ダホンのミニベロ、K3を購入した。
折りたたみ自転車ので中でも小型の14インチなのに、3段変速のギアが付いためずらしいモデル。
とりあえず家の近所を乗り回して使い勝手を調べてみた。ファーストインプレッションをまとめてみたい。
ダホンK3街乗りインプレ
買い物ついでにK3で家の周りを10キロほど試し乗り。
新車にまたがると、最初はホイールが小さくてふらつく気がした。しかしスピードが出るほど安定感が増して、14インチとは思えないほど快適に走れる。
必要十分なギア3速
3段変速の最低限とはいえ、このサイズでギア付きというのは新鮮だ。
おそろしくワイドなギア比のおかげで、1速なら市街地の坂は余裕でこなせる。そして3速でペダルを踏みまくれば、時速30キロ以上で巡航することも可能。
14インチの極小サイズにしては、ホイールベースが実測83センチと長めに確保されているためだろう。K3は見た目以上に直進安定性が高い。
日常的に買物や通勤で使うには十分な性能といえる。
サイクリングロードを走っていても、ママチャリはおろか、その気になればロードバイクを追い抜けるほどスピードを出せる。橋の下をくぐる坂道も、ギアを選べばサドルに腰かけたまま上り切れる。
ただし信号待ちからゼロ発進する際は、3速だとペダルが重くてふらついてしまう。
停止する前にあらかじめギアを落としておかないと、スムーズに発進できない。車体が不安定なため、立ち漕ぎで加速するのは危ない。
ミニベロは小回りが利く
小径車の旋回性能は700Cロードよりも上だ。
狭い範囲でUターンしたり、車道と歩道を行き来したりするのもスムーズ。公共施設やサイクリングロードで見かける車止めのゲートも、K3なら乗ったまま通過できる。
ロードバイクでも足つきなしで通れないことはないが、無理して転ぶとカッコ悪い。障害物にホイールをぶつけてスポークを曲げてしまうおそれもある(経験あり)。
自転車にスタンドがあると便利
K3にはもともと駐輪用のスタンドが付いていない。
普段の足としては不便に感じたので、購入時にショップで追加してもらった。非日常利用のロードバイクには必須でないが、マンションの駐輪場やコンビニでとめるには、やはりスタンドがあった方が便利だ。
K3はチェーンステーにネジ止め用の穴があり、汎用品のスタンドを装着できる。よく見るとフォーク先端やリアエンドにも穴が開いているので、各種キャリアを後付けすることもできそうだ。
自転車にスタンドを付けてみて、あらためて便利なパーツだと実感した。ちょっとした駐輪や写真撮影の際にも、車体が自立できると有利だ。
スタンド付きのK3で山に行けば、こんな崖っぷちで写真を撮ることも可能。
バイクをそのまま壁に立てかけるとフレームが傷ついてしまったり、バーエンドに付けたミラーが取れてしまったりする。
多少重量は増えてしまうが、K3にはスタンドを付けるのがおすすめだ。万が一これでレースに出るときだけ外せばいい。
小径車は運転スキルが上がる
ミニベロはホイールが小さいので歩道の細かい段差に敏感になる。しかし気をつけて運転すれば、めったに転ぶことなどない。
標準装備のKENDAのタイヤは幅1.35インチで34Cに相当する。並みのロードバイクよりタイヤが太いので、K3ならちょっとしたオフロードも走れる。
不用意に縁石に乗り上げると危ないのは、他の自転車でも同じこと。後輪をすくわれて転倒したり、リム打ちパンクしたりするおそれがある。
K3に慣れれば、ミニベロなりの走行テクニックを身につけられる。
安定性の高いロードバイクやMTBに乗るよりも、むしろバランス感覚を養えるのではないかと思う。普段の練習とは違う筋肉や神経を鍛えられて、いい刺激になる。
広すぎるハンドル幅の功罪
K3はフラットバーのハンドル幅が54センチと異様に広い。
歩道を走る際は、歩行者や障害物に当たらないよう注意が必要。幅38~42センチ程度のドロップハンドルから持ち替えると、挙動がクイックすぎて最初はとまどう。
ハンドルが広いと空気抵抗は増えるが、胸を開けて呼吸が楽になるメリットがある。両端にバーエンドバーを取り付けても、クリアランスが取れるので折りたたんだ際に干渉しない。
駐輪場にタイヤがはまらない
K3で買い物に出て気づいたのは、有料駐輪所の車輪止めにタイヤがはまらない点だ。
下の写真は一見前輪が収まっているように見えるが、ホイール径が足りないのかストッパーの部品が横から出てこない。
とりあえず見た目は不自然でないので、そのままにしておいた。無料で使っている状態なので見つかると怒られそうだが、路上に放置するのも迷惑なので悩ましいところだ。
ダホンK3が人気の理由
ダホンK3は昨年発売された人気の車種。2019年モデルはすでに春先の段階で品薄になっていた。
来年には新カラーや別モデルが出る可能性もあるが、この機を逃すと数か月先まで手に入らないおそれもあった。
K3はスペックに対して低価格
K3が人気な理由は「変速付きの折りたたみ14インチ」という独自性のほかに、価格的なメリットも大きいと思う。
K3の定価は8.2万で、カスタムベースとして人気のスピード ファルコと同じ金額。上位モデルのVisc EVOやアルテナより若干安く、ラインナップの中ではミドルレンジに位置づけられる。
自転車購入の心理的なハードルである「予算10万の壁」はクリアできる。浮いたお金はパーツに投資して改造も楽しめる。
K3のポジションは前傾強め
『折りたたみ自転車&スモールバイクカタログ2019』というムック本で、K3が詳しく取り上げられている。
クランク1回転で進む距離や、身長別のライディングポジション比較が興味深い。K3は他社製品と比べて、走行性重視のアグレッシブな設計になっているのがわかる。
ダホンの公式カタログによると、K3の乗車姿勢はDove Plusと同じ「スタンダード・スタイル」に分類されている。しかし実際はハンドル位置がやや遠くにセットされていて、EVOやSpeed Falcoの「アクティブ・スタイル」に近い。
どうやらK3は競合のルノー・ウルトラライトとの差別化を意識して、前傾姿勢かつギア比高めで設計されているようだ。チェーンリングは53Tと大きく、想像以上にスピードが出る。人によっては3速が重すぎて、かえって使いづらいかもしれない。
これまで14インチ以下の小径車は、シティライドを想定したゆるいポジションのモデルしかなかった。
自分のようなロードバイクからの乗り換え組は、K3くらい攻撃的な仕様の方が手ごたえを感じられるだろう。華奢な見た目からは想像できないほど、ペダルを回せば素直に加速してくれる。
ワイドなギア比でルノーと差別化
ミニベロの中でも14インチ以下のサイズはまだ少数派だ。
極小8インチのA-bikeやCarry Meもあるが、さすがに変速機能はついていない。ある程度の登坂やロングライドも楽しみたいなら、やはりギア付きの方が行動範囲を広げられる。
実はルノーの14インチにも、3段変速の「トリプル」というモデルが存在する。ダホンK3と比べると、トップチューブ下のDeltecワイヤーがない以外、見た目はほとんど変わらないように思われる。そしてウルトラライトの方がK3より3万円ほど安い。
ルノーに比べたK3のメリットは、ワイドに設定されたギア比だ。特に3速は重めなので、平地を長く走るならウルトラライトよりも有利といえる。
駆動系をよく見ると、フレームサイズに対してチェーンリングの巨大さが目立つ。ディレイラーも地面すれすれだ。
自分はこれまでギア比の高いシングルスピードバイクに乗っていたので、ロードでも重たいギアを低いケイデンスで回すくせがある。そのためK3を3速で漕いでも違和感を覚えなかった。
慣れていない人によっては、リア9Tがきつすぎるかもしれない。他のユーザーさんに話を聞いても「1速や3速は出番が少ない」とお伺いしたことがある。
14インチは軽くて輪行に有利
K3は重量7.8キロというスペックどおり、手で持った印象は非常に軽い。
折りたたんだ状態も20インチの小径車よりひとまわり小さく、収納性のメリットを実感できる。手持ちのロードバイクに比べると圧倒的に省スペースだ。
K3を手に入れると輪行旅行が楽しみになる。今までロードを分解して運ぶのはおっくうだった、遠くの観光地まで気軽に足を伸ばせる。
室内保管もかさばらない
そして自宅で室内保管する際にも、14インチのコンパクトさが生きてくる。
K3のハンドルを回して壁に寄せれば、わざわざ折りたたまなくても場所を取らない。六畳一間でロードバイクと2台置きすることも可能だ。
こんな風にロードの隙間に挟めば、ドロップハンドルの幅だけで、ほぼK3が収まってしまう。
「持ち物は減らしたいけど性能に妥協したくない」
そんなミニマリストにDAHON K3は向いている。
K3なら走る楽しみも犠牲にならない。その気になれば峠を上ったり、100キロ超のロングライドもこなしたりできる。
このサイズ感にしては、シリアスレーサーにも受け入れられそうな潜在能力を秘めている。
14インチ小径車ブームに期待
全般的な走行性能は700Cロードやスピード系ミニベロに劣るとはいえ、14インチの小径車は興味深いジャンルだ。
路面の段差もぎりぎりこなせて、K3なら変速機能もあるためスピードを出せる。軽量・コンパクトで収納・輪行の負担も少なく、日常の足から週末のツーリングまで幅広く活用できる。
今やK3はダホンの中でも一番の売れ筋らしい。
これから14インチが盛り上がって、互換性のあるパーツや改造ノウハウが充実してくれるとうれしい。