレビューしてみたい。

日本製カーボンで完成度が高い

ナイト工芸のポールは、カーボン製にしてはめずらしく日本製。

ナイト工芸ノルディックポールの説明書

自転車の分野でカーボンフレームといえば、ミドルレンジは中国・台湾製と相場が決まっている。国内工場で生産されるカーボンフレームといえば、ヨネックスの高級製品くらいしか思い浮かばない。

その分、注文から受け取りまで1週間ほど待たされたが、外側の均質な塗装からも仕上げの良さが伝わってくる。ツヤのある黒いシャフトに施されたプリントが、まるで漆塗りの工芸品のようだ。

ナイト工芸ノルディックポールのシャフト部分

格安のDABADAと違い、予備の足ゴムなど余計な備品は付いてこない。その代り取扱説明書が充実していて、使い方やノルディック・ウォークの歩き方まで記載されている。

シャフト直径16ミリで安定性向上

今回買ったセレクトカーボンは直径16ミリ仕様。説明書によると、

男性や体格のある方、ハードウォーカーは、径16ミリ以上のものをお使いください。

ナイト工芸ノルディックポールの説明書

ポールの太さについては安定性と重量増のトレードオフがある。また伸縮式では構造上、どうしても先端に近い部分が細くなってしまう。

長さが固定されたポールも、実際は先端に向かうにつれて細く加工されている。軽快なスイングバランスを実現するうえでの配慮だろう。

説明書には「ゴムパッドを付けると2cm全長が長くなる」とも書かれていた。

ナイト工芸ノルディックポールの長さ実測

しかし実測するとゴムの先端からグリップ頂部まで1,158ミリ。1センチ以内の誤差にとどまっているようだ。

先ゴムが柔らかく振動吸収効果大

初期装備の先ゴムは、アグレッシブ・スタイルとして標準的な船底型だ。

ポール・ウォーキング用の丸型ゴムに比べて、斜めに突いて推進力を得られるため、運動強度も高くなる。

ナイト工芸ノルディックポールの先ゴム説明書

先端のゴム素材を触って気づいたのは、今まで使っていたDABADAに比べてかなり柔らかい。というよりDABADAの先端はゴムというより硬いプラスチックだったようだ。

先ゴムが柔らかいおかげで、地面に突いた際の衝撃をかなり抑えられる。シャフトがカーボン素材に変わった影響もあるが、振動吸収の半分はこのゴムキャップが担っているのではないかと思う。

ナイト工芸ポールの先ゴム

ロードバイクでも地面に接するタイヤの品質は重視される。

安物ポールからナイト製品に替えると、タイヤの太さを23Cから25C、あるいはクリンチャーからチューブレスに替えて空気圧を下げたようなクッション効果を体感できる。

柔らかいのに耐摩耗性が高い

ゴム素材が柔らかいということで「摩耗が早いのでは」と懸念したが、結果は逆だった。

ナイト工芸の先ゴムは適度な固さでしなる感じ。地面に押し付けられても粘るというか、柔らかいのに耐摩耗性は高い。

これに比べてDABADAの先端はほぼ樹脂素材。アスファルトにこすりつけると、すぐに表面が削られてしまう。

ナイト工芸の先ゴムは、2週間ほぼ毎日1時間ハードに使っても、ほとんどすり減っていない。このペースなら3か月くらいは余裕で持ちそうだ。

ナイト工芸ノルディックポールの先ゴム比較

左:DABADA、右:ナイト工芸

DABADAの場合はみるみる摩耗して、約1か月で中の金属パーツが露出してきた。意外なことに品質の高いナイト工芸の方が、格安ポールより消耗費の維持費も安く済みそうだ。

なぜか先端にバスケット付き

ちなみにセレクトカーボンの先端には、小型のバスケットがついている。

トレッキング・ポールの場合は、ぬかるみや雪道で杖の沈み込みを防ぐ効果がある。しかしノルディック・ポールでそんな不整地を歩くシチュエーションは思い浮かばない。

バスケットの一部が半月状に欠けているのは、ポールの向きを判別するためだろうか。今のところ装飾的な役割しか思いつかない。

ノルディック用のポールにバスケットがあると、かえって物が引っかかったり重量が増えたりするデメリットしかないようにも思う。この仕様は謎だ。

グリップとグローブの着脱機構

ナイト工芸の上位製品は、グローブがワンタッチで取り外せるようになっている。

使い方としてはステッキ上部の黒いボタンを押す方式。するとグリップに差し込まれている板状プラスチックのロックが外れ、ポールとグローブを分離することができる。

ナイト工芸ポールのグローブ分離スイッチ

ボタンの周囲が他社製品に比べて水平に平べったくなっているのは、説明書によるとウォーミングアップのストレッチで手を載せるためらしい。確かに背中を伸ばす際にポールが安定して便利で、それ以外に手が上部にすっぽ抜けるのを抑える効果もある。

アタッチメントの再装着に苦労する

ウォーキング中にトイレに寄る際など、ワンタッチでグローブを分離できるのは便利だ。しかし再び取り付ける際は両手を使わないとうまくはまらない。

グリップの差し込み口に合わせて平たいプラスチック片をはめる必要があり、グローブを着けた側の手では構造上押し込めない。先に位置を合わせて、空いている方の手で交互に挿入することになる。

グローブの再装着を何度もやってみたが、慣れてもスピードアップできる気配がない。差し込み口が小さいので、目が悪い人や細かい作業が苦手な高齢者は苦労すると思う。

ナイト工芸ポールのグローブ固定部分

この点に関しては、LEKIのシャークグリップの方が明らかにすぐれている。ストラップの輪っかを引っかけるだけで、構造も単純なため軽量化できる。

LEKI(レキ) 登山 ノルディックウォーキングポール プレステージSL グリーン 1300334
レキ(LEKI)
スピードロックシステムにより長さ調節がスピーディーに行えるモデルが、よりスポーティーなデザインになって新登場。

安定感はナイト工芸の方が上かもしれないが、国内メーカーはみな同じボタン方式だ。LEKIの引っかけタイプは国際的な特許で保護されているのだろうか。

グローブの左右表示が意外と便利

ポール自体は左右差がないため、体の使い方や癖による偏った先ゴム摩耗を防ぐことができる。グローブは当然ながら左右別の構造になっている。

グローブの上部にはnaitoというブランド名とLR、さらに「左・右」という漢字が刺繍されている。最初はこの漢字がダサいと思ったが、実はLR表記より視認性が高い。

ナイト工芸グローブの左右表記

グローブの左右は装着時に毎回確認する必要がある。多少見た目が大げさでも、一目でどちらかわかった方が便利だ。

例えば膝から下が取り外せるジップオフ/コンバーチブルパンツでも、取り付ける際に左右どちらかわからず戸惑うことがある。

パタゴニアのジップオフはジッパーを色分けして区別できるようになっており、大変便利だ。他社も真似すればよいと思うのだが、これもまた特許か何かで制限されているのだろうか。

ストラップの締め付け調整幅は広い

ポールに付属するグローブは、親指・人差し指の間から手の甲にまわる簡単な構造になっている。

手首側に長めのストラップがついており、折り返してマジックテープで固定する。この作業が毎回面倒だが、テープの調整幅は広く、さまざまな種類の手袋に対応できる。

素手ではもちろんのこと、ランニング用の薄手グローブや、

ナイト工芸ポールとグローブ

中綿入りのぶ厚いグローブも中に通すことができる。

ナイト工芸ポールとグローブ

これで冬場のウォーキングも安心だ。手持ちの手袋と併用できるのか、購入前は心配なポイントだったが、取り越し苦労だった。

ポールの重量比較

ナイト工芸セレクトカーボンの重量は、カタログ値で1本あたり165グラム(100センチの場合)。

今回購入したのは115センチなので、それより長く重くなるはず。しかし重さを測ってみると、先ゴム・グローブ付きでも1本162~163グラム(合計325グラム)しかなかった。

ナイト工芸セレクトカーボンの重量

スペック表記より大幅に軽いという、うれしいサプライズだった。細かいクレームを避けるために、カタログにはあえて重めの数字を載せているのかもしれない。

参考までにDABADAのアルミポールを測ってみると、左右ぞれぞれ270グラム(合計540グラム)。

DABADAのポール重量

素材と構造の違いがダブルで効いているが、1本あたり107~108グラムも軽くなると圧倒的な違いを体感できる。ナイト工芸のポールは、まるで箸でもつかむように指2本でつまんで運べる。

同じ固定式のアルミ製「スポーツ」は100センチで1本194グラム。アルミ/カーボンという素材の違いよりも、固定式/分割・伸縮式という構造上の違いが大きいように思われる。

長さが固定されたタイプは余計な機構がない分、軽くて剛性も高まるという予想は当たっていたようだ。

スペックまとめ、体感性能の違い

DABADAのトレッキング・ポールからナイト工芸のノルディック専用ポールに替えて、変化した要素をまとめると以下のとおり。

  • ポール素材:アルミ→カーボン
  • 先ゴム素材:硬質プラスチック→適度に柔らかいゴム
  • 可動部:継ぎ目が2つ+レバー式伸縮調整部→なし
  • ストラップ:脱落防止用の簡易版→締め付け調整可能なグローブ型
  • 重量:540グラム→325グラム(左右合計、60%も軽量化)
  • 実売価格:4,000円→約7,000円(1.75倍)

素材も構造も大幅に変わったせいか、価格差以上のメリットを実感できた気がする。まるでアルミ製の折りたたみ自転車から、カーボン製の高級ロードバイクに乗り換えたような感触だ。

体感的には地面に突いたときの反動・振動が減り、ポールから出る音も「カチャ…カチャ…」から「スコッ…スコッ…」と静かになった。グローブがあるおかげで安定性が増し、グリップを強く握らなくても済むようになった。

ノルディック専用グローブの効果

アグレッシブ・スタイルのノルディック専用のポールには、たいてい手袋型をした専用のストラップが付属している。

ここに手をはめなくても杖を握って突くことはできる。実際に今までDABADAのポールでは、補助ストラップを無視して直接グリップを握っていた。

ナイト工芸のポールでストラップの有無を比較してみたところ、紐を外した状態でも問題なくウォーキングすることはできる。街中を歩いていたりして、ひんぱんに着脱する際は、グローブなしで直接握った方が便利だと思う。

一方で両手にグローブをきちんと装着した場合、握力を弱めてストラップの固定力でポールを支持することができる。グリップに指数本、軽く引っかける必要はあるが、手の負担は半分くらい減らせると感じた。

ビンディングシューズと似た感じ

ノルディック・ポールのグローブに手を入れるのは、ロードバイクでビンディングシューズを使う感覚に近い。

駆動方向以外に手足がぶれるのを抑えてくれるため、その分バランスを保つために余計な筋力を使う必要がなくなる。有酸素運動としては、この方が活動時間を延ばせて効率がよいといえる。

素手でポールを使うと、先端が地面に当たった際、回転したりぶれたりしないように強く握りしめる必要がある。グローブがあると横・回転方向にかかる応力をセーブしてくれるので、多少握力を弱めても構わない。

ナイト工芸のポール付属グローブ

極端に言えば親指と人差し指で輪っかをつくり、グリップに引っかける程度でもOK。雑に握ってもグローブが力を伝達してくれるので、手首のスナップだけで杖を突き続けることもできる。

二の腕を引き締められる

グリップを握りしめる力を弱めると、腕や肩を大きく振ることができる。

腕まわりの緊張を解いてダイナミックに歩けるため、可動域が広がりエクササイズ効果も高まると期待される。グローブなしでは意識的に強く握らないと、地面に突いた衝撃でポールが飛んでいってしまう。

さらにグローブを梃子(てこ)のように使って、推進力を高めることができる。ポールを後ろに強く突けて上腕三頭筋の負荷が増えるため、二の腕を引き締めたい人には向いている。

ストラップなしだと前腕筋(握力)に集中していた負担が、グローブのおかげで上腕~肩まで分散されるように感じた。1時間程度のウォーキングではそこまで差を感じなかったが、より長時間の運動では局所的な疲労の軽減を実感できると思う。

ナイト工芸のポール付属グローブ

おそらく素手では途中で上腕が疲れて、グリップを握れなくなってしまうだろう。グローブ付きなら使える筋肉部位が増え、バランスよく上半身を鍛えることができる。

ポールを使うと膝が楽になる

ナイト工芸のセレクトカーボンを試してみて、今のところはグローブの再装着が面倒な以外、特に不満はない。

カーボン製・上級者向けの固定式高級ポールといっても、せいぜい7,000円くらいの投資。そのおかげで日々のウォーキングがますます楽しくなった。

おそらく当面は膝の故障で走ることができないため、ジョギングに代えてウォーキングを習慣化するつもり。ポールを使ってカロリー消費は20%増えるといわれるが、目いっぱい早歩きしても秋冬は汗をかくほどでもない。

ランニングに比べてノルディック・ウォーキングは明らかに運動強度が低く、物足りない感じもする。しかし平地はともかく坂や階段の上り下りでは、ポールがあると膝がだいぶ楽になる。

ノルディックでロングディスタンス

気休めにすぎないかもしれないが、走る代わりにポールで膝をカバーしつつ、上半身もバランスよく鍛えられれば一石二鳥だ。

ナイト工芸のセレクトカーボン

水泳・自転車と同じく老後まで続けられる趣味のひとつとして、気長に取り組んでいこうと思う。トライアスロンをやってきたおかげで、有酸素運動のバリエーションには事欠かない。

ざっと調べたところ、ノルディック・ウォークでタイムを競うレースがないのは残念だ。個人的にはポールを使って数十キロ~数時間ウォーキングしてみるとか、持久系のチャレンジに興味がある。

いくら杖で体を支えても、無理すればまた膝を痛めるおそれがある。そのあたりは様子を見ながらぼちぼち開拓していきたい。