出張先でチューブレスタイヤがパンクしてしまったので、手元の工具で修理してみた。タイヤに開いた穴は見つかりパッチで補修したが、なぜかビードが上がらない。シーラントを入れても手ごたえがないので、結局あきらめてチューブを入れることにした。
空気漏れの原因が不明でも、シーラントが自動的に解決してくれることもある。しかし今回は完全にお手上げ。予備のリムテープやシーラントを取り寄せて試すよりも、チューブを入れた方が手っ取り早かった。
バルブコアはペンチでも外せる
先日、温見峠でパンクしたときは、シーラントが派手に吹き出ることはなかった。タイヤ表面にそれらしき穴が見当たらず、リムの周囲にさらさらの液が漏れるだけ。
タイヤはふにゃふにゃだがビードは落ちていない。ハンドポンプで空気を入れてみたものの、まったく手ごたえがなく、空気が漏れる個所も特定できなかった。
帰宅後、タイヤにシーラントを少し入れて穴を見つけようと思った。しかし、バルブからシーラントを注ぎ込むには、バルブコアを外す必要がある。
かまぼこ状の穴が開いた「バルブコア回し」を、出張先に持ってくるのを忘れてしまった。小さくてかさばらない工具なので、ツールボトルに携帯しておけばよかったと思う。バルブを買うと付いてくるが、単品で売っているのは見たことがない。
ためしにラジオペンチで代用してみたところ、問題なく外せた。ただしネジの溝を少しなめてしまったので、専用工具があればそちらを使った方がベターだ。
外したバルブコアを観察すると、汚れてはいるが特に壊れた個所は見当たらない。
タイヤに少量のシーラントを流し込んで空気を入れてみたが、リムとの隙間から一様に漏れるだけ。吹き出る範囲が広すぎて、穴の開いている部分は発見できなかった。こうなると、一度タイヤを外して内側を総点検するしかない。
タイヤ内側に固着したシーラントの除去
後輪のトレッドがだいぶすり減っていたので、タイヤを外したついでに前後輪をローテーションできる。
現在履いているIRC X-Guard(旧モデル)の走行距離は3,000kmくらい。前輪はトレッド中央の線がまだ残っているが、後輪は凹型に大きく削れている。どちらも摩耗チェックのディンプルは見えているので、まだ寿命というわけではなさそうだ。
外したタイヤの内側には、シーラントの固形成分がびっしりこびりついている。わずかに湿り気はあるが固体・液体に分離していて、本来のパンク修復機能は期待できなそうだ。前回シーラントを入れてから、そのまま8か月は使っていた。
まずはタイヤにこびりついたシーラントの残骸をこすり落とす。内側のブチルゴム・エアーシール層を傷つけないように雑巾でこするが、毎回骨の折れる作業だ。シーラントを分解・中和する薬品でもあればいいと思う。
タイヤ2本分30分くらい磨いて、だいたいきれいになった。細かいシーラントのカスが残っているが、さすがにこれ以上、素手では取り切れない。
タイヤ側面にサイドカット発見
シーラントを落としたタイヤの内側をチェックしたら、端に近い部分に切れている個所を発見した。
ビードに近い位置で水平に切れていたので、外から見ても気づかなかったのだろう。先ほどシーラントが漏れたのも、ここが原因と推測できる。
X-Guardの貫通防止ベルトも、タイヤ側面からの衝撃には弱かったようだ。温見峠は落石が多かったので、もろに踏まなくても後輪側面に引っかけたりしたのだろう。
マルニのキットでパッチ処理
それなりに穴は大きいが、ひとまずパッチで修理できないか試してみた。
携帯しているトピークの応急処置用シールでは弱そうなので、ネット通販でマルニのパンク修理キットを取り寄せた。パッチ・セメント・紙やすりが入ったセットで、チューブレスタイヤにも使えるはずだ。
またすぐ穴が開くと面倒なので、しっかり接着剤も使って養生しておきたい。説明書どおり、穴の周辺をやすりがけしてエコ・セメントを塗り、5分放置。
セメントが完全に乾いてからパッチを貼り、タイヤレバーでこすって圧着させる。
パッチのはみ出た部分は、適当にカッターで切っておいた。表面の透明シールをはがすと、パチとタイヤはしっかり密着して一体化したように見える。
これまでも何度かマルニのキットでチューブレスタイヤを修理してきた。パッチは頑丈なので、たいていのパンクならこれで直るはずだ。
穴を塞いでもビードが上がらない
サイドカットの穴は無事に塞ぐことができたので、前後輪を交換した状態でタイヤをはめ直す。
台所用の中性洗剤を薄めて、リムの内側に塗ってから空気注入。こうするとタイヤの滑りがよくなり、泡が出て空気が漏れる場所もわかりやすい。
最初はシーラントなしで空気を入れてみたが、ビードが上がる手ごたえはない。ホイールとタイヤの相性によってはこのままビードが上がることもあるが、固いX-Guardでは無理なようだ。
あきらめてバルブからシーラントを入れてみたが、それでも内圧が高まる感触はない。ACORのミニポンプではパワーが足りないのだろうか。
手元にあったママチャリ用の空気入れに、フレンチバルブのアダプターを差して使ってみた。ミニポンプより威力はありそうだが、それでもビードは上がらない。何度空気を入れても、相変わらずタイヤとリムの間から泡が出るだけ。
先ほど塞いだサイドカットの穴から空気が漏れている気配はない。バルブ付近も問題なさそうだ。原因不明の穴があってもシーラントが塞いでくれそうなものだが、すでにかなりの量を注入している。ここまで来るともうお手上げだ。
あきらめてチューブを入れる
もしかすると、原因はタイヤでなくリムの内側に貼ったリムテープの方かもしれない。もう一度タイヤを外してテープを貼り直し、一からやり直すのも手だ。しかし出先でリムテープの替えがない。
ネットで注文して届くのに数日。シーラントもほとんど使い切ってしまったので、また補充が必要になる。そもそも原因がリムテープでなくポンプの方だったとしたら、今後はちゃんとしたフロアポンプを取り寄せる必要がある。あるいはまた別の要因かもしれない。
そこまで考えると、パンク修理にかかる時間と費用が馬鹿にならなくなってくる。たまたま出張先でビードが落ちてしまったのも不運だが、さすがにうんざりしてきた。これまで数年、メンテに手間がかかるのを我慢してチューブレスタイヤを使ってきたが、もうあきらめてチューブを入れようと思う。
予備のチューブは1本持ってきているので、もう1本買い足せば両輪に入れられる。チューブさえ入れてしまえば、タイヤのビードは確実に上げられる。遠征先ではしばらくクリンチャー仕様で乗ってみようと思う。
その後、近所のショップでパナレーサーの汎用チューブを買って修理を済ませた。ビードも上がって無事に乗れるようになったが、今度はサイドカット部分のパッチが裂けてしまった。
一難去ってまた一難、チューブレスレディのパンク修理はなかなか終わらない。