持久系アスリートを蝕む歯周病~歯間ブラシと砂糖・間食断ちで改善

最近、膝や首の調子が悪くなってきた背景には、年齢的なものもあると思う。半月板の変性や頚椎の椎間板劣化などは、典型的な加齢現象だ。40歳を目前にして、体のあちこちにガタがきているように思う。

この際、気になるところはひと通り点検しておこうと思い、3年ぶりに歯医者に行ってみた。その結果判明したのは、重度の歯周病という衝撃の事実。寝ているうちに歯ぎしりもしているようで、歯が削れてしまっているところもある。

人並みに歯磨きをしていたつもりだが、補給食と称して日常的に間食してばかりいたのがまずかったようだ。サーベイのつもりで、いろいろな種類の和菓子や羊羹を食べまくっていた。トライアスロンのレースや練習中に甘い物を食べても、虫歯や歯周病のリスクについて考えることはなかった。

新たに歯磨きに歯間ブラシを導入したうえ、間食はやめ、砂糖も極力摂らない生活に切り替えた。すると2週間後には劇的に症状が改善して、歯周ポケットの深さを2~3mmも回復することができた。

歯の定期検診は必須

昔は半年ごとに歯医者に通って定期検診を受けていたのだが、引っ越しが続いて新しい病院を探すのがおっくうになっていた。

ここ数年は毎食後に歯磨きできていて、新しく虫歯になったり痛みが出ることもなかった。保険適用でも歯医者でクリーニングを受ければ数千円かかる。浮いたお金でバイクのパーツでも買えると思い、病院代を節約しようと考えていた節もある。

振り返ってみると、3年間も歯医者に行くのをさぼっていたのは致命的な間違いだった。ていねいに歯磨きしていても、歯垢を100%取り切ることはできずに歯石が形成されていく。歯医者で専用の器具を使って除去してもらわないと、どうしても取れない汚れがあるようだ。

最低でも半年に一回、できれば3か月に1回は歯科医で定期的なクリーニングを受けるのが理想的。このペースで通っていれば、たとえ仕事が忙しかったりして歯磨きが不十分でも、歯周病を早期に発見して対策できる。

まさかの歯周病という衝撃

近所で評判がよさそうな歯医者で診てもらったところ、歯周病が進行していてひどい状態だった。奥歯の歯周ポケットは軒並み6~8mmという深さに達し、重度といえる状況。このまま歯がぐらついてきたら、もう抜くしかないという瀬戸際だった。

高解像度のデジカメで撮影して口腔内を大画面で見せてもらったら、自分で思っていたよりも歯が汚かった。レントゲン写真を見ると、白く映る歯槽骨のラインもだいぶ下がってきている。

見た目はさほど変化がなく、自覚症状もなかったのでショックだった。まさにサイレント・ディジーズ。「30代の3人に2人が歯周病」というライオン・システマシリーズ、テレビCMのとおりだ。

実際のところ、テレビでこのCMを繰り返し見せられたのが、久々に歯医者に行ってみるきっかけになったといえる。劇的な演出によって、全国的にすばらしい啓蒙効果を発揮しているのではないかと思う。

歯は磨いていたのに…

子供の頃に歯の矯正を受けていたので、歯を磨くのは慣れているつもりだった。フィリップスの強力電動歯ブラシ「ソニッケアー」を導入したり、デンタルフロスとタフトブラシも使い分けたりして、ちょっとした「歯磨きマニア」といえるくらいだ。

毎日3回、合計20分くらいは歯を磨いていたと思う。出先でもフロスは携帯して、食後に歯に挟まった食べカスはトイレで取るようにしていた(食片圧入がひどく、挟まったままだと痛む)。

今思い出すと、足りないのは歯磨きの時間や習慣でなく「歯間ブラシ」という道具だった。これを使うか否かでは、プラーク除去の効率が大きく変わってくる。

歯間ブラシの驚くべき効果

歯医者ですすめられた歯間ブラシという新たなツールを導入してみたところ、驚くほど効果があるとわかった。歯の間に溜まっていたネバネバするバイオフィルムが、歯間ブラシでごそっと取れる。これは人類の発明した道具の中で、最も有益なもののひとつでないかと思う。

歯間ブラシ

糸ようじやデンタルフロスと同じものかと思っていたが、歯垢を掻きだす効果は段違い。前者が歯に挟まったカスを取り除くツールだとすると、歯間ブラシは最も磨きにくい歯の間・歯肉付近の汚れを「こそぎ落とす」感じだ。

医師によれば、普通の歯ブラシでも丁寧に磨けば歯間の汚れも落とせるという。しかし統計的には上記の道具を併用することで歯垢除去率が高まるのも事実。特に歯間が広くてカスが挟まりやすい・汚れがたまりやすい人は、フロスもブラシも両方使った方がいいだろう。

スーパーやドラッグストアでは、10本セットくらいの束でしか販売していないのが不思議だった。毎日使っていると、2週間くらいで劣化してワイヤーの根元部分から折れる傾向がある。歯間ブラシは普通の歯ブラシより寿命が短い、消耗品という扱いのようだ。

歯茎の出血を恐れないこと

その昔、自分でも歯間ブラシを試してみたことはあった。しかし痛かったり血が出たりしたので、すぐやめてしまった。今思えばブラシのサイズが歯間に合っていなかったのか、歯肉炎で歯茎が腫れていたせいだろう。

現在は歯の隙間に合わせて3Sと2Sサイズを2種類使い分けている。3Sの細さであれば、前歯も含めてすべての歯間にブラシが通る感じだ。

2Sサイズの歯間ブラシ

2Sサイズの歯間ブラシ

今回も歯間ブラシを使い始めると血が出る個所があったが、数日のうちに収まってきた。歯茎が赤く腫れていても、出血を恐れずブラッシングすることで代謝や血行が促進され、改善に向かうようだ。

歯間ブラシの使い始めで血が出るのは、通過儀礼のような気がする。こんな便利な道具を、なぜもっと早く使わなかったのかと今さらながら悔やまれる。

歯周病はセルフケアが大前提

歯周病に関する知識がなかったことを反省して、歯科医療に関する本を何冊か読んでみた。結局のところ、どの本でも主張されているのは「セルフケアの重要性」だ。特に木野・齋藤先生の一般向け共著『100歳まで自分の歯を残す4つの方法』がわかりやすく参考になった。

日頃から自分で歯を磨く習慣こそが、歯周病予防の大前提。その上で歯科医の定期検診を受ければ完璧といえる。虫歯と歯周病だけでなく歯ぎしりやTCH(上下歯列接触癖)の傾向があれば、マウスピースなどでケアすることができる。

いまや歯周病の原因菌は動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞や脳梗塞の遠因になるともいわれている。加齢によって口腔機能が衰えるのは仕方ないとしても、放置すれば歯も抜けて健康に悪影響を及ぼすのは明らかだ。

「80歳で20本以上の歯を残す」8020運動は、人から言われるまでもなく達成を目指したい。むしろ親知らず以外の永久歯28本を、死ぬまでキープできればと思う。

デンタルリテラシーの重要性

自己管理が最重要である以上、歯科医療に関するリテラシーを高めておくのは必須といえる。若い頃から歯周病に関する知識があれば、適切に対策して進行を防げたと思う。定期的なクリーニングを怠るリスクについても承知していたはずだ。

協会けんぽの健康診断だけは毎年受けていたのに、歯医者で口の中まで診てもらわなかったのは盲点だった。なぜ会社の検診に歯のチェックは含まれないのだろう。労働安全衛生法で歯科検診が義務付けられているのは、ガスや粉塵が出る有害業務の従事者だけらしい。

若い頃は仕事や何やらで忙しく、丁寧に歯を磨く暇がなかったというのは言い訳に過ぎない。作業中に絶え間なく飴を舐めたりチョコレートをかじったり、歯も磨かず寝るような日があったのは今考えると恐ろしいことだ。

自転車のハンドルやシートポストをカーボン製に替えるお金を蓄えるより、ちゃんと歯医者に通っておけばよかった。アスリートにとって噛む力の強化はパフォーマンスアップに直結する。歯周病で歯が抜けてしまうと力が出ない。

過去の虫歯治療でも、保険適用外の高機能素材(ゴールドやセラミック)を選ぶという選択肢もあった。同じお金を使うにしても、レース用の機材を強化するより自分の体をメンテする方が優先度は高い。

歯磨き強化、砂糖・間食断ち

心を入れ直して歯周病の治療に取り組もうと思い、より一層丁寧に歯磨きを行うようにした。睡眠中は唾液の分泌が減って細菌が増えるらしいので、寝起きにも歯を磨くようにした。歯磨きは1日4回、寝る前は歯間ブラシを使って特に丁寧にクリーニングした。

ひたすら鏡の前で歯を磨くのは、禅の修行のようでもある。歯ブラシ、タフトブラシ、デンタルフロス、2種の歯間ブラシを使い分けて作業するのは結構忙しい。

歯磨きを強化したほか、根本的な原因を断つため「砂糖を極力摂らない」生活に切り替えた。コーヒーに砂糖を入れない。お菓子やデザートも食べない。外食したり惣菜を買うときは、なるべく糖分を含まないものを選ぶ。さらに口の中のpHを下げないように、間食も避けるようにした。

キシリトールガムとTCH

虫歯予防に有効といわれるキシリトールのガムもボトルで買ってみた。ただし常にガムを噛んでいると、これはこれでTCHの誘因になりそうな気がする。歯周病とは別に歯の摩耗も指摘されているので、まずは意識して日常的な噛み締め・食いしばりを防いでみようと思う。

長年スポーツを続けてきたおかげか、歯のレントゲン写真を見て「アゴの骨が大きく噛む力は強い」といわれた。その弊害として、TCHや歯ぎしりが加わったせいか歯の噛み合わせ面がすり減っている点も指摘された。

咀嚼筋の強さはバランス感覚や全身の筋肉出力アップなど、競技上のパフォーマンスにも関連する。顎関節症にまではいたっていないが、噛む力が強すぎても、それはそれでデメリットがありそうな気がする。

歯周病が劇的に改善した

以上の新習慣を2週間続けた結果、歯周病の症状は劇的に改善された。プローブで歯周ポケットの深さを測ってもらうと、6~8mmあった奥歯の間が4~5mm程度まで減退した。

歯科医によると「自力で戻せる深さはせいぜい1mm」とのことなので、これに関しては驚異的な回復だ。実際は担当が歯科衛生士さんに代わったので、判定が甘めになっただけかもしれない。

歯間ブラシを使い始め、歯磨きの回数を増やしたのはよかったと思う。また、砂糖断ちという一種の糖質制限によって、間接的に口腔内の細菌活動が抑えられた気もする。

そもそも砂糖や穀物を食べなかった先史時代の化石や先住民の歯には、虫歯が存在しない。口の中の病とは、食生活が豊かになった代償。虫歯や歯周病も現代病のひとつなのだろう。

いずれにしてもまだ中程度の歯周病であることには変わりない。引き続き通院しながら経過をみてみたい。歯ぎしり対策と親知らずの抜歯もすすめられているので、そちらも溜めてしまったツケを払うことになりそうだ。