3回目の膝手術を受けてから8か月後、医師の許可が下りて本格的なリハビリ・筋トレを開始することになった。
今回は複雑な術式だったので安静期間を長めにとった。途中、親知らずの抜歯で1か月運動していなかったこともあり筋肉は激落ち。
いつの間にか患側の筋力が健側の40%近くまで減ってしまった。鏡で見ても明らかに片方の足だけ太ももが細い。
年明けからプロテインを飲んで本気でジム通いを続けたところ、順調に筋肉は戻ってきた。半月板手術後約1年の経過と、リハビリ・筋トレの状況についてまとめてみたい。
ランナーが悟った筋トレの重要性
趣味は持久系スポーツなので、今までは筋トレより走ったり泳いだりする方を優先していた。
しかし故障を防いでパフォーマンスを上げるには、マラソンランナーでも積極的に筋トレすべきという話がある。
トライアスロン界の有名人、デイブ・スコットの著作でも、後半かなりのページを割いてウェイトトレーニングの方法が紹介されていた。
数年前の来日時に本人とお会いしたが、60歳の高齢でもハードにトレーニングして全身ムキムキだった。太い腕で力強く握手してもらった感覚は今でも覚えている。
「筋肉がつくと体重も増える」というデメリットもあるが、アマチュアレベルならパフォーマンスが上がる効果の方が大きい。体質にもよると思うが経験上、筋トレと有酸素運動を組み合わせれば、いきなり5kgも10kgも体重が増えることはない。
ロードバイクのヒルクライムが専門なら話は別。しかし平地走行のトライアスリートなら、多少ウェイトが増しても筋肉をつけた方が安全だと思う。
スポーツ整形外科の指導も筋トレ
かつてマラソン練習中、足が痛くてスポーツ系の整形外科を受診したことがある。
ランニングフォームの改善などテクニカルな指導が受けられるかと期待したが、実際は臀部やハムストリング、体幹の筋トレばかり教わることになった。
マラソンでは決まって35キロあたりから足に痛みが出る。筋肉が衰えて固まると、筋や関節が不自然にこすれて炎症が起きる。
単純に筋肉強化すれば持久力も上がって、こうした故障やけがを未然に防げるようになると思う。
外で走って汗をかく方が、爽快感が得られて気持ちいい。ランナーにとって筋トレは地味でつらい鍛錬だが、サブ種目と思ってまじめに取り組んだ方が選手生命は延ばせる可能性が高い。
自分はこれまで筋トレの意義を軽視していた。過去10年以上の市民レースで一度もリタイアしたことがないのが取り柄だが、無理した代りに膝の軟骨をすり減らしてしまった。
変形性膝関節症は完治しない
変形性膝関節症が進行してしまったので、「もう走るのはおすすめしない」と医師にはっきり言われている。走れないことはないが、その分、膝の劣化が進んで老後に苦労するという意味だ。
2回目の手術後にみっちりリハビリ・トレーニングを積んでレースに復帰してみたが、結果はあまりかんばしくなかった。無理したせいか膝がまた腫れて、結局ずるずる悪化し半月板の再手術を受けることになってしまった。
将来、再生医療で膝軟骨を修復する方法が、保険適用かつ外科手術なしで手軽に受けられるようにでもならない限り、これ以上症状を改善するのは難しいと思う。
身体に負担の少ない関節鏡手術とはいえ、腰椎麻酔は痛いし気持ち悪い。できればもう死ぬまで手術は受けたくない。
膝の運動療法は一生続く
膝の疾患に対しては運動療法の効果が大きいといわれている。
たとえO脚で関節症が進行していても、痛みや腫れがなければ歩いたり走ったり動かした方がいいというのが現代の常識だ。
筋肉も軟骨も使わなければ廃用するし、膝の痛みを気にして運動しなければ生活習慣病のリスクも増える。足腰を鍛えれば、その分、膝にかかる負担を減らして軟骨の摩耗を遅らせることができる。
膝のリハビリは歯周病の治療と似ていて、完治する見込みのない撤退戦。あとは寿命が尽きるまで、いかに病の進行を遅らせ、健康状態を維持できるかという話になる。
膝関節症になってしまったら、普通の人より意識して下半身の筋トレに励む必要がある。
飛んだり走ったりするのは控えるとしても、毎日のウォーキングやスクワットなどできる範囲でトレーニングを続けるのが最善だ。リハビリは一生続く。
手術後に筋肉が衰えた要因
2回目の半月板手術は膝の外側から切開してinside-outで縫合したり、血餅を挟み込んだりする複雑な術式だった。
そのため術後の安静期間も長くとり、退院して半年くらいは積極的に運動しなくていいと言われていた。前回の手術で競技復帰を急ぎすぎた反省もある。
その間にやることは荷重をセーブした自宅での足上げ体操程度。スクワットもランニングも、お風呂で正座の練習をするのも当面禁止だ。
ロコモティブシンドロームの予兆
日常生活レベルの筋力は戻るが、過去10年以上続けたランニングをやめたので明らかに体の調子がおかしい。
代わりにノルディックウォーキングを始めてみたが、運動量はジョギングの半分以下だと思う。ポールを使って膝にかかる荷重を減らせる分、運動負荷は下半身から上半身に移ってしまう。
毎日全身の毛穴から汗を出さないと、体に毒素が溜まっていく感じがする。まるで部活を引退した中高生のような気分だ。
特に大腿四頭筋の萎縮がひどく、患側の足では階段を登るのもつらい。上りで膝を曲げたまま体重を支える姿勢になると、膝蓋骨の上あたりに変な痛みが出る。
明らかなロコモティブシンドロームの症状まで出てきた。
親知らずの抜歯で体重が激減
たまたま口腔外科で親知らずを2本続けて抜いたため、約1か月ほとんど運動しない日が続いた。
治療後の食事制限でろくにものが食べられなかったせいもあるが、一気に4kgくらい体重が減った。足の筋力もますます衰えてしまった。
歯の治療が終わってトレーニングを再開したが、どうも回復のスピードが芳しくない。2か月後に膝のリハビリで筋力測定してもらっても、思ったほど改善されていなかった。
膝の治療にほかの病気やけがが重なると、なかなか計画的にトレーニングできない。絶対安静の時期が断続的に続くと、せっかくリハビリで戻した筋肉もまた失ってしまう。
プロテイン摂取と筋トレ強化で回復
すでに手術から8か月は経過したので、筋トレもストレッチも強化してよいと医師から言われた。
徐々にマシンの荷重を増やしても悪化する気配がなかったので、新たにプロテインも飲みつつ本気でトレーニングしてみた。プロテインの効果はあまり信じていなかったが、筋力を取り戻すために役立ちそうなものは何でも取り入れてみたい。
筋肉の回復期間を見計らって週2回、ジムに通って下半身の筋トレを強化した。マシンを使って毎回筋肉痛になるくらい筋肉を追い込み、プロテインも用法どおり運動後と寝る前の1日2回飲み続けた。
すると2か月後には、目に見えて筋力の改善が見られた。高負荷での最大トルク・患側伸展を比較すると、親知らず抜歯後の一番ひどかった欠損42%から20%まで一気に回復。
一方で低負荷の屈曲運動に関しては、すでに健側を追い抜くほど過補償な状態になっていた。高負荷でも伸展側より筋力の左右差が少ない。
これについてはハムストリングスより大腿四頭筋の方が筋トレで鍛えにくいという理由。また健側の前十字靭帯(ACL)再建手術で、移植のために太もも裏の腱を採取した影響があると思う。
ACL再建術によるハムの筋力低下
前十字靭帯の再建に関しては、半腱様筋腱というハムストリングスの一部を採取して移植する方法が一般的だ。
付着部を切開して引っ張り抜いた腱を二重に束ねて、役に立たなくなった靭帯の代りに金具で固定する。1年も経つと骨と腱の癒合が進んで、完全ではないがACLの代りに膝を固定する役割を果たすようになる。
腱を固定したボルトとピンはチタン製で、そのまま残しても問題ないといわれている。わざわざ痛い思いはしたくないので、支障がなかれば金具は埋めたままにしておこうと考えている。
この術式のデメリットは太もも裏の腱が物理的になくなるため、どうしても手術後にパワーが落ちてしまう点だ。
実際にレッグカールのマシンを使って左右の差を比べてみると、荷重を増やすほど片足に力が入らない現象が見られた。ランニングや自転車など低負荷の反復運動なら支障はないが、膝屈曲の最大トルクは明らかに減少する。
レッグカールで片足だけ鍛える方法
筋トレを続ければまわりの筋肉が補って働くようになるが、左右の足で筋力差が残るのは仕方ない。
筋力のアンバランスが原因でジョギングやウォーキングの姿勢が悪くなるようなら、意図的に負荷を調整して片足だけ集中して鍛えた方がいいのかもしれない。
うつ伏せになって行うプローンレッグカールなら、片足だけでウェイトを上げ下げすることができる。座って行うシーテッドレッグカールだと、使わない方の足を伸ばして空中キープする必要があるのでつらい。
椅子型レッグカールのマシンはたいていのジムに置いてあるが、うつ伏せ型は場所をとるせいか、なかなかお目にかかれない。
コロナウイルスの影響でダンベルに切替
2020年3月現在、コロナウイルスの感染予防対策で公営のスポーツ施設はみな閉まってしまった。屋内温水プールもすべて閉鎖状態だ。
代りに自宅でダンベルを使ったスクワットを数種類始めてみた。それなりに回数をこなせば脚やお尻が筋肉痛になるが、ジムの専用器具ほど集中的に追い込むのは難しい。
上半身は自重トレーニングでも十分だと思う。下半身はウェイトを増やさないと効果的に筋力強化できないのが悩みどころだ。
春先になってロードバイクも再開したので、自転車で峠を上る方が太ももは鍛えられる気がする。次回のリハビリ・筋力測定で、自己流・自宅筋トレの成果が出るかどうか気になるところ。
どのみち膝関節症のリハビリは死ぬまで続けることになる。家でできる効率的な下半身の筋トレ方法は、今後も追及していきたい。