建築士受験生必見の映画『パーフェクト・ワールド』公開初日レビュー

10月に入ってすべての仕事をシャットアウトした。朝から晩まで製図の勉強に専念できる、幸せな日々を送っている。朝は「きれいな字を書く」練習、試験本番に合わせて11時からエスキース~記述~作図、夜はプランの見直しと解答例の暗記、寝ながら夢で別案をエスキース…

今年は昨年より試験が1週間遅いので、2週間このペースだとさすがに燃え尽きてしまいそうだ。気晴らしを兼ねて、以前から気になっていた建築士映画『パーフェクト・ワールド 君といる奇跡』を公開初日に見に行ってみた。

念のため断っておくと、ケビン・コスナーが出てくる子連れ狼、懐かしの90年代映画ではない。原作のマンガがあるようだが、映画としては特にオマージュ的な要素は見あたらなかった。

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一級建築士受験生が今見るべき映画

8月に観た『オーシャンズ8』は出演女優の年齢層が高すぎて噴飯物だったが、冒頭で興味深い予告編が出ていた。「一級建築士とインテリアコーディネーターのラブストーリー」…建築家主人公のフィクションが大好きなので、この売り込みだけで見に行かない理由がない。

実のところ、EXILEファンより来週一級建築士の製図試験を控えている受験生こそが、もっとも楽しめる映画だ。できれば明日からの連休中、余裕がない人は試験が終わってからでも、ぜひスクリーンで見に行こう。

日本建築士会連合会が試写会まで実施している公認映画。これを見ずして建築士は名乗れない!

(以下ネタバレ)


建築士受験生が今この映画を見るべき理由を、3つ以上の特徴を挙げて簡潔に記述してみよう。

  • 障害を持った主人公が、困難を克服して一級建築士に合格する物語
  • 建築士はモテるので、ハンデがあっても24歳の彼女をゲットできる
  • 建築技術教育普及センターがEXILEと結託して業界のイメージアップを図ったプロパガンダ映画
  • 10/14の製図試験で出る課題のヒントが隠されている
  • バリアフリー、省エネルギー、セキュリティ等に配慮されたスポーツ施設が出てくる
  • 車椅子のカップルがスロープのある温水プールでエクササイズする
  • 設計事務所の先輩役でシーラカンスの小嶋さんが出演している

このうち半分くらいは本当だ。試験に向けて残り1週間、モチベーションアップのため貴重な時間を割いて見に行ったとしても、決して後悔しないと約束しよう。

EXILEにしてはよくできた映画

正直、キャラクターの職業設定以外は映画としてまったく期待していなかった。配給元がLDHということで、かの『HiGH & LOW』劇場版第1作を間違って映画館で見てしまった後悔が思い出される。俳優が「あー」とか「うー」しか言わず、バイオレンスと踊りで間をつなぐ新世代のTOKYO TRIBEだった。

さいわい今回のヒロイン杉咲花は本業の女優だったようで、昔の蒼井優のように初々しい。出てくる男の子と女の子が『リリイ・シュシュ』っぽいのは気のせいでしょうか?

E-girlsは歌だけの出演でよかった。しかもエンドロールでちょろっと流れるくらいなので、思った以上に露出は控え目。『君の名は。』みたいに、劇中やたらと歌謡曲が流れる最近の映画にはついていけない。

主演の岩田剛典君は慶応大出身、EXILEきっての秀才エリートだ。HiGH & LOWの演技もまだましな方だったと思う。本作での車椅子生活には念入りな監修が入っているようで、スロープのないレストラン入口で苦労する様子とかリアリティーがある。

チャタレイ夫人は出てこない

いかにも王道的な恋愛映画をわざわざ映画館に見に行くのは『恋する惑星』(ちょっと違う?)以来数10年振り。このネーミングセンスは、アトリエ・ワンの「恋する豚研究所」として最近リバイバルしている。

そういえば6月に『恋は雨上がりのように』の映画版も見に行った。あちらは原作通り、ナボコフ~谷崎純一郎の系譜になぞらえる文芸作品。もし恋愛映画と間違って高校生カップルがデートで見に行ったとしたら、事故だ。

21世紀版『パーフェクト・ワールド』。ラストは結婚式で終わるハッピーエンドなのだが、下世話なおっさんはチャタレイ夫人みたいな10年後の続編を期待してしまう。

車椅子の結婚生活がいかに厳しいかを描いた、20世紀初頭の純愛小説。建築士に憧れるEガールズ、Bボーイズは必読だ。映画の中では、そっち関係がどうなっているのかまったく説明されなかったが不満のひとつ。原作マンガを読めばわかるのだろうか。

思わず泣ける一級建築士合格シーン

平日金曜のイオンシネマは公開初日でも人入りはまばら。最近イオンの株主優待が改良されたおかげで、曜日に関係なく無料ポップコーン付きオーナーズ1,000円で映画鑑賞できるようになった。

広いシアターで15人くらいいるお客さんのうち、男性は自分ひとりだった。中盤から、後ろの女性陣3名くらいが涙腺崩壊してすすり泣きが止まらない。「えっ、これのどこで泣けるんだ?」と不思議だった。子猫がかわいかったのだろうか。

と思いきや、主人公が一級建築士の合格通知を受け取る場面で、自分も思わず(違った意味で)涙が出てしまった。この幻のシーンは、12月の合格発表まで何度も夢に出てくるだろう。

試験に受かると、こんな顔写真入りの豪華なハガキが届くんだな。去年の使いまわしじゃなくて、もっとちゃんとした写真を撮って申請すればよかった。きっと主人公も車椅子に製図板をくくり付けて、総合資格や日建学院に通ったんだろう。その苦労を思うと、泣けてくる。

恋愛映画かくあるべし

恋愛映画としてのプロットはベタである。想像通りのストーリー展開なので、特に突っ込む要素はない。

  1. 仕事の絡みで初恋の高校の先輩と再会、同業者なので最初から馬が合う
  2. 元カノやヘルパーさん、別の同級生など、適度にライバルが出てきて賑やかす
  3. 両親の反対により、いったん破局と見せかける
  4. とある事件をきっかけに親にも認められ、よりが戻ってハイ結婚

ご苦労様でした。

もし脚本に手を加えるなら、「手術が失敗して彼氏死亡、主人公の女の子が意思を継いで一級建築士を取得し、念願だったコンペを射止める」…こんなストーリーにしてみたい。違った趣旨の映画になってしまうが、ニューヨークが舞台のハリウッド映画なら、きっとこうなる。

こんな職場&上司と働いてみたい

映画は冒頭からインテリアや設計事務所の職場シーンが出まくり、建築色満載、期待通りのパーフェクト世界。

24歳のつぐみちゃんが勤める、クランベリーズというアイルランド風のインテリアデザイン事務所は、もうかっこよすぎてVOGUEのようだ。職場の先輩も美人ぞろいで、建築士はやめてインテリアプランナーを目指そうかと思った。

設計事務所の男の子に比べて、女の子の「インテリアがんばる」感があまりアピールされなかったのはちょっと残念。画家になる道を諦めて、仕方なくインテリアで飯食ってる風だ。できればデザイン事務所にもミランダ編集長みたいなカリスマ上司を登場させて、つぐみんの仕事面での成長も描いてほしかった。

対する鮎川君の設計事務所は、スタッフ10人くらいいそうなそこそこ大きい中堅組織。おしゃれヒゲの若い同僚に、アロハシャツを着た人情味あふれる上司。少なくともスーツや作業着姿で3Kを連想させる職員は出てこない。さすがに車椅子で免除されているのか、ヘルメットをかぶって現場に行くようなシーンもなかった。

最後に協力した事務所の名前がいくつかクレジットされていたが、見覚えがなくピンとこなかった。憧れのクランベリーズにシニア枠の中途採用募集はないだろうか。『マイ・インターン』のロバート・デ・ニーロみたいに活躍するよ!

建築士の試験元が協賛?

エンドロールを見ると、どうやら我々の運命を握る、公益財団法人建築技術教育普及センターが協賛しているように見えた(間違っていたらごめんなさい)。受験者数の減少を食い止め、建築業界のイメージアップを図るため、「建築士の仕事はこんなに素敵ですよ!」という脚色が随所に散りばめられている。

自分も『ママレード・ボーイ』やキムタク建築家にそそのかされて進路を誤ったくちなので、この手のプロパガンダ映画の影響はあなどれない。これを見て感化されてしまった高校生が、10年後に一級建築士を受験するとき役に立てるよう、ブログをがんばろうと思う。その頃にはもう製図はCAD試験に変わっているかもしれないが。

パースも図面も手描きLOVE

野暮ではあるが、映画の中に出てくる建築士の生活で、違和感を覚えた部分を挙げてみよう。まず、設計事務所や自宅にドラフターが出てきて、コンペのパースも手描きで書いている。

今どき自分の部屋に、でっかい製図板を置いている建築士はどのくらいいるのだろう。少なくとも20代の若者が、芯ホルダーでパースを描いている様子は想像しがたい。しかし序盤の重要局面である、病院で苦しみながら徹夜でパースを仕上げるシーンは、ノートPCでカチカチやっていては絵にならないのだ。ここが建築士の泣かせ所パートワン。

一般の人が建築士に期待するロマンティックなイメージが、出てくる道具類に集約されている。女の子の方だが「鉛筆はカッターで削る」。パースを下書きするのは「シャーペンでなく芯ホルダー」などなど。

二人が付き合い始めてから、鮎川君がプレゼントを出してくる。長細い箱を見て、中身は製図用のシャープペンシルでないかと想像してしまった。GRAPH 1000 for PROのゴールド限定カラーとか。

中身はあたりさりのないネックレスだったのだが、ヤバい、勉強しすぎで常識がわからなくなってきた。

一瞬だけ事務所でCADを操作している場面も出てくる。UIがダークトーンのしゃれた感じで、間違ってもJW-CADとかSketchupではなかった。協賛がDELLなので、MacBookは出てこない。スペック的にGPUは搭載しているはずだが、ゲーミング仕様の派手なALIENWAREだと違和感あるので、Precisionぽかった。

今どき絵具でパースを描いても佳作どまり

設計事務所では、もれなくスチレンボードで模型をつくるシーンも出てくる。「小都市に建つ美術館」的な公共建築コンペで、サントリーミュージアムのような逆円錐型のホールがある。間違っても介護老人保健施設とか、勾配屋根のものつくり体験施設ではない。

懐かしいな、サントリーミュージアム。今は名前が変わって大阪文化館とかいうらしい。学生の頃、最初に建築旅行してスケッチしたのがこれだったのでよく覚えている。円錐をパースで書くのはとても難しいのだ。

鮎川君が下書きして力尽き、川奈ちゃんが着彩して仕上げた愛の共同パース。まさか絵の具でこんなに塗るのか!?という立体感ある植栽・点景は必見だ。さすがに表現が時代遅れだったようでコンペは佳作で落ちてしまうが、何かしらJVで協業するようになったらしく、ストーリーのお膳立てが整う。

建築士なのにお金持ちな理由

劇中、車椅子バスケをしている体育館に目黒なんちゃらと表示があり、見覚えのある風景からすると、LDH事務所のある中目黒付近でもロケしているように思う。

たびたび出てくる主人公の済むマンションはアイランド型のキッチンがあり、広さとスペック的には家賃20万以上する恵比寿の高級賃貸という雰囲気だ。とても新米所員の安月給で住めるとは思えないが、これにはいくつか理由を推測できる。

  1. 鮎川君の実家はお金持ち
    長野の高校の同窓会が、アパホテルの宴会場とかじゃなく御三家並みの高級ホテルで行われている。参加している同級生のドレスもみな豪華。鮎川君がしきりに見せびらかす、トノー型のごつい時計がリシャールミルだとすれば推定価格150万円。
  2. 交通事故の慰謝料と障害年金
    大学3年生のときに交通事故で脊髄損傷したことになっている。自転車対車なので、ぶつかり方によって1~2割は過失相殺があるとしても、後遺症の等級的に保険会社から数千万はもらえたはず。障害年金1級と合わせて、目黒や恵比寿の億ションを借りるのも不可能ではなさそう。

自分の通った高校が同窓会するとしても、せいぜい塩尻の信州健康センターどまりだろう。映画の高校は長野だけど同窓会は東京か?

つぐみちゃんがどんなデザイナーズコスチュームで参戦するのかと思いきや、リトルブラックドレスという外し。さすがにゴージャスなオーシャンズ8に加わるには若すぎるか。ただし、中身のブランドはヨージ・ビオメハニカとかだろう。

鮎川君が入院する病室も、リハビリ時代は相部屋っぽいが、あとは基本的にサービスが手厚い角部屋の特別個室という感じ。かっこよく建築士を目指すには、まず財政的な裏付けがいる。これは事実だ。

原作マンガを読めば、もっと詳しい状況設定がわかるのだろう。8巻出ていてまだ連載中か…さすがに今から読み始めると試験に差し使えそうなので、終わってからマンガ喫茶「無柱空間」で読破するとしよう。

出た!スタンドカラーシャツ

ついでに鮎川君のファッションもチェックしてみる。基本的に高校時代のバスケ部シーンと、入院・リハビリのときはTシャツだが、それ以外は基本的にきれいめシャツ着用。デートのときは白シャツで、事務所の作業時はシャンブレー地のワークシャツを使い分けるなど、さりげなく芸が細かい。

どのへんだったか忘れたが、スタンドカラーシャツも漏れなく出てきた。前世紀の建築家アイコンとして大流行した襟なしシャツ。有名建築家や大学教授がまとえばさまになるが、学生が真似すると寒々しい、着こなしが難しいアイテムだ。

ワンシーンだけ、ほんのアクセント程度にバンドカラーで登場させ、しかも色付きのチェック柄で出してくるセンスはさすが。ほかは無地で明るい色のシャツ、ときどきボーダー柄のカットソーを着て、ボトムはベージュやカーキのパンツを合わせる。

このシンプルファッションなら、ユニクロや無印でも十分真似できるはず。ギャルソン1着買う金額で、GUかマックハウスなら1週間分のワードローブを揃えられる。さわやか建築士を目指して、ぜひ見習いたい。

適度に盛り上げる脇役たち

同窓会にもう一人出てくる、噛ませ犬の同級生がシステムエンジニアの是枝君。「タイミングの良い男」という稀有な才能を持ちながら、いまいち最後まで粘り切れない。是枝君にチャタレイ夫人の野性味あふれる間男はつとまらなそうだ。「オレは是枝、タイミングだけは良い男」…

「建築士よりかっこいいところを見せるつけるんだ。負けるなSE!」と応援していたが、スーツ姿にいかにもテッキーな3wayのブリーフケースを背負っていたり、ステレオタイプなビジュアル的差別が著しい。

どう見比べても車椅子の建築士の方がイケメンだが、10年後に稼いでいる勝ち組は是枝君だ。もうちょっとカジュアルな服装で、爽やかなITベンチャー役員みたいに登場させてあげればフェアだったのに…あくまでフリーで夢のある建築士を引き立たせるための、脇役として扱われてしまっている。

中盤から美人ヘルパーの長沢さんが登場するのは想定外だった。2人が車で長野に帰るシーンの会話で伏線が張られていたが、ついマッチョな作業療法士が思い浮かんで、ホモセクシャルな方を連想してしまった。

年齢差はあるが見た目は負けていないので、もっとぐいぐい攻めてくるのかと期待してした長沢さん。結果的には、障害のある恋を応援してしまう良識ある年上のお姉さんだった。

元カノ、ミキティー先輩も、序盤の結婚式でフェードアウト。エンドの結婚式にも出なかった。長野県民の結婚式といえば、アントニン・レーモンド設計の軽井沢高原教会と相場が決まっている。2回ともそこには見えなかったが、ロケ地はどこだ?

恋のハードルを「車椅子生活」にフォーカスするため、人間関係的な揺さぶりはほとんどない。強いて言えば朴訥なお父さんがちょっかい出すくらいだが、自分が脳梗塞で倒れるとあっさり降参してしまう。

ヒロインも何と車椅子に!

冒頭30分で建築的な見どころは十分楽しめたので、早く帰って製図の勉強に戻りたいと思い始めた。いまや作図中毒になってしまったので、6時間半おきにテンプレートで柱を書かないと震えが止まらない。鮎川君が美姫先輩の結婚式を見届けて和解するあたりで、ストーリー的にも満足した。

「もうあとは好きにイチャついちゃってください、チクショウ」…と思ったら、つぐみちゃんが駅のホームから転倒してケガするあたりから趣が変わってきた。

なんと車椅子使用者が2人に!このまま一緒にスポーツ施設に行って、車椅子用の男女更衣室を通りながら1/12スロープでプールに入るのでは…とドキドキしながら見守ってしまった。

「目線が一緒だね♡」なんてジーンとするセリフを吐きながら、バリアフリードストライクな映画になると見せかけて、後遺症もなく5分で完治してしまう。

う~む、せっかく車椅子生活のリアリティーを追及しているなら、女性的な観点からのハンディキャップも描いてほしかった。あんな派手な落ち方して、よく足首の捻挫程度で済んだものだ。

せっかくの横浜でコスモワールドかよ…

その後、父親の差し金もあり別れ話を切り出すのが、何ともさえない横浜コスモワールド。建築カップルなら、せめてFOA設計の大桟橋国際客船ターミナルあたりでデートさせればよかったのに…斜面が多すぎて車椅子的に厳しかったのだろう。

大桟橋の屋上でゴロゴロしようと思ったら、ウッドデッキのささくれが刺さって女の子「痛っ!」とか。

昔、仕事の関係で30回は乗ったコスモワールドの観覧車…ピンクのコスモくんがうざったいローカルな遊園地で、たいした風情はない。隣にある佐藤可士和のカップヌードルミュージアムもビジュアル的にはありだが、企業宣伝色が強すぎてNGだろう。

ほかに映画で出てくる建築作品っぽいシーンは、2人がデートする美術館くらい。あとで調べたら、埼玉県の吉見町にある「フレサよしみ」という施設らしい。どうやら映画の冒頭に出てくるコンペ案はこれが元ネタのようだ。

荒川沿いに見えるガスタンクにいちごが描いてある、いちごの里よしみ…聖地化して混む前に、ロケ地を見学に行ってみようかな。とりあえず訪問してみた長野の高校はこれらしい。

『建築の多様性と都市論』

その他、建築関連の小ネタを指摘すると、高校時代の鮎川君が図書館で読んでいる難しそうな本のタイトルは『建築の多様性と都市論』。ロバート・ヴェンチューリのパロディっぽいが、長野のセレブな私立高校にはこのくらい常備してあるのだろう。

ここで岩ちゃんに読ませるなら『建築MAP東京』あたりの方が、同じ建築学生として親近感を覚えるところ。あくまで、「建築士は難しい本も読めるんだぜ」という小道具としての役割しか期待されていない。

自分が高校生の頃読んだ建築本、思い出せる中で一番難しそうなのは『図解雑学建築』くらい。ヴェンチューリには負けた…隣に積んである本も、きっと『実存・空間・建築』とか『古典主義建築の系譜』なんだろうな。もしかするとフーコーとかドゥルーズとか、ニューアカ系かもしれない。すげえ高校生だ。

ちなみに鮎川君が「スポーツ施設」の「屋外休憩テラス」で拾った子猫につける名前は(丹下)ケンゾウ。キショーとかザハなんて呼びにくい名前でなくてよかったね。安藤忠雄の飼い犬はコルビュジェだったっけ。

車椅子で暮らすと実感できるバリアフリー設備

勉強家の鮎川君が、車椅子の施主に出会ってバリアフリー住宅のポリシーを語るシーンがある。映画公式サイトのプロダクションノートを読んでいたら、車椅子の建築士、阿部一雄さんにインタビューしたらしい。

なんか見覚えあると思ったら、自分も去年この方の本を読んでいた。ちょうど両膝を手術して、「ツリーハウス自邸の夢は諦めてバリアフリーハウスか…」と落ち込んでいた時期、松葉杖をつきながら感激して立ち読みしたものだ。

「車椅子用の便器は座高が高い」…学科に出てくるバリアフリーな設計寸法は、自分の体で実感できた。入院して一時期でも車いすや松葉杖で過ごすと、駅や公共施設で普段使わない設備を試せて勉強になるものだ。

しばらくリハビリで温水プールに通っていたときも、膝が曲がらないのでスロープがあれば便利だと思った。もしプール室の特記事項になかったとしても、TAC解答例のようにスロープは必ずつけようと誓う。

平成30年製図試験、スポーツ施設の出題予告

さて本題に入ろう。『パーフェクト・ワールド』にスロープ付きのプールが出たというのはガセネタだが、スポーツ施設は登場した。そして描かれる場面は、主人公が車椅子バスケをプレイするシーンだ。

どうやら来週の試験では、要求室に「バスケットボール等を行う小体育館」が出る可能性がある。車椅子用でない標準的なバスケコートなら、天井高は7m以上確保したいところ。先日解いた日建学院の演習課題1Bがいい線を行っているかもしれない。2~3階ぶち抜きのCH=7,500「多目的運動室」はぜひシミュレーションしておきたい。

映画の中でよく映っていた中目黒の山手通りにも、出題のヒントが隠されている気がする。たとえばドン・キホーテ併設のコナミスポーツクラブ目黒青葉台。広い浴室には、こんな立地に関わらず露天風呂が用意されている。昔よくプールで泳いだあと、頬を刺す朝の通りを歩きながらドンキの焼芋を食べたものだ。

そういえば、ロッカールームに併設されて大浴場や露天風呂のある練習課題というのは今年まだ見ていない。去年のリゾートホテルで出たからスルーされそうだが、風呂が豪華なスポーツ施設もたまにある。標準解答例にある浴場内の什器レイアウトを確認しておこう。

コナミ渋谷のツインプール

ちなみに同じく山手通りを少し北上したところにあるコナミの渋谷店。こちらは2階の25mプールと別に、6階にリラクセーション用の小プールと、そこから「一体的に利用できる」屋外テラスが備え付けられている。狭い敷地を活用した迷路のような立体構成がおもしろく、サウナの設定温度も高めで気持ちがいい。

中は狭いが神泉駅から歩ける距離なので、コナミの中ではもっとも高いランクIVカテゴリー。ゲストの都度利用でも3千円くらいかかるが、ツインプールの実例はぜひ見学しておこう。それにしてもランク4って不吉だな…

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